サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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宇宙な暴露 Case8

 旧魔王派の魔法使いたちを制圧し終えた直後、夜気の質が変わった。

 さっきまで漂っていたのは、人の手で組まれた術式の匂いだった。焦げた魔力、砕けた詠唱、暴走寸前でねじ切られた魔法陣の残滓。そういう、まだ人間の意図が読める範囲の異常だ。

 だが、今感じているのはそれとは違う。もっと大きく、もっと古く、もっと“生き物”として不快な圧だった。

 

 足元の地面が、ゆっくりと呼吸を始める。

 校庭の土が、まるで内側から脈打っているみたいに上下し、ひび割れの隙間から黒い光が滲み出した。

 夜の空気が重く沈み、耳の奥で低い振動音が鳴り続ける。

 何かが、下から来る。

 

「……まだあるのかよ」

 

 思わずそう呟いた瞬間、地面が弾けた。

 

 爆発ではない。

 破砕と隆起が同時に起きたような衝撃だった。

 校庭の中心が押し上げられ、土塊と石片が噴き上がり、その中心から黒い塊がゆっくりと姿を現す。

 最初に見えたのは爪。

 次に鱗。

 そして、裂けた口のように見える頭部。

 

 巨大な魔獣。

 

 人型ですらない。

 獣とも竜ともつかない異形の輪郭が、月明かりを背にして立ち上がる。

 背中からは歪んだ棘が何本も突き出し、四肢は異様に長く、ひとたび振るわれれば校舎の壁くらい簡単に引き裂けそうだった。

 首元から胸にかけては、まるで魔法陣そのものが肉と一体化したような紋様が脈打ち、そこから黒紫の煙が吹き出している。

 召喚というより、災害の具現化だった。

 

 会議室の奥から気配がざわつく。

 悪魔側、天使側、堕天使側。

 誰も声を荒げないが、その視線だけで十分に分かる。

 これは、通常戦力で片づける相手じゃない。

 その判断が全員の中で一致したのだ。

 

「旧魔王派の連中、ここまでやるか」

 

 誰かが低く吐き捨てる。

 俺はギャバリオンブレードを下げずに、魔獣の全高と四肢の長さ、口腔内の光、歩幅の癖をざっと見る。

 一歩で校庭を削れる。

 次の一撃で会議室ごと持っていかれてもおかしくない。

 この場には三大勢力の代表がいる。

 潰されたら被害はこの場だけで済まない。

 会談そのものが破壊される。

 

 魔獣が頭を持ち上げた。

 顎の奥に黒い光が集まり、唸るような低音が膨張する。

 撃ってくる。

 しかも、狙いは俺じゃない。

 後ろ。

 会議室だ。

 

「下がれ!」

 

 叫ぶと同時に、俺は一歩前へ出た。

 ギャバリオントリガーを構えれば迎撃そのものはできる。

 だが、できたとしても一撃限りだ。

 この規模を何度も受け続けるのは無理がある。

 ここで必要なのは、目の前の攻撃を止めることじゃない。

 被害そのものを別のスケールへ引き上げて処理することだ。

 

 つまり――巨大戦。

 

 判断に、迷いはなかった。

 俺はトリガーの構えを変え、呼吸を深く落とす。

 ギャバリオン粒子が装甲の下で脈動し、キズナエモルギアが心拍と同じ速さで共鳴を始める。

 自分の感情を無理に静める必要はない。

 焦りも緊張もある。

 だが、それごと使う。

 守るべきものが明確な時ほど、ギャバンシステムは迷わない。

 

「来い――コスモギャバリオン!」

 

 その声が夜空へ放たれた瞬間、空気の層が変わる。

 上空の雲が一度だけ不自然に裂け、会議室と校庭の上へ巨大な影が差した。

 最初に聞こえたのは、低い推進音だった。

 次に、空間を震わせるほどの機関音。

 そして最後に、月光を切り裂いて現れた鋼の船体。

 

 コスモギャバリオン。

 

 宇宙船であり、武装であり、戦場の盤面そのものを塗り替えるための支援戦力。

 その機体は、ただ大きいというだけで場を支配した。

 鈍重ではない。

 鋭く、整っていて、兵器として洗練されている。

 艦体の装甲面に走る光のラインが夜闇の中で脈打ち、機首の両脇から伸びるユニットが静かに展開していく。

 出現の仕方が違う。

 魔獣が“この場を壊す異物”なら、コスモギャバリオンは“この場を守るために整えられた理性”だった。

 

 その姿を見た瞬間、会議室の空気が明らかに変わった。

 今度のざわめきは、恐れと驚きが半々だった。

 

「……これが」

 

「ギャバンの、戦力……?」

 

「まだ隠していたのか……!」

 

 誰かが言葉を失い、誰かが小さく声を漏らす。

 魔力の探知では測れない。

 だが、規模だけで理解できる。

 

 この地球の巨大災害級案件に対して、即応できる戦力を持っている。

 それが、一瞬で伝わった。

 

 俺はその反応を横目で確認しつつ、視線を前へ戻す。

 魔獣はコスモギャバリオンの出現に苛立ったのか、咆哮と共に頭を振り上げた。

 黒い衝撃波が地面を抉りながら広がり、校庭の土と瓦礫を巻き上げる。

 

「さてっと、やるか、コスモギャバリオン!強襲モードに移行する!」

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
  • 幻想王
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