サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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大地 Part9

駒を受け取ったまほの足元で、地脈が光った。

 

淡い。地下から漏れる光。地が呼応している。

 

「まほ」

 

「はい」

 

「お前が戦車だってのは、前で受け止める役だってことだ。今の前線を見ろ。Zとオーブは攻めてる。攻め続けてる。だが攻めるだけじゃ前には出られない。押し返す役が足りない」

 

まほは前線を見た。Zが剣を振る。オーブが光線を放つ。だが魔獣は一歩も後退していない。むしろ一歩ずつ前へ進んでいる。町の方へ。

 

「私が前で止めます」

 

「そうだ。だがな、それだけじゃ終わらない。止めたまま炉を止める奴が要る。絶花とあんなに行かせる。お前はそこで押さえ続けろ」

 

「どこまで」

 

「炉が止まるまで。地脈の供給が切れるまで。息が続く限り」

 

まほの目が俺を見た。瞬きもしない。

 

「やります」

 

「ああ」

 

俺は左腕を上げた。ウルトライズブレスレット。光が脈打っている。

 

「コスモライズを使う。お前にガイアの力を渡す。戦車の駒と一緒に使えば、前で止める力になる。だがな」

 

「何ですか」

 

「無茶すんなよ」

 

まほは少しだけ口元を動かした。笑ったんじゃない。でも笑う手前みたいな形だった。

 

「太郎がそれを言いますか」

 

「うるさい」

 

俺はウルトライズアイをブレスレットから外した。変身用のウルトラコスモレコードをスキャンする。メロディが流れる。光が俺の体を包み始める。

 

「絶花! あんな! 聞け!」

 

前線の二人が反応した。Zが振り返る。オーブも。

 

「まほが前で押さえる! お前らは変身解いて炉へ行け! 供給を切れ!」

 

「太郎さんは!」

 

「俺も変身する。側面から援護する。まほを一人にするな」

 

「わかりました!」

 

「おう!」

 

Zとオーブが同時に光を放った。巨人の姿が縮んでいく。二人の人間の体へ戻る。絶花とあんなだ。彼女たちは振り返らずに走り出した。崩れた坑道の入り口へ。あの狭い穴の中へ戻っていく。

 

「ソラ! 連絡網を維持しろ! 妖怪の避難を続けろ!」

 

「はい!」

 

ソラの声が夜の山の向こうから聞こえる。遠い。だが確かだ。

 

「まほ」

 

「はい」

 

「行け」

 

*  *  *

 

まほの全身が光に包まれた。

 

戦車の駒が反応する。黒と金の光が彼女の胸から広がり、地脈の淡い光と混ざる。

 

彼女の身体が大きくなっていく。

 

はじめは手のひら。それから腕。肩。背中。脚。光は形を作っていく。人間のシルエットから巨人のシルエットへ。輪郭が膨らみ、輪郭の中に色が生まれる。

 

赤と銀。

 

だがゼロの赤じゃない。もっと深い。大地の色だ。

 

頭部に光の翼のような形が浮かぶ。胸に大きな光の紋章。両腕に大地の力が宿ったような甲冑。

 

ウルトラマンガイア。

 

まほの体を包んだ光が完全に巨人の形を取ったとき、夜の山が震えた。

 

地脈が応えたのだ。大地そのものがこの変身を認めたみたいに。

 

ガイアが最初に動いたのは、戦うことじゃなかった。

 

ゆっくりと前線を見た。魔獣の位置。倒れた木々。押し出された地形。避難路。ソラのいる方向。全部を確認している。

 

その間に俺も変身した。

 

コスモライズ。

 

ウルトラコスモレコードをスキャン。光が俺を包む。赤と銀の巨人。通常のゼロと違って青がない。全身に赤いラインが走る。星型のカラータイマーが胸で脈打つ。

 

俺は地面を蹴った。

 

*  *  *

 

ガイアが動いた。

 

一歩。二歩。三歩。

 

ゆっくりだ。だが一歩が重い。足裏が地面を掴み、地脈の光を引っ張っている。猫又の妖術が巨人の動きに乗っている。足元に展開される見えない術式が、大地とガイアの間を繋いでいる。

