サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
グランドタイラント戦から一夜明けた。
めぐみんが昨夜の余韻を引きずりながら朝食を頬張っている。
「やっぱり昨日の一撃は傑作でした。王、あの時の私の詠唱、聞いていました?」
「あー…聞こえてたけど、正直戦闘中だったから全部は覚えてねえよ」
「ええっ!せっかくの爆裂魔法の名演が…」
めぐみんがむくれる。目の前の焼き魚にフォークを突き立てる勢いだ。
「でも王、一つだけ提案があります」
「ん?」
「爆裂魔法の練習場所を正式に設けてほしいんです。広くて、人里離れていて、それでいて王たちが見守れる距離にある場所を」
「見守る必要あるか?」
「あります!師匠として指導してください」
「誰が師匠だ」
絶花が、呆れたように箸を止める。
「二人とも、それより今回の事件の整理をしましょう。グランドタイラントの残骸は片付けましたが、何が目的だったのか分かりません」
「それな」
俺は頷いた。
「今までの怪獣もそうだが、ただ暴れて終わりってパターンじゃねえ。どこかで誰かが糸を引いてる」
『相棒の言う通りだ。この世界に怪獣が自然発生することはない。だとすれば——誰かが送り込んだ』
ゼロの声が脳内に響く。
「ゼロ、心当たりは?」
『…一つだけ。だが確証はない』
「言ってみろよ」
『あとで話す。ここではまず、今できることを進めろ』
ゼロが言葉を濁すのは珍しい。だが今は詮索するべきではない。
「めぐみん、爆裂魔法の練習場所は探す。それと、今後は家臣として俺たちと共に動いてもらう。いいな?」
「もちろんです!私の力が王国の力になるなら、喜んで」
めぐみんが真っ直ぐに答える。その瞳には昨日よりも強い意志があった。
(仲間としての自覚が出てきたか)
それが嬉しいとは言わないが——まあ、悪くない。
* * *
* * *
場所は変わる。
地下深くに築かれた、薄暗い執務室。
壁一面に並ぶモニターには、昨夜の怪獣戦の記録映像が映し出されていた。ウルティメイトゼロモードへと変形したゼロがスパイラルバレードを放ち、グランドタイラントを貫く瞬間が、繰り返し再生されている。
その前で、一人の男が静かに目を細めていた。
独尊次郎——
穏やかな表情に似つかわしくない、冷徹な光が瞳の奥に宿っている。
「……なるほど。あの程度の怪獣では、彼らを止められないということか」
「はっ。グランドタイラントは十一体分の怪獣能力を融合させた個体でしたが、完全に破壊されました。ウルトラマンゼロの新形態と、あの家臣の魔法の連携が想定以上だったようです」
背後で控えていた家臣が頭を垂れる。黒い軍服に身を包んだ、痩せ型の男だ。
「……やはりな」
独尊次郎は椅子に深く腰掛け、組んだ足を静かに組み替えた。
「ウルトラマンゼロ。そして唯我太郎。二人の連携に加え、家臣たちとの共鳴能力。今回投入した怪獣では戦力測定が限界だ」
「では、次は——」
「待て」
独尊次郎が手を挙げ、家臣の言葉を遮る。
「彼らの力を正確に把握するまでは、不用意に動かない。だが……」
彼はモニターに映るゼロの姿を見つめた。金色の光を纏ったウルティメイトゼロモード。かつて自分も一度だけ到達した、その姿。
「アブソリュートゼロ……」
独尊次郎——その正体は、アブソリュートゼロの人間体であった。
ウルトラマンゼロの平行同位体。同じ「ゼロ」という名を持ちながら、別の宇宙、別の道を歩んできた存在。
(兄者……いや、原初のゼロ。お前はまた新しい力を手に入れたか)
モニターの中のゼロが、仲間と笑い合うシーンが流れる。ウルトラマンブレーザーに変身した家臣——めぐみんと、剣を携えた女、そしてその中心に立つ唯我太郎。
(あのような者たちと共に戦うか。だが私は——)
独尊次郎の拳が、無意識に握られた。
