劇場版 仮面ライダーウイニング   作:虎ノ門ブチアナ

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チャプター④ 影風による脅威

 午後15時53分。

 東京等港区、芝公園。

 

 

 仮面ライダーシャドーウイニング。

 この世界に現れた最初のライダーの姿を模倣した、禍々しき戦士。

 

 

《Shadow…Impact!!》

 

 “突然”、そう表現するのが的確であった。

 その場にいるライダーらが警戒している刹那、シャドーウイニングが能力を最大解放させ、地面を触れたのだ。

 

「何かマズいぞ!!」

 

 動物的直感で危機を察知するアイアスだったが、その頃には全てが手遅れだった。

 

 シャドーウイニングの触れた先から地面が割れ、芝公園の敷地を瞬く間に破壊していく。

 

「皆逃げろ! 地面がブチ壊れて、引きずり込まれるぞ!!」

 

 オイオノスの指示を受け、集結したライダー達が散開する。

 が、彼らの動きをコックローチが許さない。

 

 分体が退路を阻み、その物量でライダーを囲んでいく。

 

「飛行可能なライダーは楓君を連れて退避、それ以外のライダーは急いで現場から離れて!」

 

 榛名からの通信を聞いた各員が怪訝な表情を見せる。

 

「逃げろってのかよ先生ッ!?」

「そうよ逃げてッ!」

 

 アイアスからの怒号に思いもよらぬ返答が戻って来る。

 

「黒木の持つ“分裂”の性質を受け継いでいるなら、彼に近付くのは危険極まりない状況…そもそも彼の周囲は地盤が滅茶苦茶に破断されて地上からの接近は不可能…加えて能力も未だ未知数、そんな敵と戦うのは───」

「俺は行くぜ藤村さん!」

 

 その宣言と共にバーンが飛び出して行く。

 

「ティアマトと戦った時だってそんだけ危険な状況だった、でも俺達は戦った! だから、今だって戦う!」

 

《Soleil》

《Change・Of・Final───Soleil……Burn!!》

 

「大護さん、楓は任せました」

 

 楓をアイアスに託すと、ソレイユバーンが割れた大地を跳躍しながらシャドーウイニングの元へと駆ける。

 

「火島先輩だけには行かせない!」

 

《Gozu Tennou》

《Change…God・Tame・Node》

 

 ソレイユバーンを追って凄天霹靂が飛翔する。

 その様子を見ながらも、アイアスはサイクロンフォームで楓を護送する事を優先する。

 

「…ここはアイツらに任せる、楓は変身出来ねぇから一旦逃げるぞ!」

「そんな、大護さん! 僕にはまだ───」

「アレは奥の手だ! 敵の様子が見えねぇ内に使うのは後々に響くぞ」

「……」

 

「店長、俺達はどうすりゃ…」

「…まずはコックローチラフムを倒す。幸い俺達のいる辺りはあの地割れの被害が少ない。とりあえず四方へ散って分体に紛れてる本体を探すぞ!」

「ならチャチャッと仕上げるんで、紅子さんお願いします」

 

 ライドエージェントらが頷くと、ヴェスタがラヴァーズ・アダプターを取り出す。

 オイオノス、イオニアンが防御している内にヴェスタとリンドが変身解除し、紅子へと“ドラゴン”ロムカードが渡される。

 

《ヴェスタ・ブーストアップ》

 

「大変身!」

 

《インジェクト・ヴェスタ・ジェネレート───フォーム・アット…リンド!!》

 

 強化変身により、仮面ライダーヴェスタL、リンドRへと相成ったその戦士らは、翼を羽ばたかせ、次々とコックローチラフムをなぎ倒す。

 

「時間は俺達が稼ぎます! みんなは今の内に本体を───!?」

 

 直後、リンドRの背面に砲撃が食らわされた。

 

「させねぇぜ、ライドエージェント」

 

 CD。彼の腕から放たれた砲がリンドを墜落させたのだ。

 

「信真…!」

 

 ヴェスタLがCDへと突進するが、彼が地面へと砲撃した事で姿を見失う。

 

「姑息な手段を…!」

「姑息で結構、その力に対抗するならどんな手でも使わないとなんだよ」

 

 その翼で土煙を払うヴェスタLだったが、彼女の目の前にいるのは、神々しくも恐ろしさを備えた怪物であった。

 

「…CD、なのか?」

「ああ。お前らも聞いてると思うが、この世界における敵、異形成怪物ラフム。俺も実はアレでな、“エア”っていう神様の力を持ってるんだわ」

 

 神、それを聞いてヴェスタが身構える。

 

