ツヴォルグ   作:zaq2

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第3話

 青い空のもと、背には大きな背負子を背負いながら一人旅。

 えっちらおっちらと獣道を進んでいく。

 

 途中、湧き水で水分を多めに補給しては、木陰に座って一服休憩をする。

 

 こういうのを森林浴とでもいうのだろうか、森の静けさと風になびく草木の音が、ここまで歩いてきた自分にとって、癒しを与えてくれている気がする。

 

 気がする。

 目の前に広がっている、オオカミの群れに囲まれている状況でなければ。

 

 相も変わらず、自然豊かな地である。

 

「……あっちいけ、ワシは今、休憩中なんじゃ。シッシッ」

「グルルルルル」

 

 そして、一斉に襲ってくるオオカミたちを、手荷物としてもってきている鉄杖で軽くあしらっては追い返す。

 

 ワシよりも背丈が倍以上のモノもいたりするが……まぁ、動きは見切れるので簡単にかわしては受け流し、小突いては追い返す。

 

 下手に血の匂いなんぞさせたら、別の何かが現れる可能性が高いのがこの森林。

 なので、むやみな殺生は行わない事に越したことはない。

 

 そうして、一通り追い払った後に、再び獣道ともいえない道らしき場所を歩き出す。

 幸先からしてこれかと、深いため息をついて。

 

 

 

 ……

 

 あれから、数刻、そういう邪魔が色々と入りながらも森林を進んでいくと、森林の中なのに小さな広間というべき空間に到達する。

 

 すると、今度はいままでの獣とは異なる異様な気配に包まれる。

 まぁ、いつもの取引相手が現れた事を示しているともいうが。

 

 

「……おーい、きたぞー」

 

 

 そう声を上げると、返答の様に一筋の光の矢が足元に放たれる。

 地に刺さった瞬間、その光の矢を中心として陣らしきものが広まっていく。

 

 それと同時に、上からひとつの人影が降り立つ。

 

 腰と足、それに頭に白い翼をつけた。布服を着たヒトガタの存在。

 まぁ、その頭上に光る輪っかがあったりするが……そこは、見なかったことにしている。

 

 そういわれているからだ。

 

 

「……よぉ、久しぶりだな」

「遅いです。2日遅いです」

「……相変わらず細かいな」

「あなたが大雑把すぎるだけです」

「……へいへい」

「これだから、下界の……」

 

 

 始まった小言的なのをスルーしながら荷ほどきを開始する。

 

 こいうのは、いつもの事なので気にはしない。

 なにせ、本人も後で過分に言い過ぎたみたいな事で謝罪もしてきたりするので、いつもの事という事で、気兼ねする必要もない。

 

 

「……で、どうする?早速、取引にかかるか?」

「であるか……はい?聞いているので?」

「……聞いてる聞いてる。いつもの事で一言一句覚えてしもうたわ」

「仕方ないですね……では、さっそく行いましょう。時間が惜しいですし」

 

 

 そういう割には、感情が含まれた言葉が、口から駄々洩れなのだが……

 

 とりあえず、依頼されていた化粧品として作ったハンドクリーム、それと自作のお菓子類などを渡しておく。

 

 代わりに、依頼の香草や素材となる聖石など、普通では手に入らない代物をお願いすれば、数日後には、どこからともなくあらわれる鳥によって手に入る事が出来る。

 

 

「これこれ、ツヴォルグの作っているこのクリームというものは本当に素晴らしいものですよ。お菓子の腕も流石ですね。これで上司の無理難題が無ければ……ウフフフフ」

 

 まぁ、いま渡しているのは交換品とでもいうのだろうか?それらを手にしながら、"見た目は"女性となる相手が、色々と試しては感情を口に出している。

 

 まさに、そういうものに敏感であるかのように。

 

 愚痴ついでのこぼれ話に耳を傾ければ、現在進行形で上司の無理無謀な仕事を押し付けられては、下界で憂さ晴らし……もとい、ストレスの解消をといったところ。

 

 その解消さきが、甘いものと美容に関する事といったところか?

