サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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ソラからの使者 Part7

でかい。

 

それが変身した瞬間の最初の感想だった。

 

いや、でかいという言葉じゃ足りない。ゼロの身長は四十九メートル。ビルの十五階くらいの高さだ。普段ならそれで十分に巨大だ。だが今は違う。ゾグはゼロの二倍以上ある。百メートルを優に超える体躯。見上げるだけでは首が疲れる高さだ。

 

(百メートル超えってなんだよ。反則だろ)

 

『相棒、サイズで勝負してると悲しくなるぞ。動きだ。動きで食うんだ』

 

ゼロの声が脳内で響く。的確だ。でかい相手と正面からぶつかって勝てるわけがない。レオ師匠の修行の基本だ。力で勝てない相手には技と速度で勝つ。

 

「分かってる!」

 

俺は地を蹴った。

 

廃工場のコンクリートが砕ける。四十九メートルの巨体が一瞬で加速する。地上の物体にとっては災害だが今は気にしている場合ではない。

 

ゾグが反応した。

 

遅い。

 

いや、ゾグの動きそのものは遅くない。巨大な体躯の割には速い。だがゼロの加速についてきていない。右腕を振り下ろしてきた。白い手のひらが俺を押しつぶそうとする。まるで虫を叩き潰すみたいな動きだ。

 

(虫扱いかよ)

 

俺は横に跳んだ。

 

右から左へ。ゼロの脚力が地面を蹴り、空中で体をひねる。ゾグの手のひらが俺がいた場所を叩いた。ドォォン!! 地面が陥没する。アスファルトと土が混ざって直径三十メートルのクレーターができた。

 

「危ねえ…」

 

着地と同時に俺は再び走った。ゾグの右手が地面にめり込んでいる。引き抜くまでに一秒。その一秒が窗口だ。

 

俺はゾグの右腕に飛びついた。銀色の手指が白い肌に食い込む。滑った。硬い。ゾグの肌は見た目通り滑らかで、予想以上に硬い。金属質の硬さではない。もっと密度が高い。叩いても響かないような、凝縮された物質の硬さだ。

 

だが掴めた。俺は右腕を足場にして駆け上がった。

 

『いいぞ相棒! そのまま腕を登って顔面を狙え!』

 

「狙えって言ってもな!」

 

腕を登る。四十九メートルの巨人が百メートル超えの巨人の腕を走る。奇妙な光景だ。だが今はそれどころじゃない。

 

ゾグが腕を振り上げた。

 

俺の体が宙に浮く。重力が消える感覚。だが俺は離さない。指が白い肌に食い込む。ゼロの握力は人間のそれとは比較にならない。鋼鉄を握り潰せる力だ。

 

腕が上がりきった。ゾグの顔面が近づく。白い顔。女性的な顔立ちだが、目が違う。目がないのだ。正確には、目らしき窪みがあるだけだ。そこに光が宿っているわけでもない。ただ白い。白い顔に白い窪み。

 

(目がないって怖いな)

 

だが構わない。目がなくても顔面は顔面だ。

 

俺は腕を蹴って跳んだ。

 

空中で体を回転させる。ゼロスラッガーを念力で射出した。二本の刃が螺旋を描いて飛び、ゾグの顔面を掠める。

 

ギインッ!

 

スラッガーが白い肌を削った。浅い。傷になっていない。だがゾグが初めて反応した。顔面を逸らしたのだ。初めての反応だ。

 

「効くぞ。浅いが効いてる!」

 

俺は空中で体を反転させ、ゾグの胸元に飛び込んだ。

 

右拳を叩き込む。ゼロの全身バネと体重を乗せたストレート。レオ師匠直伝の拳法。

 

ドガッ!!

