劇場版 仮面ライダーウイニング   作:虎ノ門ブチアナ

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 近未来、日本。

 高度な技術が発達した開発都市、『ギャザーシティ』。

 

 人工島の上に作られた平和な街に、脅威が迫っていた。

 

 

「はいどうぞ!」

「ありがとう」

 

 手渡した薔薇の花を持って喜ぶ少女に、店員の青年が手を振る。

 花を見て喜ぶ人がいる、それが彼の幸せだった。

 

 赤岩(あかいわ) ローズ。

 ギャザーシティの花屋を営む彼は、何よりも美しい花と人々の笑顔が好きだった。

 

「新しい街、新しい笑顔! 今日も良い日になりそうだな!」

 

 ローズが大きく背伸びをすると、空を見上げる。

 

 雲一つ無い青空、そして…謎の超巨大な飛行物体。

 

「…なんだ?」

 

 彼と同様に人々が空を見つめ、どよめく。

 と、飛行物体の中から人型のロボットと思われる集団が降ってきた。

 落下時の衝撃を背部のジェットパックで相殺し、静かに着地した彼らは、人々へ機関銃を向ける。

 

 途端、人々のどよめきは叫び声に変わり、一目散に逃げ惑う。

 

 一体何が起こったのか理解できずにいたローズだったが、急に現れて人々を困らせている連中を見ていても立ってもいられなくなる。

 ロボット軍団を率いていると思しき紺色のロボットを見つけ、声をかける。

 

「アンタら! なんかのイベントかわからないけど子供が怖がってたぞ! オトナとしてどーなんだよ!?」

 

「うるさい現地人ですね。ところで貴様、“ガイアリウム”というエネルギーをご存じですか?」

「は? なんかの撮影か? アリウムって花なら知ってるけど……」

「フン、役に立ちませんね」

 

 ロボットが呆れるように言い放つと、ローズの店を見て鼻で笑ってみせた。

 

「これは現地人の植物と、それを売る店舗ですか。使えそうですね」

 

 そう呟くと、そのロボットは胸部から爆弾のような物体を取り出して、ローズの足元へ放り投げる。

 

(えっ? 爆弾? これ俺死ぬ―――)

 

 死ぬと思った瞬間、今までの記憶が蘇る“走馬灯”というのは実在したらしい。今までの平凡な思い出が鮮明に蘇ってくるのだ。

 

 死を覚悟したローズだったが、何者かに抱えられ、爆発を逃れた。

 鈍重な爆発音で我に返ったローズが店の方向を見ると、爆発の直後に煙と炎が収束し、爆発の中心部から花をかたどった怪人が出現した。

 

「現地人の文明を食らって誕生する我が最高傑作! 現れなさい、『覇顕獣(はけんじゅう)』!!」

 

 ロボットが高笑いを浮かべる中、覇顕獣と呼ばれたその怪人が破壊活動を始める。

 その姿にローズは果てしない絶望感に(さいな)まれる。

 

「俺の店…バケモンになった…」

「今は逃げましょう、あなたの命があればまたやり直せるでしょう」

 

 ローズを抱えて助けてくれた男性の声にローズは肩を震わせる。

 その男性は青が差し色に入ったライダージャケットに身を包み、いかにもヒーローといった風貌をしていた。

 

「あ、ありがとうございました」

「あなたが無事ならそれで良いです。ここは僕たちに任せて逃げてください」

「一体全体何が起きてんですか…?」

「…説明は後ほど全市民にお伝えします。今は避難を―――」

 

 と、ロボット兵の攻撃により退路が塞がれる。

 

「今は動かない方が安全なようです。ここで待っていてください」

 

 男性が言うと、ローズを下ろしてから左手首に巻いたブレスレット状の通信

端末で仲間と連絡を取る。

 

「“イエロー”、要救助者の保護完了。敵の数から避難リスクが高いと判断したため待機していただきます」

“了解じゃ、こちらもすぐに合流する”

 

 連絡を取っていたイエローと呼ばれた人物からの返事が聞こえたが、その声は明らかに少女のモノだった。

 

