陰の実力者(笑)の相棒にさせられて 番外編   作:嫉妬憤怒強欲

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夏に突入でまたカゲマスの新しいエピソードが配信されましたね。


狩猟-HUNT

 長い話し合いの結果、オレ達が避難所に留まることを許された。イオリだけはかなり渋っていたが、物資の他に悪魔憑きの再発防止のための魔力制御技術と元某国の諜報員兼軍人で訓練教官の経験があるジナイーダから生き残るための訓練指導を提供するという条件でようやく頷いた。

 彼女達の殆どがエルフや獣人にしては狩りやサバイバル経験に乏しく、オレ達が来るまでの避難所での生活はかなりギリギリだったようだった。

 商隊から騙し取った食料でなんとか食いつないでも何の解決策にもならない。これからの人生どうするかを選択する前に生き抜くためのスキルを必要最低限伸ばす必要がある。

 このオレの説得に誰も反論するなどできないまま翌朝の訓練に参加となったのだが…。

 

「ほらそこ!なにをもたもた走っている!もっと足を動かせ!」

「は、はい…!」

「な…なにが訓練だよ…こんなの拷問以外のなにものでもないじゃないか」

「ほう?文句を言うほどの余裕があるようだなイオリ?十周追加しても問題なさそうだ」

「ひ、ひぃ…!」

 

 いかん。どうやらジナイーダは典型的な鬼教官だったようだ。

 決められたルートを魔力無しで走り回る彼女達に罵詈雑言を飛ばしている。日の出前から何時間も走らされているため、獣人と違い身体能力が人間並みのエルフの何人かが既に虫の息と化していた。

 

「ぜぇ…はぁ…も………もうダメ、だ……走れない……」

「わ、私も…です………」

 

 まず最初にイオリが大きく息切れしながら地面に倒れ、次にチナツがへたり込む。その後もどんどん脱落者が増えていく始末だ。

 

「ジナイーダ、さすがにこれ以上は――――」

「わかっている…もういい、午前の訓練は終了だ!きちんと休むのも訓練だ!いいな!」

 

 皆限界だと彼女もわかっていたようで、訓練の終了を告げた。

 

「ん…終わった」

「まだ走れるんだがな」

 

 最後まで前方を走っていた犬耳の獣人、銀狼族のシロコと猫耳緑髪の獣人、獅子族のアタランテを除いた全員がグロッキー状態になっていた。

 

「体力方面ではシロコとアタランテが上位か。ここまで差が出るとはな…」

「仕方ないんじゃないか?エルフと獣人とでは身体能力が全然違うからな」

「ふむ、今後の訓練プログラムを見直す必要があるな」

「あー………ほどほどにな」

 

 慣れていない身体に最初から大き過ぎる負荷をかけたところで壊れてしまうしな。

 

「それじゃあオレは川のところに行ってくる」

「川?魚でも釣るのか?」

「それもするが、他にもやることがある」

 

 ジナイーダにその場を任せてその場を離れる。

 

「って、なんでお前達がついてくるんだ?」

 

振り向くとリニアとプルセナがソロリソロリと後をついてきていた。

 

「ニャ!?」

「気配を消してたのにどうしてバレたの!?」

 

 そりゃあ二人の大きな魔力を感知したからな。

 悪魔憑きを発症していた時の魔力の大きな乱れがない。それどころか、他の皆同様治療後の魔力の量が暴走時よりも多くなっている。

今後のためにも魔力制御の訓練に魔力を抑えるのも加えるべきかもな。

 

「それで、二人共まさかオレが魚をとることを聞いたのか?」

「ギクッ!?な、なんの話かにゃ?」

「わ、私達はたまたま通りかかっただけなの」

 

 ならオレと目を合わせられるよな。

 

「………まあいい。暇なら少し手伝ってくれ」

「えー?あちしらにも色々と予定があるにゃぁ……」

「そうか、必要なら労働の対価を払おうと思ったが」

「と思ったらちょうどあちしら暇だったから手伝ってやるにゃ!」

「なんでもくれるなんて太っ腹なの!」

「誰もなんでもとは一言も言っていないぞ」

 

 何とも現金な二人だが、とりあえず手伝ってはくれるみたいだ。

 二人を連れてしばらく森の中を歩くと、目的地である川の中流に到着した。流れの速い瀬のようなところであるため、川底に大粒の石が多い。周辺に地球の竹に似たものまで生えている。

 

「おおっ!今日はいっぱい泳いでるにゃあ!」

「でもすばしっこいから上手く掴まえれないの」

「前はどうやって獲っていた?」

「手掴みや枝を突き刺したりしたの」

 

 そりゃあほんの数匹しか釣れないわけだ。

 

