サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

840 / 864
盾の少女 Part9

中枢が動いた。

 

防御陣を張り直している。黒紫色の光が何層にも重なって人型の周囲を包む。さっき十一枚の刃で剥がしたはずの壁が、また生まれている。

 

「再生した」

 

「でも供給は止まってます。長くは持ちません」

 

スレッタの声が念話で届く。Aの体を通した声。だが確信がある。

 

「あと何秒持つ」

 

「三十秒。いえ、二十秒です」

 

「足りるか」

 

「足ります」

 

即答だ。変身したばかりの旧友が、もう戦場の時間を読んでいる。

 

俺はゼロの体で中枢の上方を押さえた。ゼロスラッガーを両手に構える。中枢が上へ逃げようとすれば即座に叩き落とす位置だ。

 

「スレッタ。配置は任せる」

 

「はい」

 

Aが両腕を広げた。

 

十一基のビットステイヴがAの周囲から散開する。円陣を解き、中枢を包囲する立体配置へ移る。三基が上空。四基が左右。二基が下方。二基がAの側面。

 

中枢は包囲の隙間を探している。黒紫色の光が揺れる。右へ。左へ。上へ。だがどこにも隙間がない。十一基が角度を変えながら動いている。スレッタが包囲の穴を塞いでいる。

 

「一基目」

 

Aが言った。

 

上空の一基が光り始める。赤と銀の光。ビットの表面から光が溢れ、Aの方角へ流れる。光の帯だ。一筋の光がビットからAへ伸びる。

 

「二基目」

 

左右の一基が光る。二本目の光の帯。

 

「三基目。四基目」

 

連続してビットが光る。光の帯が増えていく。Aの体へ流れ込む。カラータイマーとウルトラスターが明滅を速める。光を受け取るたびに輝きが強くなる。

 

中枢が反応した。

 

まずいと悟ったのだろう。防御陣の一部を解き、攻撃に回す。黒紫色の光弾が三発。Aの方角へ。

 

俺は動いた。

 

ゼロスラッガーで一発目を斬る。二発目を体で受ける。熱い。だが砕ける。三発目を避けながらAの前に出る。

 

「集中しろ。防御は俺が持つ」

 

「はい」

 

五基目。六基目。七基目。

 

光の帯が七本になった。Aの体が赤く輝いている。カラータイマーの青とウルトラスターの蒼が交互に明滅し、受け取った光を体内で一つにまとめている。

 

中枢が本格的に暴れ始めた。

 

防御陣を全部解いた。残った力を全部攻撃に回す。黒紫色の光柱が四方へ放たれる。逃げ道を作るためだ。

 

「逃がすか」

 

俺はゼロツインシュートの構えを解いた。両腕を広げて光柱を受け止める。ゼロの体が軋む。腕が痺れる。だが退かない。

 

一本目の光柱が消える。二本目が消える。三本目が来る。俺は両腕で受け止める。足元が地面にめり込む。

 

「太郎さん!」

 

「続けろ! まだだ!」

 

八基目。九基目。十基目。

 

光の帯が十本になった。Aの体全体が光に包まれている。赤と銀の巨人が光そのものになりかけている。

 

中枢が最後の力を振り絞った。

 

黒紫色の光が膨れ上がる。自爆覚悟だ。周囲へ撒き散らせば町に被害が出る。

 

「スレッタ! 早くしろ!」

 

「十一基目!」

 

最後の一基が光った。

 

十一本目の光の帯がAへ流れ込む。

 

瞬間。

 

Aの体から光が弾けた。

 

十一基のビットステイヴが中枢の周囲で静止する。各端末から伸びた光の帯がAへ集まり、Aの中で一つになる。

 

カラータイマーとウルトラスターが同時に最大出力で輝く。

 

「スペースQ!」

 

スレッタの叫びだ。

 

Aの両腕が前に突き出される。手のひらから光が放たれる。

 

