サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
自宅のリビングにギレーヌを通した。
ソファに座らせた。絶花は隣の部屋で寝かせている。あんなが見ている。ソラは玄関の警戒に回った。モブと夏目は帰ってきてリビングにいる。
俺はキッチンで水を汲んでいた。グラスを五つ。氷を入れる。ガチャンと音がした。氷が割れる音。手がまだ震えている。戦いの後だ。無理もない。
リビングに戻った。
モブと夏目が二人並んで座っている。正面のソファにギレーヌ。俺はグラスを配った。ギレーヌの前に置いた時、モブの視線が泳いだ。夏目もだ。二人とも明後日の方向を見ている。
ああ。
そういうことか。
ギレーヌは気づいていない。
いや、気づいていて解釈を間違えている。
「…すまない」
ギレーヌが言った。声が低い。俺は振り返った。ギレーヌがソファから立ち上がりかけている。
「私が斬りかかったせいで、怖がらせた」
ギレーヌがモブと夏目に向かって一歩近づいた。モブがビクッとする。違う。そうじゃない。
「近づかないでください。殴ったりはしないで」
モブが言った。目が泳いだまま。顔が赤い。なぜ赤い。暴力への恐怖で赤くなる人間はあまりいない。
「来ないで。これ以上近づかないで」
夏目も言った。やはり目を逸らしている。顔が赤い。
ギレーヌは勘違いを深めている。
「…わかった。近づかない。だが謝らせてくれ」
ギレーヌの声に力が籠もる。腹を割って話そうとしている。真剣だ。だが真剣な方向が違う。モブと夏目は恐怖で目を逸らしているんじゃない。
「おい」
俺は言った。
「お前ら、目を逸らしてる理由はそれじゃないだろ」
モブが凍りついた。夏目も凍りついた。
「え」
ギレーヌが止まった。俺を見る。
「何」
「ギレーヌ。お前の格好」
俺は言った。改めてギレーヌの全身を見る。鎧。というか鎧の形をした金属片。胸を覆っているのは二枚の金属プレートだけだ。脇が全部開いている。腹も出ている。下は金属の腰巻きみたいなもの。太ももが全部見えている。
「戦闘用だから」
ギレーヌが言った。
「戦闘用はわかる。だが今は戦闘中じゃない」
「…」
「今は俺の家の中だ。ソファに座って水を飲んでいる状況だ。その格好で座って水を飲んでいる人間を、年頃の男が正面から見られるか」
ギレーヌは自分の体を見た。それからモブと夏目を見た。二人は顔を真っ赤にして天井を見ている。天井に何があるわけでもない。あるのはシャンデリアと恥ずかしさだけだ。
「…ああ」
ギレーヌが言った。小さく。呟くみたいに。
「そういうことか」
「そういうことだ」
ギレーヌは黙った。だが表情は変わらない。恥ずかしがっている様子がない。この人は恥ずかしいという感情を持っているのか。持っていても表に出るのが遅いタイプだ。たぶん後で一人になった時に顔が熱くなる。
「着替えてきます」
ギレーヌが言った。立ち上がった。背面もどうしようもない。背中の鎧は腰までしかなく背中の半分が全部出ている。
「待て。着替えあるか」
「ない」
「じゃあ貸す。あんな。あんなに声かけてくれ」
あんなは隣の部屋から声を返した。
「何」
「ギレーヌに着るもの貸してくれ。何かあるだろ」
「サイズ合わないわよ」
「何でもいい。とりあえず肌が隠れるもの」
あんなが部屋から出てきた。ギレーヌを見て、ああなるほどと頷いた。
「確かに。これは何も着てないに等しいわね」
「着ている」
「金属は服じゃないのよ」
あんなはギレーヌの手を引いた。ギレーヌは素直に付いていく。隣の部屋へ消える。
リビングが静かになった。
モブが深呼吸をした。夏目も深呼吸をした。二人とも天井からようやく目を戻した。
「太郎さん」
