サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
「なっなにこれぇ!?」
「どうなっているんだゼロ!?」
俺は思わず呟いてしまう。
目の前の巨人はウルトラマンZ。
だが中身は宮本絶花だ。
最強の侍がウルトラマンになった。
これでは侍じゃない。もう将軍だ。
『いや俺も知らない』ゼロの声も困惑している。『あれは確かにZの姿だが…あの中身は間違いなくお前の家臣だ』
「当たり前だろ! 見りゃ分かる!」
『だがなぜだ!? Zは弟子のような存在だが…まさかお前の神器と俺の力が共鳴してこんなことが起きるなんて…』
俺たちが混乱している間も敵は待ってくれない。
むしろ好機と見たのか。
「グオオォォン!!」
宿那鬼が動いた。前後の顔から炎と風を同時に吐き出し自らの視界を奪いながら突っ込んでくる。
さらに戀鬼も霊体化し背後から怨霊刀を構え斬りかかる。
「しまっ…!」
俺が動くよりも速く。二体の怪異が絶花へと殺到した。
「きゃあぁっ!!」
絶花が悲鳴を上げる。
だがその身体は悲鳴とは裏腹に冷静だった。
まるで水が流れるように。
あるいは何千年も前からその動きを知っていたかのように。
彼女の両手が空を切った。
いや違う。何かを掴んだのだ。
右手には白刃が光る。天聖だ。
あのおっぱい変態神剣がウルトラマンZの手に握られている。
そして左手には…
「なんだあれ…?」
漆黒の刀剣。
サーベルのような反りを持つが切っ先は日本刀のように鋭く研ぎ澄まされている。
歪な合いの子だ。だがその歪さこそが禍々しい。
刀身は黒く曇り光を吸い込んでいるようだ。
そして何より護拳に当たる部分。
そこには漆黒のウルトラマンの顔が象嵌されていた。
悪意の結晶のようなデザインだ。
見ているだけで背筋が凍る。
『あれは…!』ゼロが息を呑む。『まさかあいつの…!』
「あいつって誰だよ!?」
説明を求める暇はない。
「せやぁッ!!」
絶花の気合一閃。
二刀が舞う。
白と黒の交差。
宿那鬼の大太刀と戀鬼の怨霊刀が同時に迫る。
だが絶花は避けない。受けるだけではない。
「二天一流…宮本絶花!」
彼女の声が響く。迷いはない。
交差した二刀がX字を描く。
キィィン!!
金属音が夜空を切り裂く。
そして…断たれたのは刃ではなかった。
ザシュッ!!
鮮血ならぬ体液と霊気が噴き出す音。
宿那鬼の巨体が真っ二つに裂けた。
前後の顔が驚愕に見開かれたまま左右へと分かれていく。
断面からはドロドロとした内臓のペーストが溢れ出し石畳を汚す。
さらに戀鬼もだ。
霊体化したはずの怨霊刀ごとその身体を斜めに両断されている。
白と黒の刃が霊すらも断ち切ったのだ。
男女の顔が溶け合った頭部が悲鳴を上げながら四散していく。
まるでミキサーにかかったトマトのようにグチャグチャとした肉片となって消滅していく。
「嘘だろ…」
一瞬の出来事だった。
俺が手こずった二体を彼女は一刀両断したのだ。
しかもただ斬ったんじゃない。
あのおっぱい変態天聖とあの禍々しい黒い剣。その二つを使いこなしている。
「た…太郎!? 私なんか変よ!? 体が勝手に! 手にこれ持ってるし!」
絶花がパニックになっているのが声で分かる。
だがその手にはまだ剣が握られている。戦士としての本能が離すことを許さないのだ。
「落ち着け絶花! お前は今…最強の侍だ!」
俺は叫んだ。
「た…太郎!? 私なんか変よ!? 体が勝手に! 手にこれ持ってるし!」
絶花の悲鳴が聞こえる。彼女の中で混乱が渦巻いているのが手に取るように分かる。
無理もない。
いきなり巨人にさせられて、しかも見たこともない黒い剣なんて握らされているんだからな。
『オレ様を手にしてお前は何をする?』
聞こえた。
空耳じゃない。
あの黒い剣が“喋った”のだ。
その声は、夜の京都の空気をびりびりと震わせる。
