サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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爆裂 Part4

地鳴りが来た。

 

足元じゃない。地面の下だ。土の中を何かが走っているみたいな振動が、靴の裏から脛を伝って腰まで上がってくる。

 

「太郎さん」

 

ソラが声を上げる。軽装鎧の肩が揺れる。

 

「わかってる」

 

振動は強くなっている。さっきまでの穏やかな午後が嘘みたいだ。

 

空気が変わった。重い。呼吸が少し苦しい。まるで山の上にいるみたいに。いや違う。もっと質が悪い。空気そのものが何かを含んでいる。

 

「めぐみん」

 

「何だ」

 

めぐみんが杖を握り直した。赤い目が鋭くなる。

 

「撃つか」

 

「待て」

 

俺はめぐみんの肩を掴んだ。

 

「正体を確認するまで撃つな」

 

「だが地鳴りがしている。何か来るのだろう」

 

「来る。だが何が来るかまだわからない」

 

「ならば迎撃を」

 

「めぐみん」

 

俺はめぐみんの目を見た。

 

「お前が撃っていい相手じゃないかもしれない」

 

めぐみんの口が開きかける。だが閉じた。俺の目を見て何かを読んだのだろう。不満そうだが杖を下ろした。

 

「…わかった。だが来るなら撃つ」

 

「状況を見てからだ」

 

振動が止まった。

 

いや、止まったんじゃない。変わった。さっきまでの地鳴りが、別の音に切り替わった。

 

ドン。

 

一発。大きな心音みたいな音が地面の下から聞こえた。

 

ドン。

 

二発目。

 

ドン。

 

三発目。

 

規則的だ。だが心臓じゃない。心臓はこれほど大きくない。

 

「太郎」

 

絶花が隣に来た。天聖を握っている。顔色が悪い。まだ完全には回復していない。だが剣を握る手は震えていない。

 

「あれ」

 

絶花が空を指差した。

 

空に亀裂が走った。

 

音もなく。警告もなく。空が裂けた。

 

亀裂の中から光が漏れる。だが太陽の光じゃない。もっと冷たい、青白い光だ。亀裂が広がる。幅が十メートル、二十メートル、三十メートル。まだ広がっている。

 

「でかい」

 

モブが呟いた。

 

「亀裂がでかいんじゃない。中から出てくるものがでかいんだ」

 

夏目が言った。声が低い。

 

亀裂の奥から何かが見え始めた。

 

影だ。巨大な影。亀裂よりも大きい。亀裂を無理やり押し広げながら出てこようとしている。

 

最初に見えたのは角だった。

 

一本じゃない。二本。いや三本か。頭部から突き出した角が、空の亀裂を突き破って姿を現す。角の根本は太い。幹みたいだ。だが先端は鋭い。刃みたいに尖っている。

 

次に顔が見えた。

 

タイラント。

 

俺の脳裏にその名前が浮かんだ。ゼロの記憶の中にある怪獣。暴君怪獣タイラント。複数の怪獣の特徴を併せ持つ合成獣。だが目の前にいるのは、タイラントより大きい。角が太い。顔つきが荒い。皮膚の質感が違う。

 

『太郎』

 

ゼロの声が頭に響いた。

 

『あれは』

 

「知ってるか」

 

『タイラントだ。いや、タイラントを元にしている』

 

「元にしている」

 

『強化されている。俺の知っているタイラントじゃない。もっと上だ』

 

上半身が見え始めた。

 

人型だ。だが人間じゃない。怪獣の上半身が二本の腕を持って立っている。だが下半身がない。いや、まだ見えていないだけだ。

 

胴体が見えた。腹部に何かがある。器官だ。ベムスターの吸収器官を思わせる。だがベムスターのものより複雑で、模様が違う。腹の部分だけ皮膚の質感が変わっている。周囲との境界線がはっきりしている。まるで別の生き物の腹を縫い付けたみたいに。

 

腕が見えた。

 

右腕に刃がある。バラバの刃を思わせる。だがバラバのものより厚い。だが切っ先は鋭い。左腕にも何かがついている。武器の意匠だ。だが何の武器かわからない。見たことがない形だ。

 

「太郎。あれ」

 

めぐみんが声を上げた。声が震えている。めぐみんが声を震わせる。それだけで異常だ。

 

「見てる」

 

