サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

794 / 794
共鳴する力 Part3

「ほな、これからどうするんや? おたくらには、まだ戦いが続くんやろ?」

 

八坂の問いかけに、俺は答えようとした。

だがその時だ。

 

ドタドタドタッ!!

 

廊下の向こうから、慌ただしい足音が響いた。

さっきまでの静寂が、ガラス細工のように粉々に砕け散るような騒々しさだ。

紙障子が、バン! と乱暴に開かれる。

 

「八坂様!!」

 

現れたのは、白粉だ。

あのおっとりとした雰囲気はどこへやら。

彼女は今、血相を変えていた。

琥珀色の瞳がギョロリと見開かれ、白い着物は乱れ、額には脂汗が滲んでいる。

まるで、天敵に出くわした小動物のような、パニック状態だ。

 

「なんや白粉。廊下を走ることはないやろ」

 

八坂が眉をひそめる。

だが白粉は、土下座する勢いで畳に頭を擦り付けた。

 

「そ、そんな悠長なこと言ってる場合じゃないんです!! 京都市街に…奴らが現れました!!」

 

「奴ら?」

 

俺の背筋に冷たいものが走った。

白粉の声が震えているからだ。

ただの震えじゃない。

恐怖で喉の筋肉が痙攣し、音が歪んでいる。

 

「奴ら…ですか?」

 

俺は嫌な予感を抱えつつ尋ねた。

白粉の顔色は土気色で唇は震え止まらない。

まるで深淵を覗き込みすぎて網膜を焼かれた人間のようだ。

 

「はい…! 京都市街各地に張られていた古い霊的封印が何者かに破壊されました! そして…かつて錦田小十郎景竜様が斬り伏せた怪異どもが…蘇ったのです!!」

 

「景竜様の…!?」

 

八坂が息を呑む。

その金色の瞳が驚愕に見開かれ九本の尾が一斉に硬直した。

錦田小十郎景竜。

かつてこの京都の怪異を鎮めた伝説の剣豪。

その男が封じた怪異ともなればどれほどのモノか想像に難くない。

 

「…行くぞ」

 

俺は即座に言った。

 

「無論や」八坂も頷く。「案内する。裏から出るよって早い」

 

白粉が先導し俺たちは裏京都を駆け抜ける。

石畳の道を走るたびに足裏から伝わる感触は冷たく湿っている。

まるで何千年も蓄積された苔と血と涙の汚泥を踏みしめているようだ。

 

裏京都から表の京都へ戻るとそこは別世界だった。

夜の京都。

古い寺社の影が闇に溶け込み石畳の道が月明かりに白く浮かび上がる。

瓦屋根の連なり。遠くに霞む山並み。

現代都市の中に古都の面影が残る美しい景色だ。

だが今はその美しさが腐臭を放っている。

 

「あれは…!」

 

絶花が指差す。

東山の方角。夜空に浮かぶ五重塔のすぐ横に「異物」があった。

 

まず目についたのは巨大な刀だ。

月光を反射して鈍く光る大太刀がゆっくりと振り下ろされる。

その刀身はただの金属じゃない。

無数の人間の怨嗟の声が血管のようにへばりつき刀の軌道に沿って黒い霧を撒き散らしている。

ズンッ!!

振り下ろされた刀が地面を叩くと石畳が悲鳴を上げ数十メートルにわたって亀裂が走った。

 

そしてその刀を持つ主。

「宿那鬼だ」

 

それと共に、ゼロの知識が俺に流れ込む。

巨大な鬼だ。

だがおかしい。

前後二つの顔を持っているのだ。

胸板の前と背中にそれぞれ独立した鬼の顔がへばりついている。

前の顔は怒りに歪み後ろの顔は嘲笑を浮かべている。

まるで一つの肉体に二つの魂が無理やり押し込められたようなグロテスクな造形だ。

筋肉が脈動するたびに前後の顔がギチギチと音を立てて牽制し合っているのが分かる。

前の口からは灼熱の炎が漏れ後ろの口からは真空の嵐が吐き出されている。

 

「あいつが宿那鬼や」八坂が悔しそうに呟く。「景竜様に斬り伏せられ怨念だけで繋ぎ止められた二面の鬼神や」

 