 

まほは前で止まる役を選んだ。

 

魔獣が突進してくる。巨大な前脚が振り下ろされる。

 

ガイアは避けなかった。両腕を組んで受け止めた。

 

ドガアアアアン。

 

山が裂けるような音。周囲の木が全部吹き飛ぶ。ガイアの足元が地面にめり込む。膝が落ちそうになる。だが立っている。踏ん張っている。

 

戦車の力だ。筋力と耐久力が強化されている。普通なら一撃で吹き飛ぶ衝撃を受け止めている。

 

だが押し負けている。足元から亀裂が走る。踵が後ろへずれる。数十センチ。地面を削りながら。

 

俺は飛んだ。

 

ゼロの速度で側面へ回る。ゼロスラッガーを両手に構える。光を纏わせて魔獣の脇腹へ叩き込む。外皮が砕ける。だが再生する。三秒。四秒。

 

まだ遅い。炉が生きている。

 

ガイアが声を上げた。まほの声だ。巨人の体から響く。

 

「太郎さん。押さえます。あなたは側面から供給を遮断してください」

 

「遮断?」

 

「魔獣の足元。地脈と繋がっている場所があります。私の妖術で場所はわかります。そこを攻撃してください」

 

「わかった」

 

「右前脚の付け根。地表から十五メートルの位置。地脈の光が最も強く集まっている場所です」

 

俺は盤面を展開した。

 

巨人の視界に黒と金の升目が重なる。魔獣の右前脚の付け根。確かに光の流れが集まっている。地脈の供給路だ。

 

俺は跳んだ。

 

ゼロスラッガーを右前脚の付け根へ投擲する。二本の光のブーメランが空を裂き、一点へ収束する。

 

命中。

 

光が爆ぜた。

 

魔獣が咆哮を上げる。足が止まる。再生が遅れる。三秒が五秒に。五秒が八秒に。

 

ガイアが押し返す。両腕で魔獣の前脚を掴み、体を捻って横へ投げる。

 

ドガアアアアン。

 

山が二つぶつかるような音。魔獣の巨体が倒れる。土煙が舞い上がる。木々が押し潰される。

 

だが起き上がる。まだ動く。まだ再生する。供給路は一本潰したが他にもある。

 

「まほ!」

 

「まだあります。左後脚。尻尾の付け根。背中の中央」

 

「全部か」

 

「はい」

 

「一人で回れるか」

 

「回ります。あなたは援護を」

 

「了解」

 

魔獣が立ち上がる。四本の脚が地面を掴む。咆哮。地響き。

 

ガイアが前へ出る。俺は上空へ飛ぶ。

 

地上ではガイアが押さえる。空中からはゼロが供給路を叩く。二人がかりでも追いつかない。炉がまだ生きている限り。

 

「太郎さん! 絶花さんとあんなさんが着きました!」

 

ソラの声が念話で届く。

 

「炉へ向かってる。供給を切る準備をしてる」

 

「よし。まほ、もう少しだ」

 

「…はい」

 

ガイアの声が少し掠れている。肩の負傷が巨人の体にも影響している。戦車の力は痛みを消せない。限界は確実に近づいている。

 

だが退かない。まほは前で押さえ続けている。攻撃を全て受け流し、耐え、押し返す。

 

一人で背負う戦い方じゃない。

 

俺が側面にいる。絶花とあんなが地下で供給路を探している。ソラが退路を守っている。

 

全員が違う場所で、同じ方向へ向かっている。

 

ガイアの足元の地脈がまた光った。戦車の紋様が浮かぶ。

 

まほが俺へ念話を送った。

 

「太郎。私はここで止めます。あなたは上から全体を見てください」

 

「なぜ」

 

「王の仕事です。私は前を。あなたは盤面を」

 

まほの声に、迷いがない。

 

俺は上空へ上がった。夜の山を見下ろす。ガイアと魔獣の衝突。ソラと妖怪たちの移動。崩れた坑道の入り口。そして地下へ消えた二つの小さな光点。

 

絶花とあんな。

 

盤面が完成する。

 

