ツヴォルグ   作:zaq2

22 / 34
第22話

 祭も、夜になると静まるかといえばそうでもない。

 

 夜になれば夜の活気というのに包まれる。

 

 あちらこちらで酒盛りが繰り返し行われている状況だ。

 

 そんな情景を眺めながら、肉串を口に含んでは生ぬるいエールを流し込む。

 

 

「……プハァ、やはり肉にはコレだな」

 

 

 キンキンに冷えている訳でもないが、肉串の脂っこさを炭酸とアルコールが取り除いていく、そして、かるく酔いしれる状況。

 そして、鼻にはサッパリとさせるための香料の匂いが軽く残っては、爽やかな気分を多少なりとも作り出してくれる。

 

 

 ……この一時のために生きているといっても過言ではないな。

 

 

 ただ、目の前に蜂蜜酒数杯で酔いつぶれている金床長耳と、舟を漕いでる女史がいたりするのは、なんだかなぁと思うのだが……

 

 

   *   *   *

 

「ここにいたかヴォルグ!早速だが話がある!」

「こんばんは、お邪魔してもよろしいでしょうか?」

 

 

 何時もの面子とは違う街の商売関連知人たちと飲んでいたら、唐突に二人が現れる。

 知人たちは、金床長耳と女史のタッグが現れたとたん、酔いが冷めたのか、そそくさと席を譲る格好で離れていった。

 

 

「……祭なんだから、商いの話は無しでもいいだろうに」

「そういう訳にはいかんな」

 

 どういうこった?と、つきそいの女史に視線をむけると

 

「昼の便にて、ご依頼の品が到着しまして、それで業務が終わり次第家にむかったのですが、不在でしたので……」

「……?なにかあったか?」

「コレだコレ!!」

 

 といって取り出されたのは、瓶詰めされた代物

 

「……中を見てもいいのか?」

「かまわん」

 

 

 許可をとったので、ふたを開けると、そこからはほんのり香りでてくる甘ったるい匂い。

 これは不味いと思い、すぐに蓋をする。

 

 そして、周囲を見渡せば、この匂いは行き届かなかった安堵する。

 

 

「……というか、これを見つけてくるとは」

 

 

 たしかに、香料としてこういうモノがあれば、種類を増やせれるという話をした覚えはあるが、実際に探してくるとは……

 

 

 

「それを知った今では、さっそく試食してみたいと思ったぐらいだ」

「そうですね、ここまで甘い匂いとなると、わたしもお願いしたくなります」

 

 

 細長く、やや色が褐色になりつつある豆みたいなもの。

 種子は小さく細かいのだが、乾燥と発酵をすることで独特な香りを出す代物である。

 場所によっては、お香として用いられているそうだ。

 

 

「……にしても、よく見つけたな。いくらだ?」

「条件次第でロハでいいぞ?」

「……どういうこった?」

「貴様が使えば美味くなることは確定の匂いだ。私の感がそう言っている!」

「そうですね、ツヴォルグさんでしたら、美味く調理してもらえそうですしね」

「話だけで涎……いや、興味がつきなかったからな!」

「そうですよねぇ、話だけであれほどでしたから」

 

 

 ココアも偶然流通として入ってきたのを見つけ、それでチョコレートを作成しては雑談程度に話ていたのだが、本気で取り組んでいたのか?

 

 そりゃぁ、氷菓子から始まってドリンクまで、使い方は色々みたいな話はしたが……

 

 

「……わぁったよ、まずは試作してみっから、しばらくまっとけ」

「うむ!よろしくたのむぞ!!では、私たちも祭りを楽しもうか」

「そうですね」

 

 

 と、二人して蜂蜜酒を頼んでは冒頭の状況になってしまっていた。

 その顔は、どことなくやり切った表情とでもいうか……

 

 

 ……いや、ほんと女性のお菓子への執念って恐ろしいわ、マジで見つけてくるのな

 

 

 そう思いつつ、 瓶の中身を眺め見ながらエールを一口飲んでは、その執念に笑うしかく、その代物をみながら思った。

 似てはいるが、微妙に違うかもしれないが……

 

 

 

 

 

 この世界にも"バニラビーンズ"があったんだな。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。