ツヴォルグ   作:zaq2

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第30話

「……今月分はこれでいけるな?」

 

 納品となる倉庫入り口にて、木箱にて受け渡しを行う。

 それを係りの者が一つ一つ丁寧に確認しては、書類へと書き込みを行っていく。

 

 

「はい大丈夫です。では、この受領書類を受付におねがいします」

「……あいよ。あと、ついでにコレはおまけだ」

「いつもありがとうございます。これ評判いいんですよね」

 

 

 今月分の魔獣除けの香を納品窓口にて受け渡し処理を終わらせ、オマケと称して美容液を”担当してくれた女性"へと渡しておく。

 

 そのオマケを渡した途端、表情が柔らかくなる対応"女性"職員。

 

 

……こういうのは何ていったっけ?賄賂?袖の下?いやいや、これは心付けだ心付け

 

 

 人と人とのやり取りの類に、今後の事を考えて潤滑に運ぶための潤滑油みたいなものとして渡しておくのを忘れないのが大事である。

 

 そうしておけば、多少なりとも融通を利かせてくれることがある……ある?

 

 

 ……そういや、いつからか試験官役やらされてたりするのは、融通の範囲に入るのだろうか?体よく扱われる存在になってやしないか?

 

 

 思い返せば返すほど、うまく使われている感がしないでもない……が

 

 

……まぁいいか、一応はひと仕事終わったわけだから酒だ酒!

 

 

 ここは深く考えない方が良いと判断し、併設されている酒場へと移動しては、昼間から酒を飲んでいく。

 

 朝の賑わいがひと段落しては昼どきまでの短い時間帯。

 組合においても、ひと段落する時間帯へと変わる頃合いでもある。

 

 忙しなくあーだこーだとやっていた人影はまばらになっており、閑散というわけでもないが、そんなに人影があるという訳でもない、そんな状況である。

 

 

 ……こういう、ちょっとした合間の空気ってのも悪かぁねぇよな

 

 

 そう思いながら、木製の酒カップを持ち上げては酒を飲み込み、テーブルへと降ろす。

 

 その一瞬の間に、関わりたくない人影が入口に立ってはこちらを見据えてきていたので、"我、関せず"と視線を急ぎそらせては、テーブルに置かれてある肴に手をのばそうと

 

 

「ツヴォルグのチビたれよ、アタシを見たとたん視線を逸らすってのはどういう了見だい?何か身に覚えのある事があったんじゃないかい?」

「……ちっ」

「いいから、こっちむきな」

 

 

 そう命令口調で言ってきたのは、黒いローブ姿で長い杖をついており、どこからどうみても"よくある魔女スタイル"なのだが、その身体的な特徴ともいえる豊満なスタイルは隠しきれていない、そんな()()()()()()()()存在である。

 

 ただ、その顔には"ほうれい線"と"目じりの皺"がなんとか年老いていると判断できるが……

 それは、獲物を見つけたというにやけた笑いをしていることで帳消しである。

 

 そして、此方を見据えながら"フンッ"と鼻息を出してはテーブル向かいにドカリと座った。

 

 

 

 

   *   *   *

 

 

「……バアさん、生きてたんだな」

「人を勝手に殺すんじゃないよ」

「……で、なんでココに?」

「チビたれを探すには、ココが一番てっとり早いだろう?」

 

 

 このバアさん、見た目は怪しい薬を鍋でグツグツにてそうなナリをしてはいるが、まさにその通りの"錬金術師" 兼 "薬師" 兼 "医者"でもある。

 

 んで、薬効用の薬草やら何やらを組合に頼んでは製作しては納品してもいるが、まぁ、その生産している薬品のニオイのせいか、人里からちょっとばかし離れた場所で半隠居状態で過ごしている、ま、同業ともいえる存在でもある。

 

 存在であるのだが……

 

 

「かぁーーー昼間っから飲む酒はうまいねぇ」

「……そう言いながら、ワシんところから肴をとっていくんじゃねぇよ」

「みみっちい事言うんじゃないよ、年寄は大事にせんといかんだろ?」

「……脂っこい肉食ってるどこが年寄なんだよ」

 

 

