午後15時39分。
東京都港区、東京タワー直上。
その上空に大量のラフムが出現した。
「見えているわね、皆」
榛名の通信を受けてライドサイクロンに搭乗したライダー達が返事をする。
なお、ライドエージェントは飛行戦力が無いため地上での戦闘となった。
「黒木らはインテグラと戦うと言っていたわ。つまり他のライダーはここで足止めするって事かしら」
考察を進める榛名に雷電が応答する。
「だったらここは俺達が止める…楓先輩はインテグラで奴らを一瞬で片付けて下さいッス」
「雷電君の言う通り、楓君がまずは先行して黒木と接敵して頂戴。でもインテグラは温存してね」
「了解しました、雷電君もありがとう。大護さんも後は任せました」
「任されたぜ、行って来い楓!」
ウイニングが一旦仲間達から分かれて黒木とCDのいた場所へと降下する。
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同時刻、東京タワー直下。
地上からの加勢にも予防線を張ったのか、芝公園内にコックローチラフムが群集していた。
それらを迎え撃つのは店長、陽炎。
「いつかの100体斬りを思い出すな、陽炎」
「あん時ゃ楽勝だろうよ、あの敵さんキモい割には弱そうだし…なんか変な体液とか出すのかな!? やだ~」
「知るか! さっさと倒して霧島くんを助けに行くぞ!」
《Account・Frustration》
《ジェネレートドライバー》
《Pandora》
「変身!」
《Change・Pandora・Frustration》
《インジェクト・エージェント・ジェネレート───フォーム・アット・”シャドウ”》
《
店長の仮面ライダーオイオノスと陽炎の仮面ライダーイオニアン。
2人の戦士が立ち並び、コックローチを迎え撃つ。
「聞こえていますね、2人共。民間人は我々バディと警察、自衛隊が避難させています。存分に戦闘して下さい」
「オーケー、暴れてやるぜッ!」
イオニアンが叫ぶとコックローチの大群を蹴り飛ばす。
「やっぱ液出たっ!」
一方、ウイニングが芝公園に着陸すると、黒木が気さくに手を振る。
「よう、来てくれたな」
「黒木……」
バディの情報を盗み、人心を惑わし、多くの被害を出した仇敵、黒木。
彼を目の前にしたウイニングは怒りをたぎらせる。
「お前を倒す!」
《W・E-tridge》
《New Winning》
《Neo Wind》
《True Power・Further Change・Winning…”Catharsis”》
仮面ライダーウイニングカタルシス。風の力を司るウイニングの最終形態。
「おいおい、俺生身だぞ?」
「お前の確保に状態は関係ない! 覚悟しろ!!」
《Catharsis…Impact!!》
カタルシスの第三段階解放で暴風を引き起こし、黒木の動きを止めて拘束する。
《Catharsis・Break・Against》
続いて能力を最大解放させる。その力はラフムのマルドゥック構成素を吸収し、変貌する能力そのものを奪う、対ラフム戦において決定打となる最終必殺技である。
───が。
風があらぬ方向に吹き、黒木が体の自由を取り戻した。
「不思議か? お前の力が通用しないのが」
気付けば、黒木の体が黒い靄に包まれている。
かつても見たその妙な覇気がカタルシスを警戒させる。
「『スプリットラフム』…俺が進化した事で得た“分裂”の性質。それが今の俺の力だ」
靄が晴れると、そこには怪物の姿へと変貌した黒木───スプリットラフムが佇んでいた。
「俺の触れているトコだけ大気内の分子を分裂させて真空状態にした…まぁつまりはお前の風がどっか行くように仕向けたワケだ。残念だったな」
スプリットはその裂けた口角を吊り上げて、笑って見せた。
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港区上空。
民間人の避難が進められる中、アイアスと霹靂がコックローチラフムとの空中戦を繰り広げていた。
アイアス・サイクロンフォームの火力で何とかコックローチを焼却させてはいるが、残弾と物量の問題もあり、持久が難しい状態であった。
