サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
コードの一つが光っている。淡い青。呼吸するみたいにゆっくりと明滅している。
『太郎。あれだ』
ゼロの声が近い。
『ブレーザーだ』
「ブレーザー?」
俺は空中で左手を構えた。ウルトライズアイを逆手に持つ。コードに近づける。スキャナーの光がコードを読み取った。
『ブレーザー』
声が響く。ゼロの声じゃない。システムの声だ。続けてゼロが言う。
『ウルトライズ!』
コードが弾けた。
光がブレスレットから溢れる。俺の体じゃない。コードから直接、別の何かへ流れ込んでいる。誰かに向かって。
俺は視線で追った。
光の帯が空中を走る。俺の体を通り抜けて、下へ。地上へ。めぐみんの立っている場所へ。
「めぐみん!」
俺は叫んだ。光がめぐみんを包んでいる。赤いマントが光の中に溶ける。帽子が飛ばされる。杖が地面に落ちる。
「何だこれは!」
めぐみんの声が光の中から聞こえた。驚いている。だが悲鳴じゃない。怒っている。
光が膨らんだ。
一瞬で大きくなった。人の大きさを超えて、家の大きさを超えて木の高さを超えて。
光が弾けた。
「!」
声にならない音が山に響いた。
光が晴れた。
そこに立っていたのは、俺の知っているウルトラマンじゃなかった。
銀色だ。だがゼロとは違う。銀色の肌の上に、黒い凹凸が走っている。鎧じゃない。筋肉だ。いや、皮膚だ。有機的だ。鎧を着ているわけじゃない。鎧そのものが体だ。
「何だこれ」
声が出た。俺の声だ。ゼロの体から出ているが、俺の驚きだ。
左右が違う。
左半身に赤と青の模様が広がっている。複雑だ。絡み合っている。右半身はすっきりしている。装飾が少ない。左右非対称。ウルトラマンは大体左右対称だ。だがこいつは違う。
頭部に透明な結晶が突き出ている。ゼロのゼロスラッガーとは違う。装飾じゃない。結晶だ。光を透かす。そして瞳がある。光を浴びて輝いている。ゼロの目とは違う。もっと野性的な光だ。
胸にカラータイマーがある。だが体に埋まっている。ゼロのカラータイマーは表面についている。こいつのは体の中に嵌め込まれている。筋肉の間に挟まっているみたいだ。
全体の印象は、騎士じゃない。
荒々しい。
未知の生き物だ。
四十七メートルの光の巨人が、めぐみんの立っていた場所に立っている。
「めぐみんか」
俺は叫んだ。声が山に響く。
巨人が動いた。振り返る。ゆっくりと。だが関節の動きが俺の知っているウルトラマンとは違う。なめらかじゃない。野性的だ。獣が振り返るみたいな動きだ。
「…何だこれ」
巨人の口が開いた。めぐみんの声だ。だが声が違う。めぐみんの声が巨人の体を通して響いている。腹に響く声だ。
「私が、これに」
めぐみんの声が震えている。だが恐怖じゃない。
「何だこれ!すごい!何だこれ!」
興奮している。
めぐみんは自分の体を見下ろした。銀色の手を広げる。赤と青の模様が腕を走っている。結晶が光る。瞳が輝く。
「すごい…!私が光の巨人に!」
「おいめぐみん。落ち着け」
「落ち着けない!私が巨人だ!四十七メートルの巨人だ!」
めぐみんは両手を握った。握った手を見て、また開いて、振ってみて、踏み出してみた。
「力がみなぎる…!これがブレーザーか!」
「ブレーザー。そうか。ウルトラマンブレーザーか」
「太郎!私の姿を見ろ!かっこいいぞ!」
「見てるよ」
「左右非対称だぞ!野性的だぞ!」
「わかってる」
「すごい!素晴らしい!我が名はめぐみん!紅魔族の魔法使いにして光の巨人!ウルトラマンブレーザーなり!」
名乗り始めた。四十七メートルの巨人が山中で名乗りを上げている。だが目の前にはグランドタイラントがいる。暴君がいる。
「めぐみん。前を見ろ」
「ん?」
めぐみんが前を向いた。グランドタイラントがいた。角が光る。腹の器官が脈動する。鎌が振り上がる。鉄球が揺れる。尾が地面を叩く。
「でかい」
めぐみんが呟いた。
「でかいな」
「私よりでかい」
「二メートルくらいでかい」
「二メートルもでかいのか」
「でかい」
めぐみんはブレーザーの体でグランドタイラントを見上げている。四十七メートルと四十九メートル。二メートルの差。だがその二メートルがでかい。角が高い。鎌が長い。鉄球が重い。
「だが」
めぐみんは杖を構える動作をした。ブレーザーの手には杖がない。だが手が動いている。杖を握る癖が残っている。
「私には爆裂魔法がある」
「あるな」
「ある。そして今私は巨人だ」
「だ」
「巨人の爆裂魔法。どうだ」
「どうと言われても」
「凄いに決まっている」
めぐみんは自信満々だ。ブレーザーの体で立っている。四十七メートルの光の巨人が、山中で胸を張っている。
だがグランドタイラントは待ってくれない。
暴君が咆哮した。
次回の王は
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