サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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キング case3

俺は瓦礫から這い出し、絶花の隣に立った。胸の痛みはまだ引かない。肋骨が何本かイカれたかもしれない。だが、立っていられないほどのダメージじゃない。まだ戦える。

 

「絶花、大丈夫か」

 

「大丈夫だけどっ」

 

絶花が右手を見つめている。そこには、天聖の刀身が現れていなかった。

 

「天聖が……出せないっ」

 

俺は歯噛みした。そういうことか。リゼヴィムの神器無効化は、この部屋全体を覆っている。俺の蒸着だけじゃない。絶花の天聖も、神器の一種として封じられているのだ。

 

「おやおや、お嬢さんの武器も出てこないみたいだねぇ」

 

リゼヴィムがわざとらしく首を傾げる。その顔には、これ以上ないほどの愉悦が浮かんでいた。

 

「せっかくの二刀流が台無しだ。でもまあ、おじいちゃんとしては、君たちが苦しむ顔を見られるなら、それだけで十分楽しいんだけどね」

 

「くそっ……」

 

俺はギャバリオン・トリガーを握りしめる。蒸着はできない。投影も封じられている。絶花の天聖も使えない。ならば、残された手段はただ一つ。この生身の身体と、手にした武器だけで戦うしかない。

 

「絶花、天聖がなくても戦えるか」

 

「もちろん」

 

「だったら」

 

その言葉と共に、俺は瞬時にギャバリオン・ブレードを取り出して、絶花に投げ渡す。

 

「宮本武蔵の子孫として、刀一本あれば十分です」

 

「いい心がけだ。なら、俺もやるしかねえな」

 

俺はギャバリオン・トリガーを構え直す。蒸着はできなくても、これは武器として使える。光弾は封じられているかもしれないが、打撃武器としては十分だ。

 

リゼヴィムが笑いながら両手を広げた。

 

「さあ、もっと足掻いて見せてよ。その方が壊し甲斐がある」

 

「言ってろ」

 

俺は絶花と視線を交わした。言葉はいらない。何年も一緒に過ごしてきた幼馴染だ。互いの考えていることくらい、目を見れば分かる。俺が右から、絶花が左から。挟撃する。タイミングは俺が作る。絶花がそれに合わせる。

 

「行くぜ!」

 

俺は床を蹴り、右方向からリゼヴィムへと突っ込んだ。ギャバリオン・トリガーを振り上げ、その側頭部を狙って打ち下ろす。

 

「おっと」

 

リゼヴィムが軽く身を捻り、俺の一撃をかわす。だが、それでいい。俺の役目は囮だ。

 

「はあっ!」

 

絶花が左から斬り込んだ。鋭い踏み込み。無駄のない太刀筋。天聖がなくとも、彼女の剣は本物だ。刀身がリゼヴィムの左腕を浅く斬り裂いた。

 

「おや」

 

リゼヴィムが一瞬だけ眉を上げる。その隙を逃さず、俺はさらに踏み込んだ。今度は足を狙い、トリガーのグリップで膝を打つ。

 

「効かないねぇ」

 

リゼヴィムが黒い魔力を爆発させた。衝撃波が俺と絶花を同時に吹き飛ばす。俺は床を転がりながら、なんとか体勢を立て直した。絶花もまた、壁を蹴って衝撃を逃れ、着地する。

 

「大丈夫か、絶花」

 

「ええ。でも、このままじゃ……」

 

分かっている。俺たちの攻撃はかすり傷程度にしかならない。それに対して、リゼヴィムの一撃はこちらの戦闘力を確実に削っていく。ジリ貧だ。

 

「それで終わりかい? まだまだ遊び足りないよ」

 

リゼヴィムがゆっくりと歩み寄る。その背後で、黒い魔力が無数の槍の形を取り始めた。次は本気で潰しにくるつもりだ。

 

俺は絶花の前に立ち、ギャバリオン・トリガーを構え直した。

 

「絶花、まだ立てるか」

 

「もちろん、太郎こそ、無理しないで!!」

 

「無理はお前の専売特許だろ」

 

俺は口元を歪め、リゼヴィムを見据える。

 

「さて、どうしたもんかな」

 

蒸着はできない。天聖も使えない。だが、まだ諦めるわけにはいかない。俺たちには、まだ守るべきものがある。そして、この窮地を切り抜ける方法も、必ずあるはずだ。

 

俺はギャバリオン・トリガーを連射する。光弾がリゼヴィムの周囲を埋め尽くし、絶花がその隙に斬り込む。刃が空気を裂き、リゼヴィムの防御をかいくぐって肉薄する。俺たちは、互いに言葉を交わさなくても呼吸を合わせられる。長年の幼馴染として培ってきた、阿吽の呼吸だ。

 

だが、それでも届かない。

 

「いいねえ、その連携。息が合ってるじゃないか」

 

リゼヴィムは笑いながら、右手で俺の射撃を弾き、左手で絶花の斬撃を受け流す。まるで子供の遊びに付き合う大人のような余裕だった。

 

「でもね、それだけじゃ私には届かないんだなぁ」

 

黒い魔力が膨れ上がり、俺と絶花を同時に弾き飛ばす。俺は床を転がりながら、すぐに体勢を立て直した。絶花もまた、壁を蹴って衝撃を逃れている。

 

「太郎、このままじゃ……!」

 

「分かってる」

 

俺は歯を食いしばった。攻撃は当たっているはずなのに、まるで効いていない。いや、効いていないんじゃない。リゼヴィムはこちらの攻撃をすべて見切った上で、最小限の動きで対処しているのだ。こいつ、俺たち二人を同時に相手にしながら、まだ本気を出していない。

 

「どうしたどうした! さっきまでの勢いはどこに行ったんだい? おじいちゃん、ちょっと退屈してきちゃったよ」

 

リゼヴィムが両手を広げ、大仰な仕草で俺たちを挑発する。その背後で、黒い魔力が無数の槍を形成し始めた。今度は数を増やして、俺たちの退路を完全に塞ぐつもりらしい。

 

「絶花、下がるなよ」

 

「下がらないよ!太郎こそ」

 

俺たちは背中合わせに立ち、互いの死角を補い合う。蒸着はできない。投影も封じられている。絶花の天聖も使えない。だが、まだ手はある。リゼヴィムの神器無効化は、神器そのものと神器由来の力にしか効果がない。ならば、神器ではない力で攻めるしかない。

 

「考えろ……何かあるはずだ……」

 

俺はギャバリオン・トリガーを握りしめながら、必死に思考を巡らせた。リゼヴィムの能力、この部屋の特性、そして俺たちに残された手段。それらを組み合わせて、突破口を見つけ出す。

 

「ねえ、キング君。そんなに考え込んじゃって、楽しいかい?」

 

リゼヴィムが、まるで俺の思考を見透かしたかのように笑った。

 

「考えれば考えるほど、絶望は深まるだけだよ。君たちに残された道は、私に屈服するか、それとも――」

 

「うるせえ」

 

俺は短く言い放ち、ギャバリオン・トリガーを構え直した。

 

「俺はまだ諦めてねえ。絶花も、俺の仲間たちも、まだ戦ってる。なら、俺が諦める理由は一つもねえ」

 

「太郎……!」

 

絶花の声に、わずかな熱が宿る。俺は彼女の背中に言った。

 

「絶花、お前は俺の相棒だ。なら、信じろ。俺たちにはまだ、打つ手がある」

 

俺は、リゼヴィムの神器無効化の範囲外から攻撃する方法を考え始める。必ずあるはずだ。この悪魔の想定外を突く方法が。

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
  • 幻想王
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