ツヴォルグ   作:zaq2

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第23話

 試作から始まり、試行錯誤というよりも"思い出しながら"制作をはじめては二日。

 

 掃除の手伝いにきていたガキ共から甘い匂いがするという追及をかわしにかわして完成した"バニラアイス"

 

 まぁ、旨いかどうかという評価を促すなら、舌触りが悪すぎる。

 味に関しては、バニラとミルクと卵に砂糖で十二分。

 

 そうして持ち込んだ組合において、試作品を一口口にした金床長耳の動きが止まる。

 女史も止まる。

 

 

「……おいおい、どうした?駄目だったか?」

 

 

 そうして時が止まっていた二人が、突如と震えながらに立ち上がり

 

 

「これは売れる!絶対に売れる!!今のうちに権利を確保だ!!!」

「はい!わかりました!」

 

 

 と、試作品をたいらげた金床長耳と女史の二人が、温厚な表情とは一変し、他の仕事を放り出しては書類を"書かされ続けた"……

 

 

「……これでいいか?」

「ふむ、ふむ?ここは駄目だ、ここの所が曖昧過ぎる。しっかりとした事をかけ」

「……いや、だからここら辺は各店舗の味として作り方を自由にしてやれば」

「なるほど……という事は、この手順を変えることで色々な事が出来ると?」

「……まぁ、そうなるだろうな」

「では、ここは自由裁量範囲とすることでいかがでしょう」

「おお、そうだな!そうすれば色々な味を楽しめそうだな!!」

 

 

 なんというか、冷めていくこちらの心境とは逆に、熱くなっていく二人の存在に圧倒させられていく。

 

 ……それよりも、昼頃だったはずが夕日も沈んでは暗闇の世界となっているのだが

 

 

「……なぁ、いったい何時になったら帰らせてくれるんだ?」

「「草案が出来るまで」です」

 

 

 テーブルの上に束となっている用紙を眺めてみては、こりゃぁ今日中には帰れんなと、うんざりという意味を込めた ため息を出しながら諦めた。

 

 

 

 

 

 

   *   *   *

 

 そうして、そこから半年以上ほどの過去り、偶然ともいう形で集まった、酒場でいうところの隅の席で、いつもの四人組が偶然にも一同を介して食後のデザートでバニラアイスを食べていた。

 

 

 昨今の近況という馬鹿話をしながらも、ふと解放された身から言葉をこぼす。

 

 

「……どうしてあんな事になったんだろうな?」

「あぁん?どうしてだと?そりゃぁお前、コレは相当ヤバイ代物って気づかなかったからだろ」

「コレ、果実酒をかけてもいけますからね」

「これだぜ!これ!!うまっって、ウッ」

 

 一人は静かにコーヒーと共に、

 一人は果実酒をぶっかけて、

 一人は椀に入っている特盛をスプーンで掻き込んでは頭を押さえている。

 

 そういう自分はといえば、砂糖控えめミルク濃いめの代物を口に含んでいる。

 

 

「こういうのを作る時は此方にも話を通せ。そうすれば多少は融通させれたんだぞ」

「……あー、そりゃぁそうか。組合の二人に気圧されてしまったのが不味かったか」

「あの二人だからこそともいえるが、根回しの落ち度が無いのが悪い方にいきかけたからな」

 

 

 権利云々の根回しに商売と貴族としっかり押さえこんでいたのは事実だったのだが、それが"他国"という範囲も混ざりに混ざって収まりきらなかった。

 

 

 正直、色々ありすぎた。

 

 出来上がったバニラアイスは、国中に瞬く間に広まり諸外国にも広まった。

 

 バニラビーンズに関しても、それまでは香料としてしか認知されていなかったものが一大産業に一気に上り詰め、それに乗り出す商家も出てくるわでテンヤワンヤな混乱を生み出し、もっと言えば権利争いにまで発展した。

 

 一時は高額な金額で取引される始末になりかけたが、偉い人の一声でそういう事にはならなかった。

 

 そういう輸出入を含む外交的なつながりは、やはりお偉い方々の領分も含んでいる為に特にだ。

 

 それぞれが手打ちの範囲を決めるビーンズ会議を開くという、なんとも大ごとになっていったのだ。

 

 これが後世に"ビーンズ事変"と言われて歴史に残るとは思いもよらなかったが……

 

 

 

「後手に回ることになりはしたが、ボスと大ボスに話を通せれてよかったが……当初は寝耳に水状態だったからな?出所がココとなればなおさらに追及されたわ」

「……そうなのか?」

「私の方にも、入手経路云々がどうとか調査が来ましたね。教皇様への献上品にとか何とか」

「……そこまでかよ」

「けどよ、一般に手に入るからそこまで仰々しくする話じゃなくない?うお、また頭に……」

「……お前は落ち着いて食えよ」

 

 

 そう、流通が一般化し、なおかつレシピも一般公開になったために、そこまで争う物にもならなくなった。

 やろうと思えば、"どの家庭でも作れる"。

 

 なんなら、この街なんて酪農もやっているために、安価に材料すら手に入る。

 そういったことで、行きつけの喫茶店が専門メニューまで作られて、はては酒場にすら卸てくる代物になった。

 

 ちょっとお高いけれども、庶民が手に入れれないほどでもない代物となり、各都市各店舗でオリジナルも出回り続けている。

 

 

 なんか、元祖とかつけて売ってる金床長耳の息が掛かった店もあるとか無いとか。

 

 

「……どうしてこんなことになったのやら」

「国際会議で議題なる代物だったと自覚しとけよ?ま、こちとら見てて面白かったけどな」

「ほんとほんと、そういう奴等に追われてたの見た時はクソ笑ったわ」

「子供たちも喜んでいました。ええ、とても良いものを作られましたから胸を張られて良いかと……うんうん、やはり果実酒によく合いますね」

「……お前らなぁ、他人事だと思って」

 

 

 三人が息が合うかのように目をそれぞれに合わせてから一斉に

 

 

「「他人事」だしな」ですし」だろ」

 

 

 

 くっ、こいつら……

 

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