「だがこの神様が難儀でよ、何故だか知らんが固有の性質を持ってないんだ…神罰ってヤツかね? だから俺にあるのはズバ抜けた回復力と、CDとしての力だけだ……全く不便だな」

 

 そうは言うが、CDの放つ砲撃の火力にラフムの回復力が備われば無二の攻撃と防御を持ったまさしく怪物となる。

 加えてCDとして得た瞬間移動能力は機動力となり、ヴェスタLを翻弄しながら圧倒するには充分であった。

 

「どうした、そんな物かCD狩りの力はよ?」

 

 奮戦するヴェスタLに、翼を失いつつも復帰したリンドRが駆け寄る。

 

「よくも紅子さんを!」

 

《インジェクト・エフェクト・ジェネレート───イクイップメント・”アームド”》

《掴み取れ!》

 

 空いたスロットを用いてリンドRがユカリセイバーを振りかざす。

 が、ラフム…生体であるCDを攻撃する事に躊躇いが生じ、切り裂く寸前で刃を止めてしまった。

 

「…甘いな」

 

 CDの放つ砲弾が零距離でリンドRを直撃し、装甲を弾け飛ばした。

 

「信真───」

「もう一発ッ」

 

 二度目の砲撃がヴェスタLを狙い撃つ。

 が、瞬時に上空へ回避したために直撃は(まぬが)れた。

 

 しかしそのダメージは大きく、右脚を深く損傷してしまった。

 

「ぐぁぁぁぁぁあッ!!」

 

 ヴェスタLの絶叫が仲間達の耳を突く。

 

「! 紅子ォッ!!」

 

 オイオノスが彼女らの元へ走るが、コックローチによって阻まれる。

 

「畜生、泣く程痛いが私は平気だ!」

 

 全員を状況を伝えると、紅子は最終手段に出る。

 ジェネレートドライバーから“ホーネット”、“ドラゴン”のロムカードを裏返しに装填する。

 

「裏・大変身ッ!」

 

《インジェクト・ヴェスタ・ジェネレート───ブラックフォルト…リンド!!》

《黒き力で敵を討て!》

 

「紅子のバカっ!?」

 

 オイオノスが黒く染まったヴェスタLを目にして思わず叫んだ。

 本来ブラックフォルトは紅子が機械の体であるから辛うじて実現出来た強化形態なのだ。

 それが人の体を取り戻した彼女が使えば、体にどのような被害が出るかは定かではない。

 

 だが、それらの弊害と引き換えに得られる能力は凄まじく、その機動性と攻撃力は桁違いに上昇する。

 ヴェスタLCDが防御、回復する暇を与えずに次々と全身に拳をめり込ませていく。

 彼女の動きに全く対応出来ないCDは成す術無く膝をつく。

 

「やべぇなコレは…ッ!」

「貴様に隙は与えない! このまま倒して見せるさッ!!」

 

《ブラックフォルト! 超・最終激破!》

 

 最大の力を込めたヴェスタLの跳び蹴りがCDを狙い定める。

 

「決まりだァァァッ!!───」

 

 が、攻撃の途中で紅子の意識が途絶え、ヴェスタは落下してしまう。

 

「紅子!」

「意識ないけど無事みたいだ!」

 

 イオニアンとオイオノスが手分けして信真、変身が解けてしまった紅子を救出する。

 ライドエージェントの最大戦力で削がれ、コックローチの物量も迫る中で彼らは満身創痍となってしまった。

 だが、それはCDも同じく、ヴェスタLに受けたダメージが未だ癒えず体力も尽きていた。

 

「やるな…お前ら、正直侮っていたぜ……チクショウ、お前らに撤退する隙を与えてやるよ」

 

 捨て台詞を残してCDはその場から消えてしまった。

 目下最大の危機を脱したオイオノスだったが、息を深く吐いて榛名へと通信を繋いだ。

 

「オイオノスだ。合流したメンバーを含めたライドエージェント全員でそちらに収容して欲しい。2人のライダーが意識を失い、黒木の生み出した地割れが広がってしまってそちらのライダー達に合流出来ない…戦闘の継続は不可能と判断した」

「わかっ───了解です。すぐに休めるように用意を進めますのでバディ本部に帰還して下さい」

「…すまねぇ、榛名」

「生きて帰って来て下さい、それだけで良いですから」

 

 ああ、と落胆も含めた返事を寄越すと、オイオノスは通信を終えて何とか用意した足場にマシンワールドシフター2台を転送させる。

 イオニアンと共にそれぞれで信真、紅子を抱えるとバディ本部へと移動する。

 

(アイツらも…無事でいてくれよ)

 

──────────────────

 

