劇場版 仮面ライダーウイニング   作:虎ノ門ブチアナ

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チャプター② 邂逅と出現

 午後15時00分。

 スペイン、マドリード。

 パセオ・デ・レコレトス(レコレトス遊歩道)

 

 その地に紅子と信真は降り立った。

 

 CD打倒の使命を帯びたライドエージェントである2人は、この世界に現れたCD(コンキスタドール)ことヴァレド・オクスカを撃破するために派遣されて来た。

 

「っにしても……スペインって」

 

 辺りを見回しながら感嘆する信真をよそに、機関から支給された端末を操作しながら状況を確認する。

 

「…ふむ、どうやらここにはCDの計画に関わる資料が残っているらしい。それは今後もこの世界に混乱を招く恐れがあるから、それを見つけて廃棄するってのが今度の任務のようだね」

「CDと戦うために俺達がいるんじゃないですか?」

「私達の使命は戦う事じゃない、守る事さ」

 

 紅子に諭され、信真は成程、と首を揺らす。

 

「主殿、奥方殿。この周辺を調べて参りました」

 

 信真のパートナー、ユカリ。彼女が得意とする隠密活動で周囲の情報を掴んで来たらしい。

 

「奥方はやめてくれユカリ…それで何か情報を得られたかい?」

「言葉が分からなかったでござる」

「意味なくない!?」

「面目ない!」

 

 信真が落胆しユカリも落ち込む。

 

「───オイッス! お姉さん達日本人ですよね? 困り事ですかい」

 

 サングラスを掛け、オレンジ色の半袖シャツを着た怪しい金髪の男が話し掛けて来る。

 そのあまりにも奇妙な出で立ちに一同は表情を曇らせる。

 

「いや、スペイン語なら何とかなる。困ってはいないから手助けは無用だ」

「そんな事言わずに! 現地の日本人とコネクションがあると何かと便利ですから!」

「まぁお兄さんの言葉も一理ありますね…そしたら、この辺で昔の資料とかある場所知りませんか? 歴史が知りたくって」

 

 信真の相談に男が指を鳴らすと、アテがあるのか満面の笑みを浮かべる。

 

「それなら! この通りに国立図書館があるんすよ〜!」

「OK、スマホのマップで調べて行こうか少年」

「案内させてくださいよっ!?」

 

 引き下がらない男に紅子が肩を落とす。

 

「いいか、君見た目からして怪しいから警戒しているんだよ私は」

「ちょっ紅子さん!」

「確かに俺怪しい見た目だな? 浮かれ過ぎかァ……」

 

 男が手鏡を取り出すと急に落胆する。

 

「いやね、私事なんすけど、俺最近結婚を前提にお付き合いする事になりましてね……へへ」

 

 だらしない表情をしながら謎の自己紹介を始める男に信真は思わず笑ってしまう。

 

「はは、紅子さん、ユカリ。この人悪い人じゃねぇっすよ」

「主殿がそういうならば…」

「…だねぇ」

「でへへ…って! そうじゃなくって、案内しますよ案内! その恋人ってのが今から行く図書館の司書さんで、古い史料に詳しいから絶対力になれますよ!」

 

 息巻く男に一行は同行する。

 

──────────────────

 

「さーっ着きましたぜ」

「本当に近かったな」

 

 スペイン国立図書館。

 歴史を思わせるその荘厳な建築物に信真とユカリは息を呑む。

 

「ユウタロウ、¿Ha traído a otro visitante?(またお客さん連れて来たの?)

「スペインの方…?」

 

 言語の壁に難儀する信真に、男が苦笑いすると話しかけてくれた司書の女性を紹介する。

 

「彼女がここの司書であり、俺の愛する人、ソフィアですぜ」

「日本人の方々でしたか。ユウタロウがご迷惑をおかけしました」

「あっ日本語喋れるんだ」

 

 口をあんぐりと開ける信真にソフィアが微笑む。

 

「細かいお話は後にしましょう、まずはお探しの本をお探しします」

「ありがとう、それなら……」

 

 紅子が端末を確認しながら欲しい資料を考える。

 と、端末をしまって1冊の史料を提示した。

 

「それなら、“フィリピンのルソン島に行ったコンキスタドール”に関する史料を見せてもらいたい」

「───」

 

 一瞬ソフィアが絶句したように見えた。が、何事も無く検索をかける。

 

