サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
汽笛が止み、黒金のレールが次元の狹間に消えていく。俺はエクスプレスギャバリオンの窓から外を見た。赤く染まった空が広がっている。弩城怜慈が戦っている世界だ。
「到着まであと何分だ」
「五分ってところです」
ロスヴァイセが端末を見ながら答える。五分。長いな。怜慈が押されてるって話だ。五分も待ってられる状況かどうか。
「太郎」
絶花が窓の外を指さした。レールの先、次元の狹間に何かが浮かんでいる。人型だ。二つ。俺はギャバリオン・トリガーを手に取り、拡大表示をかける。
「侵入者か」
「いや、待て」
あのシルエットに見覚えがある。銀灰色の髪、黄色のサングラス、黒と紫と橙を組み合わせた衣装。隣には、金髪に近い茶髪のボブヘア、赤いゴーグルを首に提げた若い女。
「あいつは……」
エクスプレスが減速する。二人の侵入者が、レールの上に立っていた。銀髪の男が、ゆっくりと手を上げる。
「久しいな、キング」
その声。聞き覚えがある。いや、忘れられるわけがねえ。
「その声……まさか、ライヤか!」
「そうだ。私だ」
風波駆無。ギャバン・ライヤ。かつて別の次元で共闘した、もう一人の宇宙刑事。黄色いサングラスの奥の目は、あの時と変わらず冷静で、掴みどころがねえ。
俺はエクスプレスの扉を開け、レールの上に降り立った。駆無が一歩前に出る。隣の女――妹の初音だな――は、俺のことをじろじろと観察している。
「何してんだ、こんなとこで」
「決まっている。君の相棒を借りに来た」
「相棒?」
初音が前に出る。手には何かの分析装置らしき端末が握られていた。
「キズナエモルギア。それを使わせてもらうから」
「はあ? なんでお前がキズナのことを」
「弩城怜慈の血液、解析したんだよね~。A0073のギャバンたちが次元を超えて共闘できたのって、このエモルギアのおかげでしょ」
俺は目を細める。弩城怜慈の血液を解析しただと? いつの間に。
「君たちがこれから行く世界、通常の人間じゃ適応できない」
駆無が淡々と説明を始める。
「別次元の地球に降りれば、身体中にノイズが走り、気絶、最悪死に至る。私と初音はもともと次元超越者だから問題ないが、君の仲間は違う」
「そこでキズナエモルギアってわけか」
「そういうこと」
初音がにこりと笑う。小悪魔的な笑みだ。こいつ、絶対に研究対象としても見てやがるな。
「で、具体的にはどうするんだ」
「私の術を使う。“エモルギア渡り”ってやつ」
初音が両手を広げる。指先から、かすかに青い光が漏れ始めた。
「キズナエモルギアの力を借りて、君の仲間全員に一時的な次元適応体質を付与する。これで別次元の地球でも自由に動けるようになるよ」
「ただし、コスモギャバリオン内部や宇宙空間ではもともと問題は発生しない」
駆無が補足する。
「問題は地上に降りた場合だ。そこをカバーする」
俺は後ろを振り返る。エクスプレスの窓から、小猫、黒歌、絶花、ロスヴァイセ、ブラボー、ドロロがこちらを見ていた。全員、地上戦になる可能性が高い。なら、やるしかねえ。
「分かった。頼む」
「腕出して」
初音が俺の右腕を掴む。いきなりだな、おい。
「ちょっと痛いかも~」
「なんで注射器持ってんだ」
「分析して忍法に使うから」
「聞き捨てならねえぞ」
「チクッとしますよ~」
「人の話を聞け」
駆無がため息をついた。
「初音、遊んでないでさっさとやれ」
「はーい」
初音が俺の腕を離し、代わりにエクスプレス全体へ向けて術を展開する。青い光が広がり、車両全体を包み込んだ。キズナエモルギアの力が、仲間たち一人ひとりに流れ込んでいく。拒否反応はない。むしろ、温かい光だ。
「これでよし、と」
初音が手を下ろす。青い光が消え、エクスプレスが静かに振動を始めた。
「これで君の仲間は、どの次元の地球でも自由に動ける。ただし、効果は今回の任務限りだ。また必要になったら、その時は」
「採血させろってか」
「話が早くて助かる~」
こいつ、やっぱり研究者の目をしてやがる。
駆無が一歩下がり、レールの端へ移動する。
「私はここで待つ。初音は同行させろ」
「え、私も行くの?」
「君の技術が必要だ。インフィニティの世界は機械仕掛けの敵が多いと聞く」
「あー、そういうこと。了解~」
初音があっさりと頷き、エクスプレスに乗り込む。駆無は俺に背を向け、レールの上に立ったまま動かない。
「お前は来ないのか」
「私は別の任務がある。それに、キング」
駆無が振り返らずに言う。
「君がいれば十分だ。私が出る幕はない」
「相変わらず掴みどころのねえ野郎だな」
「よく言われる」
駆無の口元が、かすかに緩んだ気がした。
俺はエクスプレスに戻り、操縦桿を握る。黒金のレールが再び前方へ伸び始めた。赤い空が、少しずつ近づいてくる。
「行くぞ。弩城怜慈を助ける」
汽笛が鳴り、エクスプレスが加速する。風波初音が後ろの席で何やら装置をいじり始めていた。
「ねえねえ、キングって呼ばれてるんだ? 私もそう呼んでいい?」
「好きにしろ」
「やった~。じゃあキング、到着までにあと何人か採血していい?」
「駄目に決まってんだろ」
「ちぇ~」
こいつ、兄貴と全然キャラが違うな。いや、どっちも大概か。
赤い空の下、弩城怜慈の信号が少しずつ強くなっていく。まだ生きてる。まだ間に合う。俺はギャバリオン・トリガーを握りしめ、前方を見据えた。
次回の王は
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妖怪王
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機械王
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怪獣王
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幻想王