サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
結界に包まれた夜空で、堕天使型ロボットの翼がゆっくりと広がる。その一枚一枚が不自然な角度で軋み、金属音と共に分離していく。羽根は鋭い刃の形へと変形し、内部から赤い光を灯す。次の瞬間、それらは一斉に射出された。
最初の数発は読みやすい軌道だった。だが問題は数だ。十、二十、三十。翼全体が弾倉であるかのように、休みなく翼型ミサイルが放たれ続ける。蒼い尾を引きながら、空中で蛇のようにうねり、角度を変え、こちらを追尾する。
「多いな……!」
操縦桿を押し込み、急降下。腹部スラスターを噴射し、即座に横方向へスライドする。だが視界の端には、すでに次の群れが映り込んでいる。爆炎が弾け、衝撃波が機体を揺らす。左腕の銃を連射し、接近した数発を撃ち落とすが、破壊の火花の向こうからさらに新しいミサイルが現れる。
距離が詰まらない。近づこうとすれば、翼が再び開き、波状攻撃が始まる。敵は一歩も動かず、ただ空を埋め尽くすように弾幕を張る。
「軌道が読めない、追尾性能が高い!」
フェイトの声が鋭く響く。ミサイルは一度避けても終わらない。旋回し、背後から再度迫る。推進器を全開にして上昇し、急停止からの反転。各部スラスターが細かく噴射し、姿勢を保ちながら回避を重ねる。
だが、回避に専念すれば攻撃の手が止まる。撃ち落とすには照準を合わせなければならず、そのわずかな硬直を狙って次の弾幕が迫る。結界内の空間が、徐々に狭まっていく感覚に包まれる。
爆炎の閃光が連続し、衝撃が装甲を叩く。警告表示が点滅するが、致命傷には至らない。それでも、接近のための直線軌道を確保できない。
「近づけない……!」
堕天使型ロボットは悠然と翼を震わせる。再び、無数の羽根が弾け飛ぶ。空が刃で満たされる。
このままでは、押し切られる。
弾幕が視界を埋め尽くす。翼型ミサイルは間断なく放たれ、爆炎が層を成して行く手を遮る。回避を重ねるたびに推進出力は削られ、機体の振動がわずかに荒くなる。敵は動かない。ただ空を支配するだけで十分だと言わんばかりに、無数の刃を撒き散らす。
「太郎、このままじゃ押し切られる!」
フェイトの声が鋭く響いた、その瞬間だった。
結界の上層を走る蒼白い閃光が、夜空を裂いた。雷鳴が轟き、弾幕の一角がまとめて消し飛ぶ。爆炎の向こうから現れたのは、艦体を帯電させたギャバリオンライトニング。艦首から伸びる放電フィールドが、迫るミサイル群を次々と焼き払っていく。
「待たせたね!」
雷光が尾を引き、艦が急接近する。ミサイルの追尾軌道が乱れ、帯電した空間で誤爆が連鎖する。空を埋めていた弾幕に、明確な穴が穿たれた。
「今だ、太郎!」
操縦桿を押し込み、開いた空域へ滑り込む。コスモギャバリオンGC-Rの背部装甲が左右に展開し、接続フレームが露出する。ライトニングが機体後方へ回り込み、艦体各部のユニットが分離を開始する。
雷が奔る。
艦から放たれた電撃が機体を包み込み、装甲の継ぎ目に青白い光が走る。衝撃ではない。力が流れ込む感覚だ。内部コアが共鳴し、出力計が跳ね上がる。
「同期率上昇、八十……九十……!」
フェイトの声と共に、ライトニングの主翼ユニットが接続される。背部推進器が拡張され、電磁加速リングが展開する。腹部フレームが再構築され、前腕部に新たなエネルギーラインが走る。
最後に、艦首ユニットが機体中央へと融合する。閃光が爆ぜ、電撃が全身を纏う。
コスモギャバリオンR。
黄金の眼が点灯し、空間を貫くように輝く。
さきほどまで押し込まれていた視界が、鮮明に広がる。帯電した空域では、翼型ミサイルの軌道が乱れ、敵の再射出にも僅かな遅延が生じている。
「逆転、行ける!」
背部スラスターが轟音と共に噴射する。蒼雷を纏った機体が一直線に加速する。これまで届かなかった距離が、一瞬で詰まる。
弾幕はまだある。しかし、もう支配ではない。雷が空を制圧し、流れが変わった。
黄金の眼が閃いた瞬間、世界の輪郭が引き締まる。コスモギャバリオンRの背部推進器が一斉に噴射し、蒼雷を帯びた機体が一直線に突き抜ける。空気を切り裂く音さえ遅れて届くほどの加速。さきほどまで視界を覆っていた翼型ミサイルの群れが、今は線のように見える。
堕天使型ロボットが再び翼を震わせる。羽根が分離し、無数の刃が放たれる。だが、電撃を纏った機体は減速しない。右腕のブレードユニットが展開し、刃に雷が絡みつく。接近した翼型ミサイルへと振り抜くと、刃は金属を断つ前に電撃で内部回路を焼き切る。爆発は起きない。ただ、光を失った刃が粉のように砕け散る。
次の群れが迫る。今度は回避ではなく突入だ。機体をわずかに傾け、背部スラスターを偏向噴射。電撃の尾を引きながら弧を描き、弾幕の中へ飛び込む。左腕の銃が高速連射され、遠距離のミサイルを撃ち抜きつつ、至近のものはブレードで薙ぎ払う。電撃が刃から飛び散り、空中に青白い軌跡を刻む。
敵が光の槍を生成する。長大な槍が雷光を裂いて迫る。だが、機体は急制動からの急加速で軌道を外れ、槍の横を擦り抜ける。すれ違いざまにブレードを振るうと、槍の柄が断たれ、光が霧散する。
再生しようとする翼を、さらに上回る速度で切り刻む。切断面が修復される前に、次の斬撃が走る。電撃が傷口へ流れ込み、内部機構を麻痺させる。再生の速度が目に見えて落ちる。
「今だ、コアが露出!」
フェイトの声が弾む。敵の胸部中央、闇に包まれたコアが剥き出しになる。
機体を一度大きく引き、距離を取る。背部ユニットが展開し、エネルギーが中央砲口へ収束する。雷が束となり、空間を震わせる。結界が波打ち、蒼光が周囲を白く染める。
『エモーショナル・バースト』
音声と共に放たれた一撃は、雷を帯びたレーザーとなって一直線に走る。コアを貫いた瞬間、内部で光が膨張し、再生を試みる闇を焼き尽くす。翼が砕け、装甲が崩れ、巨大な躯体が光の中で崩壊していく。
爆光が収束した後、夜空に残ったのは蒼い電撃の残滓だけだった。
次回の王は
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妖怪王
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機械王
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怪獣王
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幻想王