 

ゾグの胸に拳が当たった。手応えはある。硬い。先ほど腕で感じたのと同じ密度だ。だが衝撃は伝わったはずだ。

 

伝わっていない。

 

俺の拳がゾグの胸で止まっていた。白い肌が凹んだだけだ。凹んで、すぐに戻った。ゴムみたいな弾力。いやゴムじゃない。もっと不気味な回復力だ。

 

「なっ…」

 

『相棒! 下だ!』

 

ゼロの叫び。

 

下を見る暇がなかった。体が勝手に反応した。ゼロの戦闘本能だ。左腕を引いてガードを固める。

 

次の瞬間、ゾグの左手が俺を掴んだ。

 

白い指がゼロの胴体を包み込む。握力がかかる。骨がきしむ音が体内から響く。

 

「ぐっ…!」

 

肋骨が悲鳴を上げている。ゼロの身体でも耐えきれない握力だ。百メートル超えの巨人が四十九メートルの巨人を握り潰そうとしている。力の差が物理的に圧倒的だ。

 

『脱出だ相棒! 無理に力で抜けようとするな! 熱だ!』

 

熱。そうだ。ゼロは光の戦士だ。体内の光エネルギーを放射できる。

 

俺は全身のエネルギーを外殻に送った。ゼロの体表が赤く発光する。高温だ。数百度の熱が白い指に伝わる。

 

ジュッ!!

 

音がした。肉が焼ける音に似ているが、もっと乾いた音だ。ゾグの手が僅かに緩んだ。

 

(今だ!)

 

俺は握られた状態からゼロスラッガーを射出した。二本の刃がゾグの手首を切り裂く。

 

ギインッ!

 

スラッガーが白い手首に深い切れ込みを入れた。白い体液が漏れる。いや体液じゃない。光だ。白い光が傷口から漏れ出し、空中に散る。

 

ゾグの手が離れた。

 

俺は自由落下しながら体を整えた。地上まであと三十メートル。着地の衝撃を殺すために空中で体を回転させ、廃工場の屋根を足場にして着地した。

 

トタン板が潰れる音が下から聞こえる。建物ごと潰した。すまん。

 

「相棒、まだ行けるか?」

 

「行けるに決まってんだろ」

 

俺は屋根の上で構え直した。左拳を前に。右拳を腰に。

 

ゾグが手首の傷を見ていた。白い光が漏れている。だが傷は閉じつつある。再生が始まっている。

 

(再生能力まであるのかよ)

 

『相棒、このままじゃジリ貧だ。再生速度より攻撃速度が追いつかねえ』

 

「わかってる」

 

ゾグが再び手のひらを向けた。白い光が集束する。破壊光線の予兆だ。

 

俺は屋根を蹴って跳んだ。

 

同時に白い光線が放たれた。屋根が消滅する。俺がいた場所が真空の線になって消えた。

 

「危なっ!」

 

着地したのは廃工場の駐車場だ。アスファルトが割れる。

 

ゾグの光線は速い。避けられない速度ではないが、発射のタイミングを読まないと間に合わない。予備動作が少ないのだ。手のひらを向けるだけ。それだけで撃ってくる。

 

(予備動作がないってのは反則じゃないのか)

 

『文句は後だ相棒。今は次の手を考えろ』

 

次の手。正攻法ではダメだ。拳も蹴りもスラッガーも通じるには通じるが、決定打にならない。再生されてしまう。

 

(決定打が必要だ)

 

一撃で本体を砕く威力。

 

俺の視線が左手首に向けられた。ウルトライズアイのブレスレット。

 

(まだ使えるのか?)

 

「分からないでもいい。やるしかないだろ」

 

『…そうだな。やるしかねえ』

 

俺はウルトライズアイを取り出した。

 

ゾグが動いた。再び手のひらを向けている。白い光が集束する。

 

(こっちもだ)

 

俺はブレスレット上のコスモレコードをスキャンした。

 

『ゼロ・コスモライズ!』

 

変身メロディが響く。

 

同時にゾグの光線が放たれた。

 

白い破壊光線とゼロコスモライズの変身光が正面から衝突した。

 

ドォォォォン!!!

 

爆発だった。空が割れたみたいな爆発。衝撃波が廃工場を粉砕し、周囲の山林の木々がなぎ倒される。

 

だが光は消えなかった。

 

変身光がゾグの光線を押し返している。銀と赤の光が白い光線を侵食し、飲み込み、打ち消していく。

 

そして光の中から現れたのは——

 

赤と銀の巨人。

 

全身に赤いラインが走り、胸に星型のカラータイマーを抱く新たな姿。

 

ウルトラマンゼロコスモライズ。

 

「来いよゾグ」

 

俺は言った。声が変わっていた。力が溢れている。

 

「この二万年の重み、その身で味わいやがれ」

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
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