俺がこの世界に来たのは、16世紀くらいの頃合いだった。
かつて同じ時代に生きていたときも、東南を開拓していたことを思い出す。
だが、カンケルデータとなった今の俺はそんなちっぽけなモノじゃ足りない。
世界の破壊。それだけが俺を満たす欲望だ。
今すぐここを焼き尽くすのも面白そうだったが、その前に“ディヴェルト”に勝てる世界が欲しかった。
その為にまずは、ディヴェルトを消耗できる軍団を用意したかった。
俺1人で倒せないことはもう分かってるんで、奴を消耗させるか、あわよくば世界を破壊しちまえる駒が必要だった。
そこで頭に浮かんだのが『錬金術』だった。
多くの世界において現代とされている21世紀からしたら馬鹿馬鹿しい理論だったが、どうやら迷信でも無いらしい。
俺が最初に訪れた場所、スペインでは錬金術の研究が盛んで、様々な人物から情報を得ることができた。
ただ、この時代において錬金術の探究者は異端として処罰、処刑されていた。そのおかげで有力者が次々と殺されて手が詰まったりと大変だった。
何で俺が殺す予定の人類を生かすのに協力しなくちゃいけないんだ? そう考えつつも、錬金術師らを逃がしながら情報の収集と保存を続けた。
それからしばらく。やっとこさ錬金術の秘奥、いわゆる“賢者の石”を生成する技術とそれを使った人類の進化式を見つけられたが、気付かんうちに研究に足が付いてしまったらしい。協力者が何人も異端審問の末処刑されることになって、折角見つけた記録が処分されるかも知れなくなってしまった。
そこで俺は同じ頃合いにおこなわれていた領土開拓運動、今でいう征服活動に目を付けた。
この世界にも俺と同じ顔をした征服者がいるらしく、俺はソイツと成り変われた。その後は協力者がいると適当にごまかして錬金術師から全ての情報をいただき、東南を征服するついでにいただいた書物を目的地であるルソン島に隠しておいた。
その後は植民地を統治しながら錬金術の実験を続けた。
現地の人間や部下を材料にして人類が進化すると目された儀式をおこなったが、ことごとく失敗。頻繁に周囲の人間が死んでちゃ俺の面目が立たなくなるので、ゆっくりと長い期間儀式を試すことになった。
CDってのは寿命で死ぬことが無いみたいで、段々と俺の息災が不思議がられるようになってしまった。
面倒だったが仕方が無かった。一度死んだフリをして俺は表舞台から消えた。
今までかなり骨が折れた儀式が、コソコソ暮らさなきゃいけなくなってさらに苦労した。
それから数百年の研究が実を結び、遂に進化した人類───『ラフム』を生み出すことに成功した。
半ばヤケクソで自分自身にかけた儀式が上手くいってしまったのだ。
この世界の神様“エア”の力を手に入れた俺はもう馬鹿みたいに舞い上がった。世界を破壊しようとしてる俺がこんな幸運にありつけるとは思いもしなかった。
まぁだからこそ、調子に乗ってこのまま世界の破壊なんてしていればディヴェルトにまた出し抜かれる。
儀式を理解したならばあとは他の運が良いヤツを見つけるだけだ。
とは言っても、運だけで状況は進展しないので、“エア”の力でできることを探した。その中で見つけたのが『天命の書板』だった。
天命の書板は神の世界に保管されている未来のことが記された媒体だった。そこを辿れば今後ラフムになる可能性のある人間が見つかるだろうと考えた。
モノは試しにまず動く、一か八か神の世界に立ち入ったところ、神々は誰も俺がCDだなんて気付かない。そこにいるのが神か人間か区別する必要が無いから、侵入者なんて予想もしていなかったらしい。そりゃそうだ、神だけしか入れない世界に神以外の存在が来れる訳無いんだからな。
加えて、俺がここに立ち入り、ラフムを生み出す未来についても書かれていたがその場の誰も気に留めていなかった。未来は変えられないらしく、神々の多くが未来に興味を失っていた様子だった。
そこで俺は3人のラフムが俺の計画に大きく関わることを知った。
『
最後の黒木は2人目の平弐の行動によってラフム化されるらしいのでノータッチ、恐らく俺が儀式をするべきなのは長良兄弟なのだと確信した。
それからは奴らを戦死から守り、生き延びさせ、俺が研究していた穴ぐらで儀式をおこなう。
瞬く間に2体のラフムが誕生した。当初は暴走し周囲を破壊し尽くしていたが、どうせなんとかなることは知っていた。
とりあえず後は放っておいても話が進むだろうから、次のタスクに移ることにする。
──
宇宙。どこへ行っても等しく真っ暗なそこに、とある“神様”がいることを天命の書板から突き止めた。
「貴方は、人間…では無いですね」
「ああ、俺は人間から進化した新たなる生命体だ。地球の危機でここまで逃れてきたんだ」
その神は
俺がラフムで、人類はこの力を巡って醜い争いを続けているという嘘を吹聴させた。
そいつが人間のいさかいを直接罰しにかかる奴なのは分かっていたから都合の良いように情報を与えて人類、世界の破壊に拍車をかけておいた。
残るは黒木陽炎。
アイツは俺の知る限り人類史上最大の悪だ。
それは犯した罪の重さとかじゃねぇ、魂が根っから腐っていることがその根拠だった。
あの男なら新たなCDになれる、その確信があったからこそ俺はアイツを助け出した。
同族であろう人類を散々殺してきたクセに人類の進化と平和を語る偽善者の長良平弐によって処分されたように見せかけ、黒木を救出した。
それ以来アイツは俺を
黒木の持つ“悪の素質”は無くしちゃならねぇ。俺がこの世界を壊し、ゆくゆくはディヴェルトに勝利するための大事な鍵になるハズだからな。
さて。天命の書板がインテグラとかいうクソに破壊されて未来が全く読めなくなっちまったし、そもそも今更神の世界に立ち入ったとて俺の素性がバレてるからどうなっちまうかは目に見えてる。
後先が見えなくなってしまって困る部分は多いが、それはかつての航海と同じだと思えばむしろ面白いくらいだった。
だが、もうすぐ俺の作戦は実行に移される。
ここまで長かったが、もうすぐで、もうすぐでこの世界は破壊される───。