「私も開拓史が好きなのですぐにご案内出来ます。どうぞついて来て下さい」

 

──────────────────

 

 ソフィアに案内されたのは、昼間でも日の当たらない洞窟のような書庫であった。

 

「うお…こんな所にさっき言ってたヤツはあるんですか?」

「はい、日が当たると本や資料が焼けてしまうので」

 

 手元のランプを頼りに進む様子はまるで探検で、信真と勇太郎は心を躍らせる。

 

「そういえば自己紹介がまだでしたね……改めまして、私は『ソフィア・ガルシア』。日本語の勉強をしていたので皆さんともお話出来るのですが、ユウタロウが母国語で良いというので、普段はスペイン語を使っています」

「成程、流石司書殿となりますと勉学も優秀なのでござるね」

 

 腕を組んで頷くユカリに信真は苦笑いする。

 

「おっと、俺も紹介かな? 俺は火島勇太郎。訳あってこの辺で調べ物をしてて、そん時にソフィアと…」

「馴れ初めは聞いていないよ」

 

 紅子にたしなめられ、その男───勇太郎は気を落とす。

 

「俺は竜胆信真、しがない観光客です。こっちの女の子はユカリ、それにこの人は朱音紅子さん。ネッ友同士で遊びに来たんですよ」

「信真さん、ユカリさん、紅子さん。是非スペインを楽しんでいって下さい」

 

 天使のような笑顔のソフィアに勇太郎は顔を緩める。

 

「どうだいソフィアさん。例の史料は見つかりそうかい?」

 

 紅子が問うと、ソフィアは少し頷いてから微笑む。

 

「はい、皆さんがお探しのものでしたら───」

 

 

 その瞬間、ソフィアの背後に謎の影が見えた。

 咄嗟に勇太郎が彼女を庇うと、二の腕を負傷してしまった。

 

「ぐっ───今のは!?」

「勇太郎さん!」

「俺はいい! みんなで固まってうずくまれ!!」

 

 勇太郎の指示に従い、一同が通路の中心に集まる。

 

「こんなトコにまでラフムが出て来んのかよ…」

「…ラフムって?」

「おおよそこの世界における怪人の事だろう。薄暗くてハッキリとは見えなかったが、今の俊敏な動きと脈絡の無い奇襲はそのラフムと見て間違いないだろう」

 

 状況を整理する信真と紅子に勇太郎は眉をひそめた。

 

「アンタら何を言って……まさかな」

 

 と、再び影が現れ、ソフィアを襲う。

 

「ソフィア危ねぇッ!」

 

 もう一度彼女を守る勇太郎だったが、その彼女に体を押され、今度は影によって脇腹を蹴られて付近の本棚ごと吹き飛ばされた。

 

「勇太郎さん!!」

「…ソフィアさん? 良く見えなかったが君は今何をした?」

 

 緊迫した状況下で問い(ただ)す紅子を、ソフィアが突き飛ばす。

 影が紅子を襲うが、その瞬間を信真とユカリは見逃さなかった。

 

「ユカリお願いッ!」

「御意!」

 

 ユカリがポシェットから苦無(クナイ)を取り出し、影を牽制する。

 

「…ソフィア、言い逃れはしないでくれよ?」

 

 神妙な面持ちの紅子にソフィアは押し黙る。

 尚も影は彼女らに襲い掛かる。

 ユカリが防御するも、背後から複数の影が現れた。

 

「なっ、群れを成している…ッ!?」

 

《ジェネレートドライバー》

 

 ベルトを装着しながら信真が体当たりしてユカリを守る。

 が、影の俊敏な動きは変身を許さず、信真が次の操作をする暇も与えず攻撃が繰り返される。

 

「ソフィア! これは君が起こしているのか!?」

 

 迫る紅子にソフィアは逃げ出してしまった。

 

「! 一人で動くなソフィア! …ユカリ、彼女を頼む!」

「御意に!」

 

 ソフィアを追ってユカリはその場を離れる。影は彼女らを追うが、その隙が信真と紅子に変身する時間を与えた。

 

《ジェネレートドライバー》

 

「行くぞ信真!」

「おっす!」

 

「───変身!」

 

 2人の掛け声が重なる。

 それと同時に互いのベルトに装填されたライドロムカードをスロットと共に中央へスライドさせる。

 

