サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
「まず他人の首輪を外してから言え!!」
俺はギャバリオンブレードを振り抜いた。赤き刃が暗闇を灼き、リゼヴィムの胸元へと吸い込まれていく――はずだった。
だが、読者諸君もご承知の通り、この世にはいかに鋭き刃も通さぬ盾というものが存在するのである。
「いやあ、痛そうだねえ」
リゼヴィムは笑みを崩さぬまま、その手を軽く掲げた。まるで邪魔な虫でも払うかのような仕草であった。瞬間、俺のブレードとリゼヴィムの手との間で、空気が凍りついたかのような静止が生じる。刃は届かない。いや、届いているのに、何も斬れていないのだ。
「なんだと?」
「だから言ったでしょ? 神器頼みの攻撃は、私には届かないんだなぁ」
その言葉と共に、リゼヴィムの全身から黒い波動が放たれた。それは単なる魔力の放出ではない。まさに概念そのものを塗り替えるような、絶対的な拒絶の波であった。
「セイクリッド・ギア・キャンセラー……!」
俺は呟いた。だが、彼が無効化したのは神器だけではなかった。俺の体を構成する力、投影を維持する源――王国の駒から供給されるエネルギーが、まるでろうそくの炎を吹き消すかのように、あるいは砂城が波に洗われるかのように、急速に消え去っていくのである。
「なっ……!」
ギャバン・キングの装甲が、パーツごとに剥がれ落ちていくのが見えた。投影していたヒーローたちの残留思念が、悲鳴を上げて霧散する。足元から力が抜け、俺は膝をついた。さながら、城壁を失い旗を引きずりおろされた城主のような心境であった。
「おやおや、もう終わりかい? 宇宙刑事の王君」
リゼヴィムがつまらなそうに首を傾げる。
「悪魔の駒もどきなんてねえ、私のような本物の悪魔の前では、ただのお飾りに過ぎないんだよ。君たちが必死に集めた駒も、私の手の中ではただの木片さ」
「くそっ……!」
俺は立ち上がろうとした。だが、王国の駒が無効化された今、投影を維持することすら叶わない。盤面はリゼヴィムの手の中にある。俺は自分の力だけでは、この圧倒的な悪意を前に無力なただの人間でしかなかった。
「さあ、新秩序のための生贄になっておくれ。君のその苦悶の顔、存分に楽しませてもらうよ」
リゼヴィムが手を掲げる。巨大な魔力球が形成され、俺に向けて放たれようとしていた。これはまずい。回避不能。防御不能。まさに死が目前に迫った瞬間であった。
だが、読者諸君。物語というものは、往々にして絶望の淵においてこそ、予期せぬ光を見せるものである。
空間が裂けた――いや、輝いたのである。
ドォォォォォン!!
鼓膜を震わせる轟音と共に、リゼヴィムの魔力球が弾け飛んだ。いや、弾け飛んだのではない。撃ち抜かれたのだ。
無数の光線が、俺を守る盾となって空を切り裂いたのである。青く、赤く、金色に輝くレーザーの雨が、リゼヴィムへと容赦なく降り注ぐ。
「なっ……!?」
リゼヴィムが驚愕の声を上げる。彼ですら予期せぬ介入であったらしい。
俺は顔を上げた。眩い光の中に、その発射元を見た。
(……誰だ?)
だが、今はそれを確かめる余裕はない。この光に救われたことだけは疑いないのである。
眩い光の残像が、まだ網膜に焼きついている。
俺は膝をついたまま、その光景を呆然と見上げていた。いや、呆然としていたのはほんの一瞬だ。すぐに理解した。このレーザーの撃ち方、このタイミング、そして何より、この場に現れるだけの理由と力を持つ者たち。
「遅くなったな、キング」
聞き慣れた声が、降り注ぐ光の向こうから響いた。
「だが、遅すぎるということもあるまい」
もう一つの声。重く、落ち着いた響き。
「道に迷ってしまってな」
三つ目の声。気品があり、どこか気怠げで。
「全く、皆さんが迷ったからですよ」
四つ目の声。若く、それでいて確かな芯がある。
光が収束し、四人のシルエットが浮かび上がる。リゼヴィムに向けて放たれたレーザーは、彼の魔力球を完全に消滅させ、その巨体を数歩後退させていた。
深紅の装甲。光子エネルギーを全身に循環させ、無限の輝きを放つ戦士。ギャバン・インフィニティ。弩城怜慈。
銀色の装甲。武士のような佇まいで、刀を携えた静かなる守護者。ギャバン・ブシドー。
金色の装甲に、他のメンバーとは異なる女性的な容姿であるギャバン・ルミナス。
紫色の装甲。軽薄そうな笑みを浮かべながらも、その目は決して笑っていない策略家。ギャバン・ライヤ。風波駆無。
そして、銅色の小さな光が、四人の肩のあたりにふわりと浮かんでいた。ギャバン・アーマイゼ。有本未空朗。戻ってきたのか。
四人は、俺の横に並び立った。いや、四人と一匹か。とにかく、頼もしい限りの援軍である。
「お前ら……」
俺はようやく口を開いた。
「どうしてここに」
「決まっているだろう」
怜慈がギャバリオン・トリガーを構え直す。その声には、かつて俺と共闘した時と変わらぬ決意が宿っていた。
「君がピンチだからだ。それ以外に理由がいるか?」
「水臭いぞ、キング」
駆無が紫の装甲をきらめかせながら、軽く肩をすくめる。
「私とて宇宙刑事だ。同僚の窮地を見過ごせるわけがない」
「私も、北東の反応は囮だと気づいてな」
アーマイゼの低い声が通信に響く。
「アリ得ない話だが、君を一人にはしておけん」
ブシドーは何も言わず、ただ静かに刀を構えた。その無言のうちに、すべての意志が込められている。
「悪いな、助かった」
俺は立ち上がった。まだ膝が笑っている。だが、もう倒れているわけにはいかない。
「礼は後だ。まずはあのふざけた魔王をどうにかするぞ」
「同感だ」
怜慈が一歩前に出る。インフィニティの光子エネルギーが、周囲の闇を押し返すように輝きを増した。
リゼヴィムが、初めてその顔から笑みを消した。
「神器は確かに強いかもしれない。けれど、今はそれ以上に心強い味方がいるからな」
次回の王は
-
妖怪王
-
機械王
-
怪獣王
-
幻想王