五つの点がそれぞれの場所で、それぞれの役割を果たしている。

 

「全員、あと少しだ。死ぬなよ」

 

俺の言葉に四人の返事が重なった。

 

魔獣が吠えた。

 

鼓膜が破れそうだ。巨人の体で受けても尚、あの音は嫌だ。悲哀でも怒りでもない。機械が壊れかけたときに鳴らす警告音に近い。生き物の声じゃない。

 

ガイアが正面に立っている。両腕を広げて、魔獣の進路を塞いだ体勢だ。四本の脚が地面を掘り返しながら押してくる。ガイアの足裏がめり込んで、地面に二本の溝が走る。

 

俺は上空に滞空していた。ゼロスラッガーを両手に構えたまま、魔獣の背中を見下ろす。背中の中央にも供給路がある。さっきから叩いているが、再生が追いつく。

 

「太郎さん。右前脚の供給路、再起動しています」

 

まほの念話が届く。ガイアの視界と俺の盤面が重なる。右前脚の付け根、さっきゼロスラッガーで破壊したはずの供給路が、赤黒い光を取り戻している。

 

「見えてる。もう一回叩く」

 

俺は急降下した。ゼロスラッガーを右前脚の付け根へ投擲する。二本のブーメランが螺旋を描いて突き刺さる。光が爆ぜて供給路がまた途切れる。だんだん綱引きみてえだ。こっちが切れば向こうが繋ぐ。向こうが繋げばこっちが切る。

 

「ソラ、地下の状況は」

 

念話を飛ばす。ソラの声が少し遠い。地脈の光が念話を阻害している。

 

「絶花さんとあんなさんが制御区画に到着しました。振動が強くて通路が狭まってきてます」

 

「わかった。二人へ繋げ」

 

「はい」

 

念話が切り替わる。絶花の声が入った。

 

「太郎。制御区画に入りました。壁の術式が全部光ってます。炉の中心が見えます」

 

「状態は」

 

「制御装置が三つ並んでます。さっきまほさんが壊した二つは止まってる。残りの一つが生きてる。あれが地脈と炉を繋いでる」

 

あんなの声に切り替わる。

 

「太郎、この制御装置、炉本体と直結してる。外から術式を剥がしても接続が残る。まず地脈側の接続を切らないと、炉を壊した瞬間に地脈が暴走するよ」

 

「つまり順番がある」

 

「そう。地脈の接続を切ってから炉を壊す。逆だと町の地下へ衝撃が走る」

 

「時間はどのくらいだ」

 

「接続の切断に三分。その後炉の破壊に一分。全部で四分」

 

四分。

 

俺は地上の状況を見た。ガイアが魔獣の突進を止めている。膝が沈みかけている。戦車の強化でも限界が近い。まほの肩の負傷が巨人の体に響いているはずだ。呼吸の間隔が短くなっているのが念話からわかる。

 

四分は長い。

 

「まほ」

 

「はい」

 

「あと四分必要だ。地下で接続を切ってから炉を壊す。その間持ちこたえられるか」

 

「…持ちこたえます」

 

間があった。一秒ほど。その一秒で、まほは何かを計算した。自分の体の限界と、四分の長さを。

 

「絶花。あんな。聞こえるか」

 

まほの声が念話で全員へ届く。

 

「はい」

 

「聞こえるよ」

 

「地脈の接続を切るまで三分。その間私は魔獣をここで止めます。町の方へは逃がしません。だから確実に切ってください」

 

「まほさん、急がなくていいですか」

 

絶花の声に、心配が滲む。

 

「急がなくていいとは言えません。でも急いで失敗したら終わりです。確実にお願いします」

 

急かしてない。だが待ってる。まほは前線で四分間の猶予を買っている。自分の体で。

 

「太郎さん」

 

「何だ」

 

「側面の供給路、三本残ってます。あなたが叩いている一本と、私が抑えている二本。この三本が切れれば魔獣の再生が半分以下になります。四分間、それを維持できれば」

 

「維持する。お前が前で止まってる限り、俺が側面を叩き続ける」

 

「ありがとう」

 