《インジェクト・エージェント・ジェネレート───フォーム・アット・”ホーネット”》

《激しく刺し穿(うが)て!》

 

《インジェクト・エージェント・ジェネレート───フォーム・アット・”ドラゴン”》

《激しく(ひるがえ)せ!》

 

 仮面ライダーヴェスタ、そしてリンド。

 満を持して変身完了した戦士達が、影を蹴散らす。

 

「やはり変身してしまえばこちらのモノだな」

「変身せずに対処出来てた敵なんて、ライダーんなっちまったら雑魚ですな」

「それで史料は傷付けて無いだろうね?」

 

 ヴェスタに指摘されて初めてここが書庫である事を思い出したリンドは慌てて周りを確認するが、何とか損害は無いようだった。

 安心して一息つきつつも、リンドはその狭い通路の中で飛翔し、ソフィアの逃げた方向を探る。

 

「…暗くて良く分からないっすね……いや───」

「ソフィアはライトを持って動いていた。光が見えればそこに彼女がいるだろう」

「みたいっすね!」

 

 そう言ってリンドは光の先へと飛んで行く。

 

「私は置いてけぼりか! 書庫を飛び越えるのは少し難儀だぞ!」

「それなら探し物は紅子さんに任せます! スマホのライトあれば多少はマシでしょ!?」

「……仕方ない、了承した。ソフィアとユカリ…あと火島君も頼んだよ」

 

 2人は同時に頷くと、一斉に行動を開始する。

 

──────────────────

 

「痛ってて…俺もラフムじゃなかったら致命傷だったろ…」

 

 一方、本棚の中から這い出て来た勇太郎はその傷を回復させながら状況を確認する。

 と、向こうからソフィアが向かっていた。

 

「ソフィア!」

「ユウタロウ、¿Sin heridas?(ケガは無い?)

No pasa nada(大丈夫)¿Tú también estás bien ahí?(そっちも平気か?)

 

 ソフィアが頷くと、勇太郎は笑顔を向けながら頭を撫でる。

 

No es seguro aquí, tenemos que salir rápido(ここは危ない、早く外に出ようぜ)

 

 勇太郎がそう言ってソフィアを連れて退避しようとしたが、背中に違和感を覚えた。

 じわじわとその部分に痛みと痺れが走る。

 

「…ソフィア」

 

 彼女が手に持つナイフで勇太郎を刺していたのだ。

 

「…な…何してるんだよ、ソフィア」

 

 何も言わず、彼女は二度三度と勇太郎を刺突する。

 

「! ソフィア殿ッ!!」

 

 影の猛攻を()(くぐ)り、ソフィアを羽交い締めにする。

 

「やはり貴殿が事の首謀者でござったかッ!?」

「くっ……!」

 

 ソフィアがユカリを投げ飛ばすと、思わず頬を緩ませた。

 

「見られちゃったならだんまりも無意味ね…」

「ソフィア?」

「そうよ、私はラフム。CD様の指示を受けて貴方を殺しに来たのよ」

 

 冷淡な口調でそう告げるソフィアの視線は、勇太郎に向いていた。

 

「え? 待ってくれ、俺まだ誕生日じゃないからサプライズには早───」

「察しの悪い男は嫌いよ、まぁ元から好きでも無かったけど」

 

 ソフィアが吐き捨てると、体が変貌を始める。

 美しかったその手先が、顔が、どんどんと奇怪な異形へと歪んでいく。

 

「おいおいおい待ってくれソフィア! あぁいや、違う! ラフムであっても君は君だ! どんな姿でも愛してる! けど……」

¡Ruidoso!(うるさい!)

 

 ゴキブリのような体躯の異形が勇太郎を天井へと投げ飛ばす。

 その勢いで上階の床材を破砕し、彼の体は地上へと達していた。

 

「…あれは、例の“フムフム”!?」

「主殿! 丁度良い所に!」

 

 ラフムの暴走で瓦礫に埋もれたユカリが叫ぶと、到着したリンドと手を取る。

 

《インジェクト・エフェクト・ジェネレート───イクイップメント・”アームド”》

《掴み取れ!》

 

 “アームド”ロムカードによってユカリが可変、リンドの固有武器であるユカリセイバーとなる。

 

「やはりソフィア殿が敵でござった。勇太郎殿が危険でござる」

「痴情のもつれかな?」

「いや…“しいでい”の指示を受けていると」

「マジか…にしても何で勇太郎さんを狙うんだよ?」

 