低く重く、喉をゴロゴロと鳴らした獣のような声だ。
絶花の手の中で、黒い剣の護拳――あの歪なウルトラマンの顔――の口元が、ニヤリと三日月形に歪んだ。
「ひっ…!? しゃ、喋った!?」
絶花が思わず剣を取り落としそうになる。
『オイオイ、落とすんじゃねぇよ。せっかく出してくれたんだからよぉ…』
「お、落とせない!? 手に吸い付いてくる!」
『そうだろうよ。“相棒”がお前を選んだんだ。お前は使われる側じゃなくて、使う側の覚悟を見せなきゃならねぇ』
「待て」
俺は叫んだ。
「ゼロ、あの剣は何だ? ただの武器じゃないのは分かってる」
『ああ、あれは……ベリアロクだ』
ゼロの声には、明らかな動揺が混じっている。
今までの軽口が嘘のように、低く、緊張を帯びた声だった。
『ウルトラマンZが使う武器だ。剣とサーベルを掛け合わせたような形をしているだろ? あれは、とある凶暴な宇宙人が宿った、意志を持つ剣なんだ。喋るし選ぶ。持ち主が気に入らなければ、一瞬で食い殺すような代物だ』
「ウルトラマンZの武器…」
俺の心臓がドクンと跳ねた。
まさか絶花が今、その化物じみた武器を握らされているというのか。
『だが……おかしい』
ゼロの声は、腑に落ちないというような響きを含んでいた。
『ベリアロクは、確かにウルトラマンZが使う武器だ。だが、通常のウルトライズしたゼットでは、あそこまで物理的に安定した形で召喚できるはずがない。あれは、ゼットの力だけじゃなく、世界そのものが支える『武具』だ』
「つまり…?」
『この世界の“神器”とやらが関わってるってことだ。絶花……いや、お前の王国の駒が、ウルトラマンZとベリアロクの繋がりを“この世界の理”に強制的に持ってきた。そう考えれば辻褄が合う』
「王国の駒の力、ね……」
俺は自分の胸元へ意識を落とした。
あの輝きが、まだ熱を持っているのが分かる。
そうか。これが、そういうことか。
俺の神器、王国の駒は、家臣を集め、家臣を強化する。
だが、それだけじゃない。
いま絶花の中で、ウルトラマンZと天聖が、ベリアロクが、狂ったパズルのように嚙み合わされている。
王としての俺の意志が、あの場にいる家臣に新たな可能性を引き寄せたのかも知れない。
おぞましい侵食ではない。これは「補完」だ。
「絶花!」
俺は夜の京都を揺らす大声で叫んだ。
「聞こえてるな! お前の中にいるのは、ウルトラマンZ! それに、お前の天聖! そして、お前が握ってる黒い剣は、ベリアロク! どれもが、お前の力だ!」
「た、太郎……! でも、これ……! 私の手に……!」
『主が泣き言を言うんじゃない。不覚じゃぞ、主。この剣は主の流儀を知っておる。だから、こうして顕現したのじゃ』
天聖の声が、絶花の内部から響く。その声は普段の変態剣士のノリとは違う。
静かで、力強い。
『この剣、確かに喰う気はない。むしろ“遊びたがって”おる。主が剣士としてどこまでやるのか、見定めるつもりじゃ』
「……見定める?」
俺は笑った。
「なら、見せてやれよ。お前は誰よりも強くて、誰よりも真面目な侍だ。その黒い剣も、お前の剣技の前には膝を折る」
絶花の呼吸が、一瞬止まった。
だが、それで吹っ切れたのかもしれない。
巨人の手がゆっくりと、ベリアロクを握り直す。
次回の王は
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妖怪王
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機械王
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怪獣王
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幻想王