まほは礼を言った。硬い声じゃない。でも崩れた声でもない。信頼に基づく報告の声だ。前にならこういう言い方はしなかった。全部自分でやるから、誰に何を任せているか報告する必要がなかった。

 

魔獣がまた動いた。尻尾が横に薙がれる。

 

俺は飛んで避ける。ゼロスラッガーを投擲して尻尾の付け根を斬る。光が砕けて供給路が一瞬途切れる。だが三秒で繋がる。

 

「くそっ、やっぱり早い」

 

「太郎さん。右前脚の角度を変えてください。今より十五度右へ。私が妖術で拘束を入れます」

 

「十五度右か」

 

俺は位置を変えた。ゼロスラッガーを右前脚の角度を変えて叩く。命中位置が変わる。まほの妖術がそこへ重なる。

 

ガイアの足元から光の紋様が広がった。猫又の術式が巨人の力に乗って、魔獣の右前脚を地面へ縫い付ける。岩の外皮が割れて、脚が動かなくなる。

 

「効いた。脚が止まった」

 

「三本のうち一本を固定しました。残り二本。太郎さん、左前脚の供給路を叩いてください。私が後ろの二本を抑えます」

 

「一人で二本か」

 

「戦車の力で耐えられます。あなたは側面を頼みます」

 

俺は左前脚へ回った。ゼロスラッガーを叩き込む。供給路が砕ける。再生が始まる前に、もう一本を追い打つ。二本同時に砕けば再生までの時間が倍になる。

 

「ソラ、地下の状況」

 

「接続の切断を始めました。あんなさんが術式を解析中です。三分経過…いえ、あと二分三十秒」

 

二分三十秒。

 

ガイアの膝がまた沈んだ。魔獣が残りの二本の脚で突進している。まほが後ろの二本の供給路を妖術で抑えながら、正面から押し返す。

 

「まほ、無理するな。こっちも使え」

 

「…お願いします」

 

初めて頼った。

 

俺はガイアの横へ降りた。ゼロの体で魔獣の左側面へ肩を入れる。押す。魔獣の体が斜めにずれる。ガイアがその隙に体勢を直す。膝が戻る。足裏が地面を掴み直す。

 

「ありがとう」

 

「言ったろ。一人で踏ん張るなって」

 

「はい」

 

*  *  *

 

「接続、切断しました!」

 

あんなの声が念話で弾けた。

 

同時に、魔獣の体から光が抜けた。

 

見えた。背中を走っていた赤黒い光の筋が、一本消えた。次に左前脚。次に右後脚。パッパッパッと電球が切れるみたいに、地脈との接続が順番に消えていく。

 

「炉を壊します!」

 

絶花の声。

 

地下で音がした。ドン。鈍い。だが確実な破壊音。天聖が炉の中心を斬った音だ。

 

地上の魔獣が悲鳴を上げた。さっきまでの機械的な警告音じゃない。初めて生き物みたいな声を出した。

 

外皮の再生が止まった。

 

俺が斬った右前脚の傷が、開いたまま残っている。光が流れ込まない。塞がらない。三秒経っても。五秒経っても。十秒経っても。

 

「再生が止まった」

 

「確認しました」

 

まほの声が変わった。今まで抑えるために使っていた声じゃない。攻撃に切り替える声だ。

 

「太郎さん。射線をお願いします」

 

「了解」

 

俺は飛んだ。魔獣の正面から離れて、右側面へ回る。ゼロスラッガーを胸部へ装着する。ゼロツインシュートの構え。だが撃たない。まずは射線を確保するだけ。

 

魔獣がよろめいた。四本の脚のうち、二本が動かない。供給路を失った脚だ。残り二本で立ち上がろうとするが、体が傾く。

 

ガイアが前に出た。

 

両腕を組んでいた構えが解かれる。攻撃の構え。両手を前に突き出す。胸の光の紋章が脈動を始める。地脈の残滓がガイアの体へ集まっていく。

 

「フォトンストリーム」

 

ガイアの両手から光の奔流が放たれた。

 

青白い光の河。魔獣の体を正面から飲み込む。外皮が砕ける。今度は再生しない。光が岩の体を削り取り、粉々にしていく。

 