 そうそう、目の前にいる存在は、まぁ、見た目からして天使ってやつであろう。

 

 まったくの最初に出会ったときは、どっちつかずの両性みたいな感じであったのだが、昨今では出るとこ出ててきてるし、へこむところは凹んでいる姿になっている。

 

 どうも、精神に身体が変化したとのことらしい。

 

 そのためか、こういう美容に関する者や甘いものに目が無いかたちとなったらしいようである。

 

「……それで?その上司ってお方から、無茶ぶりされたと」

「そうなんですよ!!わかりますか?ツヴォルグ。この広大な空の中から、一粒の種を探せという苦労が!」

「……まぁ、無茶ぶりは毎度のことで聞いているしな。それに、こちらの業界でもある話でもある。顧客の無理な注文とかな」

 

 と、愚痴の発散先として聞く耳をたてては、テーブルの準備をしだしながら相槌を打っておく。

 

 ただ、どこかポンコツが漂う空気に変貌していってるのは気のせいだろうか……

 

 話し相手がいないとかでもあるらしいが、そのうっぷんを吐き出させるため、長い話になるだろうと思っては茶も入れる。

 携帯コンロを準備しながら、来るときに組んでおいた湧き水を火にかけていく。

 

 

 ま、ほとんど聞いているようで、聞いていない作業ではあるが?

 

 

 そうして、最後に背負子を折り畳みテーブルの代わりとして準備をし、ティーセットや菓子セットを配膳していく。

 

 

「で、あるモノを探してこいとかいうんですけが、それがなかなか見つからなくて……」

「……探しモノなんて、得てして近くにいたりするもんじゃないのか?」

「そう思っては、聖都を探したのですがいませんでしたし。ほかに近……く……」

 

 

 なんか視線が突き刺さっている気がする。

 

 

「……ワシが知ってるわけないだろ。お前さんのいう探しモノが」

「ですよね。ほんと、どこにおられるんでしょうか」

「……ほら、準備できたぞ、別の茶菓子もあるぞ」

「おお、まっていましたよ?これが楽しみで来ている様な物ですから」

「……なら。いったん口を休めて味わってくれ」

「そうですね。菓子には罪はありません」

 

 そうして、小さな口に含ませる様に菓子を堪能しては、んん~~~という感情豊かに表情をくるくると変えていた。

 

「私、探索は本当に苦手なんですよね。戦闘なら自信あるのに、誰かそういう捜索が得意な方しりません?」

「……無茶言うな、無茶を。お前さんたちの探しモノなんぞ、ワシらでどうこう扱えるもんでもなかろうに」

「ほふぇも、ほうへふね」

 

 口いっぱいにケーキを頬張りながら、その彼氏紹介みたいな軽い気持ちで聞いてくる美人系の天使。

 

 正直、"残念"という言葉を付け加えるべきであろうとは思ってきてはいる。

 

 

「……そもそも、どういうのを探しているか聞いとらんし。ワシには、どうすることもできん」

「そうなんですよねぇ、言えないんですよねぇ……」

「……それで知ってるか聞いてくるのもどうかと思うが?」

「オーラとか、そういう違いはわかるはずですよ」

「……そういうもんか?」

「そいういう、お方なのです」

「……というか、さっきからその言い方じゃぁ、"探し人"と言ってる事になっとるぞ」

「あっ……聞かなかったこととしてください。でなければ実力行使を……」

「……へいへい、準備にいそしんでて何もきいとらんかったわ」

「よろしい」

 

 そう言いながら、何個目かの一口サイズのパウドケーキを頬張っては、ムフーという表情を作ってくる。

 

 

 やっぱり残念がつく美人天使だな。

 

 

 ただな、お前さんの実力行使というものは、地形が変わるレベルだから止めろと言っておきたい。

 最終決戦兵器すぎやしないか?簡単に実力行使は止めろ?と。

 

 決して、前振りじゃないからな?と、心の中で言っておく。

 面と向かっては言わないでおくのが、こういう相手とのやり取りで重要なのである。

 

 

「……ま、腰据えてゆっくりとやるしかなかろうて」

「やっぱり、そうなりますかぁ……ハァ……」

「……もう一杯いっとくか?」

「いただきます」

 

 

 そうして小風が吹く小さな森林広場にて、ただただ愚痴をこぼすのを聞き流す時間だけが過ぎ去っていった。

 

 

 それにしても、3ホールあったケーキがいったいどこに消えたのか、考えるのは野暮という物であろうか。

 

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