サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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宇宙な暴露 Case1

 外では風が電線を鳴らし、遠くを走る車の音がときおり窓越しに届く。

 リビングの照明は少しだけ落としてあって、テーブルの上には開きっぱなしの資料と、飲みかけのコップと、まだ片づけきれていない今日の痕跡が散らばっていた。

 平和な家の風景に見えるのに、頭の中だけはまるで落ち着いてくれない。

 

 オールマイトは、さっき自分の惑星へ戻っていった。

 今回の件に関する協力要請で一時的に地球へ来ていただけで、長期間の滞在はできない。

 だから、必要な情報を渡し、必要な戦力として動き、必要なところだけを押さえて、あの黒いスポーツカーと一緒に夜の向こうへ去っていった。

 あの人がいる間は、どれだけ面倒でも「まだ何とかなる」という感覚があった。

 けれど、いざ帰ってしまうと、残された問題の輪郭だけがやけにはっきり見えてくる。

 

 今回の一件。

 コカビエル。

 バルパー。

 エモンズ。

 そして、デス・ギャバン。

 問題は山ほどあるが、その中でも一番目の前にあるのは――宇宙人の存在が、地球側にばれる可能性だ。

 

 いや、もう“可能性”の段階ですらないのかもしれない。

 リアス先輩たちは、間違いなく何かを掴んだ。

 学園の校庭で、あれだけ堂々と戦って、正体も所属も何もかも隠しきれるはずがない。

 しかも相手はただの学生じゃない。

 悪魔、堕天使、教会関係者、聖剣。

 この星の裏側で動いている連中にとって、「説明のつかない未知」は放置できるものじゃない。

 

 ソファにもたれながら、俺は額を押さえる。

 頭が痛い。

 戦いの疲れもある。

 だけど、それ以上に“これからどうするか”を考える方が厄介だった。

 

「さて、どうするか」

 

 独り言みたいにこぼす。

 すると、テーブルの近くに寝そべっていたレオルドが、コーギーの姿のまま片耳だけをこちらへ向けた。

 

「どうするも何も、かなりヤバいだろう」

 

 言い方は雑だが、その通りだ。

 優しい慰めが欲しいわけじゃない。

 問題が問題のままそこにある以上、曖昧に濁す意味もない。

 

「だよなぁ……」

 

 俺は背もたれへ深く沈み込む。

 こういう時、宇宙刑事って肩書きは便利でもあるけど、同時に面倒の中心でもある。

 守る側に立つってことは、誰かに知られちゃいけないものまで背負うってことだ。

 それを改めて思い知らされる。

 

 キッチンの方では絶花が湯を沸かしていて、電気ケトルの低い音が家の静けさに混じっていた。

 彼女は俺が考え込んでいると、無理に口を挟まない。

 ただ、家の中の気配だけは普段通りに保ってくれる。

 それがどれだけありがたいか、こういう夜ほど分かる。

 

 ――ピンポーン。

 

 その時、不意にインターホンが鳴った。

 時間にしては少し遅い。

 絶花と俺がほぼ同時に顔を上げる。

 レオルドも耳を立てた。

 

「この時間に?」

 

 絶花が小さく呟く。

 俺はソファから立ち上がり、反射的に気配を探る。

 敵意はない。

 少なくとも、殺気みたいなものは感じない。

 だが、だからこそ逆に嫌な予感もする。

 俺の知り合いで、この時間に平気な顔で来るやつなんて、ろくなもんじゃない。

 

 玄関の方へ向かい、扉を開けた。

 次の瞬間、明るい声が飛び込んでくる。

 

「久し振り!太郎」

 

「んっ、雷?」

 

 そこに立っていたのは、見覚えのある顔だった。

 人懐っこい笑みと、けれど現場の人間らしい油断のなさを同時に持った、青い髪の少年。

 宇津美雷。

 宇宙警察機構の新米刑事で、サンダーライ。

 俺と同じく、まだ“若い側”の現場人員で、だからこそ妙に気が合うやつだ。

 

 雷は俺の顔を見るなり、少しだけ肩の力を抜いた。

 たぶん、連絡なしに来たことへの遠慮は一応あるんだろう。

 けれど、そういう遠慮を押してでも来なきゃいけない理由がある時の顔も、俺は知っている。

 

 背後から絶花がそっと顔を出す。

 知らない男が突然家に入ってきたのだから当然だ。

 雷はその視線に気づいて、あっ、という顔をした。

 

「えっと、太郎、この人は」

 

 絶花が俺を見る。

 説明しろ、という意味だ。

 まったくその通りで、俺は軽く頭を掻いた。

 

「まぁ、俺の同期みたいな宇宙警察のサンダーライこと宇津美 雷だ。けれど、なんでお前がここにいるんだ?」

 

 “同期みたいな”と言おうとして、疲れていたせいか変な言い回しになった。

 だが雷はそこに突っ込まず、家の中へ一歩だけ入ったところで表情を引き締める。

 さっきまでの軽い再会の空気が、一瞬で仕事のものへ変わる。

 

「実は、太郎に伝えなきゃいけない事があるんだ」

 

「何だ?」

 

 俺が問い返すと、雷は少しだけ息を吸った。

 こういう時のこいつは、わりと正直だ。

 顔にも、声にも、迷いが出る。

 けれど、だからこそ“隠してない”ことは伝わる。

 

 少し緊張した声で、雷は俺の方へ告げた。

 

「実は、少し先で行われる三大勢力会議にて、我々宇宙警察に関してを伝えることになったんだ」

 

「・・・マジかぁ」

 

 思わず、心の底から出た声だった。

 レオルドがテーブルの下で「うわぁ」という顔をしている。

 絶花は事情を完全に理解できていないはずなのに、それでも“面倒なことになった”という空気だけは掴んだらしく、静かにこちらを見ていた。

 

 三大勢力会議。

 悪魔、天使、堕天使。

 この星の裏側を支配している連中が、一つの場へ集まる会議。

 そこへ宇宙警察の存在を伝えることになる。

 つまり、“ばれそう”だった問題が、もう隠して済む段階を越えたということだ。

 

 俺はその場でしばらく動けなかった。

 頭の中では、今日まで起きたことが一気に繋がっていく。

 学園での戦闘。

 エモルギアという未知。

 デス・ギャバンの出現。

 そして、三大勢力会議。

 

 盤面が広がるどころじゃない。

 これまで“駒王の一件”として見ていたものが、一気にこの星全体の勢力図へ繋がってしまった。

 

 俺は玄関脇の壁へ軽く頭を預け、深く息を吐く。

 正直、面倒だ。

 いや、面倒なんて言葉で済む規模じゃない。

 けれど、逃げる選択肢が最初からないのもまた事実だった。

 

 守る側に立った時点で、いずれこういう話は来る。

 宇宙警察がこの星へ関わり続けるなら、どこかで向こうの事情とも繋がる。

 むしろ、今まで表に出なかった方が幸運だったのかもしれない。

 

「……で、どこまで決まってる」

 

 俺が低く聞くと、雷はすぐに答えた。

 やっぱりこいつも、ただ知らせに来ただけじゃない。

 もう次の段取りまで考えている顔だ。

 

 家の中に、さっきまでとは別の緊張が満ちていく。

 戦いの後の疲れはまだ残っている。

 なのに、次の局面はもう目の前だった。

 

 俺は目を閉じて、一瞬だけだけど気持ちを切り替える。

 学園での事件は終わった。

 でも、宇宙警察としての厄介事は、ここからが本番だ。

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
  • 幻想王
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