「だったら自然の力で対処する!」
《Voltex》
《Form・Change・Cyclone・Voltex》
霹靂・サイクロンボルテックス。空中での雷撃に特化した対質量特殊殲滅形態。
通常弾丸及びミサイルの発射口となる各砲門から高電圧の塊を射出し、コックローチを感電、燃焼させ消滅させる。
ただし、過剰な高電圧によってライドサイクロンへの負荷は増すため、使用には1分間の限度がある。
「そろそろ限界か…数は減ったッスか?」
「ああ、ようやく底が見えて来たぜ!」
アイアスからの報告を受けて霹靂は仮面の下で笑みをこぼす。
「ならこれでトドメだ!!」
《Gozu Tennou》
《Change…God・Tame・Node》
雷の化身、牛頭天王の力を有した仮面ライダー凄天霹靂に変身完了し、威力を増した雷撃でコックローチを一掃する。
機能が低下したライドサイクロンを周辺のビルに着陸させると、電磁力を発生させて凄天霹靂が飛行する。
《God・ThunderAttack》
凄天霹靂が力を解放して電磁力をコックローチにも作用させる。すると次々と吸着していき、一ヶ所に集まる。
「大護先輩! ブッ放してくれ!!」
「おうよッ!!」
アイアス・サイクロンフォームの全砲門一斉射により残ったコックローチが倒され、その残骸を凄天霹靂が処分する。
「ぃよしっ、何とか片付いたな、雷電」
「…ところで、こんだけ大量に出現したラフムの本体はいないンスかね、アントの時みたいに」
と、榛名からの連絡が入り、2人が耳を傾ける。
「丁度今、親個体と思われるコックローチが霧島君の戦闘している付近で出現したわ! 急行して!!」
それを聞き、アイアスと霹靂が全速力でウイニングの方へ向かう。
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スプリットラフムと化した黒木とウイニングの戦闘は継続していた。
“分裂”の性質を持ったスプリットの手がカタルシスに触れる。
「やったぜ」
その呟きと共に、カタルシスの装甲が砕け散っていく。
スプリットの性質によって分裂してしまったのだ。
ウイニングは再度の変身を試みるが、ダブルイートリッジが作動しなくなっていた。
「やれやれ、一瞬しか触れさせてくれなかったからお前の強化形態への変身機能を分裂させる事しか出来なかったぜ」
「…近接戦闘は不利か…ならお前の力を借りるぞ」
《Shadow》
かつて黒木から押収したシャドーイートリッジ。彼の進化前の性質である“影”の力を内包したその端末をロインクロスに装填する。
《Form・Change・Shadow》
ウイニング・シャドーフォーム。忍者にも似た黒い鎧を纏った新たな姿の戦士が自身の影を伸ばしてスプリットの影と繋げる。それと同時にスプリットの動きを封じる。
「我ながら面倒な技だな…!」
スプリットが身動き出来なくなった隙を突いてウイニングが鉄拳を食らわせる。
───届かない。
スプリットは自身を引き裂いて腕を回避していたのだ。
「めちゃくちゃ痛ェんだけど、俺自体への分裂は接触しなくても良いんだよな…」
笑うスプリットの腕は足元の影に触れていた。
再度の分裂により大地が割れ、シャドーフォームの力で形成していた影が崩れ去る。
それによりスプリットの体に自由が戻り、ラフムの再生力で裂けた体を復元させた。
「分裂しろッ」
一瞬の油断だった。
スプリットの手が、ウイニングに触れていた。
変身用の認証が消失し、ロインクロスが外れ変身が解除される。
さらにロインクロスはスプリットの手に渡り、ウイニングへの変身が不可能な状態に追い込まれた。
「しまった───」
焦る楓の眼前にスプリットの手が迫る。
「“寄越せ”……霧島ァ!!」
スプリットが楓に触れそうになった瞬間、豪炎がスプリットの体を焼いた。
「ぐあァァッ!?」
上空より飛来してスプリットを蹴りつけたその戦士は、仮面ライダーバーン。
赤き炎のライダーである。
「───勇太郎!」
「すまねぇ遅くなった楓!!」
