陰の実力者(笑)の相棒にさせられて 番外編   作:嫉妬憤怒強欲

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○イリアンの新作映画を観た後、エイリ○ンシリーズの公式資料を読んだら滅茶苦茶鳥肌が立ちました。


マジかよ

「………なんだコレは?」

「何って回転砥石だが?」

 

 翌朝、なんとか回転砥石が完成したのだが皆の反応は微妙だった。

 

「足の部分、なんか竹や枝を三角に繋いでるのがいっぱい付いてるニャ」

「こんな構造で大丈夫なの?」

「問題ない。構造力学上、三角形なら力が加わっても変形しにくい」

「?こう、ぞう、りき?」

「またよくわからない単語が出てきたの」

 

 やはりジナイーダ達はトラス構造のことは知らないか。中世となると当然か。

 トラス構造とは部材で三角形を構成し、その集合体によって建築物を作る骨組構造のことで、橋、タワーなどの建築物、あと自転車にも使われているとのこと。

 三角形は四角形と比較して安定しており、強度が強く、部材を曲げようとする力である「曲げモーメント」が作用しない。しかも細い部材で構成できるため、大きな構造でも軽量化が可能だ。

 木を無数の繊維の集合体なら、これは大きな構造材を強度を保ったまま軽量化するために限界まで削りまくったものとほぼ同じと解釈できる。

 その上、部材に使った竹は木材よりも軽量なのに強度が高く、同時に弾力性が高くて衝撃吸収性に優れていた。

 最適な素材と最適な構造の組み合わせの結果、重い石をつけた軸を支える足の強度の問題は解決した上、荷車に載せても問題ないくらい持ち運びが可能になった。

 

「…細かい理屈はまだ呑み込めていない部分があるけど、これなら石の重さに耐えられるってことか。で?足踏みの部分がかなり変わったみたいだね……ボクの気のせいなのか、なんか水車に付いている機構によく似たのが付いているんだけど…ペダルに、これは板?」

「まあ、それに近いな」

「えっ」

「えっと…水車って歯車をくるくる回すイメージですけど、どうやって昨日みたいに足踏みで回すのですか?」

「まあ見てろ…」

 

 口で説明するより見せた方が早い。

 竹筒と木の板で作ったペダルに足を乗せて踏み込む。

 

「回転しだした!」

「あれ?昨日と違って反転しませんね?」

「…ペダルに付いている木の板の上下の動きが回転になってる?しかも砥石と直接繋がっていないのにロープで回っている。まるで井戸に使う滑車みたいだ」

 

 今回枝のしなりを利用した弓錐式に代わる回転方法として、スライダクランク機構を参考にした。

 地球の蒸気機関車、自動車のエンジンのように回転運動をピストンの直線・揺動運動に、または直線運動を回転・揺動運動に変える仕組みだ。

 車輪側面に溝が入った円盤、リンクには両端に穴を入れた半割りの丸棒、各部品を連結するヒンジピンも細い丸棒で代用する。殆どの部品は原始的な旋盤で作れた。

 回転させたい円盤(クランク)とペダルとの間を介している木の板(連接棒)が引っ張られ、連動して円盤も引っ張られる。

 円盤の中心からずれた位置に繋がっており、木の板を押したり引いたりする力が円盤を回す力に変換され、ペダルを最も奥まで踏んだ状態から最も手前まで上がった状態に変わる時に円盤は一回転をするようになっているため、往復運動を繰り返しても回転は一方向。

 さらに一本のロープを円盤の側面に入れておいた溝と、砥石の軸に取り付けた大きめの円盤の溝に巻きつければ、下の回転に連動して上の砥石が回転する。砥石側の円盤ば大きいほど回転速度が減速する代わりに回転時に働く力、トルクが増す。

基本的にテコの原理と同じ要領で、ロープで伝達された力と円盤の中心から力の働く箇所までの距離の積が回転時に働く力となるのだ。

 

 研ぎやすいように回転する砥石を水で濡らしながら、表面に磔器を当てる。

 叩いて割っただけの不定形の石が少しずつ整っていく。

 ある程度削れたところで離して確認すると、磔器の時より表面の凹凸が大幅に減り、刃先が整って鋭利なものになっていた。性質としては新石器時代(縄文時代)に主流だった磨製石器に近い。

