ツヴォルグ   作:zaq2

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第6話

 季節が変わろうとしているこの街……えーっと、なんだっけか?

 そうそう、バーグパスにおいて、色々と収穫が始まる季節となってきた。

 

 この季節になると、農作業に従事するものが一番の稼ぎ時とあくせく働いていくのである。

 その内訳をいうならば大麦、次に小麦などなどの穀物がおなじぐらいの割合といったところか。

 

 そうなってくると、人手も足りないために組合(ギルド)にもそういった斡旋の仕事で賑わっていく。

 

 若者から、はては子供にまで。

 

 そもそも、このバーグパスは一大農村地というか、国の4割はカバーできるぐらいの収穫地らしい。

 山岳地から流れてくるいくつもの川に、さらに沼地から開墾した田畑がひしめき合っている土地柄、そういうのに適していたのだろう。

 

 で、ワシとしては特にそういうのを手伝う訳でもなく、いつもの組合(ギルド)に併設されている酒場で飲んだくれている。

 

 いわゆる、騒がしい所から隠居爺さんのごとく、スローライフってやつを満喫中だ。

 決して、だれにも頼られていないからではない。

 

 

「ドワーフのおっちゃん、仕事ないんか?紹介してやろうか?」

「……ほっとけ。出番がないだけだ。必要な時まで待っているだけだ」

「そうには見えないけどなぁ」

「ねー」

「昼間っからおさけ飲んでる人は、ダメ人間ってかーちゃんいってた」

「……んぐっ」

「ちゃんとした大人なんだから、働いたほうがいーよ?」

 

 

 なんというか、ほぼ誰もが何かしらのために出っ張らっていっる状態にもかかわらず、昼間っから飲んでいるだけのワシを、仕事探しに来ていたガキ共に心配そうに諭される。

 

 こちとら、まともに働かなくても、そこそこ食っていける状況になっているだけであり、まぁ、そのガキからそんな視線と"大丈夫かこの人?"という感情をぶつけられれば、その、何というか……

 

 

「ドワーフのおっさん!ここにいたか!ちょっと来てくれ!!」

「……!お、おう!ほらな!こうやって待っていたんだぜ?んじゃな」

 

 

 まさに天からの助けとでもいうレベルで誘いがかかった。

 それに乗っかるしかない!このガキ共の視線から逃げるには!!

 

 

 

  *   *   *

 

「これなんだが、なんとかなりそうか?」

「……派手にぶっこわしやがったな?軸がもうだめだぞ?こりゃ」

 

 呼び出された先には、車軸がバッキリと折れてしまった荷車である。

 金属の干渉輪が劣化しているところに、段差の衝撃と積みにの荷重に耐えれずといったところだろうか、それはもう見事というぐらい綺麗に折れていた。

 

 

「なんとかならんか?とくに今だけでも」

「……応急処置程度なら何とかできるが、どうする?」

「なら、とりあえずはそれで頼む」

「……わかった。道具がいるな、ちょっとまってろ」

 

 

 そういって、自分の工房に帰り、工具と補強材を見繕っては現場にもどってくる。

 

 

「……やはり軸芯が腐ってるな、思い切って金属にした方が無難だな」

「えっ?それって金かかるんじゃ……」

「……まぁ、金はかかるが、応急処置じゃなくなるな。完全な修理となる」

「そんなに払えねぇぞ?」

「……なら、こいつで作った酒を1樽ばかりくれりゃぁそれでいい」

 

 荷台にのっているのは麦。

 そして、こいつの行く先は醸造所。

 

 つまり、こいつは材料という訳である。

 きっちり直してやれば、自宅で飲める酒が手に入りそうである。

 

「ちょっとまってくれ班長に聞いてくる」

「……おう、早く聞いてきてくれな、準備作業をし始めとくから」

 

 走り出す御者をよそ眼に、自作の携帯魔道炉に火を入れては、木材の代わりとなる金属を心金にした軸を作る準備にとりかかる。

 

 軸受けとなる箇所も、金属輪を一次軸受けと二次軸受けを作る算段をし、軽く整形さえしてしまえば、あとは魔法で微調整を施して対応すればいい。

 

(これだけじゃ物足りんな、どうせ重荷重になるだろうし、おまけで板発条も仕込むか?いや、そこまですると費用ばかにならんか……)

 

 

「ドワーフのおっさん!それで頼むってよ!きっちり直してくれたら、倍出すってさ」

「……なんだと!よし来た!まかせとけ!!」

 

 そう言っては、金属魔法も駆使しては軸受けと衝撃吸収用の板発条も製作しては取り付けていく。

 金属魔法というものは、ほんとに便利だとつくづく感心する。

 

 そうして、木製の荷車には似つかわない、発条までとりつけた逸品が完成する。

 

 

「なんだコレ?車輪のとこに何かついてるが……」

「……発条ってやつだ。貴族様とか乗合馬車ではよく使われる奴だな。これで、ある程度の衝撃は吸収するから、破損しづらくなっているはずだ」

「ええ、そんな上等なものにしなくても、というかお貴族様のを使っても大丈夫なのか?」

「……発条はワシが登録してるからな、それに登録期間切れだ」

 

 

 そう、数十年も過去に王都の工房において、商業組合において登録しておいた技術である。

 これは登録期間が切れたら、どこの工房でも使っていいという恰好にしておいた奴である。

 

 

「え?おっさん、一体何者なんだ・・・?」

「……ふっ、昔は王都で工房もってたぐらいだ」

「それが何でこんな地方に?何かやらかしたのか?」

「……ほっとけ、いろいろあるんだよ。それよりも、約束の倍よろしくたのむぞ?」

 

 やらかしたといわれるが、まぁ、その……あれだ。

 若気の至りという奴にしておこうじゃないか。なぁ?

 

 

「運び込むのは収穫期が終わってからになるぞ?」

「……そっちも仕事だし、しゃぁねぇか。なら、そいつの性能評判がよければ、他の荷車にも細工してやるといっといてくれ、そっちは金とるからなと」

「ちゃっかりしてんな、わかったよ、班長にはそう伝えとくよ」

 

 

 そういって、礼をしながら御者が荷車に大量の荷を積みなおしては"こりゃすげぇ"と驚きながら仕事に戻っていった。

 

 そういや、収穫期が終わるころというが、今からだと半月以上はかかるんだが、まぁ、それまではのんびり飲んだくれてるかね。

 

 

 

 と思っていたのだが……

 

 その半月の間は、他の運送業から暇にならないほどの注文が殺到し、技術の手続き料だけでスローライフを行うのは一体……と考えたのは言うまでもないか。

 

 

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