サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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ギャバン集結 case2

黒い雫が、地下街の天井から滴り落ちていた。

 

ネガだまりだ。黒く濁った粘液状の塊が天井一面を覆い、そこから無数のエモンズが生まれ落ちている。人型の影、獣型の影、異形の影。それぞれが赤い目を光らせ、地下街の通路を埋め尽くしていた。

 

その真ん中を、銅色の光が飛ぶ。

 

「ギャバン・アーマイゼ……!」

 

俺はギャバリオン・トリガーを構え、走りながら黒い群れを撃ち抜いた。

 

小さなアリの身体を銅色のメタルアーマーが覆い、背中にはウイング型のギャバリオンブレードが展開されている。複眼のバイザーが敵を捉え、触角が周囲の気配を探る。あの巨体の群れの中で、豆粒のような小さな光が、縦横無尽に飛び回っていた。

 

一匹のエモンズが、巨大な腕を振り下ろす。アーマイゼはそれをひらりとかわし、逆に腕の関節へブレードを叩き込んだ。的確に弱点を突く。体格差をまるで感じさせない戦い方だ。

 

「そっちの刑事」

 

アーマイゼの声が聞こえた。低く、ダンディーで、落ち着いた声だ。

 

「私を知っているのか」

 

「知ってるさ。お前は有本未空朗。Σ3302を守る銀河連邦警察の昆虫捜査官だ」

 

俺は黒いエモンズを三体まとめて撃ち抜きながら答える。

 

「初対面のはずだが、君は私を知っているようだな」

 

「投影でな。お前の力を借りたことがある」

 

「……アリ得ない話だ」

 

アーマイゼがブレードを振るい、エモンズの群れを斬り裂く。その声には警戒が滲んでいた。無理もねえ。初対面の相手がいきなり自分の正体を知ってるんだ。誰だって怪しむ。

 

「だが、今は信じよう」

 

アーマイゼが俺の隣に降り立つ。豆粒のような小さな体だが、その存在感は決して小さくない。

 

「君の動きは、現場の刑事のものだ。それで十分だ」

 

「話が早くて助かる」

 

俺は天井を見上げた。ネガだまりが、さらに広がろうとしている。あれを止めねえと、エモンズは無限に湧き続ける。

 

「ネガだまりの中に、核があるはずだ。破壊できるか」

 

「体格差など、捜査の障害にはならん」

 

アーマイゼの触角がかすかに震える。内部構造を探っているんだ。

 

「だが、周囲のエモンズの密度が高すぎる。単独での潛入は難しい」

 

「なら、俺が囮になる」

 

俺はギャバリオン・トリガーを連射し、周囲のエモンズを次々に撃ち倒す。

 

「お前はネガだまりの中へ。核を破壊しろ」

 

「了解した」

 

アーマイゼのウイングが展開する。銅色の翅が高速で羽ばたき、小さな体が宙に浮かんだ。

 

「君は、名は」

 

「唯我太郎。ギャバン・キングだ」

 

「キングか。覚えておこう」

 

アーマイゼが飛び立つ。俺はトリガーを乱射し、エモンズの注意をすべて自分に向けた。黒い群れが一斉にこちらへ押し寄せる。

 

「任せたまえ」

 

アーマイゼの声が、遠くから聞こえた。小さな銅色の光が、ネガだまりの中へ消えていく。俺は口元を歪め、トリガーを構え直した。

 

「さてと、こっちはこっちで暴れるか」

 

内部結節点が破壊された瞬間、ネガだまりが咆哮を上げた。

 

アーマイゼが銅色の光となって内部から飛び出す。複眼のバイザーがかすかに点滅し、触角が後方の異変を探っていた。

 

「キング、ネガだまりが残存エモンズを吸収している」

 

「見えてる」

 

地下街の中央で、黒い粘液が渦を巻いていた。無数のエモンズがその渦に引き寄せられ、一体、また一体と呑み込まれていく。人型も獣型も異形も、すべてが黒い太陽の中へ重なり合い、その質量を増していく。天井まで届かなかった巨体が、今や地下街全体を覆い尽くそうとしていた。

 

「あれを貫くには、一撃の火力が足りん」

 

アーマイゼの声は冷静だが、翼刃を握る手には力が込もっている。巨大化したネガだまりは、もはや内部からの破壊を受け付けないほど密度を増していた。

 

「なら、足りるだけの力を出せばいい」

 

俺はギャバリオン・トリガーを構えた。左手がエモルギアを三枚、ホルスターから抜き取る。

 

「投影する。甲虫系のヒーローを三体」

 

「甲虫系?」

 

「お前と同じ、蟲の力を借りたヒーローだ」

 

俺は最初のエモルギアをトリガーに装填した。

 

『ブルービート』

 

青い光が迸る。ブルービートの投影。青い甲虫の装甲が展開され、光の粒子が俺の背後に巨大なカブトムシの幻影を描き出す。

 

『ビーファイターカブト』

 

二枚目。ビーファイターカブトの投影。黄金の巨大な兜虫の角が幻影の中で突き上げられる。

 

『カブタック』

 

三枚目。カブタックの投影。金色の光が三つ目の幻影を生み出し、機械化された甲虫の装甲が輝いた。

 

青、赤、金。三色の光が地下の暗闇を切り裂く。

 

「アーマイゼ、お前の翼刃を四つ目にしろ」

 

「……君は」

 

アーマイゼの複眼が、三つの光を見つめていた。その声には驚きが滲んでいる。

 

「私と似て異なる力を、これほどとはな」

 

「だが」

 

翼刃が展開する。

 

「その照準は、私が信じたものだ。外さん」

 

銅色の翼刃が、三色の光の中心に重なった。青、赤、金、銅。四つの甲虫光が、螺旋を描きながら一つに収束していく。地下街全体が羽音に包まれた。蟲の翅が空気を震わせ、暗闇がまるで星空のように輝き始める。

 

「行くぞ」

 

俺は引き金に指をかけた。

 

『インセクト・ユニオン・バースト!』

 

四色の光が螺旋を描いて放たれ、ネガだまりの中心へと突き刺さった。黒い太陽が内側から裂け、吸収されたエモンズの影が次々と光に溶けていく。地下街を覆っていた闇が晴れ、崩れた天井からかすかな明かりが差し込んだ。

 

残光が消える。黒い太陽はもうない。

 

アーマイゼが俺の肩の高さまで降りてきた。豆粒のような小さな体だが、その翼刃はまだかすかに輝いている。

 

「インセクト・ユニオンか。アリそうでなかった名だ」

 

「そうか」

 

「ああ。甲虫の力を束ねるなど、考えたこともなかった。君は面白い刑事だな、キング」

 

俺はギャバリオン・トリガーを下ろしながら、地下街の先を見据えた。ネガだまりは消えたが、赤い空はまだ健在だ。

 

「面白いだけじゃ、任務は終わらねえ。行くぞ」

 

「承知した」

 

小さな銅色の光が、俺の先を飛んでいく。その後を追いながら、俺は次の投影に備えてエモルギアを確認した。まだまだ、戦いは続く。

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
  • 幻想王
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