 回転砥石ができてすぐ、テストの一環で鏃や石斧、石のハンマー、石包丁などの縄文時代の様々な道具を作ってみたところ、研磨に使っている道具が道具なだけにサクッと作れてしまった。

 テストで作ったものを皆に見せる。

 

「……な、なんかたった一日でそれっぽいのができたな」

「おぉ、ツルツルニャ」

「鉄の代わりに細かく打ち欠いた石を使うことはたまにあるが、ここまで磨き上げられたものは初めて見るな」

「ん……よくできてる」

「昨日の今日で変わり過ぎでしょ。旋盤の時も思ったけど、難なくサクッと作ってしまうのが怖いよ」 

「別に難なくじゃない。回転機構の設計を一からするのに時間がかかった」

「時間がかかったって…凄く早い方だと思うけど…」

「まあ、必要な部品はシンプルな構造な分、最初に作った旋盤で素早く作れたからな」

「でもこういうのを考えつくなんて天才ですよ」

「いや、別にオレは天才じゃないが」

 

 オレはただ地球の人類が200万年もの間に培ってきた技術の一部を活用しただけだ。

 もっとも、知識はあっても実際に作るのは初めてなため、地道に一歩ずつ次のステップに駆け上がっていくしかない。

 

「……砥石車もそうですが、わたくしはその後ろにあるモノがとても気になりますわ」

「あっホントだ」

「砥石の方に注意がいって全然気づきませんでした」

 

 回転砥石とは別に作ったものにテスタロッサがいち早く気付いた。

 

「これって、煙突ですか?」

「ああ、皆が風呂に入っているうちに屋根のところから外して一から組み直した」

「組み直したって…なんで周りに泥がいっぱい貼り付いてるんだ?」

「泥じゃなくて粘土な」

 

 廃屋となった避難所についていた煙突は殆ど風化し、特に接合部分が石斧で簡単に崩せるぐらい脆く穴だらけで、煙突として機能していなかった。

 

 使えないものをそのままにするよりも、これから作るものに再利用するほうが良いと判断したオレは煙突を屋根から外し、一度バラバラの煉瓦にしてから粘土を塗りつけ、少し小さめの複数の物に作り直した。

 粘土は非常に細かい粒子でできた堆積物で、水を含んでいるときは柔らかく、捏ねたり延ばしたりと形を変えることができ、乾燥させたり焼いたりすると石のように堅くなる、火に耐えるといった性質を持っており、太古より陶器や磁器、煉瓦などの造形材料に利用されてきた。

 ただ粘土だけで大きくて高いモノを作るとなると、いちいち乾燥させなければ高く積み上げられないため、積み上げた煉瓦に塗り付け(断熱が必要な内側は特に念入りに)煉瓦同士をくっつけるのと同時に風化した部分の補修するのに使った。粘土を使って一から煉瓦を作れるが固まるのに時間がかかってしまうため別の機会に。

 

「見た目に関しては目を瞑るとして……なんで大きい一つにせずに複数に分けたのさ?」

「ちょっとした実験だ。質問だが、煙突にはどういう役割があると思う」

「唐突だね……そりゃあ暖まるために薪を燃やした時に煙が出てくるからそれを外に排出するためでしょ?」

「だいたい合っている。それじゃあなんで薪を入れる場所から火や煙が出てこない?」

「え?それは……なんでだろ?」

 

 当たり前のことのように認識していると、細かい原理まで気にならないから答えられないのは仕方ないか。

 

「外でやる普通の焚火だとすぐ四方八方に拡散してしまう。だが煙突の中で燃やすと、中の空気は外気より高温になる。高温の空気は低温の空気より軽くなって上昇、空気のバランスを保とうと下部の空気取り入れ口から外部の冷たい空気が引き込まれ、同時に暖かい空気が上昇して排気される。煙や火が煙突に吸い込まれるように見えるのは空気と一緒に引き込まれているからだ」

「へー」

「そうなんだ」

「物知りですわね」

「空気に重いや軽いがあるなんて全然知りませんでした」

「これから知っていけばいい。知っている知識が多ければ生き残る術も多く思いつく」

 