 時を同じくして、シャドーウイニングの凶行にソレイユバーン、凄天霹靂が抗っていた。

 が、シャドーウイニングのマフラー部が腕の代替となって“分裂”の性質を発動させることでライダーの放つ火炎と電撃を退けていた。

 

「俺達の遠距離攻撃が届かない…!」

「ヤロー大気の成分を分裂させやがったな、さては!」

 

 ソレイユバーンが冷静に分析しつつも、それに対する解決策は全く思い付かない。

 

「要は俺達の攻撃が通らないって事スか」

「そういうコト…ッ!」

 

 話している間にもシャドーウイニングの起こす地割れは広がり続け、マフラーを自在に動かしてライダーに接触しようとしている。

 

「大護さん! 楓は逃がせそうですか!?」

「それがラフムの大群がさっきよりも増えて来て、そこらを撃ちまくって無いとラチが明かない状態だ!」

 

 ソレイユバーンから舌打ちが漏れる。

 まさに八方塞がりといった状態でシャドーウイニングに効果的なダメージも与えられていない現状に苛立ちが募る。

 

「…っ、落ち着け先輩! いつもの冷静さが無いと黒木には勝てない!!」

「分かってっがよ…!」

 

「そうだ、大護さん! 僕ラフムになれるんじゃ…!」

「そういやそうじゃねぇか!? 抱えたまんまよりかは助かるぜ!」

 

 今になってウイニングラフムに変貌出来る事実に気付き、楓がアイアスの元を離れて降下する。

 落下の瞬間にその体を変貌させ、着陸する。

 

「こっちは心配しないで、勇太郎!」

「オッケーッ!」

 

 心配事が一つ減り、ソレイユバーンがシャドーウイニングへと火炎を向け続ける。

 

「火島先輩、火はヤツに効かないんじゃ…?」

「もしアイツが大気の成分を分裂させて火を遠ざけてるなら、耐久戦かませば勝ちだろ。さっきまではコックローチがウザくて中々上手く行かなかったが楓が加勢したなら集中出来る!」

「とは言ってもまだまだ来ますからね!」

「だから雷電、お前がいる! ザコは頼んだぞ! あとこまめに雷撃を黒木にな!!」

 

 注文多いぜ、と愚痴を溢す凄天霹靂だったが、神の性質を持ったゴズテンノウの力ならば成せる。

 凄天霹靂のフォローにより常にシャドーウイニングに炎を当てられるようになった事で、ようやく彼の限界を迎えさせる事に成功する。

 

「んだよコレ…体が…ったく───」

「やっぱりな! お前近場の大気から酸素分裂させてたろ? そりゃ燃えねぇが酸欠になんだろがよ、例えラフムでも度が過ぎればな」

 

 酸素の減少で体に異常を(きた)し始めたシャドーウイニングは地表の分裂を止め、一旦その場から退避する。

 

「っは~~~!!」

(呼吸を確保するために地割れをやめた? じゃあ今までの行動って何なんだ?)

「いや、憶測よりも聞いた方が早いなッ!」

 

 ソレイユバーンがシャドーウイニングへと距離を縮め、近距離から火炎を浴びせる。

 

「ぐおぁぁっづ!!」

「俺の質問に答えてくれ、そしたらちょっと炎を止めるぜ」

「ちょっとかよおォ!?」

「ちょっとでも惜しくないか?」

 

 “太陽”の性質で注がれる熱に耐えかねたシャドーウイニングは息を切らしながら頷いた。

 

「…ハァ…で質問って?」

「お前の地面の分裂だよ、アレに何の意味が?」

「何も? 港区って破壊し甲斐ありそうだったから」

 

 それが黒木陽炎の純粋な答えだと、何の駆け引きも意図も無く、ただ衝動的な破壊を楽しむだけなのだと、彼の思考を完全に断定したソレイユバーンは再度シャドーウイニングの体を燃やす。

 加えて凄天霹靂の放つ雷が彼を感電させる。

 

「グォアアアア!!?」

「俺も鬼じゃねぇ、そろそろ終わらせないと……」

 

《Soleil…ImpactIgnite》

 

 ソレイユバーンの能力最大解放、その超常的火力でシャドーウイニングに引導を渡そうとしたその時、凄天霹靂が叫んだ。

 

「先輩後ろッ!」

 

 それは、その場にいた各員が眼前の敵に気を取られていた故に起きた凶行であった。

 直前まで誰も気付かず、ここまでの戦闘でソレイユバーン自身の集中力も落ちていた事が要因だった。

 

「───」

 

 コックローチラフムの本体…すなわちソフィアが手刀によってソレイユバーンの心臓部を背後から刺突していたのだ。

 

