サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
コスモライズの身体に力が漲る。
さっきまでのゼロとは別物だ。全身の赤いラインが脈打つように光り、胸の星型カラータイマーが熱を放っている。指一本動かすだけで空気が裂ける。それほどの力が身体の底から湧き上がっている。
だがゾグは変わらない。
百メートル超えの白い女神が無表情で俺を見下ろしている。目のない白い顔。静寂そのものの存在感。さっき俺がコスモライズに変身した時の光でゾグの光線を弾き返した衝撃がまだ空中に残っている。だがゾグ自身は微動だにしていない。
(でかいな。相変わらずでかい)
でかさは変わらない。コスモライズになっても身長は四十九メートルのまま。ゾグはその二倍以上。見上げる角度が首にくる。
「だがやるしかない」
俺は右手を掲げた。ウルトライズアイが左腕に装着されたまま光る。コスモライズの中核装備。ウルトラコスモレコードに宿る歴代ウルトラヒーローの力を解放する。
コスモレコードウォールをスキャンする。
二枚のコードを連続で読み取った。
『Z!オーブ!ウルトライズ!』
システムボイスが夜空に響いた。
直後——空から二つの光が降ってきた。
赤い玉だ。
丸く鈍く光る赤い玉が二つ。流星のように夜空を切り裂いて落ちてくる。一つは俺の右肩に、もう一つは左肩に。赤い玉がパァンと音を立てて弾けた。
中から現れた二体の巨人。
右に立ったのは青と銀のボディに赤いライン。頭部にクリスタル状の角。額のビームランプ。ウルトラマンゼット。実直な姿勢。戦い方も真っ直ぐで不器用だが芯の強い戦士。
左に立ったのは赤と黒のボディに金の装飾。胸部に円形のカラータイマー。ウルトラマンオーブ。静かな佇まい。だが身に纏う力は波打っている。
「Z。オーブ。頼む」
二体の巨人が無言で頷いた。言葉はいらない。ウルトライズされたヒーローはゼロの意志に応える。それがコスモライズの力だ。
だが、足りない。
(二人だけじゃない。あいつらもだ)
俺は地上を見た。廃工場の駐車場。瓦礫の山の陰に三つの人影がある。絶花とあんなとソラだ。三人は地上から戦いを見上げている。無事だ。だがいつまでも安全な場所にいさせるわけにはいかない。ゾグの攻撃範囲は広い。地上にいればいつ巻き込まれるか分からない。
(なら巻き込ませればいい。戦力として)
俺の視線が絶花とあんなに向けられた。絶花はZに変身できる。あんなは——。
(あんな。お前の駒がどう反応するか見せてみろ)
俺はウルトライズアイを操作した。コスモライズの力を使い、二つの赤い玉を地上に送る。
赤い光が夜空から地上へ落ちていく。二つの赤い玉がまっすぐに絶花とあんなの元へ。
地上で何が起きているかは見えない。だが感じる。王の駒が反応している。あんなの胸元の兵士の駒が光を放っている。そして絶花の胸の奥にある天聖が呼応している。
赤い玉が二人を包み込む。
赤い光が膨らみ、二人の人影を飲み込む。球体の中で光が弾けた。
パァン。パァン。
二つの音が重なった。
光が晴れた時、地上にいたのは二人の少女ではなかった。
右に青と銀の巨人。ウルトラマンゼット。絶花だ。彼女の姿がZの姿へと変わっている。ゼロスラッガーのような角。額のビームランプ。青を基調としたボディ。だがその立ち方は絶花だ。刀を構える時の癖がそのままZの姿に反映されている。重心が低く、間合いを測るような構え。
左に赤と黒の巨人。ウルトラマンオーブ。あんなだ。あんなの小さな体がオーブの巨人の姿へと変わっている。オーブオリジンの姿。赤と黒のボディに金の装飾。円形のカラータイマーが夜の光を反射して輝いている。だが立ち方があんなだ。少し猫背。両手を前に出しかけて止まっている。まるで「えっと」と言いたげな姿勢。
(あんなまで変身できたのか。兵士の駒の力か?)