 あとはどんな状況でもとっさの判断ができる能力も必要だが。

 

「それでだ。最終的に上に排気できればいいとして、吸気部分を延ばしたらどうなると思う?」

「?どういうこと?」

「実際にやると、こんな感じだ」

 

 立てている煙突の吸気部分に横倒しにしたもう一つの煙突を当てるように隙間なく配置する。煙突から煙道を横に延長させるL字型となった。

 

「…変な形だな」

「えっ、さすがに無理なんじゃ」

「無理かどうかを確認するための燃焼実験だ」

 

 煙突部から離れた吸気部の入り口に小さな枝と薪を入れて着火する。

 

「!火が曲がりながら燃えている!?」

「どうなってるニャ!?」

「原理はさっき説明しただろ」

 

 温度差が大きいほど気流の流れが強くなり、薪がよく燃える。

 吸気部から外気を勢い良く吸い取って煙突方向へ流れているため火も煙突の方に引っ張られ、煙突からゴーゴーとロケットのような吸気音が轟くとともに激しく炎が噴き出していた。

 

「少ない薪でこれほど大きな火がでるなんて…」

「内部の粘土がもう少し固まれば断熱できる。断熱すれば内部がより高温になり、上昇の勢いが増すとともに二次燃焼が起きる」

「にじ、燃焼?」

「薪を燃やすと可燃ガスが発生してそれに火がつく。これが一次燃焼だ。その際に出る煙は燃え切らなかったガスで、これにさらに高温の空気を送って着火させることを二次燃焼だ。二次燃焼が起こって排出される煙が少なければちゃんと全部燃えた証拠だ」

 

 まだ完全には乾いていないから、今は横引き煙突内部の粘土に残っている水分を蒸発させて湯気になったものも排気してる段階なのだろう。

 

「それじゃあ、立ち上る煙で存在を知られる心配がなくなるということか…」

「そうなるな」

「………火が煙突に向かうのなら、横引き部分にも熱が伝わってるんだよね?」

「ああ、そうだが?」

 

 モニカがなにか思いついたようで、横引き部分の上に平たい石を載せ、その上から竹筒製の水筒に入っている水を垂らす。すると平たい石の上で水がジュアアアアと音を立てながら蒸発して水蒸気となった。

 

「これだけ熱いならこの上で料理できるんじゃない?」

「ニャ!?」

「料理…じゅるり」

 

 食いしん坊キャラに同調するわけじゃないが、確かに使えるな。

 

「全員の分を焼くにはスペースが狭いが、上手く工夫すればできるかもな」

「それに、レンガじゃなくて地面を掘って火の通り道を作れば部屋全体が効率よく温かくなるかもね?」

「!あっ、なるほど」

「冬の日に使えそうですね!」

 

 その発想はなかったな。

 小型の横引き煙突と大きな煙突との間に土の通り道を作れば、横引き煙突から発生した多くの熱が地面に奪われ、大きな煙突から出た時には排気はぬるくなる。

 その代わり殆どの熱を床に蓄熱する上に、薪から出る熱エネルギー自体も多いため、通常の暖炉の10分の1ほどの僅かな薪で床からほのかな熱気が立ち上り続ける。

 

「原理を教えたばかりなのにそこまでアイデアを思いつくとはな」

「いつまでも誰かさんに翻弄されっぱなしは嫌だからね。少しでも一泡吹かせようと活用法を考えてたら思いついた」

 

 動機があれだがまあいいか。

 

「…それで?君はこの煙突でなにを作るつもりなの?実験のためとはいえ、なんの意味もなく用意するとは考えられないし」

「ああ。オレは意味のないことはやらない。煙突で小型の炉を作ろうと思ってな」

「炉って暖炉のこと、じゃないよね。今は暖かいし」

「炉違いだな。ヒントはさっき見せた物にある」

「ま、まさか………」

 

 モニカは回転砥石を見て察したようだ。

 

「簡単な話、鉄の武器を作るために鍛冶場を作るつもりだ」

 

「「「「「「「「「えっ」」」」」」」」」

 

 オレの言葉に理解が追い付いていないのか、モニカ以外の全員の目が点になっていた。

 

 

♢♢

 

 

