サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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英雄 Case8

「第6試合、出場者を盤面へ」

 

審判の声が響く。だが、それだけで盤面の空気が変わった。これまで五試合、兵士が駆け抜け、忍者が斬り込み、ロボットが歌い、正義が叫び、仮面の騎士が二刀を振るった。そのすべての痕跡が、黒い盤面に刻まれている。雷光の焦げ跡、影の裂け目、音波の余韻、銀の拳痕、二刀の剣筋。それらを踏み越えて、一人の男が歩いてくる。

 

曹操だ。

 

黒髪の青年は、制服の上に漢服風の衣を羽織り、右手に一振りの槍を携えていた。夕暮れのような色をした槍だ。黄昏の聖槍。神をも貫くとされる最強の神滅具。それを持っているというだけで、盤面の空気が重くなる。

 

「ギャバン・キングか」

 

曹操が盤面の中央で立ち止まり、俺を見た。

 

「君が直に出るのか」

 

「ああ。いい加減、見てるだけってのも飽きてきたんでな」

 

「君はこれまで、兵士と騎士を使い分けてきた。忍者、ロボット、正義の味方、仮面の剣士。どれも命令で動く駒ではなかったな」

 

「当たり前だ。命令で動くだけなら、とっくに負けてる」

 

「そうだ。君の駒は、自分の意思で戦い、自分の判断で勝ってきた」

 

曹操が槍を構える。切っ先が、かすかに夕暮れ色に光った。

 

「これは王国の駒の在り方を問う問いでもある。王が駒を支配するのか、駒が王を支えるのか。君の王国は、どちらだ」

 

「どちらでもねえよ」

 

俺は右手を上げ、ギャバリオン・トリガーを引き抜く。

 

「俺たちはただ、やるべきことをやってるだけだ」

 

「では、その在り方を、この槍で確かめさせてもらおう」

 

「試合開始!」

 

審判の声が響いた瞬間、曹操の槍が動いた。

 

速い。一歩で間合いを詰め、鋭い突きが俺の喉元を狙う。俺は半歩下がり、黒金レールを展開。槍の軌道を横から弾き、ずらす。金属音が火花を散らし、盤面に響いた。

 

「なるほど、単純な防御ではないな」

 

曹操が槍を引き、即座に二撃目を繰り出す。今度は横薙ぎ。俺はブースターで後退し、距離を取る。

 

「そっちこそ、一発で仕留める気かよ」

 

ギャバリオン・トリガーを構え、牽制射撃。光弾が曹操の足元を狙う。曹操は槍を回転させ、光弾を弾き飛ばした。無駄じゃねえ。これで、あいつの防御の癖が見えた。

 

二人が再び向かい合う。間合いはまだ遠い。だが、互いの手札は測り終えた。ここからが本番だ。

 

盤面には、まだ五試合分の痕跡が残っている。雷光の焦げ跡、影の裂け目、音波の余韻、銀の拳痕、二刀の剣筋。それらが、これから始まる決闘を見守っているようだった。

 

曹操の槍が、俺の動きを読んでくる。

 

黒金レールを展開する先を、正確に狙ってくるんだ。俺が右へ出ようとすれば、そこに聖槍の切っ先が待っている。左へ逃げれば、分裂した光の槍が進路を塞ぐ。

 

「君の移動手段は、あの黒いレールだな」

 

曹操が静かに言う。声は落ち着いている。叫びもしなければ、力を誇示することもない。ただ、事実を確認するだけだ。

 

「レールの展開方向、速度、角度。五試合分の記録があれば、ある程度の予測はできる」

 

「そりゃご苦労なこった」

 

俺は口では軽く返しながら、内心で舌打ちした。観察眼が鋭すぎる。さすがは英雄派の首魁だ。データを集めて、対策を練って、確実に逃げ道を潰しにきてやがる。

 

聖槍が突き出される。金色の穂先が夕暮れ色に輝き、空気を裂く。俺は黒金レールを斜め後方へ展開し、ブースターで退避。だが、着地点にはすでに光の槍が三本、空中から降り注いでいた。