 リンドがユカリセイバーを手に、ラフムと対敵する。

 

「ソフィアさん! もうやめて下さいよ、本がもったいないでしょうが!!」

「司書になったのも別に本が好きだったんじゃないから良いの!」

「良くないッ!!」

 

 ユカリセイバーがラフムの腕を切り落とす。

 

「ッ! ギャアアアアッ!!」

「げげ、この世界の敵は生体か…やりづらい、ってかやっちまった!」

 

 痛がるラフムにリンドはたじろぐが、残った腕による攻撃を許してしまう。

 

「ってぐわあああ!!」

「主殿ォ!?」

「つくづく甘っちょろいね、君も」

 

 止めを刺さんと腕を修復したラフムがリンドに近寄るが、鉤爪(かぎづめ)と思しき物体が伸びて来て、リンドを引っ張っていく。

 

「彼は甘いだろうが、私はそうは行かんよ」

「その声…ベニコ?」

「そう、信真を守る騎士…仮面ライダーヴェスタ。私にあるのは甘さじゃなくて辛さ(スパイス)だ」

 

 リンドからユカリセイバーを間借りし、ヴェスタはその刃を振るう。

 

「ユカリ、一緒に…そして───」

「刺激的に行くでござるよ!」

 

 ラフムがヴェスタへと追突するが、難無くかわされ、複数体の影───ラフムの分体による追撃もユカリセイバーで断ち切られた。

 

「チッ!」

「恐らく君は我々(ライドエージェント)を暗い書庫へおびき出し、分体となる影に攻撃をさせる事で被害者を装いながら暗殺を謀ろうとしたのだろう?」

 

 事情を推理しながらも次々とラフムが斬撃されていく。

 

「だが、君の目論見は失敗した。変身させる(いとま)を与えず殺すつもりだったのだろうがユカリに阻まれたのは想定外だったろう」

 

 殆どが推理通りであったラフムは動きを止める。

 

「図星か、ソフィア」

「一つだけ違うわ。それは、狙っていたのが貴方達じゃなくて、火島勇太郎だった事よ」

 

 ラフムが天井を突き破り、勇太郎に続いて地上へと侵攻する。

 

「火島君が狙い? どういう事だ」

 

 ヴェスタが首を傾げると、リンドの背中を叩く。

 

「もう、起きたまえ信真! ソフィアを追うぞ!」

「…あッハイ」

 

──────────────────

 

 図書館を破壊しながらラフムがパセオ・デ・レコレトスに現れる。

 手負いの勇太郎が命からがら通信する。

 

「…ボンバー! ラフムだ、御剣家に避難指示を出させてくれ!」

Roger(了解だぜ)、勇太郎!」

 

 勇太郎と共にこちらへ出向していたボンバーがスペインの御剣家使用人と連絡を交わし、迅速な市民の避難を始める。

 それを受け勇太郎もようやく戦闘態勢を整えられる。

 

「ソフィア…なんだよな」

「そうよ、火島勇太郎。私はCD様の創る───いいえ、壊す世界がとても魅力的なのよ」

「俺は、君と生きたかった。君を愛していたんだ」

「私は貴方なんてどうでも良かったけど。でも、天渡会(あまとかい)に拾われたこの命…使い道は決めてるの」

 

 天渡会。その名を聞いて勇太郎は顔を曇らせる。

 

「……分かってたよ、君に裏がある事くらいさ」

 

 勇太郎の頬を涙が伝う。

 

「でも、そんなの関係無かったんだよ、俺はソフィアが好きだったから」

「だからどうでも良いって言ってるでしょ───」

 

《Soleil》

 

「変身」

 

《Change・Of・Final》

《Soleil……Burn!!》

 

 仮面ライダーソレイユバーン。

 太陽の如き業火を放つ戦士がラフムを一瞬で沈めた。

 

《Soleil・Crush・Blaze》

 

 一撃で終わらせんと爆炎をラフムへと向けるソレイユバーンであったが、寸前で何者かが介入した。

 

「勇太郎さん!」

 

 図書館から出て来たリンド、ヴェスタがその場の光景に固唾を飲んだ。

 炎を纏った戦士(バーン)の蹴りを男が受け止めていたのだ。

 

「───っ()ー…俺そんな強キャラじゃないから受けきれねぇっての……」

 