モブが言った。声が震えている。
「次からは来る前に連絡してください」
「同じく」
夏目が続いた。
「家臣になったのはいいけど、事前に格好の確認くらいしてくれ」
「無理だ。あれが戦闘服だ」
「戦闘服なら戦闘中だけ着ててください」
「もっともだ」
俺は座った。水を飲んだ。氷がカランと音を立てた。
腹が減った。戦いの後はいつも腹が減る。今日は何を食おうか。ギレーヌの好みはわからない。だが剣士だ。たぶん肉だ。
ギレーヌが戻ってきた。
あんなの服を着ている。黒いシャツにデニムのショートパンツ。丈が足りない。あんなよりギレーヌの方が背が高いからだ。ショートパンツがかなり短くなっている。
モブと夏目がまた天井を見た。
「…まだ駄目か」
「無理です」
「無理ね」
俺はため息をついた。
今日の家臣歓迎会は、目線のやり場に困る夜になりそうだ。
隣の部屋からドタドタと足音が聞こえた。
絶花だ。起きたのか。起きたなら起きたで騒がしい。
「太郎!ギレーヌさんに着せるものを!」
絶花がリビングに飛び込んできた。息が荒い。寝起きだ。顔に枕の跡がついている。だが手にはしっかりと白いTシャツを持っている。デカい。俺のだ。なぜ俺のTシャツを持っている。まあいい。今は聞かない。
「絶花。お前起きて大丈夫なのか」
「大丈夫じゃないですけど、ギレーヌさんが裸同然なのは聞きました」
「誰に聞いた」
「あんなさんに聞きました」
あんな。余計なことを言う。
絶花はギレーヌの前に行った。ギレーヌはあんなの黒シャツとショートパンツを着ている。絶花はそれを見て一瞬止まった。そして俺を見た。そしてモブと夏目を見た。天井を見ている二人を見た。
「…ああ、なるほど」
絶花は納得したように頷いた。そしてギレーヌにTシャツを差し出した。
「これ着てください。下に。そのシャツの上からでいいので」
「なぜ」
「いいので着てください」
ギレーヌは絶花の表情を読んだのだろう。黙ってTシャツを受け取った。首から被る。白いTシャツが黒シャツの上に重なる。少しましになった。少しだけ。ショートパンツはまだ短いが、上はこれでなんとかなる。
「よし。座ってください」
絶花がソファを指差す。ギレーヌは座った。絵に描いたみたいに背筋を伸ばして座っている。
モブと夏目がようやく天井から目を戻した。
「助かった」
モブが呟いた。本心だ。
「裸よりはマシね」
夏目も言った。裸じゃない。金属だ。だが今は突っ込まない。
* * *
全員がリビングに揃った。
俺はキッチンの椅子を引っ張って来て座っている。ソファにはギレーヌと絶花。モブと夏目は床に座っている。あんなはドア枠に寄りかかっている。ソラは玄関の警戒を続けているが、リビングの様子は聞こえる位置だ。
静かだった。水のグラスに入った氷がカランと鳴る音だけ。
「改めて」
ギレーヌが言った。
声が変わっていた。さっきまでの謝罪の声でも、恥ずかしさを誤解していた時の声でもない。騎士の声だ。よく通る。背筋が伸びるような声。
「此度、騎士の駒を頂いた、ギレーヌだ。よろしく頼む」
頭を下げた。角度は浅い。だが深い。意味が。
騎士の駒。俺がギレーヌに与えた王国の駒。王の隣で剣を振るための証。
「騎士の駒か。似合ってるじゃないか」
「口で言われても嬉しくない。剣で認めろ」
「後でな」
「…後でだ」
ギレーヌは顔を上げた。目が俺を捉える。静かだ。だが奥に力がある。
「さて」
俺はグラスを置いた。氷が揺れる音がした。
「ギレーヌ。お前に一つ聞きたいことがある」
「何だ」
「俺を殺そうとした理由」
リビングが静かになった。絶花が隣で微かに動いた。モブが息を呑んだ。夏目は何も言わない。あんなは腕を組んだまま動かない。
「誰に頼まれた」