炎熱を込めた蹴りが直撃したスプリットは脇腹を抑えてうずくまる。
「勇太郎、スペインに行ってたハズじゃ…」
「訳あってCDに出くわして追って来たんだ、ここまでの状況も聞いてるぜ。しかもコックローチラフムの正体もアガってんだぜ?」
「火島勇太郎…!」
「おひさだな黒木、俺が来たからにはもう好きにゃさせねぇぞ」
「チッ…出て来いCD!」
スプリットが舌打ちをすると、CDを高らかに呼ぶ。
すると一瞬でその場に男が出現した。
「便利に使ってくれるじゃねぇか黒木、俺はドラえもんじゃねぇんだぞ」
「コックローチを呼び戻せ、俺と火島じゃ分が悪い」
「やれやれ…総力戦ってか?」
そのつもりだ、と答える黒木にCDは肩をすくめると、瞬く間に姿を消し、再び現れた。
今度はコックローチの親個体であろうラフムも同伴していた。
「コックローチ、残った子分をこちらに呼び寄せてくれ」
「
「ソフィア…」
バーンがコックローチへ向けそう呼ぶが、応答が無い。
それを聞き楓は彼へと向き直す。
「勇太郎、あのラフムの事を知ってるの?」
「スペインで付き合ってたんだよ…」
「これから彼女を撃破する事になるけれど───」
「覚悟は出来てるぜ」
と、凄まじい羽音が背後から鳴り響く。
その音は全てコックローチ分体が飛行する際のものであった。
「そんな…まだあんなにいるなんて……」
楓が絶句するが、バーンは自信ありげに彼の肩を叩いた。
「心配すんな、助っ人は俺だけじゃないぜ」
バーンがそう説明している内に、コックローチの大群が次々と落下していく。
コックローチがこちらに接近していく毎に、それらを撃滅する影も鮮明になっていく。
───2人のライダーだった。
全てのコックローチが塵と化すと共に、そのライダー達が楓の前へと降り立った。
「───刺激的に来たよ」
「刺激的に来ましたァ!」
仮面ライダーヴェスタ、そして仮面ライダーリンド。
バーンと行動を共にしていた戦士が到着したのだ。
「勇太郎さんの言ってた通りゴキブリの奴ら群生してましたね、一旦待機してた甲斐がありましたね」
「とはいえ飛行能力の無い私まで“スタブ”のアンカーとラフムの踏み台で戦わされるとは思わなかったよ」
「その方がロマンがあるっつったの紅子さんじゃないですかー!」
小競り合いをするリンドとヴェスタに、バーンが咳払いを返すと2人が背筋を正す。
「改めて…CD! 君の目論みを止めさせてもらうよ!」
「ライドエージェント如きが俺達のお楽しみを止められるものかよ!」
「少なくともゴキブリは排除したけど?」
リンドが煽ると、黒木が眉を歪める。
さらに、コックローチが片付いた事で進路が開いた霹靂、アイアス、オイオノス、イオニアンのライダー4人が合流した。
「すまねぇ遅くなったな!」
「勇太郎先輩、加勢します…!」
「信真! 俺達も来たぜッ!」
「最高のライダー共が出揃ったぜぇっ!?」
乗機を破損した霹靂を除いた3人のバイクが黒木、CD、コックローチの前で止まり、それぞれに見栄を切る。
「だったら次の遊びだ…!」
黒木は楓から奪ったロインクロスを装着すると、“分裂”の性質でベルトに保存されていた楓の識別情報を分裂、抹消してしまう。
ラフムであれば誰でも使用可能になったベルトは、黒木の情報を確認、承認する。
《Account・Extra》
「! 黒木を止めるんだッ!」
何らかの危機を察知した楓の叫びを聞き、勇太郎が黒木に飛び掛かるが、コックローチに制されてしまう。
《Shadow》
ロインクロスと同時に奪われていたシャドーイートリッジを起動、装填した黒木が、ブートトリガーを引き抜き、中指を立てる。
「変身」
彼は、またもその言葉を
人が悪に立ち向かうための鼓舞を、
平和と自由を守る
因果に紡がれたその戦士の叫びを。
《Change・Shadow》
───黒いウイニング。
……としか形容出来ないその姿に全員が硬直する。
「正義を
仮面ライダーの名を騙る黒木に、ヴァレドが拍手を送る。
「ブラボー! 黒木陽炎…いや、仮面ライダーシャドーウイニング。ここからはお前が主役だ、幕は明けたぜ!」
「俺の舞台だ…謳って、躍って、