 その男の姿を、バーンは知っていた。

 

「ヴァレド・オクスカ───CD(カンケルデータ)

「久し振りだな、火島勇太郎」

 

 不敵に笑うCDにバーンはもう一撃食らわせようと身構えるが、人の姿に戻ったソフィアがCDを庇ったために手を止めてしまった。

 

「俺の目的は“コックローチ”の回収だ。コイツの力は東京で役立てて貰うからよ」

「じゃあね、ユウタロウ」

「待て!」

 

 バーンの言葉も聞かず、CDとソフィアは姿を消してしまう。

 満足な言葉も交わせないまま恋人と決別する結果になってしまった勇太郎はただ黙ってその場に佇む。

 

「おーい! 勇太郎さぁぁん!!」

 

 信真の声が届き、バーンはようやく我に返って手を振る。

 が、目の前で見知った声を轟かせているのは、竜を模した戦士であった。

 

「信真……お前その姿…」

「その声勇太郎さん!? 仮面ライダーじゃないッスかッ!?」

「えーッ!?」

 

 お互いを指差して驚くバーンとリンド。ついでに2人でヴェスタを差して叫ぶ。

 

「えーッ!?」

信真(キミ)は私の事知ってるだろうが」

「いてっ」

 

 頭を叩かれ変身解除した信真、それに続いて紅子も変身を解く。

 

「まさかとは思ったが、あんたがたがライダーとはな…」

 

 変身を解除した勇太郎が何度も頷く。

 

「俺らはCDを倒すために派遣されて来たライドエージェントなんです。勇太郎さんは多分この世界のライダー、ですよね?」

「ああ、その通り。ライドエージェントってのも観測事例があるから事情は理解しています。そっちの目的のために最大限協力させて貰いますぜ」

「こちらこそ協力感謝する、火島君」

 

 勇太郎が紅子、信真、ユカリと握手すると、何かを思い出した。

 

「ソフィアの件は巻き込んですみませんでした。それで、ここに来たのは多分CDの情報が知りたかったからでしょ?」

「そうだ、彼がコンキスタドール、そしてヴァレドと名乗っている事から、コンキスタドールの歴史があるスペインなら何か手掛かりが掴めると思っていたが───」

「それならもう回収済みです」

 

 そう言うと勇太郎は懐から小さな手記を取り出した。

 

「図書館の蔵書なんで持ち出すのは(しの)びなかったんですけど、まぁ緊急時なのでね」

「助かるよ。それならこの資料が悪人に伝播(でんぱ)する前に処分をしたいのだが…」

「この世界にはライダーを管理する信頼出来る組織があります。そこに預けてCDに対抗しうる情報を調べてから捨てませんか?」

 

 猜疑心から口を尖らせる紅子だったが、信真は勇太郎の提案に賛成する。

 

「俺は良いっすよそれで」

「お言葉ながら、拙者もその方が良いかと」

「…ふむ、ユカリまでそういうならば、その史料は君達にお願いしよう」

「あざます!」

 

 と、勇太郎の元に緊急連絡が入る。

 連絡の主は榛名であった。

 

「勇太郎君、そちらの事情は大体伺っているわ。大変な所だけど日本の東京タワーに向かって頂戴!」

「まさか…CDが!」

「そのまさかよ! こちらでライダーズと外世界の戦士、ライドエージェントが共同戦線を張っているけど厳しい状況なの、今すぐ戻って来て!」

 

 了解、と返すと連絡を終え勇太郎がサイクロンイートリッジを用いて専用バイク、ライドサイクロンを呼び出す。

 

「CDが日本に現れた! 俺は急いでそっちに向かうけど、紅子さん達は!?」

「勿論行くさ、私達のマシンワールドシフターにはワープが備わっているのでね!」

 

 紅子が強かに笑うと、2台のバイクが転送されて来て、紅子と信真がそれに乗り込む。一方のユカリはカード状に姿を変え、信真の懐に収まる。

 

「え、今ユカリちゃんカードにならなかった?」

「説明は後ッス! 勇太郎さんこそバイクで日本じゃ日ィ暮れますよ!!」

「大丈夫コレかっ跳ぶから!」

「うぇ? 跳ぶ?」

「説明は後!」

 

 スペインで偶然的な出会いを果たしたライダー達が、バイクを駆り日本へと急行する。

 

 

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