サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
俺が空を見上げたその時だった。
「各員、緊急通信だ」
ブシドーの落ち着いた声が、沈黙を破った。彼の装甲に内蔵された通信機が、かすかな警報音を発している。
「この世界の銀河連邦警察本部からだ」
「つなげ」
俺は短く言った。ブシドーが頷き、通信が拡声される。
『こちら本部、緊急警報を発令する。現在、本星系外縁部にて、未確認の大艦隊が次元の裂け目より出現。数は三百を超え、現在も増加中。進行方向は本星。推定到着時間は――』
「三百……!」
ルミナスの声が震えた。いや、震えではない。これは武者震いだ。
『繰り返す。全ギャバンに緊急出動を要請する。これは、星系規模の危機である』
通信が切れた。俺たち五人は、しばし無言で空を見上げていた。会場の崩れた天井の向こう、赤黒い空のさらに先――宇宙の闇に、無数の光点が蠢いているのが見える。あれが、敵艦隊だ。
「リゼヴィムの野郎、時間稼ぎか」
俺は吐き捨てるように言った。
「だろうな。奴の撤退は、我々をここに留めるための罠だ」
駆無が紫の装甲を再展開しながら、冷静に分析する。
「だが、乗らないわけにはいかん。あの艦隊が本星に到達すれば、地上の被害など比ではない」
「同感だ」
アーマイゼの銅色の装甲が輝きを増す。
「私の世界でも、艦隊戦は幾度も経験している。任せたまえ」
「さて、それじゃ、皆、行くぜ!」
怜慈さんの言葉を合図に、俺達は各々のコスモギャバリオンに乗り込む。
俺は跳躍し、コックピットへと飛び込んだ。シートに身体を固定し、操縦桿を握る。エモルギアが共鳴し、機体全体が意志を持つかのように脈動を始める。
『キング、聞こえるか』
通信に怜慈の声が響いた。
『艦隊戦の指揮は誰が執る』
「お前だ、インフィニティ。お前が一番、艦隊戦の経験がある」
『了解。では、全機に指示を出す。まずは横陣を組み、敵艦隊の進行を遅滞させる。突破口を見つけ次第、一点集中で敵旗艦を叩く』
「了解」
『承知した』
『任せたまえ』
『了解~』
『アリそうな作戦だ』
五機のコスモギャバリオンが、大気圏を突破する。眼下に広がる惑星が、みるみる小さくなっていく。代わりに、前方には無数の光点――敵艦隊の威容が、漆黒の宇宙に浮かび上がっていた。
三百を超える艦影。異形の船体、不気味に脈動する生体装甲、そして艦隊の中心には、まるで黒い太陽のような巨大な旗艦が鎮座している。
「こいつはまた……」
俺は思わず呟いた。
「面倒な数だな」
『面倒だからこそ、我々の出番だろう』
「なるほどな」
俺は口元を歪めた。
「じゃあ、想定外ついでに、とことん暴れてやるか」
『全機、戦闘用意!』
怜慈の号令が響く。
『これより、対未確認艦隊迎撃戦を開始する! !』
俺はコックピットの中で、思わず声を失っていた。
宇宙空間に展開する敵艦隊の数が、先ほど通信で聞いた三百などという生易しいものではなかったからだ。ざっと見積もっても千は下らない。異形の船体がびっしりと星域を埋め尽くし、その中心には黒い太陽のような巨大旗艦が鎮座している。まるで、宇宙そのものが腐敗していくかのような光景だった。
「こいつは……予想以上だな」
俺が呟いたその時だった。
『キング、後方を見ろ』
駆無の声が通信に響く。俺は振り返り、そして再び息を呑んだ。
次元の裂け目が、あちこちで開いている。そこから現れるのは、見慣れたシルエット。黒と銀灰色の機体、白い主翼、そして警察を象徴する紋章。コスモギャバリオンだ。それも、一機や二機ではない。
次々と通信が入る。平行世界のギャバン達が、それぞれの世界のコスモギャバリオンを率いて集結しつつあるのだ。銀色、金色、銅色、そして紫色。様々な装甲色のギャバン達が、宇宙空間に整列していく。
「これだけの数が……」
俺は操縦桿を握り直した。敵艦隊に対抗するように、こちらの戦力も膨れ上がっている。だが、それでもまだ数では劣勢だ。ならば、質で勝負するしかない。
『強襲フォームへの移行を要請する。これだけの戦力差、通常形態では持ちこたえられん』
「了解」
俺は通信回線を開き、本部へ叫んだ。
「こちらギャバン・キング! 全機、強襲フォームへの移行認可を要請する!」
返事は、すぐには来なかった。
『……要請を受理した。しかし、認可はまだ下りていない』
「何だと?」
俺は思わず声を荒げた。
「ふざけるな! 目の前に千を超える敵艦隊がいるんだぞ! 認可がなけりゃ、こっちは丸腰同然だ!」
無数のコスモギャバリオンが、宇宙空間に横陣を組んでいく。その光景は壮観だったが、同時に無力感も募る。俺たちは今、縛られた状態で戦わされているのだ。そしてその縛りをかけているのは、味方の本部だった。
次回の王は
-
妖怪王
-
機械王
-
怪獣王
-
幻想王