下半身が見え始めた。

 

四本脚だ。ケンタウロスみたいに、上半身は人型で下半身は獣の脚だ。だが四本の脚が全部違う。右前脚はレッドキングを思わせる太い脚。左前脚はゴモラを思わせる重量のある脚。右後脚はエレキングを思わせる細長い脚。左後脚はツインテールを思わせる鞭のような脚。

 

四本の脚の質感が全部違う。皮膚の色が違う。鱗の形が違う。筋肉の付き方が違う。だが四本とも同じ体に繋がっている。継ぎ目が見える。傷跡みたいな線が脚と胴体の境界を走っている。

 

尾が見えた。

 

長い。バキシムを思わせる棘が並んでいる。だが先端に花がある。アストロモンスを思わせる。花が咲いている。いや、開いている。だが花の色が普通じゃない。毒々しい赤だ。

 

全身が亀裂から出てきた。

 

空の亀裂が閉じる。音もなく。まるで最初から何もなかったみたいに。

 

だが目の前にいる。

 

いる。

 

巨大な怪獣が、町の外れに、四本脚で立っている。

 

高さは四十メートルを超えている。いや五十メートルに近いかもしれしい。ウルトラマンゼロの体でも見上げかなければならない。

 

『太郎』

 

ゼロの声が硬い。

 

『あれはタイラントだ。だがタイラントをさらに強化した存在だ。複数の怪獣の部位を融合させた。タイラントの上位種。あるいは』

 

「あるいは」

 

『進化系だ』

 

暴君怪獣グランドタイラント。

 

俺の中でその名前が浮かんだ。タイラントの進化形。暴君の先。

 

グランドタイラントが低く唸った。

 

声が地面を震わせる。耳じゃない。腹の中に響く音だ。肺が圧される。

 

一歩踏み出した。

 

右前脚が地面を叩く。ドン。さっきの心音みたいな音が、今度は地面から直接伝わってくる。土煙が舞い上がる。俺の足元の草が根こそぎなぎ倒される。

 

二歩目。左前脚。ドン。地面が揺れる。立っていられないくらいじゃない。だが確かに揺れている。

 

三歩目。右後脚。ドン。

 

四歩目。左後脚。ドン。

 

四本脚が別々に動いている。だが一つの体だ。一つの生き物だ。継ぎ目だらけの体が、それでも一つの巨大な暴君としてまとまっている。

 

尾が動いた。ゆっくりと。だが風圧だけで木がなぎ倒される。アストロモンスの花が揺れる。毒の匂いが風に乗って漂ってくる。

 

腕の刃が動いた。右腕のバラバの刃が光を反射する。鋭い。あれに切り裂かれたらウルトラマンゼロの体でも傷つく。

 

腹部の器官が動いた。ベムスターの器官が脈動している。吸っている。何を。空気か。魔力か。それとも地脈の力か。

 

「太郎」

 

めぐみんが呟いた。

 

「あれは、何だ」

 

「暴君怪獣グランドタイラント」

 

俺は答えた。ゼロの記憶が教えてくれた名前を。だが名前だけだ。正体はわからない。能力もわからない。弱点もわからない。

 

だがわかることが一つある。

 

でかい。でかすぎる。ウルトラマンゼロ一人で勝てる相手かどうかわからない。

 

グランドタイラントが咆哮した。

 

声が空を割る。鼓膜が痛い。口を開けて叫んでいる。だが声はただの咆哮じゃない。角が光っている。体中の継ぎ目が光っている。各部位の力が共鳴している音だ。

 

尾が地面に叩きつけられた。

 

ドン。

 

土煙が舞い上がる。地面が割れる。亀裂が走る。俺たちの方へ向かって。

 

「退避!」

 

俺は叫んだ。全員が跳ぶ。亀裂が俺たちが立っていた場所を走り抜ける。

 

土煙が晴れた。

 

俺は目を開けた。

 

グランドタイラントが立っていた。

 

四本脚で地を踏みしめ、二本腕で風を切り、一本の尾で大地を叩き割り、全身の継ぎ目から光を漏らしながら。

 

町の外れに、暴君がそびえ立っていた。

 

俺は立ち上がった。足が震えている。だが立った。

 

「やるか」

 

それと共に、俺は手にしたウルトライズアイを既に構えている。

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
  • 幻想王
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