「二度も刺されるなんて、恋は盲目って本当なのね」

「…ソフィアか」

 

 ソレイユバーンを貫通した手をコックローチが少し傾けてから引き抜くと、彼の体を蹴り倒した。

 

「…ハァ、でかしたコックローチ」

 

 気が動転した凄天霹靂がコックローチ、シャドーウイニングへと迫るが、伸びて来たマフラーによって胸部を刺された。

 

「“刺身”2体出来上がりだ」

 

 シャドーウイニングが笑っていると、その光景を目撃してしまったウイニングラフムが呆然と立ち尽くしていた。

 

「勇太郎…雷電君……」

「お? 3体目か?」

 

 

 ウイニングラフムは溢れる怒りをこらえ、人の姿を取り戻すと、長官へと通信する。

 

 「金剛さん…“インテグラ”発動を要請します!」

 

 その要請に長官は固唾を飲む。

 一度使用すれば2分半しか維持出来ず、インターバルも24時間を要するその力の使用を容易くは許可出来ない。

 だが、現状の被害を鑑み、長官は自らの権限を以て指令を下さねばならなかった。

 

「了解した───仮面ライダーインテグラ、最終変身を承認するッ!!」

 

 インテグラの強大な力はこの日本という国に置くにはあまりに大きすぎた。

 そのため、5月未明に日本国内閣、国連をはじめとした主要国による緊急会議の結果、インテグラは各国の承認による認可制の使用として決定づけられた。

 だが、御剣家当主、風露の交渉と長官の尽力によって各国からの委任を受けた者による承認で使用可能とされたのだった。

 結果、各国首脳からの委任要項を全て満たした長官の一言でインテグラを使える体制が築かれた。

 

 

「長官、ありがとうございます…!」

 

《Integra・Driver》

 

 インテグララフムの力でロインクロスを変容させ、インテグラドライバーを起動する。

 その様子に危機を感じたシャドーウイニングが楓の元へと走るが、上空にいるアイアスの援護射撃で退けられた。その一瞬の隙を見て楓は変身の動作を進める。

 

「最終変身!!」

 

 楓が叫びながらドライバー右側のトリガーを引く。

 

《F───INAL・Change》

《I.N.T.E.G.R.A!!》

 

 全身から伸びる虹色の輝きを白き鎧に纏う、最強の戦士…仮面ライダーインテグラが降臨する。

 

「正義を超えてライドする仮面の戦士……自由を統べて想いを合わせる。極光纏いしその姿! その名をまさしく、仮面ライダーインテグラ!!」

 

 

「それがインテグラか……」

 

 嘲笑を含んだ嘆きを発するシャドーウイニングだが、インテグラの狙いは彼の打倒ではなかった。

 重傷を負った勇太郎、雷電を一ヶ所に休め、インテグラドライバーを操作する。

 

《Elemental Power・Active》

治療(セラピー)!」

 

 インテグラから出るその言葉と共に、瀕死にまで追い込まれていた筈の2人が回復していき、傷が塞がって呼吸が安定する。

 

「楓! 治ったのか!?」

「はい! 後は…」

 

《Elemental Power・Active》

分身(アバター)!」

 

 今度はインテグラが5人程に分身して、別の方向に散って辺りのコックローチを消し去っていく。

 

「…おいおい増えるってのは聞いてねぇぞ」

 

 重傷者の治療に、1人でも強力であったのに分身と、インテグラの常識を逸した性能にシャドーウイニングはただただ驚愕していた。

 だが未だ屈さずにインテグラへの分身体と距離を詰める。

 

分裂(スプリット)ォ!」

 

 インテグラに触れて体を分裂させようと画策するシャドーウイニングだったが、インテグラの持つ“統合”の性質が“分裂”と反発を起こし、互いに接触が出来ない状態になってしまった。

 

(くっ…性質としてのパワーが拮抗して、お互いが干渉出来ない…ッ!)

