サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
「シュワァッ!!」
俺は構えた。両手に握ったゼロスラッガーが、月光を浴びて鋭く輝く。
目の前には、かつて伝説の剣豪が封じた三体の怪異。
だが俺にはゼロがいる。
この二本の刃がある限り、退ける道理はない!
「来いよ、鬼共! 王の御前だ、礼儀をわきまえろ!!」
宿那鬼が動いた。
「グオオォォン!!」
前の顔が咆哮し灼熱の炎を撒き散らしながら大太刀を振り上げる。
重い。
あれはただの鉄塊じゃない。何百年分もの怨念が凝縮された質量兵器だ。
だが遅い!
俺は地を蹴り懐へ飛び込む。
ゼロスラッガーが交差する。
ギィンッ!!
火花が散る。大太刀の腹を滑らせ、その軌道をいなす。
剣術には自信があったわけじゃないがゼロの身体はまるで水のように刀の上を流れていく。
二刀流だ。
右のスラッガーで刀を弾き上げ、左のスラッガーで鬼の腹を薙ぎ払う。
「どうだ!」
ザシュッ!
見事な一撃が決まった。だが宿那鬼は後ろの顔で笑っている。
『生意気な小僧だ』
背中の口が喋ったかと思うと強烈な突風が俺を吹き飛ばそうとする。
「ぐっ…! だが甘い!」
俺は風を切り裂くようにスラッガーを振り回し強引に足を踏ん張った。
互角だ。いやこちらが押している。
正面からの剣戟なら負ける気はしない!
『やるじゃねぇか相棒! だが油断するな!』
ゼロの警告が脳裏をよぎった次の瞬間だ。
キンッ!!
宿那鬼の刀を受け流した直後背後から殺気が奔った。
「しまっ…!」
戀鬼だ。
いつの間にか間合いに踏み込んでいた。
怨霊刀が俺の首を狙って旋回する。
俺はとっさに左のスラッガーで受ける構えをとった。
ガギンッ!
だが刃は触れない。
スラッガーの刃が戀鬼の刀をすり抜けたのだ。
「えっ!?」
戀鬼の身体がドロリと溶けた。
まるで水彩画に水を垂らしたかのように実体が暧昧になる。
霊体化だ!
すり抜けた怨霊刀が俺の肩を深々と切り裂く。
「ぐあぁッ!!」
焼けるような痛みが走る。物理的な切断じゃない。魂を直接削られるような冷たい痛みだ。
俺は体勢を崩し後退する。
だがこれぞ奴らの狙いだった。
ピクリ。
上空でガンQの巨大な瞳孔が収縮した。
視神経がビクビクと脈動し、その奥で極彩色のエネルギーが充填されていく。
回避不能エリアへの誘導だ。
ドォン!!
怪光線が放たれる。
「うおぉっ!!」
俺は無理やり身体を捻り回避するが直撃の衝撃波が背中を焼く。
ズシンッ!
バランスを崩した俺に、立て直した宿那鬼が大太刀を叩きつけてくる。
さらに戀鬼が霊体のまま背後に回り込み怨霊刀を突き出す。
三方同時攻撃だ!
「クソッタレがぁ!!」
防ぐ暇もない。
ドガァァン!!
宿那鬼の刀が俺の腹を薙ぎ払い、戀鬼の刃が背中を抉り、ガンQの光線が肩を焼く。
「うおぉぉッ!!」
俺は慣性を殺せずそのまま五重塔の近くにある石畳へと叩きつけられた。
ズドォン!!
石畳が粉々に砕け瓦礫が舞い上がる。
「ぐっ…はぁ…はぁ…」
身体が重い。
だがゼロは弱くない。
俺たちが吹き飛ばされたのは相棒が弱いからじゃない。
敵がズルいんだ。
剣技、霊体化、遠距離支援。
三体それぞれの性質が最悪の相性で連携している。
これじゃあ「王手」をかける前に駒を消耗させられる。
「起きろ太郎!寝てる暇はねぇぞ!」
「わかってる…!」
俺は瓦礫を払いのけ再び立ち上がった。
「ぐっ…はぁ…はぁ…」
身体が重い。
まるで全身の関節に硫黄の砂利が詰め込まれたようだ。
息をするたびに肺がヒューヒューと鳴り、鉄の味が口いっぱいに広がる。
目の前の三体は、まるで一つの巨大な消化器官のように連携している。
宿那鬼が肉を斬り裂き、戀鬼が骨をすり抜け、ガンQが残滓を焼き尽くす。
対個体の戦闘なら負ける気はない。
だが、これは「戦闘」じゃない。
俺という有機物を、効率よく栄養分へと分解するための流水作業だ。
絶望的か?
いや、まだだ。
まだ膝はついていない。
『太郎』
脳内に響くゼロの声。
いつもの軽口ではない。
雷鳴のような、あるいは親父が愚息を叱り飛ばすような、厳しい響きだ。
『お前、このまま負けるつもりか?』
「な…んだと?」
俺は血反吐を吐き捨てるように呻いた。
「バカ言うな…! 俺は王になる男だ! 負けるつもりなんて、あるわけないだろうが!」
『なら、なぜだ?』
ゼロは容赦なく問うてくる。
『なぜ、そこまで言い切れる? お前はただの高校生だ。身体能力は普通だ。俺と一体化していなければ、あのオロチにすら踏み潰されていた存在だ。なのに、なぜ目の前の理不尽に屈しないと言い切れる?』
なぜだ、だと?
笑わせる。
そんなの、決まっているだろうが。
俺の脳裏にフラッシュバックしたのは、さっきまでの日常だ。
駄菓子屋でうまい棒を齧り、遅刻した絶花に文句を言い、天聖の変態発言にツッコミを入れる。
あの退屈で、くだらなくて、だからこそ何より尊い時間。
そして、俺の背中に隠れていた絶花の冷たい手の感触。
俺が守らなかったら、誰が守るんだ?
俺が王にならなかったら、誰があいつらの居場所を作るんだ?
「決まってるだろ…!」
俺は吠えた。
喉の奥から血飛沫が飛ぶ。
「俺の後ろには、守るべき民がいる! 絶花がいる! この街に生きる人々がいる! 俺は王になる! 自分の国を作り、その全てを守り抜く男になるんだ! だから負けられない! 例え身体がボロボロになっても、魂が砕け散っても、最後の一撃で勝利を掴む! それが、王の覚悟だ!!」
カラータイマーが激しく点滅する。
警告音が早鐘のように鳴り響く。
だが、俺の意思はそれよりも速く、熱い。
身体の芯が沸騰するような感覚。
ゼロ、聞こえているか?
これが、俺の答えだ!
『上等だ』
ゼロの声が、弾んだ。
苦悶の色が消え、戦士の歓喜が宿っている。
『その覚悟、見せてもらおうか。相棒』
俺の右腕が熱い。
ウルトライズブレスレットが、共鳴するように激しく脈打っている。
そこから伸びる光の粒子が、俺の全身を包み込んでいく。
『やるぞ、太郎。ウルトライズアイを使う』
「ああ! やろうぜ、ゼロ!」
俺は右手を掲げた。
ブレスレットからウルトライズアイが外れ、俺の掌に飛び込んでくる。
冷たい金属の感触。
だがその奥から伝わってくるのは、恒星のような灼熱の意志。
『新しい力を引き出す。お前の覚悟に応えてみせる!』
次回の王は
-
妖怪王
-
機械王
-
怪獣王
-
幻想王