サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
京都での修羅場から戻り、俺は再びただの高校生、唯我太郎に戻っていた。
だが日常は、俺が期待していたほど平和じゃない。
むしろ腐ったミカンのようにドロドロと崩壊しつつあった。
まずは持ち物失踪事件。
誰の筆箱の中身が消えたとか、誰の鞄の中身が入れ替わったとか。
次は理科室のガラス破損。
休み時間に誰もいないはずの理科室で、窓ガラスが内側から粉々に砕け散った。
まるで見えない巨大な圧力が、内側から押し広げられたかのように。
いずれの事件も奇妙だった。
だが最も奇妙なのは、その全てに俺が関わっているということだ。
事件が起きるたび、俺はなぜか現場の近くにいた。
そして防犯カメラには、俺らしき人影が映っていたのだ。
確かに似ている。
だが俺じゃない。
あの映像の男は、俺より少しだけ背が高く、少しだけ肩幅が広い。
だがそんな些細な差異は、不安を煽るには十分すぎた。
教室の空気は最悪だ。
誰も俺と目を合わせない。
話しかけても視線を逸らされる。
コソコソと囁かれる陰口。
まるで俺が学校という生体の免疫系によって「異物」として認識され排除されようとしているような圧迫感だ。
細胞レベルでの拒絶反応。
俺の存在そのものが、周囲の環境を腐敗させているかのような錯覚に陥る。
「くそっ…なんでこんなことに…」
俺は屋上のフェンスに寄りかかり深くため息をついた。
右腕のブレスレットが微かに熱を持っている。
ゼロの存在を感じるだけで心強いが、今は寡黙に俺を見守っているだけだ。
『気にすんな相棒。宇宙じゃこういうハメに遭うのも日常茶飯事だぜ』
ゼロの励ましは、軽いが今の俺には少し重い。
「お前の日常はスケールがデカすぎるんだよ」
俺は苦笑するしかない。
その時だった。
バンッ!
屋上の扉が乱暴に開け放たれた。
俺はビクリと肩を揺らす。
まさか敵襲か? ヤマタノオロチの生き残りか?
だが現れたのはもっと凶暴で、もっと理不尽な存在だったかもしれない。
「見つけた!」
ピンク色の髪。制服を少しだけアレンジしたセーラー服。
表情は明るく、まるで太陽そのもののような笑顔。
明智あんな。
つい先日転校してきたばかりの転校生だ。
彼女は俺の前まで来ると両手を腰に当て、上から俺を覗き込んだ。
「あなたが唯我太郎くんね!」
「あ、ああそうだが…」
俺は思わずたじろぐ。
彼女の気迫がすごい。
太陽に向かっていそうな勢いだ。
俺の周りの空気は最悪だったはずだ。
皆が俺を避けていた。
なのに彼女は、真っ直ぐに俺の前に立っている。
「どうしたの? そんなにボロボロの顔しちゃって」
「いや、別に…」
「嘘つかないで! あなたの目、嘘ついてる人の目じゃない!」
彼女は俺の目を覗き込んだ。
その瞳には曇りがない。
純粋な光。
俺の濁った心を浄化しそうなほど、強い光だ。
「私、直感でわかるの。あなたは犯人じゃない! はなまる!」
「は、はなまる…?」
何だその判定基準は。
だがその短い言葉が、俺の凍りついた心臓に熱い血流を送り込んだ。
信じている。
この少女は、俺を。
無実を。
ただの直感で。
「ありがとう…」
俺は搾り出すように言った。
「そうか。俺は無実だ。誰かに信じてもらえるだけで、これほど嬉しいとはな」
「でしょでしょ? じゃあ一緒に探そうよ! 本物の犯人を!」
あんながニコリと笑い俺に手を差し出した。
俺はその小さな手を握り返した。
「ああ。王として無実を証明する」
『フッ、いい相棒ができたじゃねぇか太郎』
ゼロの声が脳裏で響く。
『俺の直感が言ってるぜ。その嬢ちゃん、何かとんでもねぇもの見てるかもしれないぞ』
「どういう意味だ?」
『ババルウ星人ってのを知ってるか? 奴らはな、擬態が得意なんだ。人間に化けて、悪さをする』
ゼロの言葉に俺はハッとした。
防犯カメラの俺らしき人影。
俺じゃない俺。
擬態。
「ババルウ星人…」
俺は呟いた。
もし奴らがこの学校に潛んでいるなら、俺の無実を証明するには奴らの皮を剥がすしかない。
俺とあんなの、奇妙な捜査が始まった。
次回の王は
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妖怪王
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機械王
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怪獣王
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幻想王