「手堅くサクッと大量に捕まえる方法を知っているぞ」

「そんな方法があるのかにゃ?」

 

 もっとも、知識はあっても実際に作るのは初めてだから手探りでやるしかない。

 まずは罠を作るのに必要な道具を作る。川周辺に転がっている石から手に納まるサイズで表面が滑らかな物を手に取り、地面にある他の石に打ちつける。

 角度を調節しながら端を集中的に打ちつけ、威力を徐々に強くしていくと、パカっという甲高い音とともに欠けた。

 

「こんなものか……」 

「なに石で遊んでいるにゃ?」

「頭がおかしくなったの」

「失礼な。礫器を作ったんだ」

「?れっ、き?」

 

 礫器とは地球の原人時代から使用が確認されている石器の一つで、精密に打ち欠いた打製石器や研磨した磨製石器に比べて使いやすさや刃先の丈夫さは劣るが、ただ石を打ち割るという方法で刃をつけることができるというメリットがある。武器としては心許ないが、樹皮を剝いだり、ちょっとした枝を削ったり、獲物を雑に捌く程度ならこれで十分だ。片側に刃を作ったのがチョッパー、両面を交互に打ち欠きジグザグの刃をつけたものがチョピング・トゥールとよばれ、初心者のため今回はチョッパータイプにした。

 

 ひとまず加工道具ができたので、次は罠の製作だ。

 魚を多く捕まえるなら大きめの物に、かつ入った後に逃げられないような構造が理想的だ。

 事前調査通り、周りにはそれを作るための材料がそこら中に転がっている。

 適当に選んだ竹を一本土から引っこ抜き、チョッパーで複数に分割する。中の構造は地球の竹と同じ筒状で、縦に刃を入れると簡単に割れた。

 竹ひごという棒状に細かく割ったものの感触を確かめてみると、思っていた通り横方向によくしなるが、柔軟で折れにくく、弾力性に富んでいた。

 厚さと幅が同じになるようにチョッパーで削っておく。

 

「そんなに分けてどうするにゃ?」

「これを編んで籠にする」

「にゃ?」

 

 実際の竹籠がどんなものか知らないため、服や衣類と同じ編み方でやる。

 まず竹ひごを数本縦に均等に並べ、交差するように横から数本上と下へ交互へ差し込んでいって四ツ目形に。

 中心から直径約20センチのところで丸みを帯びた石で押さえながら曲げるを入れていくことで側面をつくり、高さ約30センチのところまで底の時と同じように竹ひごを交差させるように通していく。

 余った部分はカットし、裏側の表面を少し薄くしてから入り口に突っ込む。この時、入り口から真ん中に向けて穴が狭くなるように角度を調整する。

 最後に崩れないように網目をキッチリ引き締め、その辺に生えていた枯れ草を捩って作った紐を括りつけて完成。

 

「マジかコイツ。本当に一から籠を作っちゃったにゃ!」

「これなら食べ物を沢山とれそうなの」

「でもこれ余った部分が内側に入って取りづらそうにゃ」

「それでいい。魚を捕まえるのに必要だからな」

「?どういうことなの?」

「口で説明するより、実際にやった方が早い」

 

 できた籠を魚たちが見えるところより下流の中央へ置き、籠の両サイドに大きめの石を並べていく。

 

「さっきから石運んで何やってるにゃ?」

「魚を追い込む準備だ。逃げ場をなくして籠の中に入るように誘導する」

「なるほどなの。それで次はどうするの?」

「お前たちの出番だ。上流側から派手に騒いで魚を下流に追い立てろ」

「おお!それだけならあちしらにもできるにゃ!」

「任せてなの!」

 

 川の上流側から、リニアとプルセナが二人がかりでバシャバシャと大きく水を弾かせながら楽しそうに盛大にはしゃぐ。獣人のパワーなだけに、立てる水飛沫が大きくてオレのところまで届いている。やりすぎだが、目論見道理魚たちが驚いてオレがいる下流側へと逃げ出し、籠の中に入っていった。

 これだけで捕獲完了だ。

 オレが作った籠は竹ひごの余った部分を内側に入れたことで、入り口から真ん中に向けて穴が狭くっていき、もっとも狭い場所を通過すると広い空間に入る構造だ。この場合入り口からすんなりと中に入れたとしても、内側では竹ひごの角度がカエシのようになるため魚は外に出れなくなるのだ。

 

「にゃははは!」

「楽しいのー!」

「もういいぞ。これ以上やったらオレがびしょ濡れになる」

「終わったかにゃ?」

「どんな感じなの?」

 

 上流側から二人が素早くこっちに来て籠の中を確認する。

 

「た、大漁にゃ!」

「はしゃぐだけでこんなに沢山……!」

 