 一方その頃、避難所の位置から川を挟んで反対側の森の奥にある沼地にて。

 

「グオオオオオオオオオオ…!」

「ホオオオォ…!」

 

 周りが霧に覆われ、湿っぽく泥の深い地面に生い茂る木々の間を2頭の巨大な魔獣が動き回っていた。

 二メートル以上はあるだろう筋肉質の巨躯に、密に生えた焦げ茶色の厚い毛皮。

 4本の鉤爪を生やした前肢は後肢より長く太い上に、先から肘にかけて鳥の羽根のようなものが生えている。

 身体がクマの様な姿をしているのに対し、頭部は丸みを帯びた平たい顔に鳥の嘴がついている梟の形。梟と熊を掛け合わせたような外見の魔獣はアウルベアと呼ばれている。

 獰猛で貪欲、短気で攻撃的な肉食で、ネズミや蛇、森の獣から人間まで何でも捕食する。

 番で狩りをするこの魔獣達は、我が子がいる領域に近づいた不届き者を怒り狂ってるかのように執拗に追っていた。

 

 

(しつこいなもう………)

 

 木の上に隠れて下の様子を伺う猫の獣人の少女は、自身をつけ狙うアウルベアのしつこさにうんざりしていた。

 

(返り討ちにすることはできるだろうけど、血の匂いで他の魔獣たちが寄ってくる危険性がある。このまま立ち去るまでやり過ごすって手もあるけど、あのしつこさを考えるとすぐには立ち去らないだろうね……)

 

 獣人にしては頭がよく回る彼女はアウルベア達の追跡から逃れる方法を考える。

 

(……そういえば、アウルベアって馬鹿犬並に頭が悪いんだったっけ。それなら誘導して罠や崖に突っ込ませるって手も………ってここまで来る時崖は見当たらなかったし、罠を用意するにもそんなの持ってきてないし)

 

 実際のところ、足元や周りの木に巻き付いている蔓や丸太を使って原始的な括り罠を作ることは可能だ。すぐに引きちぎられても、締め付け拘束でほんのわずかでも足止めをし、その隙に気配を消しながらその場から逃げ出すチャンスはある。

 しかし霧で視界が悪くその存在に気づかないうえ、狩りが得意すぎて今まで罠を使う必要がなかったため、そういった知識のない彼女になかった。

 

(…となると、音で気を逸らすしかないか)

 

 少女は僅かに魔力を練り上げる。すると、ぴっちりとした黒いスーツの一部が蠢き、少女の手のひらに集まり、黒くて丸いボール状へと形成されていた。

 それを片方のアウルベア(低めの鳴き声から多分雄)の傍にある沼へと投げ込んだ。

 

 ボチャンッ

 

「!?」

 

 水面の派手な音に片方の注意が向いた。

 

(よし。もう少し――――)

 

 沼に隠れていると勘違いした雄が濁った水面に顔を近付け、大きく吼えたその時だった。

 

 ザバアアアアアっ

 

 目の前の水面が大きく弾け、中から巨大で細長い影が雄に飛び掛かった。

 

(な、何っ!?)

 

 突然のことに少女は思わずその場に留まってしまった。

 

 それは雄の喰らい付くも力いっぱいに沼から引っ張り出され、そのままスイングで陸地へ投げ飛ばされた。

 そこへ追撃を駆けようと雌が突進するが、それは軽い身のこなしで高く跳躍し、迫りくる雌の巨躯を飛び越えて躱した。

 全身が露わになったその影のシルエットは一言で表せば、蛇だった。

 人の倍以上の身の丈を持つ、アルビノと呼べるほど乳白色の肌をした細長い胴体に三角形の頭には2本の角と耳のようなものが生えている。

 だが大蛇と判断するにはあまりにも異様だった。

 まずその蛇の胴体には四肢が生えていた。トカゲにも見えるが、起き上がった時の姿勢はトカゲやワニのように腹ばいではなく、下に向かって伸びる四肢で身体を支えていた。前肢は獅子のように太く四本の鋭い爪が生えているのに対し、後肢は鳥のように踵を地面につけず、爪先立ちの状態である。

 また、細長い尻尾は上向きに前へ反り曲がり、先端が鈎状に尖っていてサソリの尾のように見える。

 

 これらの特徴から該当する魔獣は一種類のみ。

 

(あれはまさかムシュフシュ!?こんなところにいるなんて!?)

