ツヴォルグ   作:zaq2

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第32話

 この世界が、前の世界からみたらファンタジー要素が豊富ということを改めて思い知る。

 

 呪いとかそういう物が普通に存在しているし、そもそも、それらを"病気"として扱っている時点で日常にも溶け込んでいる事象ともいえる。

 

 

 ……にしても、なんでそんなものに罹患するかね

 

 

 ハイエルフのBBAが例の羽を持ち去って数日、平穏な日々を暮らしていた。

 一応、「預かっておくよ」という、預かり品としての名目でもっていったが。

 

 なぜに「預かっている」としている理由も「こういうのを"奪った"形にすると、何が起きるかわかったもんじゃねぇ、それこそ呪われちまうわ」という事だった。

 

 たしかに、呪いというのが存在するなら、ありえる話ではあるが……

 

 

 ……あの残念美人にそこまでの知恵が回るのかが疑問なんだがなぁ

 

 

 とりあえず、貸し一つを作ったことで終わらせたが、その貸しがいつ返されるのかはわからない。

 下手をすれば、エルフ感覚で数百年先ということだってありうる。

 

 

 ……実際あるんだろうな

 

 

 そう思いながらも、チビリチビリと酒と肴を口に運ぶ。

 夕刻になる前の空き時間。

 

 今の時間の客層はそんなにいないので、広い部屋の中を少数の人数だけが速い夕食か、間食かと走っているだけである。

 

 何もないのは良いことだ。

 何もないことは良いことなんだ……

 

 

「という事で、おもてなしをするためのお菓子を工面できませんか?」

「……だからイキナリなんだよ」

 

 

 いつもの飲み仲間ともいえる神官オークとフォーマル犬野郎が、シレッと対面に座ってきては、そう話しかけてきていた。

 

 

「いえいえ、やはり女性に対してはお菓子がよいという話を聞きまして」

「おう、そうだぞ。おめぇの菓子はボスたちにも大うけしたからな間違いねぇぞ」

「……だから何なんだっていってんだよ!」

 

 

 級に話を振られ、訳を知らないこっちとしては、何を言い出しているのかと問いただす。

 

 

「おや、ご存じないのですか?」

「耳ざといコイツが知らんとか何があった?悪いもんでも食ったか?」

「……エルフのBBAと飲み下したあとは、買い出しにしばらく街を離れてただけだ」

 

 

 酒が切れたから、補充として買い足しに街を離れていたのだが、その間に何かがあったようで……

 

 

「今代の聖女さまが巡礼に来られるのですよ」

「そうそう、んで、てんやわんやのお祭りごととなってるの知らんとか」

「……そういや、多少なりとも"にぎやか"になってはいたなと思ってたが」

 

 

 聖女様ねぇ……

 いうなれば、アイドル的な扱いされてる存在だろ?

 寄付がどうとか、募金がどうとか、そういうのを募るためっていう奴。

 

 そういや、代が変われば巡礼をして回るというのがあったっけか。

 先代はどういう人物かなんて知る由もないが。

 

 

「宗派は違えども、歓待の意を表すためには、やはり献上品をという話で」

「お前さんの作る菓子は、女受けはめちゃくちゃよかったからな、ボスも助かったって喜びもしてたもんだ。側室の話をうまくごまかせれたってよ!」

 

 

 どこがおもしろかったのか、ガハハハハハとバカ笑いしてるフォーマルモノクル獣人。

 そういえば、この街を運営してる領主って、たしか今は50前じゃなかったか?

 やり手とは聞いてはいるが、そこまで人気だったか?

 

 

「という事で、資材はこっちで用意するから、また頼むわ」

「私の方からもお願いします。お手伝いはさせて頂きますので」

「……うーん」

 

 

 この二人には世話になっているか?と思い返せば世話になっているのは事実。

 無下に扱う事もしたくないのも、本心でもあるため、"はぁ……"と、ため息をひとつこぼしてから

 

 

「……何か注文はあるか?」

「おお、一番受けの良かったチョコレートって奴でたのむ」

「私はお菓子に関してはよくわかりませんので、無難なところでお願いします」

「私は、ホイップクリーム?というのをふんだんに使った奴がいいな!」

「お茶に合うもので、お茶と一緒でもよろしいのではかと」

「……って、ちょっとまてや!お前らいつのまに!!」

 

 

 横のテーブル席から、エルフのギルド長とその女史が参戦してきていた。

 

 

「……っていうか、なんでお前らがここにいるんだ?」

「それは会合の集まり帰りだからな!」

「この2階の会議室で集まりがありましたから。」

「……こんなとこでやってんのかよ」

「おう、オレも同席してたからな。というか今日最後の仕事だからな、そのまま飲みきただけだぜ?」

「私もですね。ちなみに、議題は歓待に関してでしたけれどね。そんな折、貴方を見かけましたので、お声をかけさせていただきました」

 

 

 ……タイミング悪くね?わし、確実に狙われてるよな?

 

 

「という事で!私が材料をあつめよう!」

「リストを頂ければ準備を進めます」

「なら、こっちは資金準備と設営場所だな」

「では、その会場の清掃と浄化を進めておきましょう」

「……お前ら」

 

 

 もうこの流れは止められないと悟る。

 

 これは、せき止める事すら不可能な流れになってしまっている。

 こうなっては、一人だけ反対とか言い出しても、拒否権を行使するなり、無理やりいう事きかせようとしてきたりとしてくる可能性が……

 

 こういう諦めが肝心といえる。

 

 

「……わかったよ。こうなりゃ自棄だ。報酬は上等な酒で頼むぞ」

「そこはまかせとけ。ボスからもらってきやるわ」

「私も、神酒は無理でしょうが、聖酒を手配しておきましょう」

「むむむ、ここは他国の酒でも仕入れるか?お前なら珍しい酒の方がよいだろ?」

「では、海の向こうからの清酒というのを……」

 

 

 こちらの事を他所に、がやがやと煮込み始める小会議が始まったテーブルの片隅で、これ以上は口だす気がなくなったので、「肉煮込み」と「エール」のおかわりを頼んでは、チビリチビリと酒を飲んでいった。

 

 

 

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