魔獣が最後の力で咆哮した。残った二本の脚で踏ん張り、ガイアへ体当たりを試みる。だが膝が曲がらない。蓄積した力が尽きかけている。

 

俺はゼロツインシュートを放った。

 

二本のゼロスラッガーから放たれる光線が、ガイアの光線に重なる。二つの光が魔獣の体で交差する。

 

魔獣の体が崩れた。

 

上から下へ。外皮が剥がれ、内側の構造が露わになり、それも砕けていく。岩の塊が土に戻っていく。光が消えていく。赤黒い脈動が止まっていく。

 

最後の一片が地面に落ちたとき、振動が止まった。

 

*  *  *

 

静寂が来た。

 

虫の音が聞こえる。いつの間にか戻ってきていた。夜明け前の空が東から白んでいる。

 

ガイアの姿が光に包まれて縮んでいく。まほの体へ戻る。俺も変身を解いた。ゼロの巨人が光となって消え、俺の体に戻る。

 

まほは膝から崩れ落ちた。

 

弓を持ったまま。左手で地面を支えている。右肩の包帯はもう原型がない。血と土と汗で黒くなっている。

 

俺は隣に立った。何も言わず立った。

 

「…終わりました」

 

まほの声は掠れていた。

 

「ああ。終わった」

 

「皆さんは」

 

「地下から出てくる。ソラが案内してる」

 

念話にノイズが混じらなくなっていた。地脈の暴走が止まったからだ。ソラの声が鮮明に届く。

 

「太郎さん! 絶花さんとあんなさんが地上に出ました! 怪我はありません!」

 

「よし」

 

俺はまほへ手を伸ばした。

 

まほは俺の手を見て、一秒止まった。前と同じだ。だが今度は一秒で済んだ。俺の手を取って、立った。

 

「立てるか」

 

「立てます。戦車の力はまだ残っていますから」

 

「残ってるのか」

 

「少しだけ。でも…もう消えそうです」

 

まほの足元で、戦車の駒の光が明滅していた。ゆっくりと。消えかけの蝋燭みたいに。

 

「太郎」

 

「何だ」

 

「…ありがとうございます。皆さんの分も」

 

俺は何も答えなかった。答える必要がなかった。

 

崩れた魔獣の残骸が土に戻っていくのを、二人で見ていた。夜が明ける。東の空が白い。橙の帯が広がり始める。

 

山は静かだった。さっきまでの轟音が嘘みたいだ。虫が鳴いている。風が吹いている。杉の葉が擦れる音がする。

 

足音が聞こえた。三つ分。

 

絶花が先に来た。天聖を腰に戻して、息を切らしながら走ってくる。あんなが後ろから。ソラが最後。妖怪たちを安全な場所へ置いてきたのだろう。

 

「太郎! まほさん!」

 

絶花がまほの前に滑り込んだ。傷を見て、顔を歪める。

 

「まほさん、肩」

 

「大丈夫です。かすり傷です」

 

「絶対にかすり傷じゃないです」

 

「…大丈夫です」

 

絶花はまほの肩をじっと見てから、何も言わずに包帯を取り出した。

 

あんなが俺の隣に来た。

 

「炉は完全に壊れたよ。地脈の接続も全部切れた。町への影響はない」

 

「あんな。地脈の状態は」

 

「安定してる。暴走の痕跡は残ってるけど、流れは正常に戻りつつある。一日もすれば自然に修復されるでしょ」

 

「よかった」

 

ソラが到着した。走ってきたのか息が上がっている。だが顔は明るい。

 

「妖怪たちを町外の避難ポイントへ移動しました。全員無事です」

 

「怪我は」

 

「軽いものです。一人の妖怪が脚を痛めていましたが、歩けないほどではありません」

 

五人揃った。

 

俺は全員を見た。絶花はまほの肩を巻いている。あんなは術式の残骸を拾い集めている。ソラは膝に手をついて呼吸を整えている。まほは弓を持ったまま、包帯を巻かれている。

 

全員生きてる。

 

「帰るぞ」

 

俺の言葉に、四つの声が重なった。

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
  • 幻想王
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