サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
拳が降ってきた。
受けた。両腕を交叉して、ゼロの腕力で耐える。だが赤い形態の膂力はそれを軽々と押し潰しに来る。骨がきしむ。いや、骨じゃない。ゼロの体だ。でも痛みは俺のものだ。
地面が割れる。足がめり込む。膝から下が沈む。
「くそっ」
腕が悲鳴を上げている。カラータイマーの点滅が早い。あとどれくらいだ。三十秒か。二十秒か。
ダークロプスゼロが更に力を込める。赤い装甲が唸る。押し潰される。このままじゃ潰れる。
だが。
諦めるかよ。
「ゼロ!」
『ああ!』
声が重なった。俺とゼロの声が同時に鳴る。迷いはない。ゼロも同じだ。こいつは最後まで諦めない。だから俺も諦めない。
「やろう」
『やろう』
左手のウルトライズブレスレットが光る。ウルトライズアイを引き抜く。ブレスレット上のウルトラコスモレコードをスキャンする。
メロディが流れた。
変身メロディ。今まで聞いたことのない音が体の中を駆け抜ける。光が全身を包む。銀と赤が再構成される。赤いラインが走る。胸のカラータイマーが星型に変わる。
『ゼロ・コスモライズ!』
声が響いた。俺の声じゃない。ゼロの声でもない。ウルトラコスモレコードそのものが叫んだみたいだ。
光が晴れる。
俺は立っていた。ウルトラマンゼロコスモライズ。
ダークロプスゼロが拳を引いた。一瞬だ。一瞬の隙。
その時、見えた。
コスモレコードウォールが目の前に展開した。見えたこともない光景だ。壁一面に刻まれた歴代ヒーローの記録。その中で二つの光が脈打っている。
共鳴している。
俺を呼んでいるみたいに。
「お前らが来いって言うのか」
ウルトライズアイを向けた。スキャンする。光が反応する。
『ダイナ!』
一つ目の音声。名前が呼ばれる。
『コスモス!』
二つ目の音声。もう一つの光が応える。
二つの光が弾けた。
* * *
光は境内の方角へ飛んだ。
モブの元へ。
夏目の元へ。
俺には見えなかった。だがゼロの感覚が教えてくれる。二つの光が二人の人間と重なった。共鳴した。受け入れた。
* * *
モブの体から光が溢れた。
「えっ」
モブの声。驚いている。当然だ。突然全身が光に包まれて、体が巨大化し始めているのだから。
銀と赤。青のライン。スリーカラーストライプ。
ウルトラマンダイナ。
モブがウルトラマンダイナになった。
「うそ、僕が、ウルトラマン!?」
声が震えている。自分の手を見ている。銀色の巨大な手。光る体。確かにウルトラマンだ。
* * *
夏目の体も光に包まれた。
青と銀。優しい光。柔らかい色。
ウルトラマンコスモス。
夏目は両手を見て、それから空を見た。自分の体が光っている。巨大化している。コスモスの姿。
「嘘でしょう」
夏目の声も震えている。だがその声には驚きだけじゃない。何か懐かしいものに触れたような響きがあった。
* * *
俺は二人を見た。
巨大な体。銀色の光。二人とも自分の姿を見て呆然としている。だが立っている。倒れていない。
「モブ!夏目!」
声を飛ばした。二人が俺を見る。ダイナの目。コスモスの目。その奥にモブと夏目がいる。
「驚いてるのはわかる。後でいくらでも驚け」
俺はダークロプスゼロを見た。奴は赤い装甲のまま、新しい巨人の出現に反応している。だが攻撃は止まったままではない。構え直している。来る。
「今は立て。立てればいい」
ダークロプスゼロが動き出した。赤い形態のまま突っ込んでくる。
俺は前に出た。
「行くぞ」
踏み込む。コスモライズの体。力が今までと違う。コスモレコードを通じて歴代ヒーローの力が流れている。全部じゃない。だが今の俺には十分だ。
背中に二つの気配を感じる。ダイナとコスモス。モブと夏目。まだ動けないかもしれない。だが立っている。
それでいい。
「来い。偽物」
ダークロプスゼロの拳と俺の拳がぶつかった。衝撃波が山を揺らす。装甲が軋む。俺の腕が悲鳴を上げる。だが今回は押し負けない。
コスモライズの力が奥底で唸っている。
戦いはまだ始まったばかりだ。
次回の王は
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