「じき仲間も来るので、あなたを必ず守れます」

 

 男性の頼もしい発言と同時に、彼の言う仲間がやってくる。

 彼と同様のライダージャケットだが、それぞれ色が異なっており、その姿はまるで花束のようだった。

 

「“伴次(はんじ)”、待たせたの!」

「ここでは“ブルー”と呼んでください」

 

 そうじゃったそうじゃった、と軽快に笑っているのは、黄色のジャケットを着た…少女だった。

 だが、他の仲間である緑のジャケットの男性と、ピンクのジャケットの女性の態度から見るに彼女は偉い立場らしい。

 

「初仕事じゃぞ、みんな!」

 

 イエローと呼ばれる少女の号令と共に他の3人が先ほどのブレスレットを胸の前に掲げる。同様に少女も端末を掲げる。

 

「あんたがた、アイツらと戦えんのか!?」

「ええ、我々にはそのための力があります。なのであなたを守―――」

「俺もその力が欲しい!」

 

 ローズの突飛な発言に伴次と呼ばれていた男性は呆気に取られる。

 と、その隙を狙って覇顕獣が突進してくる。

 

「ブルー! 敵が!」

 

 ピンクのジャケットの女性が叫ぶ。

 完全に気が()れていた伴次は咄嗟(とっさ)にローズをかばう。

 ―――が。

 

「…俺だって戦える! だから俺も…戦う!!」

 

 ローズが逆に伴次を守って覇顕獣を蹴飛ばしていた。

 その力は常人を超えており、その場にいた4人を驚愕させる。

 

「俺の店が壊されて…この街の人々が傷付いて……そんなの黙って見過ごせねぇ! 俺の街の笑顔は…俺が守るッ!!」

 

 ファイティングポーズを取りながら思いの丈を叫ぶローズに、イエローと呼ばれていた少女が自分たちと同じブレスを投げ渡す。

 

「今日からおヌシは“ギャザレッド”。使い方は見て覚えよ」

「…!」

 

 イエローの厚意にローズは嬉々としてブレスを装着する。

 

「行くぞ皆の者!」

 

 4人の動きに合わせ、ワンテンポ遅れつつもローズが続く。

 

「ギャザーフォース!」

《Change mode・Ready》

 

 イエローと呼ばれていた少女の号令で5人がそれぞれ巻いていたブレスのボタンを押下。同時にブレスから電子音が流れる。

 

「レンジャー・オン!」

《Gathering up・Power of Ranger》

 

 続いての号令と共にブレス後部のレバーを引く。

 4人のその掛け声と共に、彼らにジャケットと同じ色彩を施したまさしくヒーロー然としたスーツとマスクに身を包んだ。

 

「ギャザブルー」

「ギャザグリーン」

「ギャザピンク」

「ギャザイエロー!」

「…ギャザレッド!!」

 

「集結戦隊ギャザレンジャー!」

「ギャ…れんじゃー!」

 

 全員で名乗りを上げると、敵のロボットや覇顕獣も呆気に取られていた。

 

「い…今なんと?」

「集結戦隊ギャザレンジャー!!」

「それは分かっていますが!!」

 

 憤慨するロボットをよそに、ギャザレンジャーと名乗った戦士らが身構える。

 

「コンバット・スタート!」

 

 イエローの宣言を受け、ギャザレンジャーが戦闘を開始する。

 

「ロボダート共! やっておしまいなさい!!」

 

 あのリーダー格であろうロボットの指令を受け、大量のロボット兵がギャザレンジャーを狙う。

 だが、慣れた動きで兵士をかわしながら格闘しつつ、破壊する。

 

「あ、腕取れちゃった!」

「兵士は完全に機械のようね、手間が省けるわ」

 

 グリーンが慌てるも、敵を分析したピンクにフォローされる。

 

 

「何なのですか貴方たちは!?」

「言ったでしょ、集結戦隊と」

「貴方たちが、何の目的で、どんな力で、戦っているのか、聞きたいんですよ!!」

 

 敵に正論を突かれ、確かに、と答えてしまうブルーだが、なおも兵士をなぎ倒していく。

 