 

 ムシュフシュ(意味は『怒れる蛇』)。

 アウルベアのように複数の生物の特徴を掛け合わせた肉食の魔獣で、獅子のような高い敏捷性で獲物を追いかけ、サソリのような尾の針から分泌される猛毒で麻痺させ、動けなくなったところを蛇のような大きな口で丸呑みしてしまう。

 生息域は森林や沼地、荒野など幅広く、地域によって外見が少し異なっており、体表の色以外に全身が甲殻類の甲羅のように分厚い鱗で覆われている、寒い地域にいるは羽毛で覆われている、熱い地域にいるのは頭部が硬質化した刃物のように尖っていたりと生態に謎が多い。

 性質は怒り狂っているかのように凶暴で、それでいて狡猾。

 並の魔剣士が束になって立ち向かったとしても、一体の討伐の代償に10人中3人しか生き残れない。

 大昔に巨大な変異個体が小さな町を一夜で滅ぼしたという噂もある。事実がどうであれ、あまりにも危険なのは変わりなく、魔剣士協会や騎士団が特別討伐指定種として警戒している。

 

 どうやらこの沼地はその危険極まりない魔獣のテリトリーだったようだ。

 アウルベアだけでも厄介だというのに、更に厄介な魔獣が出てきてしまい最悪の状況。

 唯一の救いは、肉食獣同士が睨み合っている状態で少女に気付いていないことだ。

 

(とにかく…逃げるなら今がチャンス―――)

 

 突然ゾワリと悪寒を感じた少女は野生の勘に従って即座に身をかがめる。

 すると、霧の中から鈎状に尖った尾が飛び出してきて、0.5秒の差で少女の頭があった箇所の木に先端が突き刺さった。

 

「もう一匹!?」

 

 黒いスーツを変化させ、両手にチャクラムを作り出して構えた時、風が吹いて霧が晴れる。

 

 周りを見渡すと、幾つもの木々にいくつもの大きな影が鋭い爪を駆使して貼り付き、ガチガチと牙を打ち鳴らしながら少女を見据えていた。

 

「……っ、最悪」

 

 

♢♢

 

「タケノコ採ったニャー」

「こっちも獲った。若い雄鹿だぞ」

「ん……大きなスライム獲った」

「シロコは本当にスライムが好きなの」

 

 午前の訓練を終わらせた後、オレはイオリ、チナツ、リニア、プルセナ、シロコ、アタランテと共に食糧調達のため森の中を進んでいた。自衛のために全員石器の武器を持参。

 オレは炉で燃やすのに必要な木炭にする薪の採集、アタランテは狩りの経験があるため竹製の弓と石の矢じりを使って鹿などの動物の狩猟を、薬草に詳しいチナツとシロコ、リニア、プルセナ、もしものためにオレの剣を持参しているイオリは山菜や薬草の採集といった風に役割分担している。

 シロコ達獣人はとても鼻が利く。周囲の警戒だけでなく植物の匂いで大体食べれるものかどうかわかるため、リニア達が採った物は殆どチナツのチェックを通っている。

 

 それに対してイオリはというと…

 

「イオリ、何度も言いますがこれはニリンソウではなくトリカブトという危険な毒草なんですよ」

「そう言われてもチナツ、私にはどれも同じ草に見えるんだよ」

 

 採ったものが全部毒キノコや毒草というミラクルを何度も起こしていた。それも、チナツから口ずっぱく言われてもだ。

 ニラだと思ったらスイセンだったり、ゴボウだと思ったらチョウセンアサガオだったとかならまだ可愛い方だが、どう見ても毒キノコに見えるカラフルなキノコを大量に籠に詰んだりと、もはやある種の才能だ。

 さすがの本人もこの結果の繰り返しから投げやりになってしまって木を背もたれにして地面に座る。

 

 その才能も時には役に立つ。

 

「これ捨てますよ」

「いや、念の為幾つか取っておいてくれ」

「え?」

 

 オレは籠から毒草を出そうとしていたチナツを止める。

 

