ツヴォルグ   作:zaq2

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第29話

 暇というのは、何物にも代えがたい苦痛を伴うと思う。たぶん。

 

 前世?では、暇つぶしとなるモノは多種多様と存在していたのだが、この世界においては、そういうものがほとんどない。

 

 

 ……いや、無いわけではないが、そういう娯楽が乏しいというか、何というか

 

 

 そうなってくると、趣味というものを作っては、それに倣って暇をつぶす事もできるのだが、その趣味に金をかけるかかけないかは今世でも変わらない。

 

 そうなってくると、結局は、仕事をしている方がマシとかいう社畜根性に似た何かがあるかもしれない。

 

 

 ……あとは、酒飲んでるか、遊んでいるかのどっちかしかないがな

 

 

 そんな中、自分が行っている暇潰しというのが、酒場に入り浸ってはチビリチビリと忙しそうにしてる奴を肴にして酒飲んでるか、はたまた手慰み程度として何かを作っているぐらいとなる。

 

 なので、その暇というのをつぶしているのだが……

 

 DIYという概念というのが無い今世。

 

 

 というか、生活の質を良くするための道具やら何やらは、購入するよりも「自作」するのがメインとなってしまっている。

 

 前世界では、一応は技術者として働いていたので、そういう工業系の知識がある。

 そこから、物理法則は何気に似てるような世界でもあり、アナログ的かつ簡易的な機構の代物であるならば再現は多々可能でもある。

 

 だが、魔法がある世界

 

 魔法という存在が、科学の発展を蔑んでいるのではないか?という具合に、魔法を使えば便利な道具が多種存在しているのも事実であった。

 

 

……給湯器もしかり、照明もしかり、本当、魔法ってのは便利なものだよなぁ

 

 

 それで、魔法で思い出したことがある。

 

 

 

 

……魔法運用免許の更新忘れてた

 

 

 

   *   *   *

 

 この世界、魔法を使うために免許制度を敷いている。

 仮免(見習い)から始まり、四級~特級、あとは個別の限定枠があり、まるで自動車免許の様である。

 

 個々人が勝手に魔法つかって色々と問題を起こしたらえらいこっちゃとなるので、魔法を使用するためには、そういった免許をもっていないと罰せられる形なった模様である。

 

 でなければ、街中でむやみやたらと使用されたら、かなりヤバイ代物だってあるからでもあり、隠れ魔法使いとバレれば極刑ともなりうることだってある。

 

 という事で、色々と制約が課せられる中での運用をしなければならない訳だが

 

 

……バレなきゃいいっていうのもあるが、まっとうに生きるなら、そりゃぁ無しだわな。

 

 

 そうして、やってきたのは商業ギルド。

 

 さっそくとばかりに更新の窓口にて書面を書き、使用許可の受付を終わらせて、あとは呼ばれては試験場にいって試験する。

 

 運転免許のみたいな一気にやるわけでもなく個別で好きな時間で行えるのが良い点ではあるなと感心はする。

 

 書面の不備が無ければ、あとは実際の確認とテストを行って新たな許可証が発行されるのだが……

 

 

 その試験会場となる倉庫棟の隅っこにて、とある相手と相対する。

 

 

「……何でお前さんが試験担当なんだ?」

「ん?ひm……手が空いていたからの、なんじゃ?文句あるのか?」

「……いま、"暇"と言いかけなかったか?」

「気のせいじゃろ?そもそもお前さん土属性限定での特級じゃろ?特級試験官は少ないからの、しかたないのぉ」

「……以前は女史がやってたんだが?」

「そうじゃったかのー?ではどこから始めるか」

 

 金床長耳は、何の事やら?と視線をそらしながら試験用の鋼材を持ち出していた。

 

 

 ……こいつ、すっとぼけやがった。

 

 

「ほれ、造形用の鋼材じゃし、さっそく始めるかの」

「……全力スルーかよ」

 

 

 造形用の鋼材というか、土属性の限定特級のため、鋼材の操作が必要となる。

 

……しゃーない、始めるか

 

 先ほどの事をツッコミ入れると長ったらしくなりそうなので、こちらもスルーに便乗して造形用の鋼材を手に取って作業を始める。

 

 

 そもそもというか、土属性という魔法というが、コレ、オカシイと思わないのかね?といつも思う。

 

 よく挙げられるのは"石つぶて(ストーンバレット)"とか、なぜ空中に"物体"が飛んでいくのか?

 

 風属性ではなく、土属性単体でそれが可能という、訳の分からないと思っていたが、これ、土属性っていうが重力や引力、はては磁力まで操作してるんじゃねぇのか?と。

 

 だがまぁ、磁性の無い物まで操作できてるから、そういうものでもないかもしれんが……

 

 いまも、魔法によって分子間結合が緩くなるのか、よくわからないままにこねくり回せる時点でかなり変なのだが、これを分子や原子レベルまで操作できてしまったら、前世界における錬金術的に別の物質が作れるんじゃないか?という思考さえでてくる。

 

 

……もしかしたら、核分裂……いや、核融合もできたりしないか?

 

 

 そんな危なっかしい事を、しょうもない風に思いながらも手を動かして、ひとつの作品を作り上げる。

 

 

 

 

 金床長耳女のフィギュアサイズの超絶リアルな全身像

 

 

 

 

 目の前にモデルがいるので、それを忠実に再現した至高の一品である。

 

 特にこだわったのは、この()()()()()()()()()()()を表現するために衣類を薄く表現するという、彫刻における至極(しごく)の表現で表しているのである。

 

 

「……どうだ、これなら合格だろ?」

「失格」

「……はぁ?!何言ってんだ!ここまで(布地の)再現性の高い奴ぁないだろうが!!」

「だから失格!」

「……どこを見てたらそういうってんだ!魔法の(繊細な)制御だって完璧だっただろうが!」

「失格と言ったら失格!私がそう決めたからだぁ!!」

「……ふざけんな胸無クソババァ!!」

「きさっ!きさっ!!言ってはならん事をぉぉぉぉ!!」

 

 ・

 ・

 ・

 

 

 

   *   *   *

 

 

 なお、女史が呼びに来るまで、この不毛な口争いが続いたのは嫌な出来事であった。

 

 

 




ポージングは、腰に手を当てて胸を張ってる奴
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