サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
「さあ、とどめと行こうか」
俺は拳を構え、絶花に視線をやった。
が、その瞬間、空気が変わった。
ドロリ。グチャリ。
崩れたはずの三体の残骸が、同時に蠢き始めたのだ。
宿那鬼の肉片が、戀鬼の霊体が、ガンQの眼球が放った視神経の束が、それぞれの怨念と膿を撒き散らしながら、まるで互いを喰らい合うように集まっていく。
「なっ!?」
ドクン。ドクン。
瓦礫の中で脈打つ、おぞましい心臓音。いや、心臓なんて次元じゃない。肉と霊が、一つの大きな膿袋へと煮え立っているのだ。
見ていて吐き気がこみ上げてくる。
細胞レベルであり得ないことが起きている。
宿那鬼の骨格の上に、戀鬼の腐肉がまとわりつき、ガンQの視神経と眼球がその中心でぬめぬめと回転しながら混ざり合っていく。
グチュグチュ、ドロドロ。
無数の口が開いては閉じ、閉じては開き、内側から何かを吐き出そうとしている。
骨が肉に食い込み、肉が骨に絡みつき、霊がそれを強引に縫い合わせる。
まるで、三つの生物がミキサーにかけられながら一つの個体になろうとしているような悪夢的光景だ。
やがて、それは姿を現した。
「…なんだ、こいつは」
巨大な人影。
いや、人影と呼んでいいものか。
宿那鬼の前後の顔が、肩と腰にズレて溶けついている。
胸にはガンQの巨大な眼球が埋まり、ギョロリと脈打ちながらすでに俺たちを捉えている。
左手には大太刀、右手には怨霊刀。
全身を覆うのはガンQの視神経が絡み合った、血管むき出しの鎧。
それぞれの怪異がそれぞれに声を上げている。
怒号と悲鳴と笑い声。
それが同時に響き、夜の京都に不協和音をぶちまける。
「アアアアア……」「オオオ……」「ミテミテミテ……」
異形の合体怪獣。三つの怨念が、混ざり合ってできたおぞましき「器」だ。
「…引くぞ、相棒」
ゼロがブレスレット越しに言う。だがその声には恐怖の色はない。
「…引くぞ相棒」
ゼロがブレスレット越しに言う。だがその声には恐怖の色はない。
ただ冷静に「こいつはこういう奴だ」と受け入れている響きだ。
「引く? 誰が引くかよ」
俺は鼻で笑った。
目の前には、三体の怪異がドロドロに溶け合ったおぞましい合体怪獣。
見ているだけで吐き気を催すような、生物的にも論理的にも破綻した「何か」だ。
だが不思議と怖くはなかった。
俺にはゼロがいる。そして隣には、ウルトラマンZとなった絶花が立っている。
王と侍。二つの光が並ぶ限り、怨念の塊ごときに負ける道理はない。
『上等だ。なら一気にカタを付けるぞ、相棒!』
「おう!」
俺は右腕を掲げた。
ウルトライズブレスレットが月明かりを浴びて銀色に輝く。
そこへ、左手に握っていたウルトライズアイを勢いよくスキャンする。
シャキンッ!!
ブレスレットのスリットが光を食いちぎるようにしてアイテムを読み取る。
瞬間、京都の夜空に電子的な音声が劈いた。
『ゼロ コスモライズ』
グゥンッ!!
ブレスレットが激しく振動し腕全体に黄金の紋様が走る。
「うおおおぉぉッ!!」
俺の咆哮が、夜の京都を震わせた。
ウルトライズブレスレットから溢れ出した黄金の光が、渦を巻きながら俺の全身を包み込んでいく。
今度は痛みじゃない。
身体の内側から無限の力が溢れ出し、それが実体化していく。
コスモライズの赤と銀の装甲が、まるで花が開くように剥離していく。
いや、違う。進化だ。
殻を破って、新しい自分が生まれる感覚。
光の粒子が全身の細胞を貫き、再び「王の器」を組み立てていく。
視界が開けていく。
空が、星が、街が、そして敵が、あまりにも鮮明に見える。
音が消え、時が止まったかのような、極限の静寂。
その静寂の中で、俺は生まれ変わった。
「これが…ゼロビヨンド…」
俺は自然と言葉を漏らした。
ボディのシルエットはコスモライズと似ているが、色彩が全く違う。
銀色を基調とした、磨き抜かれた聖剣のような輝き。
その表面を、紫のラインが稲妻のように走り抜けている。
神秘的でありながら、同時に、底知れぬ威圧感を放つ「神」の配色だ。
そして、その頭部には、さらに異変が起きていた。
ゼロスラッガーが二本増えている。
計四本の宇宙ブーメランが、俺の意志に呼応するように、頭部でカチリと音を立てて噛み合った。
リング状に連結されたそれは、まさに銀色の王冠だ。
ビームランプも違う。
額の一点から顔面の左右へと伸びるように、三つの青い結晶が埋め込まれている。
それはまるで、異界を見通す第三の眼のようだった。
力が、溢れてくる。
身体の芯が熱い。
この姿になってようやく分かった。
コスモライズは「歴代の光を束ねる姿」だとしたら、このゼロビヨンドは「宇宙そのものを統べる姿」だ。
次元が違う。
ただし、どこかで聞いた話なんだが、この姿には「使用限界」があるとゼロは言っていた。
だが、今は関係ない。
目の前の敵を倒す。その一点のみを考えろ!
ズシンッ!
俺は一歩踏み出した。
地面が轟く。
空気がビリビリと震え、石畳の破片が浮き上がる。
「どうした、合体野郎。その不格好な見た目で、俺を殺れると思ってるのか?」
合体怪獣が、怒りと嘲笑の入り混じった咆哮を上げる。
ドロドロに混ざり合った三つの顔が、同時に俺を睨んだ。
「よし…行くぞ、絶花!」
俺は隣に立つウルトラマンZ――絶花に声をかけた。
「あ、うん!」
彼女の動きに迷いはない。
俺は満足して、再び前を向いた。
「ウルトラマンゼロ、ビヨンド」
俺は名乗りを上げるように、静かに構えた。
「この京都に巣食う闇よ。星の光を背負う者の本気、その身で味わえ!!」
次回の王は
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妖怪王
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機械王
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怪獣王
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幻想王