サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
狭い宇宙船の通路は、逃げ場を削るためにあるみたいに細く、壁の配管が息をするたびに熱を吐き、金属の匂いが喉の奥に貼り付いて離れなかった。
俺はギャバリオンブレードの柄を握り直して、足元の微かな振動と、前方から迫る複数の足音を同時に数えながら、視線だけは一歩も引かずに犯罪者たちへ向け続ける。
真正面のハッチが弾けるように開いた瞬間、装甲の隙間から覗く発光器官が揃って光り、通路幅ぴったりの角度でビームが走った。
逃げるという選択肢が頭をかすめるより先に、俺の腕が勝手に動いて、刃が空気を裂く甲高い音と一緒に光線を斜めに断ち割り、散った熱が壁面に火花となって跳ねた。
怖くないわけじゃない、初めての蒸着で体の感覚はまだ整っていないし、視界の端には警告表示みたいなものが点滅している、それでも守る側に立つと決めた瞬間だけは、恐怖より先に体が前へ出る。
切り払った勢いを殺さずに踏み込み、俺は一番前の個体の胸板へ踵を叩き込み、狭い通路だからこそ逃げるスペースを奪うように蹴りで押し戻した。
「えっ、蹴るの」
背後から怜慈さんの声が飛んでくる、あの完成されたギャバンが、今の一撃に素でツッコミを入れてくるのが妙におかしくて、俺の口元が勝手に歪んだ。
「峰内なんて分からないのでっと」
言い訳みたいに吐き捨てながらも、俺は次の攻撃を受け止める準備を終えていて、犯罪者の腕部ブレードが振り下ろされるのに合わせてギャバリオンブレードを横に滑らせ、刃と刃が噛み合った瞬間の震えを肘で殺す。
距離が近すぎるからこそ、剣だけで片付けようとすると手数が足りない、そう判断した俺は柄で受けたまま相手の懐へ踏み込み、ヘルメットの顎下へ拳を叩き込んで、金属が歪む鈍い音を通路に響かせた。
「まぁ確かに。けれど、面白い後輩だ」
怜慈さんの声は笑っているのに冷静で、次の瞬間には彼の手元でエモルギアが光を帯び、狭い船内の陰影を一段濃くした。
怜慈さんがギャバリオントリガーへエモルギアを装填すると、機械の内部が起動する独特の間が走り、すぐに乾いたシステム音が船体の振動に重なって響く。
『ダルーイ』
気の抜けた一言とは裏腹に、放たれた弾丸は空気を裂く鋭い軌跡を描き、先頭の犯罪者の関節部へ吸い込まれるように刺さって、続けざまに二体、三体の動きを糸で縛るみたいに止めた。
狭い通路で敵が固まった瞬間、圧力の向きが一気に変わり、さっきまで俺たちを押し潰そうとしていた数が、逆に逃げ場のない弱点へ変わる。
「決めろ、後輩!」
「あぁ!」
俺は一歩下がるのではなく、決着のためにもう一歩だけ踏み込んで、ギャバリオンブレードの切っ先を下げ、身体の中心に熱を集めるように呼吸を整える。
『エモーショナル・バースト!』
音声が鳴った瞬間、体の内側から溢れた力がスーツ越しに脈打ち、心臓の鼓動が通路の壁にまで伝わるんじゃないかと思うほど濃くなった。
俺は構えを解いて、剣を振るうのではなく、自分の体を武器として使う選択に切り替え、止まった敵の一体目の腹へ拳を叩き込み、二体目の膝関節へ踵を落として崩し、三体目のこめかみへ肘を突き立てて意識を刈り取る。
狭い宇宙船の通路だからこそ、派手な必殺の光よりも、逃げられない距離で確実に落とす連打が正解で、殴るたびに金属が鳴り、蹴るたびに床が震え、敵の呼吸が途切れていくのが手応えとして残る。
最後の一体が崩れ落ちると同時に、通路の熱と火花の匂いが遅れて押し寄せ、俺はようやく息を吐きながら、倒れた犯罪者たちを見下ろして、勝ったという事実を胸の奥で噛み締めた。
怜慈さんが背後で小さく頷いた気配がして、その沈黙だけで「合格だ」と言われた気がして、俺はブレードの刃を下げたまま、次の戦いのために視線を前へ戻す。
次回の王は
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妖怪王
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機械王
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怪獣王
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幻想王