サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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盾の少女 Part8

制御中枢は浮いていた。

 

魔術炉の残骸の中に、黒紫色の人型が立っている。顔がない。輪郭だけ。だが確かにそこにいる。

 

俺はゼロの体で上空を見上げていた。Aが隣にいる。赤と銀の巨人。その周囲を十一基のビットステイヴが旋回している。

 

「スレッタ。あいつが動くぞ」

 

言い終わる前に、中枢が上昇した。

 

速い。残骸を蹴ったわけでもない。浮いた。重力がないみたいに。黒紫色の光の尾を引きながら、まっすぐ上へ。

 

「逃がしません」

 

Aが右手を上げた。十一基のビットステイヴが反応する。旋回が止まる。十一基が一斉に散開した。

 

立体配置だ。

 

三基が上空へ。四基が中枢の左右へ。二基が下方から。残る二基がAとゼロの周囲に残留する。

 

「逃走経路は上だけじゃない。斜め上方へ三方向。地上への射線を避けて配置します」

 

スレッタの声に迷いない。変身直後の戸惑いは消えていた。

 

「やれ」

 

「はい」

 

Aが左腕を前に突き出した。手のひらが光る。

 

十一基のうち、上空の三基が先行した。回転する。円盤状の光が形成される。ウルトラギロチン。円盤が回転しながら中枢の方角へ飛ぶ。

 

三枚の円盤が異なる角度から中枢へ迫る。

 

中枢が反応した。黒紫色の光が膨らむ。防御陣。幾重にも重なった術式の壁が中枢の周囲に展開する。

 

円盤が壁に当たる。

 

ガガガ。

 

三枚連続。火花が散る。だが貫けない。壁が厚い。再生が速い。切ったそばから繋がる。

 

「硬いです」

 

「一枚ずつ剥がせ。急ぐな」

 

「はい」

 

Aが右腕を上げた。左右の四基が動く。

 

今度は円盤じゃない。縦方向の斬撃。バーチカルギロチンを応用した光の刃だが、ビットを発射台にしている。刃がビットの表面から放たれ、弧を描いて中枢の側面へ届く。

 

四本の光刃が防御陣の接合部を狙う。上と左右から同時。

 

「接合部が見えます。三層構造です。外側の層の継ぎ目は…ここ」

 

Aが指を動かす。ビットが追従する。光刃が継ぎ目へ滑り込む。

 

パリン。

 

一層目が砕けた。黒紫色の破片が散る。だが二層目がすぐに再生し始める。

 

「一層目、落ちました。でも二層目が再生してます」

 

「再生する前に次を切れ。継ぎ目は同じ場所か」

 

「いえ、二層目は位置がずれてます。上に三センチ」

 

「見つけろ」

 

「見つけます」

 

下方の二基が動いた。下から上へ。光刃が弧を描く。二層目の継ぎ目を狙う。

 

パリン。

 

二層目が砕けた。

 

中枢が唸った。音ではない。振動だ。黒紫色の光が脈打つ。防御陣の再生速度が変わる。速くなる。

 

「再生が速くなりました」

 

「俺が時間を作る。お前は集中しろ」

 

俺は前に出た。

 

ゼロスラッガーを両手に構える。中枢へ向かって突進する。中枢の防御陣から光弾が放たれた。黒紫色の弾丸。六発。俺の方角へ。

 

ゼロスラッガーで斬り払う。一刀。二刀。三発目を肩で受けた。熱い。だが砕ける。四発目を避ける。五発目を剣で弾く。六発目が腕を掠める。

 

「太郎さん!」

 

「構わん。続けろ」

 

中枢が俺の方角へ意識を向けた。その隙にAが動く。

 

十一基のビットが一斉に展開する。今度は全基だ。

 

Aの両手が光る。カラータイマーとウルトラスターが同時に明滅する。二つの光源から放たれた光が十一方向へ分かれる。

 

各ビットが発射台になる。

 

十一方向から同時に切断光線が放たれた。

 

軌道は十一種類だ。

 