 

「くっ……!」

 

ギャバリオン・トリガーを連射。光弾が二本を相殺し、残り一本を黒金レールで弾き飛ばす。だが、その隙に曹操の本体が間合いを詰めていた。

 

「甘いな」

 

聖槍の横薙ぎが、俺の胴を狙う。黒金レールを即座に展開するが、レールが槍の圧力に耐えきれずに火花を散らす。衝撃で体が弾き飛ばされ、盤面を滑った。

 

「唯我さん!」

 

ロスヴァイセの声が遠くに聞こえる。

 

俺はすぐに立ち上がり、肩を回す。ダメージは浅い。だが、足元の黒金レールがかすかに震えていた。連続展開の負荷が、じわじわと蓄積している。

 

観測席が沈黙している。これまでの五試合とは空気が違う。誰もが、この最終戦の緊張に息を潛めていた。

 

「君のレールは、確かに速い」

 

曹操が槍を構え直す。背後に、新たな光の槍が七本、浮かび上がった。

 

「だが、速さだけでは俺は捉えられない。レールの展開先を潰せば、君の逃げ道は一つずつ消えていく」

 

「逃げ道がなくなったら、どうすると思う」

 

俺はギャバリオン・トリガーをホルスターに戻し、代わりに拳を握る。

 

「正面から行くだけだろ」

 

「いい答えだ」

 

曹操が笑う。光の槍が一斉に放たれた。七本の金色が、弧を描いて俺に迫る。黒金レールを正面へ展開。逃げずに、前に出る。槍の雨をレールで弾き、拳を握りしめて曹操の懐へ突っ込んだ。

 

曹操の槍が俺の肩口をかすめ、銀の装甲に火花が走った。だが俺は引かない。黒金レールを斜めに展開し、聖槍の連撃を受け流しながら、一歩、また一歩と間合いを詰める。

 

「なあ、曹操」

 

俺は拳を握り直しながら、静かに問うた。

 

「お前が目指す英雄ってのは、なんだ」

 

曹操の槍が止まった。ほんの一瞬だけ、切っ先が宙に浮く。盤面に落ちた槍の光が、割れた地面を金色に染めていた。戦闘の熱が、かすかに静まる。

 

「俺の目指す英雄か」

 

曹操が口元を歪める。笑っているのか、自嘲しているのか、判別はつかない。

 

「決まっている。曹操孟徳だ」

 

聖槍が再び動く。今度は鋭い突きだ。俺は黒金レールで軌道をずらし、半歩横へ。

 

「乱世を読み、人を束ね、時代を動かした英雄。俺の祖先であり、俺が超えるべき頂点。俺はあの男の名を継ぎ、あの男の遺志を継ぐ者だ」

 

「なるほどな」

 

俺はギャバリオン・トリガーを構えず、拳を固めたままだ。

 

「つまりお前の英雄ってのは、自分じゃねえんだな」

 

「なに?」

 

「曹操孟徳ってのは、とっくに死んだ過去の男だ。お前はその名前に、自分を重ねてるだけだろ」

 

曹操の目が細められた。聖槍の穂先がかすかに震え、金色の光が強まる。怒りじゃない。俺の言葉を、頭のどこかで噛み砕いているんだ。

 

「英雄とは、外側にあるものではない」

 

曹操が槍を構え直す。

 

「時代が英雄を呼び、英雄が時代を動かす。俺はその役割を果たすために、この名を選んだ」

 

「そうかよ」

 

俺は足元を見た。雷光の焦げ跡、影の裂け目、音波の余韻、銀の拳痕、二刀の剣筋。仲間たちが残した痕跡が、黒い盤面に刻まれている。ドロロが斬り込み、ヘビメタガンダムが歌い、ブラボーが叫び、絶花が二刀を振るった。俺が命令したからじゃない。あいつらが、自分の意思で勝ち取った跡だ。

 

「俺には、あんまり関係ねえ話だな」

 

「ほう」

 