『相棒、兵士の駒は条件を満たせば別の駒の特性を一時的に得る。あんなの駒がウルトライズの力に反応したんだ。コスモライズの召喚を仲介して変身させた』
ゼロの解説が脳内で響く。なるほど。兵士の駒が昇格したのか。一時的に騎士か戦車の特性を得て、変身能力を獲得したのだ。
(にしても)
俺は左右を見た。
右にウルトラマンゼット。左にウルトラマンオーブ。そして中央に俺、ウルトラマンゼロコスモライズ。
三体の巨人が並んで立った。
背後には空から降りてきたZとオーブの幻影。幻影は実体を持たないが、技の力は使える。コスモライズの能力だ。召喚したヒーローの技をゼロの攻撃と同時に発動する。
地上から変身した絶花とあんな。空中から召喚されたZとオーブの力。
四人分の力がこの場にある。
「全員揃った」
俺はゾグを見上げた。
白い女神はまだ無表情だ。こちらの戦力増加に何の反応も示していない。ただ静かにそこに在る。それが逆に怖い。増えた戦力を認識していないのか、それとも認識した上で問題にしていないのか。
(どっちにしても関係ない。やるだけだ)
「行くぞ。全員一緒だ」
俺は地を蹴った。
三体の巨人が同時に動いた。俺が中央。絶花が右。あんなが左。三方向から同時にゾグへ向かって跳ぶ。
ゾグが動いた。
右手を振り下ろす。白い掌が三体を一薙ぎにしようとする。だが遅い。コスモライズの速度についてきていない。
「散開!」
俺の叫びに絶花とあんなが反応した。絶花は右へ、あんなは左へ。俺は正面から突っ込む。
三方向に分かれた。ゾグの手は何も掴めず地面を叩いた。ドォォン。またクレーターができる。だが俺たちはもう空中だ。
俺はゾグの右腕に飛びついた。さっきと同じだ。腕を足場にして駆け上がる。だが今度は一人じゃない。
「絶花! 右腕の関節!」
「はい!」
絶花がZの姿で右腕の肘関節に飛び込んだ。青い巨体がゾグの肘に食い込む。ゼットスラッガーを手に持ち、関節の隙間に突き立てる。
ギインッ!
深い。さっきの俺のスラッガーより深く刺さっている。絶花の剣士としての技術がZの身体を通じて発揮されているのだ。関節の隙間を見逃さない。剣士の目だ。
「あんな! 左腕だ!」
「え、えっと! あっちですね!」
あんながオーブの姿で左腕に飛びついた。動きがぎこちない。あんなは戦士じゃない。だがオーブの身体能力がそれを補っている。なんとか左腕にしがみついた。
「あんな、そのまま掴んでろ。離すな!」
「は、はい!」
あんながオーブの手でゾグの左腕を掴んだ。力任せだが外さない。オーブの握力がゾグの白い肌に食い込む。
(よし。両腕を封じた)
俺は右腕を駆け上がる。絶花が肘を固定し、あんなが左腕を引いている。ゾグは両腕を振り回せるが、精度が落ちるはずだ。
実際、ゾグが腕を振った。だが絶花のスラッガーが関節に刺さっているせいで、腕の可動範囲が制限されている。左腕もあんなに引られて振りきれない。
「今だ!」
俺はゾグの右肩に到達した。ここから顔面が見える。白い顔。目のない窪み。
(目がなくても関係ない)
俺は右拳を叩き込んだ。コスモライズの全力。胸の星型カラータイマーが輝き、全身の赤いラインが光の血管のように脈打つ。
ドガッ!!