だがそれだけじゃない。

宿那鬼の足元にはもう一つ影がある。

戀鬼だ。

男女の怨念が一つになった怨霊鬼。

上半身は男下半身は女という歪な形状でその手には怨霊刀と呼ぶべき黒い刃が握られている。

その刀からはドロドロとした赤黒い体液が滴り落ち石畳をジュワジュワと溶かしている。

男女二人の顔が溶け合ったような頭部からは絶えず悲鳴と嬌声が交錯する不協和音が響き渡っていた。

 

そして最後の一匹。

ガンQだ。

空中に浮かぶ巨大な眼球。

魔頭鬼十郎へ連なる怪異だと思われるそれはただの目玉じゃない。

視神経がまるで腸のように長く伸びて周囲の建物に絡みついているのだ。

ピクピクと蠢く視神経が瓦屋根を引き剥がし電線を引きちぎる。

巨大な瞳孔がギョロリと動き俺たちを「見た」瞬間全身の細胞が凍りつくような悪寒が走った。

 

「三体同時かよ…!」

 

俺は舌打ちした。

スケールがデカすぎる。

しかもこいつらはただの怪獣じゃない歴史と怨念でコーティングされたバケモノだ。

 

『やるしかねぇな相棒』

ゼロの声が脳内に響く。

 

「ああ王たる者目の前の災厄から逃げるわけにはいかねぇ!」

 

俺はウルトライズアイを天にかざした。

 

「変身!!」

 

光が俺を包み込む。

魂が肉体を離れ巨大な光の容器へと注ぎ込まれる感覚。

次の瞬間俺は夜の京都に立っていた。

 

ズシンッ!

足裏から伝わる石畳の感触。

 

「シュワァッ!!」

 

俺は構えた。

目の前には三体の怪異。

宿那鬼がゆっくりと大太刀を構え直した。

前後の顔が同時に俺を見据える。

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
  • 幻想王
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(必須:5文字~500文字)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

インフィニット・ストラトス ~迷い込んだイレギュラー~(作者:S-MIST)(原作:インフィニット・ストラトス)

 自宅で遊んでいたら停電。気がついたら何故か篠ノ之束博士の秘密研究室という訳の分からない状況に放り込まれるオリ主。▼ しかも強化人間という素敵仕様。▼ そんな人間がISの世界で色々と苦労(?)をしていくようなお話です。▼ ▼ (現実×ACFA)→インフィニット・ストラトスという他の作者様の何番煎じか分からないような代物ですが、アニメに触発されて書いてしまいま…


総合評価:36265/評価:8.15/連載:270話/更新日時:2026年08月13日(木) 01:23 小説情報

ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド(作者:ガチャガチャクツワムシ)(原作:ポケットモンスター)

サトシと同期の5人目の新人トレーナーとして主人公が旅に出て成長していく物語。▼オリジナルキャラが多めに出る上、原作キャラの強化もしようと考えています。▼生成AI使用して作成してします。


総合評価:169/評価:7.33/連載:133話/更新日時:2026年08月12日(水) 00:40 小説情報

止まった針は時の終わりに未来を見る(作者:ドレットノータス)(原作:ハイスクールD×D)

駒王町の片隅で小さな時計店を営む少女、天童ミライ。▼自分が何者なのかも分からない彼女が持っているのは、よりにもよって**「最低最悪の魔王」**と呼ばれた力だった。▼勇者に憧れながら、魔王の力を恐れて生きてきたミライ。▼そんな彼女の日常は、友人・兵藤一誠が悪魔の世界へ足を踏み入れたことをきっかけに、大きく動き始める。▼悪魔、天使、堕天使、神器。▼時を越えて受け…


総合評価:293/評価:7.36/連載:32話/更新日時:2026年08月11日(火) 12:00 小説情報

ハイスクールEvolution(作者:アイリエッタ・ゼロス)(原作:ハイスクールD×D)

彼は生きる。ただ自由に、自分がやりたいように▼


総合評価:1507/評価:5.85/連載:50話/更新日時:2024年03月07日(木) 03:00 小説情報

赤龍帝に憑依転生した者(作者:自堕落無力)(原作:ハイスクールD×D)

 この物語は『ハイスクールD×D』の主人公、兵藤一誠に憑依する形で『ハイスクールD×D』の世界へと転生した男の話である。▼ ※Pixivでも投稿しています。


総合評価:2574/評価:7/連載:120話/更新日時:2026年08月08日(土) 16:12 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>