 年寄というがこのバアさん、かなり元気というか"ハイエルフ"種のために、高齢であろうとも、そんなにひどい老婆にはなっていない。

 

 皺もあるにはあるけれども、良い年の取り方をし始めた熟年とでもいうか……

 

 

 ……むしろ、世の女性たちからしたら、うらやましがられるだろうな

 

 

 そんな年季の入っている状態になるまで、この地方で長年生きてきており、この街というか周辺の村々の顔役というか薬師というか巡回医みたいなことをしている。

 

 ので、頼りにされてる存在なために、下手に逆らったりしたら……、まぁ、この周辺では干されるというか何というか、やっかいでめんどうな相手でもある。

 

 

「……で、何のようなんだ?」

「まぁ、そう急くんじゃないよチビたれ」

「……」

「くぅ……久しぶりのエールはきくのぉ……」

 

 

 人の肴を盗みながら、それから数杯オカワリしていくハイエルフババア。

 

 こちらがそんな事を思っていたら「はぁ、コイツは……」というため息をつきながら酒盛りしていた。 

 

 

「……それで、いい加減要件を言え要件を」

「要件?そうだな……うちのカワイイ孫娘を怒らせたって聞いてな?」

 

 

 ……孫娘、つまりはあの商業組合長の金床長耳の事。最近で怒っていた事といえば、免許更新のアレぐらいしか覚えがねぇが

 

 

「……アレはアッチが理不尽な評価をしたからだろ?」

「そうかもしれん、そうかもしれんが()()は駄目じゃろ?()()は」

 

 

 理不尽な判定をする方が悪い。

 こちとら、少し真面目に試験を受けたっていうのにな。

 

 ……まぁ?意趣返しも考えなかった事もないわけでは無いが……

 

 そういや、金床娘といえば齢百歳を超えているから、この目の前のバアさんはといえば、さらにその上となる訳で……

 

 

「イイオンナを目の前にしてその考えは辞めときな、相手を怒らせるだけだよ」

「……イイオンナ?バアさんは違うだろ?」

「ハッ!イイオンナってのは何時までもイイオンナのままなんだよ」

「……さよか」

「でだ、何をしたってんだ?ほれ、詳しく言うてみ?」

 

 

 そしてこのバアさん、面白い事があれば首を突っ込んでくる質が悪い存在でもある。

 

 代官のフォーマル獣人の犬野郎も、このバアさんには手をやかされるほどにだ。

 なお、神官オーガとは意気投合しあう茶飲み仲間になっており、斥候魔族は孫扱いで甘やかしていたりする。

 

 そんな事を思いながら、免許の試験内容の事を説明すると

 

 

「お前、アホだろうとは思っていたが、そこまでアホタレとはな」

「……はぁ?あれはアッチが悪いんだろうが」

「はぁ……いいかい?オンナが気にする事を指摘するもんじゃないよ。それが良いオトコってもんさ」

「……んなことは試験の内容とは関係ないだろうが」

 

「ハァ……、コレだからチビたれはチビたれのままなんだよ……いいかい?オンナってのはねぇ……、コラッ!逃げようとするんじゃないよ!」

 

 

 完全に出来上がってきているバアさんを目の前にして、コッソリ逃げようと思ったがあっさりとバレては連れ戻された。

 

 結局、俺の静かな時間は"バアさんの説教から始まり、バアさんの勉強代(酒代)を払わされる事"で消化される事が確定となった……。

 

 そもそも、このバアさんの悪いクセというか何というか、目についた知り合い(弱みを握った獲物ともいう)に(たか)るクセがある。

 

 

 ……(たか)り屋ともいうがな

 

 

 その(たか)ってくる性格は、孫娘にちゃんと遺伝しておりますよ?

 ほんと、タイミングよく(お菓子を)(たか)りにくる点とか

 

 

 ……というか、遺伝子的に()()()()()()なの(主に)体型ぐらいだろ

 

 

「何か言ったかい?」

「……いや、全面的にワシが悪かったです、はい……」

「いいや、わかっちゃないね!」

 

 

 こういう酔っ払いの相手には、下手に刺激しないのが吉である。

 あるのだが……日は、まだ昼になろうともしていない

 

 

 ……はやく解放されてぇ

 

 

 

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