サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
「ほな、これからどうするんや? おたくらには、まだ戦いが続くんやろ?」
八坂の問いかけに、俺は答えようとした。
だがその時だ。
ドタドタドタッ!!
廊下の向こうから、慌ただしい足音が響いた。
さっきまでの静寂が、ガラス細工のように粉々に砕け散るような騒々しさだ。
紙障子が、バン! と乱暴に開かれる。
「八坂様!!」
現れたのは、白粉だ。
あのおっとりとした雰囲気はどこへやら。
彼女は今、血相を変えていた。
琥珀色の瞳がギョロリと見開かれ、白い着物は乱れ、額には脂汗が滲んでいる。
まるで、天敵に出くわした小動物のような、パニック状態だ。
「なんや白粉。廊下を走ることはないやろ」
八坂が眉をひそめる。
だが白粉は、土下座する勢いで畳に頭を擦り付けた。
「そ、そんな悠長なこと言ってる場合じゃないんです!! 京都市街に…奴らが現れました!!」
「奴ら?」
俺の背筋に冷たいものが走った。
白粉の声が震えているからだ。
ただの震えじゃない。
恐怖で喉の筋肉が痙攣し、音が歪んでいる。
「奴ら…ですか?」
俺は嫌な予感を抱えつつ尋ねた。
白粉の顔色は土気色で唇は震え止まらない。
まるで深淵を覗き込みすぎて網膜を焼かれた人間のようだ。
「はい…! 京都市街各地に張られていた古い霊的封印が何者かに破壊されました! そして…かつて錦田小十郎景竜様が斬り伏せた怪異どもが…蘇ったのです!!」
「景竜様の…!?」
八坂が息を呑む。
その金色の瞳が驚愕に見開かれ九本の尾が一斉に硬直した。
錦田小十郎景竜。
かつてこの京都の怪異を鎮めた伝説の剣豪。
その男が封じた怪異ともなればどれほどのモノか想像に難くない。
「…行くぞ」
俺は即座に言った。
「無論や」八坂も頷く。「案内する。裏から出るよって早い」
白粉が先導し俺たちは裏京都を駆け抜ける。
石畳の道を走るたびに足裏から伝わる感触は冷たく湿っている。
まるで何千年も蓄積された苔と血と涙の汚泥を踏みしめているようだ。
裏京都から表の京都へ戻るとそこは別世界だった。
夜の京都。
古い寺社の影が闇に溶け込み石畳の道が月明かりに白く浮かび上がる。
瓦屋根の連なり。遠くに霞む山並み。
現代都市の中に古都の面影が残る美しい景色だ。
だが今はその美しさが腐臭を放っている。
「あれは…!」
絶花が指差す。
東山の方角。夜空に浮かぶ五重塔のすぐ横に「異物」があった。
まず目についたのは巨大な刀だ。
月光を反射して鈍く光る大太刀がゆっくりと振り下ろされる。
その刀身はただの金属じゃない。
無数の人間の怨嗟の声が血管のようにへばりつき刀の軌道に沿って黒い霧を撒き散らしている。
ズンッ!!
振り下ろされた刀が地面を叩くと石畳が悲鳴を上げ数十メートルにわたって亀裂が走った。
そしてその刀を持つ主。
「宿那鬼だ」
それと共に、ゼロの知識が俺に流れ込む。
巨大な鬼だ。
だがおかしい。
前後二つの顔を持っているのだ。
胸板の前と背中にそれぞれ独立した鬼の顔がへばりついている。
前の顔は怒りに歪み後ろの顔は嘲笑を浮かべている。
まるで一つの肉体に二つの魂が無理やり押し込められたようなグロテスクな造形だ。
筋肉が脈動するたびに前後の顔がギチギチと音を立てて牽制し合っているのが分かる。
前の口からは灼熱の炎が漏れ後ろの口からは真空の嵐が吐き出されている。
「あいつが宿那鬼や」八坂が悔しそうに呟く。「景竜様に斬り伏せられ怨念だけで繋ぎ止められた二面の鬼神や」
だがそれだけじゃない。
宿那鬼の足元にはもう一つ影がある。
戀鬼だ。
男女の怨念が一つになった怨霊鬼。
上半身は男下半身は女という歪な形状でその手には怨霊刀と呼ぶべき黒い刃が握られている。
その刀からはドロドロとした赤黒い体液が滴り落ち石畳をジュワジュワと溶かしている。
男女二人の顔が溶け合ったような頭部からは絶えず悲鳴と嬌声が交錯する不協和音が響き渡っていた。
そして最後の一匹。
ガンQだ。
空中に浮かぶ巨大な眼球。
魔頭鬼十郎へ連なる怪異だと思われるそれはただの目玉じゃない。
視神経がまるで腸のように長く伸びて周囲の建物に絡みついているのだ。
ピクピクと蠢く視神経が瓦屋根を引き剥がし電線を引きちぎる。
巨大な瞳孔がギョロリと動き俺たちを「見た」瞬間全身の細胞が凍りつくような悪寒が走った。
「三体同時かよ…!」
俺は舌打ちした。
スケールがデカすぎる。
しかもこいつらはただの怪獣じゃない歴史と怨念でコーティングされたバケモノだ。
『やるしかねぇな相棒』
ゼロの声が脳内に響く。
「ああ王たる者目の前の災厄から逃げるわけにはいかねぇ!」
俺はウルトライズアイを天にかざした。
「変身!!」
光が俺を包み込む。
魂が肉体を離れ巨大な光の容器へと注ぎ込まれる感覚。
次の瞬間俺は夜の京都に立っていた。
ズシンッ!
足裏から伝わる石畳の感触。
「シュワァッ!!」
俺は構えた。
目の前には三体の怪異。
宿那鬼がゆっくりと大太刀を構え直した。
前後の顔が同時に俺を見据える。
次回の王は
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妖怪王
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機械王
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怪獣王
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幻想王