 籠の中でピチピチと跳ねる20匹以上の魚たちを見て二人は戦慄していた。

 

「ひょっとしたら、これを続ければ毎日魚を楽に取れるのかにゃ?」

「いや…毎日やっていると魚が寄り付かなくなる可能性がある。場所を変えるか、警戒されないように次の漁まで間隔を空けたほうがいい」

「な、なるほどにゃ」

 

 好戦的な獣人が狩りで楽をしようなんて考えるとはな……。

 

「それに毎日お魚は飽きるの。お肉を食べたいの」

「物資の中に干し肉があったはずだが?」

「あの干し肉、固くて嚙み切れない上に美味しくないの……」

 

 それについては同意見だ。

 この辺りに生息している動物について調査してから獲り方を考えるのも課題だな。

 

「にゃ?」

 

 しばらく考え込んでいると、リニアとプルセナがケモ耳をぴくぴく動かしながら、川の向こう岸にある森の方を見据える。

 

「どうした?」

「……なにかくるにゃ」

「…かなり大きいの」

 

 魔力感知を発動して存在を確認してみると、既に近くまで来ていた。 

 ガサガサと揺れる草むらからそれが出てきた。

 

 四本足の白い毛玉、長い耳、愛くるしい顔つき、赤い目、見た目はまんまウサギだった。

 ただし、大きさが猪くらいはあり、眉間から一本の鋭い角を生やしている。

 

「アルミラージにゃ!?」

「かなり大きいの…!」

 

 アルミラージ。

 野ウサギによく似た魔獣。通常は野ウサギ~大型ウサギ程度のサイズ。似ているだけで、ウサギとはまったく別の生き物だ。

 愛くるしい見た目に似合わず肉食獣で、極めて凶暴だ。 

 

 

 ディアボロス・チルドレン育成(?)施設で、訓練の一環として野ウサギサイズの兎もどきと何度も対峙したことがあるが、猪サイズは初めてだ。その上、剣はイオリに預けていて、今ある手持ちの武器はチョッパーだけ。

 

 ちなみに、その時の教官のアドバイスは一つ。

 

『魔力を、全身に纏わせて、力いっぱい剣を振るう』

 

 ただそれだけ。

 あまりにも雑なアドバイスに、聞かなきゃ良かったと後悔した。実際、他の訓練生の多くは奴らのあまりの俊敏さに反応しきれずに犠牲になった。 

 

「来るにゃ!」

 

 ウサギもどきが足をたわめグッと力を溜めるような姿勢を取った途端、奴の足元が爆発した。後ろに残像を引き連れながら、途轍もない速度で川を越えて突撃してくる。

 

「にゃあああ!」

「のおお!」

「あぶね」

 

 オレ達は全力で横っ飛びをする。

 直後、一瞬前までオレ達のいた場所に砲弾のような頭突きが突き刺さり、地面が爆発したように抉られた。

 

「猪サイズでこの威力か……」

 

 オレは石の多い地面をゴロゴロと転がりながらも、勢いを利用しながら体勢を立て直し、状況を確認する。 

 リニアとプルセナに怪我は無かったが、二人共陥没した地面を見て青褪め、尻もちをついていた。

 さっきアルミラージを見た時の反応といい、獣人にとっても恐ろしい魔獣のようだ。援護は期待できそうにないな。

 兎もどきの注意がこっちに向くように、近くにあった石を拾って投げつける。手前のところでコンと音を立てて地面に当たる。狙い通り、こっちを向いた。赤黒いルビーのような瞳がオレを捉え細めている。

 首だけで振り返っていた兎もどきは体ごとオレの方を向き、再度、地面を爆発させながら突撃してきた。

 さっきは油断したが、今度はこっちが仕掛ける番だ。

 魔力を脚に集中し、わずかに瞬発力を上げることで迫りくる鋭利な角を紙一重で回避し、がら空きになった太い首がきたところで右フックを打ち込んだ。

 

「きゅっ!」

 

 可愛らしい鳴き声を洩らしながら大きく吹き飛んでゴロゴロと地面を転がる。

 

「あのアルミラージを倒したにゃっ!?」

「いや、まだ来るの!」

 

 兎もどきは怯んだ様子もなくすぐに起き上がり、再びオレに突進して来た。

 オレは動きを読みながらカウンターを合わせ、肘打ち、回し蹴り、膝蹴り、あらゆる地球の格闘術を何度も兎もどきの急所に打ち込んでいく。

 だが、何度も起き上がって突進してくる。

 