「英雄がなんだ、時代がなんだ。俺が知ってるのは、そこに立ってるお前って男だけだ。曹操孟徳の名前を借りて、槍を振るってる人間。それが、今ここにいるお前だろ」

 

俺の胸の奥で、エモルギアがかすかに熱を帯び始めた。まだ点火はしない。だが、意志が固まりつつあるのを感じる。

 

「君は」

 

曹操が槍を引き、間合いを取り直す。

 

「俺の英雄を否定するのか」

 

「否定はしねえよ。ただ、名前を背負うのと、名前の中に閉じこもるのは違うだろ」

 

俺は右拳を突き出し、構えた。

 

「お前自身は、どこにいるんだ」

 

曹操は答えない。代わりに、聖槍の輝きが一段と強まった。問答は終わりだ。ここからはもう、言葉じゃなく刃と拳で語り合うしかない。

 

曹操の槍が俺の肩口をかすめ、銀の装甲に火花が走った。だが俺は引かない。黒金レールを斜めに展開し、聖槍の連撃を受け流しながら、一歩、また一歩と間合いを詰める。

 

「なあ、曹操」

 

俺は拳を握り直しながら、静かに問うた。

 

「お前が目指す英雄ってのは、なんだ」

 

曹操の槍が止まった。ほんの一瞬だけ、切っ先が宙に浮く。盤面に落ちた槍の光が、割れた地面を金色に染めていた。戦闘の熱が、かすかに静まる。

 

「俺の目指す英雄か」

 

曹操が口元を歪める。笑っているのか、自嘲しているのか、判別はつかない。

 

「決まっている。曹操孟徳だ」

 

聖槍が再び動く。今度は鋭い突きだ。俺は黒金レールで軌道をずらし、半歩横へ。

 

「乱世を読み、人を束ね、時代を動かした英雄。俺の祖先であり、俺が超えるべき頂点。俺はあの男の名を継ぎ、あの男の遺志を継ぐ者だ」

 

「なるほどな」

 

俺はギャバリオン・トリガーを構えず、拳を固めたままだ。

 

「つまりお前の英雄ってのは、自分じゃねえんだな」

 

「なに?」

 

「曹操孟徳ってのは、とっくに死んだ過去の男だ。お前はその名前に、自分を重ねてるだけだろ」

 

曹操の目が細められた。聖槍の穂先がかすかに震え、金色の光が強まる。怒りじゃない。俺の言葉を、頭のどこかで噛み砕いているんだ。

 

「英雄とは、外側にあるものではない」

 

曹操が槍を構え直す。

 

「時代が英雄を呼び、英雄が時代を動かす。俺はその役割を果たすために、この名を選んだ」

 

「そうかよ」

 

俺は足元を見た。雷光の焦げ跡、影の裂け目、音波の余韻、銀の拳痕、二刀の剣筋。仲間たちが残した痕跡が、黒い盤面に刻まれている。ドロロが斬り込み、ヘビメタガンダムが歌い、ブラボーが叫び、絶花が二刀を振るった。俺が命令したからじゃない。あいつらが、自分の意思で勝ち取った跡だ。

 

「俺には、あんまり関係ねえ話だな」

 

「ほう」

 

「英雄がなんだ、時代がなんだ。俺が知ってるのは、そこに立ってるお前って男だけだ。曹操孟徳の名前を借りて、槍を振るってる人間。それが、今ここにいるお前だろ」

 

俺の胸の奥で、エモルギアがかすかに熱を帯び始めた。まだ点火はしない。だが、意志が固まりつつあるのを感じる。

 

「君は」

 

曹操が槍を引き、間合いを取り直す。

 

「俺の英雄を否定するのか」

 

「否定はしねえよ。ただ、名前を背負うのと、名前の中に閉じこもるのは違うだろ」

 

俺は右拳を突き出し、構えた。

 

「お前自身は、どこにいるんだ」

 

曹操は答えない。代わりに、聖槍の輝きが一段と強まった。問答は終わりだ。ここからはもう、言葉じゃなく刃と拳で語り合うしかない。

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
  • 幻想王
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