サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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模倣 Part8

空が赤い。

 

夕暮れじゃない。空そのものが赤く染まっている。雲の隙間から、まるで傷口から血が滲むような赤い光が漏れていた。

 

「なんだ、あれ」

 

俺は空を見上げた。町の上空に、何かが浮かんでいる。いや——浮いているんじゃない。降りてきている。

 

巨大な影だ。

 

徐々に輪郭がはっきりしてくる。翼だ。いや、翼に見えるのは背びれか。赤黒い巨体が、ゆっくりと高度を下げていく。重力に従うように。あるいは、自分の重量に任せるように。

 

「太郎!」

 

絶花の声が聞こえた。町の郊外から駆けつけてきたのだろう。息が上がっている。アンビーも隣にいた。ヘッドホンを耳にかけ、空を見上げている。

 

「来たわね」

 

アンビーの声は淡々としていた。だがその目は鋭い。何かを知っている目だ。

 

「アンビー、あれは」

 

「分からない。でも、機関の怪獣じゃない可能性がある」

 

「機関のじゃない?」

 

「あれは——」

 

アンビーの言葉が途切れた。

 

地面が揺れた。

 

巨大な影が着地したのだ。

 

ドォォン!!

 

衝撃波が走る。俺は足を踏ん張り、絶花とアンビーを庇った。瓦礫が舞い上がり、砂埃が視界を奪う。

 

砂埃の向こうに、巨体が見えた。

 

赤黒い身体。全身に走る血管のような脈動。胸の中心には赤い結晶状の器官が埋め込まれ、不気味に明滅している。頭部には鋭利な角。背中には棘の並んだ背びれ。長い尾が地面を這い、その先端が鋭い刃のように空を切る。

 

そして——その全身から、禍々しい気が漂っていた。

 

『相棒』

 

ゼロの声が脳内に響いた。

 

いつもと違った。

 

低い。鋭い。そして何より——驚きが混じっていた。

 

『あれは…』

 

ゼロの声が途切れた。俺は初めて聞いた。ゼロが言葉を失うのを。

 

「ゼロ? どうした」

 

『…まさか、こんな場所で』

 

「何なんだよ、あれは」

 

俺は問い詰めた。ゼロの動揺は尋常じゃない。俺たちが共闘してきた中で、これほど動揺したことはなかった。

 

『ベリアル融合獣だ』

 

ゼロの声が低く響いた。

 

「ベリアル融合獣?」

 

『ベリアルの力を宿した怪獣。ベリアルの細胞と他の怪獣の力を融合させて造られた存在だ。デビルスプリンターの細胞——あの破片と同じものが関与している』

 

俺の手が無意識にポケットを探った。中には昨日回収した破片が入っている。あの禍々しい細胞の欠片。

 

「あの破片と同じものが」

 

『ああ。だが、問題はそこじゃない』

 

ゼロの声が一層低くなった。

 

『あの中に融合されている怪獣——一つはアークベリアル。ベリアルの力そのものを宿した存在だ。そしてもう一つは』

 

ゼロは一拍置いた。

 

『マガオロチ』

 

聞いたことがある名前だった。いや——ゼロから聞いたことがある。かつて地球を脅かした災害の怪獣。その名を口にする時のゼロの声は、いつも重かった。

 

『マガオロチは、その名の通り災害をもたらす力を持つ。それにアークベリアルの力が加わっている。油断すれば——』

 

ゼロの言葉が途切れた。だが言いたいことは分かった。

 

油断すれば、やられる。

 

「つまり、デビルスプリンターの細胞だけでも厄介なのに、それにアークベリアルとマガオロチの力が乗っかってるってことか」

 

『そういうことだ。さっきのネオメガスとは次元が違う。迂闊に近づけばやられるぞ』

 

「迂闊に近づけば、か」

 

俺は目の前の巨体を見上げた。赤黒い身体から立ち昇る禍々しい気配。胸の結晶が明滅するたびに、空気が震える。

 

(やってやるよ)

 

俺はウルトライズブレスレットに手を伸ばした。

 

「太郎!」

 

絶花が叫んだ。

 

「待て絶花。俺がやる」

 

「でも——」

 

「絶花、お前はアンビーと一緒に避難誘導を頼む。あいつが暴れたら周辺はどうなるか分からない。二人で住民を頼む」

 

「…分かりました。でも無茶しないでください」

 

「俺が無茶したことあるか」

 

「毎回してます」

 

絶花の声音には少し呆れが混じった。だがその目は真剣だった。

 

「行きます、アンビー」

 

「ええ」

 

二人が駆け出していく。アンビーの背中が小さくなっていくのを見届けてから、俺は前を向き直った。

 

『相棒』

 

「ああ。分かってる」

 

俺はブレスレットからウルトライズアイを取り外した。

 

「行こうぜ、ゼロ」

 

『当たり前だ』

 

ゼロの声に力が戻っていた。驚きは消え、代わりに闘志が宿っていた。

 

「ベリアル融合獣だろうがマガオロチだろうが——」

 

俺はウルトライズアイを構えた。

 

「やることは同じだ」

 

ウルトラマンゼロへと変身した瞬間、俺は迷わずコスモライズのカードをスキャンした。

 

「コスモライズ!」

 

光が弾け、俺の身体が変容する。ゼロの姿から、赤と銀の新たな姿へ——ゼロコスモライズ。

 

全身に力が満ちていく。コスモレコードの力が俺の中を駆け巡る。

 

『相棒、次は家臣と共鳴だ』

 

ゼロの声が脳内に響く。

 

「分かってる」

 

俺はすぐにコスモレコードの一つが反応する。

 

『ジード!ウルトライズ』

 

アンビーは今、絶花と一緒に避難誘導をしている。だが、あいつの力が必要だ。このベリアル融合獣を倒すには。

 

「アンビー!」

 

俺は叫んだ。距離はある。だがコスモライズの力で、声は届く。

 

「聞こえるかアンビー!」

 

数秒の沈黙。そして

 

「聞こえてるわ!」

 

遠くからアンビーの声が返ってきた。避難誘導の途中で立ち止まったのだろう。

 

「お前の力を借りる。ジードと共鳴してくれ」

 

「ジード…」

 

アンビーの声に迷いがあった。だがすぐに消えた。

 

「分かったわ。やってみる」

 

俺はコスモレコードをスキャンした。カードから光が放たれ空へと伸びていく。その光はアンビーへと届き、彼女の身体を包み込む。

 

「アンビー、ジードの力を受け取れ!」

 

『行け相棒!』

 

ゼロの声が背中を押す。

 

光がアンビーの全身を覆い尽くした。そして

 

「うわっ!」

 

アンビーの声が変化した。驚きと共に、力が溢れ出していく。

 

光が収束していく。そこに現れたのは——

 

ウルトラマンベリアルの息子にして、運命を乗り越えたウルトラマンジード。

 

「これが…」

 

アンビーの声がジードの身体から響いた。戸惑いがあった。だがすぐに消える。

 

「すごい…力が溢れてくる」

 

アンビーが拳を握った。ジードは構える。

 

「アンビー、行くぞ!」

 

「ええ!」

 

俺たちはベリアル融合獣へと向かって駆け出した。

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
  • 幻想王
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