「何かの時に役に立つ」

「役にって……毒ですよ?」

「毒でも薄めれば薬になる。例えば、チョウセンアサガオに含まれる成分を限界まで薄めれば船酔いを抑制する酔い止めに、ベラドンナなら鼻水を抑える鼻炎薬や鎮痛剤や目薬に。トリカブトは加熱すれば毒性の低い化合物に変換され、痛みを止めたり、 衰弱した心臓の機能を高めたりできる」

「毒から薬を作るなんてことが可能なのですか?」

「薬と毒は紙一重だ。薬草も強すぎれば毒にもなる。その逆も然りだ」

 

 この世界の医療技術は中世レベルであまり発達していない。そのまま食べたら死んでしまうから使えないという感覚で忌避しているから、使おうとする薬も限られているのだろう。

身内が悪魔憑きを発症した途端迫害するような連中だからあり得る。

 

「毒によって身体に働く作用は異なる。目を背けずそれらの違いや特徴といった本質を見抜ければ作れる薬の範囲が広がるとオレは思う。本人の腕次第だが」

「な、成程…」

「……なあ。紙や石鹸のときも思ったが、なんで薬師でもないお前そういうことに詳しいんだよ?教団の施設で教わったのか?」

「そんなわけ無いだろ。剣での戦い方の説明が雑な連中だぞ」

「じゃあどこで教わったんだよ?」

「言っても信じない」

 

 実は異世界からの転生者なんですなんて正直に話しても正気を疑われるだけだ。まあ、色んな物を作ったりスライムを食べた時点である意味正気を疑われてるが。

 

「……まあオレのことはいい。それよりもイオリ」

「な、なんだよ」

「立って武器を持て」

「は?」

「マスター、なにかがこっちに近づいてくる」

 

 川の傍で鹿の血抜きをしていたアタランテ達も異変に気付いたようで駆けつけてきた。

 

「なにかがって、なにが来るんだよ?」

「嗅いだことのない匂いだからわからない」

「ん………とても大きくて素早い」

「今から逃げても追いついてくるの」

「ちょっと待つニャ……嗅いだことのあるのが一つ混じってるニャ」

「え?」

 

 全員武器を構えて周囲を警戒すること5秒、森の奥から動く影が見えた。

 

 金色の猫の獣人の少女が苦しそうに走る背後で3匹の大きなトカゲ型の魔獣が木を伝って追いかけていた。

 あの少女の服装……シャドウガーデンのアルファとイプシロンが着ていたのに似ている。

 

 大方返り討ちの腹いせにオレを執拗に追いかけたが、あらかじめ偽装しておいた痕跡を辿って魔獣たちと鉢合わせしたんだろう。

 

 あいつが死ねばオレに返り討ちにあったと勘違いして今度は大勢でくるかもしれない。

 だが助けたとしても顔バレする危険性があるし、素直に返してもこのまま放っておいてくれる保障もない。

 

 さて、どうしたものか。

 

「あっ、やっぱりあいつリリムニャ」

 

 ん?

 

「リニア、あの獣人のこと知ってるのか?」

「知り合いもなにも、リリムとあちしは小さい頃よく遊んだ、いわゆるマブダチニャ!あっ、でもずいぶん前に身内同士の争いで死んだって…」

 

 マジかよ。

 グループの1人がシャドウガーデンのメンバーと幼馴染だったとか……………。

 

 これ見捨てる選択肢ないじゃないかこれ。

 




・回転砥石完成
支柱には竹を使ったトラス構造
足踏みにはスライダクランク機構を利用

・煙突再利用
煉瓦を一回ばらして組み立て直し、粘土で補強
横引きの形でも空気が下から入ってくることを確認
いわゆるロケット○トーブの爆誕
燃焼効率は上がるが、薪の消費が心配

・ムシュフシュ登場
FFシリーズやFGOに出てくるモンスター登場
ゲームごとに外見が違うのは生息域の環境に適応して変化したものとつじつま合わせ

・一方居残り組は……
粘土がいっぱいあるのでプチ陶芸教室をやっている
皆樹皮の鍋にそろそろ飽きていた
ただし、焼き固まるのにかなり時間がかかることを後で知る
それまで旋盤で作った木皿で我慢
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