「私には、この世界で集めた家臣がいる。帝国の駒を通じて彼らを率いる。兄者の力も、家臣の力も、全て理解した。次は——」
彼は立ち上がり、執務机の上に置かれた盤上に目を向けた。
そこには、王国の駒と同じ形をした、黒い石の駒が並んでいた。帝国の駒。
「彼らの陣営を、正面から打ち破る」
* * *
「今回の戦闘記録を分析した結果、彼らの家臣は以下の役割を担っている」
独尊次郎は盤上の駒を一つずつ指し示しながら説明を始めた。
「まず、ウルトラマンブレーザーに変身した紅魔族の少女。一撃必殺の大火力担当。現状、一日一回の制限があるが、威力は計算外。次は——」
彼は別の駒を動かす。
「剣士の女。近接戦闘に特化し、ゼロのサポート役。ウルトラマンへの変身は確認されていないが、戦闘能力は高い」
「そして、核心にいる唯我太郎。ウルトラマンゼロと一体化し、家臣たちと共鳴する能力を持つ。彼がいることで、彼らの陣営は機能している」
独尊次郎は、最後に中央に置かれた駒——太郎を象徴する位置の駒を、指で弾いた。
「つまり、彼を孤立させれば連携は崩れる。だが、それを狙うのは容易ではない」
「では、どうするのですか?」
「簡単だ」
独尊次郎は薄く笑った。
「彼らを分散させる。複数の現場に同時に怪獣や事件を起こし、対応せざるを得ない状況を作る。分かれて動いた先で——帝国の家臣を待ち受ける」
彼は家臣の方を振り返った。
「帝国の家臣三体を動かす。太郎たちは分かれて対応するしかない。そこで個別に撃破する。分断された家臣と、帝国の家臣。一対一なら勝機は十分にある」
「承知いたしました。どの地域を舞台にしますか?」
「裏社会の情報網を使え。怪獣目撃情報や、不自然な事件を同時多発的に流す。人々の不安を煽り、彼らが動かざるを得ない状況を作るんだ」
独尊次郎の声は静かだった。だがその中には、確固たる意志が宿っていた。
「私はこの世界で、自分の力を証明する。兄者でも、原初のゼロでもない。この独尊次郎として。私の率いる帝国の家臣たちで——彼らを打ち破る」
* * *
家臣が一礼して退出する。
静寂が戻った執務室で、独尊次郎は再びモニターに目を向けた。再生されていたのは、太郎とゼロが共闘するシーン。グランドタイラントの攻撃を受け止めながらも、二人は前を向いていた。
「……兄者」
彼は呟いた。
「お前は仲間を信じて力を得たのか。だが私は——」
独尊次郎は、盤上の帝国の駒を動かした。
「私のやり方で、答えを出す。仲間など信じずとも、力で全てを制する。それが——私の答えだ」
カタン。
黒い駒が、盤上で鋭い音を立てた。
* * *
その頃、太郎たちは——
「よし、今日はめぐみんの爆裂魔法の練習場所を探す。それと、今後の動きを整理する。ゼロ、さっき言いかけてたこと——」
『ああ。だが、それは……お前が感じたことに近いかもしれない』
「どういう意味だ?」
『俺の平行同位体。この世界に、もう一人の「ゼロ」がいる可能性がある』
太郎の背筋に、冷たいものが走った。
「……もう一人のゼロ?」
『詳しいことは、まだ言えない。だが、気をつけろ。この先、怪獣だけではない敵が動き出す』
夜空を見上げる。星屑が瞬いていた。
(裏で糸を引く奴がいるなら——俺たちの前に姿を現す時が来る)
太郎は拳を握った。
「分かった。どんな敵が来ても、俺たちで迎え撃つ」
めぐみんと絶花が、その言葉に頷いた。
次回の王は
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妖怪王
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機械王
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怪獣王
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幻想王