サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
「さあ第2ラウンドだ鬼共! 王の拳で存分に可愛がってやるぜ!!」
俺は吠えた。
その瞬間だった。
――ドクンッ
心臓が跳ねた。
いや心臓じゃない。もっと深いところだ。
俺の魂の核に埋め込まれた「王の証」が、唐突に脈打ち始めたのだ。
王国の駒。
俺が持つべき神器。
まだ完全には使いこなせていない、王の証。
それが今、遥か地上の一点に向かって激しく共鳴している。
「なんで、こんな時に…っ!?」
ドクンッ! ドクンッ!
王国の駒が熱い。灼熱の鉄板を素手で握っているような激痛が胸の奥から突き上げる。
そしてその熱は、応じるように地上で光っている。
「あれは…絶花…!?」
俺は地上を見下ろした。
夜の京都、崩れた石畳の上。
絶花が立ち尽くしていた。
そこには、何時の日か、渡した俺の王国の駒の一つである騎士が共鳴している。
絶花も自分に何が起きているのか分かっていない。
目を見開き、自分の胸元から溢れ出す光を呆然と見つめている。
「なに、これ…!? 私の神器が…勝手に…!?」
『主よ、これは…』
天聖の声も驚愕に震えている。
『あの小僧…太郎の魂と、主の魂が引き寄せられておる…! これは共鳴じゃ! 神器と神器の…主と王の…!』
「共鳴…!?」
その時、俺の右腕のウルトライズブレスレットに異変が起きた。
いや、ウルトライズアイだ。
右腕に装着されたままのアイテムが、ガタガタと激しく震動し始めたのだ。
まるで意志を持った生き物のように、その中央の宝石がチカチカと明滅する。
『何が起きてる…!?』
ゼロの声も初めて聞く困惑を帯びている。
『ウルトライズアイが勝手に…! いや、これは呼んでるのか!? 何かを!』
「呼んでる…だと…!?」
俺の胸の奥の王国の駒が、さらに強く輝く。
その光は、ウルトライズアイの明滅と完全に同調していた。
ドクンッ――ピカッ!
ドクンッ――ピカッ!
まるで心臓が二つ、同時に鼓動を打っているようだ。
「ぐっ…あ…ああああッ!!」
光が爆ぜた。
俺の全身を、絶花の光と、ウルトライズアイの光が二重に包み込む。
視界が桃色と銀色の粒子で埋め尽くされる。
目を開けているのも辛い。
いや、目なんてもう意味をなしていない。
視覚を超えた「何か」が、俺の脳裏に直接流れ込んでくる。
これは……記録だ。
歴代ウルトラヒーローたちの記憶。
彼らの戦いの軌跡。
その光の記録が、「壁」となって俺の前に顕現しようとしている。
『すげぇ…!』
ゼロの声が震えた。
感激とか驚愕とか、そういう薄い感情じゃない。
歴戦の戦士としての本能が、得体の知れない力の顕現を敏感に察知しているのだ。
『ウルトライズアイが勝手に展開しようとしてる!? こんなこと今まで…!』
「ゼロ…! 俺は一体どうすれば…!」
『考えるな!!』
ゼロが咆哮する。
『お前の身体を信じろ! お前の魂を信じろ! そして、お前の家臣の想いを信じろ! 今お前の中に流れているのは、お前の世界の力と俺の世界の力が交わった新しい波だ! それをぶつけろ!!』
「新しい…波…!」
俺は両手腕を広げた。
胸の奥の王国の駒が、今までにないほど眩く燃え上がる。
そして、地上の絶花の光と、俺を包む光が、一本の柱となって天へと突き上がった。
「ウオオオォォォッ!!」
叫ぶ。
王の魂が、侍の祈りが、宇宙の戦士の光が、一つに束ねられていく。
空が裂ける。
いや、空だけじゃない。
時間そのものが裂け、俺の背後に「壁」が現れた。
高さ数十メートル。
青白い光の結晶が、屏風のように林立している。
その一枚一枚に、紋章が刻まれている。
――歴代の光の巨人たちの記録。
「これが…コスモレコードウォール…!」
俺の叫びに呼応して壁が唸りを上げる。
空間が軋み、記録の結晶が一斉に輝いた。
まるで巨大な図書館の目録が立ち並ぶ光景だ。
だがその中で一つだけ、やけに主張が激しいものがあった。
中央よりやや左。
赤と青と銀の紋章。
まるで俺を、「呼んでいる」。
『太郎! あれだ!』
ゼロの声が弾んだ。
『あれは…! 師匠の…いや、俺の相棒の…!』
導かれるように俺の右手が動く。
ウルトライズアイ。
その表面に浮かび上がったのは、見たこともない赤いレコードのシルエットだ。
「これは…」
俺の胸の奥の王国の駒が、さらに熱く脈打つ。
間違いない。
絶花の神器、そしてこのレコード。
二つの異なる力が、ここで交差する運命にあるのだ。
俺は覚悟を決め、ウルトライズアイのトリガーを強く押し込んだ。
カチッ!
乾いた音が夜の京都に響いた瞬間――。
「えっ…!?」
地上から絶花の驚愕の声が聞こえた。
彼女の目の前、虚空から突如として赤い球体が出現したのだ。
ビリビリと大気が震える。
それはただのエネルギー球じゃない。
「きゃっ…!?」
避ける間もない。
赤い球体は絶花の身体を一瞬で呑み込んだ。
いや、吸い込んだのだ。
「絶花!!」
俺は思わず叫んだ。
だが、苦痛の声は聞こえない。
代わりに聞こえたのは、彼女の心臓の音。
ドクンッ! ドクンッ!
俺の王国の駒を通じて、彼女の鼓動が直接伝わってくる。
恐れていない。
なら俺がやるべきことは一つしかない。
俺はウルトライズアイを天高く掲げた!
「行けぇぇ!! 絶花!!」
叫びと共にウルトライズアイが極限まで発光する。
赤い光の繭が弾けた。
いや、変換されたのだ。
人間という有機物の枠組みが解け、光の情報体へと再構築されていく。
ボディが形成される。
青と赤と銀の煌めき。
ゼロに似ているがどこか若い、まだ洗練されさを残すフォルム。
額には青い宝石。
そして何より特徴的なのは、頭部から胸にかけて走る「Z」の字型の青いラインだ。
おぞましいまでの怨念で構成されていた宿那鬼たちとは対極にある、圧倒的な「希望」の異物。
ウルトラマンZ。
彼が現れた。
『ウルトライズ!』
『Z!』
電子的な音声が夜空に響き渡る。
次の瞬間、京都の夜に新たな巨人が立っていた。
絶花が、ウルトラマンZになったのだ。
宿那鬼が後ずさる。
戀鬼もガンQも同様だ。
味方が増えたという単純な戦力差じゃない。
さっきまでの俺一人の時とは質量が違う。
王と侍。
光と剣。
二つの異物が揃った時、この盤面は「逆転」したのだ。
「なっなにこれぇ!?」
「どうなっているんだ、ゼロ!?」
俺は思わず、呟いてしまう。
それに対して、ゼロは。
「・・・いや、俺も知らない」
次回の王は
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妖怪王
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機械王
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怪獣王
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幻想王