直球だ。飾る言葉を探しても見つからない。それに今の俺には回りくどい聞き方をする気力が残っていない。
ギレーヌは目を逸らさなかった。
「…わかった。答える」
「名前だけじゃなくていい。知っていることを全部話してくれ」
「全部は無理だ。私が知っているのは断片的だ」
それに対して、ギレーヌも頷く。
「私と奴が会ったのは、エリスお嬢様を埋葬した後だった。私の前に現れたのは、お前そっくりの男だ」
「・・・俺そっくりに?」
俺は思わず聞いてしまう。
『なるほど、アブソリュートゼロか』
「アブソリュートって、何?」
『・・・まぁ、ようするに、別の世界の俺だ。だとすれば、厄介な事になるな』
そのゼロの言葉に俺達に緊張が走る。
あの次元を越えたデス・ギャバンとの戦いから一ヶ月程度経過した。
相変わらず、忙しい日々は続いている最中で、様々な出来事が起きた。
それは、俺達にとっては、衝撃な内容。
「・・・怜慈さんが、行方不明になって、かなり経ったんだよな」
俺にとって、目標と言える人物である弩城怜慈さんが行方不明になった。
彼の身に何が起きたのか、それは俺には未だに分からない。
それでも、俺がやるべき事は変わらなかった。
「はぁ、相変わらず面倒な事を考えているのか、太郎」
「うるせぇ、俺だって、色々と考えるんだよ、レオルド」
コスモギャバリオンの中で待機している最中、レオルドは変わらず酒を飲みながら、軽口を叩く。
「まっ、今の所は以前みたいなエモルギアに関する事件は少しは少なくなっただろ」
「…だと良いんだけどな」
そんな話し合いをしていた時だった。
警報が大きく鳴り響いた。
「なんだ、エモルギアか?」
「…いや、違う。なんだこれは?」
俺達は、すぐに警報が何を示しているのかを見る。
それは。
「反応はエモルギアと似ているように見えるが、違うのか」
「…とにかく、行ってみるしかないか」
「そうだな、すぐに向かうぞ!」
俺達は、すぐに現場へと真っすぐと飛び、目的地に辿り着く。
そこは、街はかなりボロボロな状態。
だが、その中心にいたのは。
「…なんだ。あれは、機械?」
「登録されていない機械人か、だが」
俺とレオルドが疑問に思っている間にも、そいつが取り出したのは、まるで拡声器のような何か。
だが、次の瞬間にはそれよりも驚きを隠せなかったのは。
「あれは、エモルギアなのか?!」「だが、エネルギーは、まるで違うようだが、一体」
そう疑問に思っていると、そいつはエモルギアのような物をなんと拡声器に装填した。
「覚醒憑依せよ、群角」
そっと、一瞬で大声を張り上げると同時に、拡声器から一瞬だけ、見えたのは、群れのような何か。
一瞬だけ、怯んでいる間にも、奴の身体に纏う。
「今のはなんだっ」
「分からねぇ!けれど、エモルギアとは何か違う」
そうしている間にも奴の身体は細かい金属となって、剣のような形となり、こちらに襲い掛かる。
「いきなりかよ!だったら」
俺は瞬時にキズナエモルギアを取り出し、ギャバリオントリガーに瞬時に装填。
「蒸着!!」
同時に引き金を引いて、俺はそのまま蒸着を完了する。
「ほぅ、それが」
「宇宙刑事ギャバン・キング!さぁ、王の判決はっ逮捕だ!」
次回の王は
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妖怪王
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機械王
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怪獣王
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幻想王