拳が白い顔面に当たった。
さっきのゼロの拳とは手応えが違う。コスモライズの力が乗っている。白い肌が凹んだ。今度は戻らない。ひびが入った。顔面の表面に亀裂が走る。
「効く!」
俺は左拳を続けた。右左右。三連撃。顔面のひびが広がる。白い破片が夜空に散る。
『相棒! 上だ! ゾグの上!』
ゼロの叫び。
上を見た。ゾグの背後から白い翼が広がっていた。翼が俺に向かって叩きつけられる。
「っ!」
俺は肩から離れて後退した。翼が俺がいた場所を薙ぎ払う。風圧だけで体が持っていかれる。空中で体勢を整えるのがやっとだ。
だが翼のおかげで見えた。ゾグの背中。翼の付け根。そこに光る部分がある。胸の奥の核とは別の光。背中の中央、翼の付け根の間に淡い光が漏れている。
(あそこか? 本体の核は胸だが、弱点は背中か?)
『たぶんそうだ。翼の付け根からエネルギーが漏れてる。あそこがゾグの動力源の一つだ』
ゼロの分析。的確だ。
「絶花! あんな! 聞こえるか!」
『はい!』『はい!』
念話だ。王の駒の念話網が機能している。絶花とは繋がる。あんなとも繋がる。兵士の駒が念話網の中継をしているのか。
「絶花は右腕を離れて背後に回れ。翼の付け根だ。光が漏れてる部分がある」
『了解しました!』
絶花がZの身体で右腕から離れた。空中で体を反転させ、ゾグの背後に回り込む。速い。Zの飛行速度に絶花の剣士の位置取りが加わっている。無駄のない軌道だ。
「あんなは左腕を離れて地上へ。安全圏へ下がれ」
『え、でも…』
「お前の仕事は終わりじゃない。地上から見てろ。異常があれば教えろ。お前の目が俺の目だ」
『…はい!』
あんなが左腕を離れた。オーブの巨体が地上へ降りていく。着地の衝撃でアスファルトが割れる。だがあんなは倒れない。なんとか立っている。
(よし。これで配置は整った)
俺はゾグの正面。絶花は背後。あんなは地上。Zとオーブの幻影が左右に控えている。
五方向からの攻撃体制。
「やるぞ」
俺はゼロスラッガーを手に持った。二本の刃を合わせる。ゼロツインソード。長剣だ。プラズマスパークの光を受けて刃が光り輝く。
『相棒。Zとオーブの力を同時に使うぜ。コンボ技だ』
「やれ」
俺は突進した。ゼロツインソードを構え、ゾグの正面から切りかかる。
同時に空中のZの幻影が動いた。ゼスティウム光線の構え。両腕を十字に組む。光線が放たれ、ゾグの右肩を撃つ。
ギインッ!
右肩の白い肌が弾けた。Zの技だ。同時に俺の剣がゾグの胸を裂く。横一文字。白い肌が裂け、光が漏れる。
さらに左からオーブの幻影が動いた。オリジウム光線。両手を前に突き出し、光線を放つ。橙と赤の光線がゾグの左脇腹を撃つ。
ドガガッ!
三方向からの同時攻撃。ゾグの体が揺らぐ。初めてだ。ゾグが体勢を崩した。白い巨体が後退る。一歩。たった一歩だが後退った。
「効いてる!」
俺は叫んだ。同時に背後で絶花が動いた。
『太郎! 翼の付け根! 光が漏れてる!』
絶花の叫び。彼女は既にゾグの背後にいる。ゼットスラッガーを手に持ち、翼の付け根に狙いを定めている。
「やれ絶花!」
『はいっ! 推して参ります!』
絶花がZの身体でゼットスラッガーを振り下ろした。青い刃が翼の付け根の光る部分に深く食い込む。
ズドン!
深い。本体の胸より深く刺さっている。絶花の全力だ。剣士としての技術とZの身体能力が合わさった渾身の一撃。
ゾグが反応した。
初めてゾグが声を上げた。いや声ではない。音だ。白い巨体から低い振動が放たれた。悲鳴に近い音。鼓膜ではなく骨に響く周波数。
翼の付け根から白い光が爆発的に漏れ出した。絶花が間に合わず光に弾かれる。Zの巨体が空中に吹き飛ばされた。
「絶花!」
『大丈夫っ…!』
そうしていると、一つのライズコスモスキャニングの一つであるガイアが輝いている。
次回の王は
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妖怪王
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機械王
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怪獣王
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幻想王