サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
「相棒!」「っ」
眼前にいるギレーヌを相手に対して、このままでは危険だと判断した。
俺の考えを既に読んでいたゼロからの言葉を聞くと共に、俺は既にウルトラゼロアイを取り出して、瞬時に。
「ジュワァ」
その言葉と共に俺はゼロへと変身を終える。
だが、その大きさは普段の巨人ではなく、人間大と変わらないようにしている。
『分かっていると思うが、この大きさでは、それ程、長い時間は戦えない』
「あぁ、勿論」
ゼロからの言葉を聞きながら、俺はそのままゆっくりと構える。
すると、ギレーヌはゼロの姿を見ると。
「・・・なるほど、確かにそっくりだな」
「そっくり?どういう意味だ?」
「・・・今のお前には関係ない」
ギレーヌが質問に答えるよりも前に、その手にある剣をこちらに向けていた。
対して、俺達もゼロスラッガーを両手に持って、構える。
ギレーヌが踏み込んできた。
速い。大剣の間合いが俺のゼロスラッガーより長い。だが、その分を踏み込む速度で補っている。一歩。二歩。三歩で距離が詰まる。
俺は右へ滑った。ゼロスラッガーを右の手で横に払う。大剣の側面を弾く。軌道が逸れる。だが、ギレーヌは逸れた剣をそのまま流して、返しの斬り上げに繋げた。
(流された)
俺の攻撃をいなしたんじゃない。俺が弾した剣の運動を利用して、次の一撃に繋げた。無駄がない。すべての動きが次に繋がっている。
「速いな」
「遅い」
ギレーヌの声が短い。感想じゃない。事実を述べているだけだ。
二太刀目が来る。縦。上から下。大剣の重さが乗っている。俺は左のゼロスラッガーで受ける。刃と刃がぶつかる音が路地に響く。金属音。火花が散る。
重い。だが、受けた。次は——。
横。右から。俺の右側に回り込んでいる。一太刀目を縦で出して、俺が受けた方向を逆に突いた。俺が左に力を入れたから、右が空く。それを読んでいる。
(先を読まれてる)
俺は右のゼロスラッガーで横薙ぎを払う。だが間に合わない。ギレーヌの剣が俺の脇を掠める。スーツが裂ける。皮膚は切れていない。だが風圧で体が揺れる。
「夏目!モブ!下がってろ!」
俺は叫びながら飛んだ。ギレーヌから離れる。二人の方角とは逆。路地の奥へ。
ギレーヌが追ってくる。だが、二人の方へは行かない。俺を追っている。俺が離れれば離れるほど、二人から遠ざかる。
(いい。こっちだ)
路地の奥へ。広い場所に出る。駐車場だ。車がない。時間帯的に空いている。コンクリートの地面。照明は頭上の街灯一本。
ギレーヌが駐車場に入ってきた。大剣を肩に担いでいる。だが、構えているのと同じだ。いつでも振れる。
「お前、さっき言ったな。そっくりだって」
俺が聞いた。戦いながら聞く。ゼロスラッガーを構えたまま。
「ああ」
「誰とそっくりなんだ」
「今のお前には関係ない」
ギレーヌは答えを切った。剣を担いだまま一歩踏み込む。だが、その一歩で間合いが三メートルから一メートルに変わる。踏み込みの深さが異常だ。
俺は下がった。だが、下がる先がない。壁がある。駐車場の端。コンクリートの塀。
(壁際に追い込まれた)
ギレーヌの目が細くなる。琥珀色の瞳。状況を読んでいる。俺が逃げ場を失ったことを。
「正直に言うと、お前のことは殺したくない」
ギレーヌが言った。剣を下ろしていない。だが声は少し低い。
「なら止めろ」
「止める訳にはいかない」
「誰の命令だ」
「お前には関係ない」
同じ言葉だ。関係ない。俺には関係ない。だが俺を殺しに来ている人間の命令が関係ないわけがない。
ギレーヌが動いた。
踏み込み。縦の一撃。大剣が上から降ってくる。
俺は右へ跳んだ。塀の上を蹴って横へ移動する。大剣がコンクリートを砕く音が後ろで響く。石片が飛ぶ。
「お前の剣、何の流派だ」
「実戦だ」
「実戦?」
「師はいない。習ったのは戦場だ」
戦場。この女が戦場にいた。異界の戦場か。それともこの世界の戦場か。
俺は着地した。塀の上から飛び降りて駐車場の中央へ。距離を取る。三メートル。
(ゼロ、時間は)
『あと二分だ。このサイズでいられるのは』
二分。短い。
ギレーヌが来る。横薙ぎ。俺は右のゼロスラッガーで受ける。だが、ギレーヌは受ける瞬間に剣の角度を変えた。俺の刃が空を切る。大剣が脇を掠める。スーツがまた裂ける。
(角度を変えられた)
受けようとした瞬間に角度を変えられて、俺の受けを無効化した。剣術の技術だ。俺は剣術を知らない。ゼロの力で身体能力は上がっている。だが技術は上がらない。
「夏目、周りは!」
夏目の声が路地の向こうから聞こえる。
「敵の増援はいない。退路は右の路地だけだ」
「わかった」
俺はギレーヌと距離を取った。駐車場の中央。照明の下。
ギレーヌが見ている。俺の全身を。何かを測っている。
「変身の限界が近い」
ギレーヌが言った。俺の表情か。呼吸のリズムか。何かを読んだのだ。
「バレたか」
「隠せてない。動きが鈍くなった」
鈍くなった。ゼロの言葉通り、このサイズでいられる時間は短い。力の消耗が速い。身体能力が落ちてきている。足元が少し重い。
ギレーヌが踏み込んできた。
速い。さっきより速い。俺の動きが鈍くなった分、相対的に速く見える。だが実際に速くなっているのかもしれない。限界が近いことを知って、攻勢を強めている。
一太刀目。横。俺は下がる。だが、塀がある。もう下がれない。
二太刀目。縦。俺は右のゼロスラッガーを上に上げて受ける。だが、角度が合わない。剣の重さに腕が耐えきれない。右腕が折れそうだ。
三太刀目。
来る。
剣先が胸元へ向かっている。俺の体勢が崩れている。塀に背中がついている。逃げ場がない。
「まずいっ」
「っ」
ゼロスラッガーを交差させながら、ギレーヌからの一撃を受け止める。
単純な身体能力は、おそらくは俺達の方が強いが、ギレーヌの剣術は、遙かに上。
しかも、どういう訳か、俺達と相性が悪い。
だが。
「まずいっ」
それよりも早く、俺の変身が解除される。
「貰った」
そうして、俺が一撃を貰う直前、身体が宙を舞った。
「えっ」「っ」
それが何なのか、見つめた先にはモブが超能力で飛んでいた。
「これは、魔導、いや、どちらでも良い」
ギレーヌは呟きと共に、こちらに襲い掛かる。
だが、モブの超能力のおかげで天高くまで飛ぶ事が出来た。
「・・・逃がしたか」
そう、ギレーヌの言葉を余所に俺達は、その場を撤退する事は出来た。
次回の王は
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