 

 その反発作用はインテグラが触れても同じく起きてしまうが、インテグラは複数体、その量的アドバンテージがシャドーウイニングとの力量に差を付け、徐々に彼の“分裂”を上書きしていく。

 

「このままじゃジリ貧だ! どうにかなれよォォォォ!!」

 

 シャドーウイニングの叫びも虚しく、どんどんとインテグラが彼の力を無効化していく。

 そうなれば、シャドーウイニングはインテグラの能力の前に成す術無く敗北するのみであった。

 

 が、奇遇な事に、このタイミングでヴェスタLに手傷を負わされたCDが戻って来たのだ。

 

「CDテメェェ助けろォっ!!」

「! 状況は分かった、じゃあもうこれしか無いぞ!?」

 

 そう告げると、CDはインテグラに囲まれたシャドーウイニングの元に何とか駆け寄り、彼の背中を押した。

 

 

「俺の夢はお前に託す! 世界が蹂躙される最高の芸術を! 侵略を超えた破壊を! 全てを奪う快楽を! お前が! 持っていけェェェェッッ!!」

 

 

 CDから溢れる漆黒の覇気がシャドーウイニングを包み、その力を継承させる。

 全てを黒木陽炎という悪に捧げたCDは満足気に笑う。

 

「お前がCDになる様を、見届けたかったがな───」

 

 消滅したCDから譲り受けた力にシャドーウイニングは…。

 

「茶番終わりか? ジジイは話長くて困るぜ」

 

 敵とはいえ、その意志を他者に託して潔く散ったCDの思いを“茶番”と片付けたシャドーウイニングにインテグラはつい動揺してしまった。

 

 その瞬間が、勝負を決した。

 CDの瞬間移動を得たシャドーウイニングはインテグラの背後を取り、更なるCDの力でインテグラの力を“奪った”。

 

()った…インテグラ!!」

 

 そう叫ぶとシャドーウイニングは今まで装着していたロインクロスを破壊し、強制的に装甲を剝いでいく。

 ウイニングが模倣した仮面を剥がし、素顔を晒した黒木は狂喜の表情を浮かべる。

 

 一方の楓は全ての力を失い、その場に倒れ込んだ。

 

CD(コンキスタドール)、その逸話は征服と略奪、他者の宝をかすめ取る事だ。いやぁ、俺好みでいいキブンだ」

 

 楓から奪ったインテグラの力が虹色の光球へと変化し、黒木は自身の腰へ埋め込む。

 

「あ~なんかキテるぜ最高…あっ、一応説明しとくが…楓クン、君のインテグラを奪ったって事は君のラフムとしての力も奪ったってコト。ラフムになれないし変身資格もありません。人です。お前はザコ人間に戻ったってワケです」

 

 それを聞いた楓が目を丸くして腰をさする。

 

「……もしかして、ここまでがお前の───」

「俺の計画♡ CDが何を目的にしてたとかどうでもいーんだよ、仮面ライダーインテグラは全部俺の前座だったんだよ!!」

 

 その全能感から高笑いする黒木に、CDを真に慕っていたコックローチが激昂して胸倉を掴む。

 

「貴方ッ! CD様の破壊を愚弄する気ッ!?」

「何だろうがブッ壊すのは変わらねぇだろうが。愚弄も何も俺達の行動に清さなんて一つも無いだろ、自惚れんな」

「ッ!」

 

 何も言い返せないコックローチが黒木の首を絞める。

 その最中(さなか)目を覚ました勇太郎が状況に困惑しつつ、黒木に接近しているコックローチを危惧した。

 

「離れろソフィア! ソイツは危険だッ!!」

 

 勇太郎の忠告も時既に遅し、黒木に掴まり返されたコックローチはラフムとしての力を奪われていく。

 

「ソフィア!」

 

 粒子化したラフムの力を全て吸い上げられたソフィアの手を勇太郎が掴む。

 

「おいおい、なんでその女を助けるんだよ? ソイツお前の恋心を(もてあそ)んだクズだぞ?」

「それでも…命は守る」

「正義感だな、普通の女なら好感度アップしてたろうがゴキブリ女はちげーからな、勘違いすんな」

「ソフィアには、生きて罪を償ってもらう。簡単に殺すのが彼女への報いじゃねーぞ」

 

 勇太郎の宣言に黒木は顔を覆って笑う。

 

「くくく、正義の味方っぽくない良いセリフだ、いいぜ…見逃してやる。ソイツを殺したくなったら俺に言えよ? お前の手を汚さずになるたけムゴい死を与えてやる」

 

 そう告げると黒木は手を振ってみせる。

 

「あと24時間。インテグラの力を俺が使えるまでのインターバルだ。それまではそっちが攻撃してこなけりゃ“俺が”攻撃する事は無い。そこの東京タワーの上でじっくり休ませてもらうぜ」

 

 瞬時に黒木がその場から消失する。

 直後の捜索により、本当に彼が東京タワー展望台の屋根で寝転んでいる姿が確認された。

 

「俺達は……アイツの手の上で…踊らされてたってのかよ」

 

 アイアスが呟くと、重たい静寂が流れた。

 インテグラを奪われ、強化変身を封じられ、ライダーズは多くの被害を受けながらも、黒木に一矢報いる事が出来なかったのだ。

 

 

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