 おかしい。

 加減しているつもりはない。最初のカウンターの時に打撃が奴の首に当たった。魔力でわずかに強化したもので、いくら首の骨が太くても普通なら砕けている筈。

 別段硬かったわけじゃない。硬ければその分内側に衝撃が伝わる。実際何度も拳と脚が触れた時の皮膚の感触は柔らかかった。

 おそらく、猪サイズの兎もどきの皮膚は普通サイズのと違い衝撃吸収性に優れているんだろう。一方向から衝撃を受けても分散させることができるのなら、身体強化による打撃に耐えれるのも頷ける。

 打撃の効果が薄いとなると、衝撃を分散させない薄く鋭利な攻撃を与える必要がある。

 

「……となると」

 

 ポケットに入れていたチョッパーを取り出して構える。魔力を流して石器を強化しようとするが、魔力伝導率が鉄よりも悪いため使い勝手が悪いな。

 

「きゅ…」

 

 こっちの意図を察したのか、兎もどきの動きが変わった。

 真っ正面から来ずに左右交互にジグザグに動いたり、カーブを描く様に回り込んでくる。

 刃物というものを理解しているのか?

 ただの突進馬鹿ではないということか。

 狙って突進してくる様は、砲弾というより誘導ミサイルに近い。

 

 素早くオレの背後に回り込んでその鋭い一角が突き立ててくる。

 オレは振り向きざまに避け、チョッパーを奴の首の動脈目掛けて振り下ろす。

 

 パキン

 

 チョッパーから小気味いい音が鳴った。

 石器の刃先が兎もどきの首の皮膚に刺さったまではよかったんだが、奴が首に力を込めて筋肉を収縮させたことで上手く切り裂くことができず、その上材質的な問題で強化を上手く維持できなかったことが重なって砕けてしまったのだ。

 

 それだけでは終わらなかった。

 兎もどきはオレを通り過ぎて地面に着地してすぐ、スライディングしながら後ろ足で角度と身体の重心を調整して上手く方向転換し、間近な距離で鋭い角の先が再びオレに向いていた。

 

「器用すぎるだろ………」

 

 オレの心臓に狙いを定め、力を溜めるような姿勢を取った。

 距離が近すぎるだけにもう避けるのは不可能。

 丸腰のオレにはもう防ぐことや攻撃する手段がないと高を括っているかの様に顔を歪めている。

 足元が爆発した時には角の先端が眼前まで迫ってきた。

 この状況を打開するための手段は一つだけある。ぶっつけ本番となるが実行することにしよう。

 オレは空気を切り裂いて迫りくる角に向かって左手を突き出した。 

 その結果、角がオレの手を容易に貫き、肉を抉る。

 

「――――捕らえた」

 

 痛みを認識しながらも、貫かれた左手で奴の角を掴み、空いた右手を手刀にして一気に振り下ろす。この瞬間に右手に魔力を集約させ、薄く鋭い刃の形に形成する。これはシャドウガーデンのイプシロンというエルフの少女が使った魔力の斬撃を参考にしたものだが、いきなり飛ばしたりはハードルが高すぎるため纏うだけに留める。

 

「きゅ!」

 

 野生の生存本能が働いたのか、兎もどきはオレの手刀に危機感を覚えたかのようにすぐさま逃れようとバックする。

 奴の首は軌道から逸れたが、代わりに鋭い角を根元から斬り落としてやった。

 そして、奪い取った角の尖った先を奴の赤い目に向けて前に出る。

 

 

「~~~~~!!!???」

 

 眼窩に自身の角を突き刺された激痛に声にならない奇声を上げながらもがき苦しみだす兎もどき。

 その隙は殺し合いの場において致命的過ぎる隙だ。

 

「――――じゃあな」

 

 右手の手刀を兎もどきへと一気に振り下ろした。

 

 数秒遅れて兎もどきの頭部がズルと斜めにずれ、そのまま切り口の断面から噴水のように血を噴き出しながら別々の方向へドサリと倒れた。

 

 

「………最初からこれで戦えば良かったな」

 

 完全に死んでいると確認したオレは自身の手刀に形成させている魔力の刃を解除する。

 

「マジか。あいつアルミラージを素手で倒しちゃったにゃ…」

「もはや化け物なの」

「失礼だぞ」

 

 脅威を排除したというのに酷い言われよう。

 

 まあいい。不測の事態が発生したせいで一旦切り上げるしかない。

 戻って穴の空いた左手の治療もしないといけないしな。

 

 そういえば魔獣って食べても大丈夫なのだろうか?

 

 

 




・魚の大量確保
竹かごの罠は筌という魚用の罠を参考にしました。
昔小学校の図工でザリガニ用の罠をペットボトルで作って川に置いたのに獲れなかったという苦い記憶がありましたが………。

・アルミラージ襲来
原作で可愛い見た目なのに凶暴なキャラがいるので、ドラ○エにも出てきた可愛い見た目なのに凶暴な魔獣を登場させました。
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