上空の三基は円盤状のウルトラギロチン。左右の四基は縦方向のバーチカルギロチン。下方の二基は横方向の水平ギロチン。残る二基は斜め上方から降る斬撃。

 

十一本の光線が中枢の防御陣へ殺到する。

 

パリンパリンパリン。

 

連続した音。三層目が砕ける。四層目が砕ける。五層目が——。

 

「五層目、固いです」

 

「残りのビットで盾を作れ。反撃が来る」

 

「はい」

 

スレッタが即座に判断した。十一基のうち六基を盾として展開する。残る五基を攻撃に回す。

 

盾と刃を分けた。

 

六基がAと俺の前に並ぶ。青白い光の壁。その背後から五基が光刃を放つ。

 

中枢が反撃した。

 

防御陣の残りから黒紫色の光柱が立ち上がる。太い。直撃したら吹き飛ぶ。光柱が六基の盾へ当たる。

 

ドン。

 

衝撃。Aの体が後ろへ滑る。俺も後ろへ下がる。盾が耐えている。だがひびが入っている。

 

「持ちます」

 

「持たせすぎるな。三秒でいい」

 

「三秒で切ります」

 

五基のビットが動く。盾の隙間から光刃を放つ。五層目の継ぎ目を狙う。

 

一秒。二秒——。

 

パリン。

 

五層目が砕けた。

 

光柱が止んだ。中枢の力が揺らぐ。地脈から吸い上げていたガイアの光が、もう供給されていない。

 

「ガイアの光が戻ってます」

 

まほの声が念話で届く。地上からだ。

 

「中枢の動きと連動してます。地脈への逆流が始まった今、あいつの供給は止まってる」

 

「つまり再生できなくなる」

 

「はい。今のうちに」

 

「スレッタ聞こえたか」

 

「聞こえました。再生が止まる前に切ります」

 

五基の攻撃ビットが全方向へ展開する。残る六基の盾も解いて攻撃に回す。全十一基。

 

Aが両腕を組んだ。カラータイマーとウルトラスターが同時に輝く。

 

十一基のビットがAの周囲で輪を作る。回転する。速くなる。

 

「最後です。全部纏めて切ります」

 

中枢が動いた。上へ。逃げる。

 

「逃さない」

 

俺は飛んだ。

 

ゼロの速度で中枢の上方へ回る。ゼロスラッガーを構える。中枢の進路を塞ぐ。

 

「スレッタ、道は開いてる」

 

「はい」

 

Aの周囲で回転していた十一基のビットステイヴが停止した。

 

そして放たれた。

 

十一方向から。十一本の切断光線。

 

パリンパリンパリンパリンパリンパリンパリンパリンパリンパリンパリン。

 

十一連続。

 

六層目から十層目までが一気に砕けた。黒紫色の破片が空に散る。花火みたいだ。だが綺麗じゃない。禍々しい色の花火だ。

 

中枢が剥き出しになった。

 

黒紫色の人型が揺れている。防御陣がない。再生もしない。ガイアの光の供給が止まっているからだ。

 

「今です」

 

スレッタの声が弾けた。

 

俺は中枢の進路を塞いだままゼロスラッガーを構える。

 

Aが十一基を呼び戻した。

 

十一基のビットステイヴがAとゼロの周囲に並ぶ。二体の巨人を中心にして円陣を形成する。

 

最後の一撃の準備だ。

 

「スレッタ」

 

「はい」

 

「次は任せた」

 

Aが頷いた。十一基のビットが光り始める。カラータイマーとウルトラスターの光が十一方向へ分かれ各ビットへ流れ込む。

 

俺はゼロスラッガーを胸部へ装着した。ゼロツインシュートの構え。

 

二つの光が重なる準備が始まった。

 

中枢が震えている。逃げようとしている。だが進路は塞がれている。上にはゼロ。周囲には十一基のビット。

 

逃げ場がない。

 

「行くぞ」

 

「はい」

 

二体の巨人と十一基の盾が、同時に光を放つ準備を整えた。

 

空に赤と銀の光が集まり始める。

 

次の一撃で、全てを終わらせる。

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
  • 幻想王
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