光の奔流。

 

赤と銀と青が混ざった巨大な光線。十一基のビットから受け取った力が一つになった決め技。光線はまっすぐ中枢へ向かう。

 

中枢が防御陣を張り直そうとする。黒紫色の壁が一枚。二枚。三枚。

 

スペースQが壁を貫く。

 

一枚目を砕く。二枚目を溶かす。三枚目を粉々にする。

 

中枢本体に直撃した。

 

黒紫色の人型が光に飲み込まれる。輪郭が崩れる。手足が消える。胴体が消える。最後に頭部が崩れて——何も残らなかった。

 

光が中枢を貫いて空の彼方へ抜ける。

 

消滅。

 

音もなく、人工魔術炉の中枢は消えた。

 

*  *  *

 

スペースQの光が収まる。

 

Aの腕が下りる。カラータイマーの明滅がゆっくりになる。ウルトラスターの輝きも落ち着く。

 

十一基のビットステイヴがAの周囲へ戻ってくる。一基ずつ。ゆっくりと。スレッタの元へ帰る。

 

「全部戻りました」

 

スレッタの声が念話で届く。震えている。だが恐怖じゃない。安堵だ。

 

「エアリアルが。全部」

 

十一基がAの周囲で旋回している。いつもの光景だ。スレッタのビットがスレッタの周りを飛んでいる。

 

空を見上げた。

 

青い空。雲が流れている。太陽の光が戻っている。さっきまで暗かったのが嘘みたいだ。

 

地上から音が聞こえる。

 

歓声じゃない。安堵のざわめきだ。住民たちの声。避難誘導していたあんなとソラの声も混じっている。

 

「太郎!」

 

絶花の声。念話だ。

 

「地脈の逆流が完了しました。ガイアの光全部戻りました。町の揺れも収まってます」

 

「あんな、そっちは」

 

「住民避難完了。全員無事」

 

「ソラ」

 

「妖怪たちも安全です! 全員無事です!」

 

四人の声が念話に重なる。

 

全員生きてる。町も守れた。

 

俺は隣を見た。

 

Aが立っている。赤と銀の巨人。胸のカラータイマーが静かに明滅している。周囲に十一基のビットステイヴ。

 

「スレッタ」

 

「はい」

 

「よくやった」

 

短く言った。それだけだ。

 

Aが俺を見た。黄白色の両眼。スレッタの意思がそこにある。

 

「ありがとうございます」

 

Aが頷いた。

 

*  *  *

 

変身を解く。

 

光の中で体が縮んでいく。巨人の感覚から人間の感覚へ戻る。地面に足がつく。土と草の匂い。風の冷たさ。

 

スレッタも変身を解いた。

 

隣に立っている。泥だらけの服。だが顔色はいい。手袋を外して、素手でビットを撫でている。

 

「エアリアル」

 

スレッタが呼びかけた。ビットが応える。一基だけじゃない。十一基全部だ。スレッタの周囲で旋回している。

 

「戻ってきてくれた」

 

スレッタの目が潤んでいる。だが泣かない。笑っている。

 

俺はスレッタを見た。

 

女王の駒を受け取ったばかりの旧友だ。一年前はただのクラスメイトだった。今は俺の家臣で、十一基の盾を使う光の戦士だ。

 

「スレッタ」

 

「はい」

 

「行くぞ。みんな待ってる」

 

「はい!」

 

スレッタが振り返った。ビットがついてくる。十一基全部。

 

俺たちは歩き出した。

 

崩れた道路を越えて傾いた塀を回って、町の方へ。

 

朝の光の中に、四人の姿が見えた。

 

絶花とまほが地割れの方から走ってくる。あんなとソラが住民の中から手を振っている。

 

全員無事だ。

 

長い戦いだった。

 

だが終わった。

 

俺は空を見上げた。

 

青い空。雲一つない。

 

今日はよく晴れている。

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
  • 幻想王
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。