サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
三大勢力の会議室は、まさかの学校の会議室。
そこに驚きを隠せなかった。
悪魔。
天使。
堕天使。
この星の裏側を構成する三つの勢力が、一つの部屋に揃っている。
そこへ、俺はギャバンとして足を踏み入れた。
隣には、サンダーライの姿をした雷。
変身状態のまま会議室へ入るのは、挑発のためじゃない。
俺たちの力の正体を完全には隠しきれない以上、下手に素顔で出るより、最初から“こういう戦力”として見せる方がまだマシだと判断しただけだ。
それでも、部屋の空気が一瞬で固くなったのは分かる。
視線が集まる。
測る視線。
探る視線。
警戒と好奇心が入り混じった、ろくでもない視線だ。
その理由も分かっている。
俺たちからは、魔力が感じられない。
聖力も、邪気も、悪魔や天使や堕天使が知っている既存の気配もない。
それなのに、戦力として無視できない圧だけはある。
理解の外にある強さほど、不気味なものはない。
会議室の中央へ立った時、誰かが小さく息を呑む音がした。
探知系の感覚でこちらを測ったのだろう。
だが、空振りした。
その反応が、逆に場の緊張を深くする。
俺はその空気を真正面から受けながら、表情を変えなかった。
堂々としていること。
必要以上に頭を下げず、かといって無意味に喧嘩を売らないこと。
ここで求められているのは、そのバランスだ。
最初に口を開いたのは、こちらを観察していた側の一人だった。
声は低く、だがはっきりと疑念を含んでいる。
「・・・ギャバンだけかと思ったが、もう1人は以前のオールマイトではないようだが」
言葉の矛先は雷に向いている。
オールマイトの時より若い。
だが同じく、こちら側の“何か”を纏っている。
そう見えているのだろう。
雷はそこで一歩だけ前に出た。
こういう場面でもこいつは変に縮こまらない。
肩の力を抜きながら、でも場を軽くしすぎない程度の温度で返す。
「やぁ、僕は彼の同僚であるサンダーライ」
その名乗りに、会議室の空気がまた少し揺れる。
ギャバンが単独の例外ではなく、同僚を持つ存在。
つまり、背後に組織がある。
その可能性が明確になったからだ。
「同僚?それはどういう意味かな」
問いは静かだったが、中身は重い。
“同僚”という単語は、個人ではなく体系を意味する。
それを、この場の誰も聞き逃さない。
雷はその視線を受けながら、口元だけにわずかに笑みを浮かべた。
軽さはある。
だが誤魔化しではない。
「彼も名乗っていただろ、宇宙刑事だと」
その言葉が落ちた瞬間、空気がざわついた。
あからさまな騒ぎにはならない。
だが、抑えた息遣い、椅子に触れる指先、視線の流れ。
“宇宙刑事”という言葉が、この場の誰にとっても無視できない異物として刺さったのが分かる。
「宇宙刑事だと、まさかとは思いますが」
半ば信じていない声。
いや、信じたくないのかもしれない。
この星の勢力図の外に、さらに別の法と組織がある。
そういう話になるからだ。
「・・・宇宙刑事、君達はそう名乗ったがまさかと思うけど」
今度は別の側からの確認だった。
まさか。
まさかと思う。
その言い方には、否定を前提にした願望が混じっている。
俺はそこで口を挟まなかった。
この一手は雷に任せた方がいい。
俺が答えると、どうしても“ギャバン個人の宣言”として受け取られる。
だが雷が言えば、“組織側の人間が、軽くしかし断定的に認める”形になる。
その違いは大きい。
雷は場の緊張を理解した上で、あえて軽く言い切った。
「まぁそうだね、あなた達が悪魔、天使、堕天使と種族があるのならば、あえて名乗るとしたら、僕達は宇宙人だね」
沈黙。
短いのに、重い。
軽い口調で言ったはずなのに、その一言だけで会議室の空気が完全に変わった。
誰もすぐには返せない。
悪魔、天使、堕天使。
この場にいる誰もが、自分たちの種族名を当たり前のものとして扱っている。
その同じ文法で、雷は“宇宙人”と置いた。
比喩じゃない。
冗談でもない。
同じレベルの事実として。
俺はその沈黙の中で、部屋の空気がさらに研ぎ澄まされていくのを感じていた。
今この瞬間、俺たちは“正体不明の戦力”から“外宇宙由来の組織的存在”へと、扱いが変わった。
それは理解の一歩でもある。
同時に、警戒の一段上昇でもある。
会議室の奥の一人が、低く息を吐く。
その音には、感心も警戒も、少しだけ苛立ちも混じっていた。
当然だ。
この星の裏側を支えてきた三大勢力にとって、自分たちの理の外にある存在が堂々と現れ、しかも単独の異物ではなく“宇宙警察”という組織として存在するとなれば、平静でいられる方がおかしい。
だが、こちらも引くわけにはいかない。
エモルギア案件はもう、この星だけの問題じゃ済まないところまで来ている。
秘匿を優先している間に手遅れになるくらいなら、先に開示する。
それが今回の判断だ。
俺は装甲越しに息を整え、ゆっくりと視線を巡らせた。
警戒しているのは向こうだけじゃない。
こちらもまた、彼らを完全には信用していない。
この会議は友好の場というより、危機管理のための初接触だ。
礼儀はある。
だが、いつでも刃に変わる距離感の上に成り立っている。
そんな中で、雷はあくまで自然に立っていた。
それが逆に場を揺らす。
この状況で軽く名乗れるということは、こちらが想像する以上に、この“宇宙警察”という組織は自分たちの立ち位置に確信を持っている、そう見えるからだ。
俺は内心で苦く笑う。
実際のところ、確信なんて綺麗なものばかりじゃない。
手探りもある。
危うさもある。
だが、それでもここで曖昧にしてはいけないことだけは確かだった。
雷の言葉が会議室に沈み切ったあと、ようやく次の空気が動き始める。
疑問。
警戒。
そして、これから出てくるだろう無数の確認。
俺はその全部を受ける覚悟で、ギャバリオントリガーへ触れずに両手を下ろしたまま立ち続けた。
この星の裏側と、宇宙の外側。
その境界線が、今この部屋で初めて明確に引かれようとしている。
次回の王は
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妖怪王
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機械王
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怪獣王
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幻想王