「この星のガイアリウムがおヌシら『デイシー帝国』に狙われているのは分かっていたのじゃ! だからそれに対抗しうる力を開発していたんじゃよ! それがワシら、ギャザレンジャーじゃ!」

 

 イエローが高らかに言うと、事態を飲み込んだロボットが悔恨の唸りを上げる。

 

「邪魔な奴らですねぇ…!」

 

 そう呟きつつも、ロボットは覇顕獣を呼びつけ、ギャザレンジャーの前に立たせる。

 

「厄介な連中は貴様に任せます…えっと? この星の植物、特に売買されるものは花、と呼ばれるのですね。ならば貴様は今日から“花の覇顕獣”と呼びましょう」

 

 手元のタブレット型端末で情報を分析したロボットは覇顕獣に肩を置くと、上空の飛行物体に戻っていく。

 

「あれ? 帰るの?」

 

 ギャザグリーンに問われたロボットはいかにも、と答えると徐々に浮遊して姿を消していく。

 

「貴様らの情報をできるだけ集めて、効率的に消してやります。それまで私の名前をお忘れなきよう…我が名は、デイシー帝国・顧問司令官『カシコイデス』」

 

 捨て台詞を残すと、飛行物体が凄まじい速度で彼方へと消える。

 残された覇顕獣が雄叫びを上げギャザレンジャーへと迫る。

 

「イエロー、さん? なんか武器は!」

「ギャザーブレスの武器っぽいマークを押すんじゃ」

「ほい!」

 

《Weapon・armament》

 

「よっしゃー! 命名、レッドナックル!」

 

 赤い小手が殴打を重ねる。

 

「じゃあ、ブルーショット」

 

 青い特殊銃が寸分狂わず撃ち抜く。

 

「菊蔵さんのはグリーンドリル~」

 

 緑の斧が剛力と共に振り下ろされる。

 

「えっ? …ぴ、ピンクシールド!」

 

 桃色の盾により反撃を受けきる。

 

「イエローサーベル! じゃあっ!」

 

 黄色の剣がとどめに切り裂く。

 

 

 5人の連撃を受けた覇顕獣がよろめき、動きを止める。

 

「行くぞ! トドメじゃ!」

 

 イエロー、そしてレッドを除いた3人がブレスのボタンを押下してエネルギーチャージを進める。

 レッドも見よう見まねでボタンを押す。

 

《Final・Combat》

 

 全身に力がみなぎる感覚が合図となって、全員が花の覇顕獣へと飛びかかり、渾身の力を込めた最後の一撃を見舞う。

 5人分の必殺技を受けた花の覇顕獣が爆散する。

 

「よっしゃー勝ったぁー!! …ってアレ?」

 

 レッドが嫌な予感を覚え、嬉しさが収まる。

 

「あのバケモンって…俺の店……」

 

 変身解除して自らの店舗だった廃墟を見つめ、大粒の涙を流す。

 

「俺の夢の結晶が―――」

 

 打ちひしがれるローズの肩に少女が手を置く。

 

「おヌシ、ギャザレンジャーとして働かぬか?」

「ずび…給料いいですか?」

「うむ、1年あれば花屋の再建も夢では無いぞ」

「…やります」

 

 それを聞いた少女はローズの背中を強く叩くと、純粋無垢な笑顔を振りまく。

 

「これで! ギャザレンジャーは予定の5人揃ったのじゃ!」

「また急な話ですが……死傷者ゼロ、彼の力ですね」

 

 ため息をつく伴次だったが、人々の無事をブレスの情報から知り安堵する。

 

「これからもあのバケモンどもは来るんすね?」

「はい、おそらくは執拗(しつよう)にこの街を狙うかと」

「だったらもう泣いてられねぇな! この街のみんなの笑顔のために働く! それは何も変わらねぇ!!」

 

 敵が消え、再び見える青空にブレスを掲げ、ローズは笑う。

 

「新しい街、新しい笑顔! それに、ギャザレンジャー! 明日もきっと良い日になるぜ!」

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