ただの中学生に怪物殺せとかご冗談を……え?本気? 作:アサシンモドキ
「──おや、"左藤くん"」
「お、"殺せんせー"」
校舎から少し離れた木々の中。
いつもの休憩スペースへ足を運ぶとそこには先客がいた。
殺せんせー、黄色のタコ型ポケモン。
無数の触手が生えた未確認生物。空を飛ぶことができ、最高速度はマッハ20にもなる(図鑑説明感)
殺せない先生だから殺せんせー……命名はクラスメイトの"茅野カエデ"。
親しみやすく呼びやすい名前。いいセンスだ……。
「なーに食べてるの?」
「南極の氷でかき氷をと思いまして……よければ左藤くんも食べますか」
「食べりゅー。あ、シロップあるよ」
「……今どこから取り出しました!?あとなんで常に持ってるんですか!?」
ふっ、せんせーよ。デキル男というのはかき氷のシロップを常に持ち歩くものなのだよ。古事記にもそう書いてある。
レジャーシートの上、そこに差し出されるひとつのカップ。
粉々の氷が入ったそれを手に取り座り込む。とりあえずレモンのシロップをドバーッと。
それを口に運べば……うーむ、美味しい。
「あ、私にブルーハワイのシロップをお願いしてもいいですか?」
「どぅーぞどぅーぞ」
そんなほのぼのとした会話をする時間。
さて、殺せんせーが我が3年E組に来てからすでに数日が経った。
クラスメイトの自爆テロまがいの暗殺や野球に搦めた暗殺もあり、殺せんせーが教師として我々と親睦を深めつつある。いいことなのかはよくわからん。ま、楽しいしいいんでしょう。
そんな俺の名前は"左藤
グッドルッキングガイなお祭りハッピーボーイさ。
「もうE組には慣れた?」
「そうですねぇ、慣れたとは思いたいですね」
何の変哲もない会話。
相手が月を破壊した超生物ということを除けばごく一般的な日常風景。
「のどかですねえ」
「のどかだねえ」
そんな風に一息ついてると少し離れた草むらがガサリと揺れた。
そこから現れたのはクラスメイト達。
磯貝悠馬、前原陽斗、三村航輝、片岡メグ、岡野ひなた、矢田桃花の6人。
「殺せんせー、かき氷俺等にも食わせてよ!」
「お」
笑顔で駆け寄ってくるみんな。
青春だねえ、眩しいねえ。
殺せんせーもこの朗らかな光景に感涙してるご様子。
まあ──
──みんな片手にナイフ持ってるんだけどね
なんと殺意に満ちた笑顔なのだろう。
これもアオハルというのだろうか。あ、殺せんせーは嬉しそう。じゃあほなアオハルかあ。
「生徒たちが心を開いてくれてる…!」
「そうだねぇ」
「あんなにも笑顔で…!」
「そうだねぇ」
「こんなにも殺気立って…!」
「そうだねぇ」
適当に相槌を打ちながらかき氷を食べ進める。
んまし、んまし。
………あ、キーンってきたよ、キーンって。頭いたたたた…!
「でもね」
うお、突風が。
「笑顔が少々わざとらしい。油断させるには足りませんねえ。こんな危ない対先生ナイフは置いておいて。花でも愛でていい笑顔から学んでください」
「「「「「「……!」」」」」」
いつの間にかナイフを奪われ、その手にチューリップを握らせられていたみんな。これがマジックか、たまげたなあ。
「……ん?ていうか、この花クラスみんなで育てた話じゃないですか!?」
「にゅや!?そ、そーなんですか!?」
「ひ、酷い殺せんせー。大切に育ててやっと咲いたのに…!」
片岡の説教と矢田の涙。
ちょっと男子ぃー。矢田さん泣かせたぁー。いけないんだぁー。
「す、すいません!今新しい球根を…!
買って来ましたァ!!」
は、速い…!あのおつかい速度。恐ろしい…!
恐らく俺があの域に達したのは5歳の頃…!
何よりもこの速度についていけた球根を売ったであろう花屋の店員の接客に脱帽だ。まさに神業的接客。
この速度の接客、俺がこの域に達し(ry
「マッハで植えちゃダメだからね!」
「承知しました!」
「1個1個いたわって!」
「は、はい!」
「な、なああいつ地球を滅ぼすって言ってたけど……」
「あ、ああ、その割にチューリップ植えてるな……」
「じゃあ、俺はその隣にひまわりの種植えとこ」
「左藤は余計な事しない!てかどこから取りだしたの!?」
片岡に怒られた。ぴえん。
▼▼▼▼▼
「──誰か棒と紐持ってこい!」
「おう!」
クラスメイトの声が響く。
それに反応した"岡島大河"が倉庫へと向かった。
ちなみにひまわりの種は片岡にひまわりの良さと雑学を小一時間説いたら植えていいことになった。
やったぜ(コロンビア)
「みんな元気ねぇ」
「あはは、そりゃ元気にもなるよ」
ただいま校庭のとある一本木の下。
そこではクラスメイトたちは昔の人さながら、長い棒の先に対先生ナイフを括り付け、"的"に向けて槍のように突き出す光景が広がっていた。
その的と言うのが──
「ヌルフフフ……どうしました?まだひとつも当たってませんよ?」
「くっ…!」
──何を隠そう殺せんせーである。
花壇を荒らした罪滅ぼしとして枝からミノムシの如く吊り下げられた殺せんせー。
ハンディキャップ暗殺大会だ。
対先生ナイフ。殺せんせーだけに有効なゴム製のようなおもちゃのような武器。
当たれば先生の体を豆腐のように破壊できるが、底はマッハ20の怪物。まず早々当たらない。
「まだ無理そうだね」
「そうねぇ」
そして隣にいる女子が殺せんせーの名付け親、茅野カエデ。
慎ましやかな胸を持つ女子生徒だ。
「……なんか変なこと考えた?」
「別に。ただまな板のことを思い出してただけ」
「あれ?私喧嘩売られてる?」
おっとコンプレックスを刺激してしまったか。
これはリツキ君反省反省。
「とりあえず私達も棒と縄持ってこようか」
「さんせー。ついでにまな板も持ってこよ」
「まな板から先ず離れよっか」
ひぇぇ、怖いめぅ。
笑顔なのに目が笑ってない。もはや視線で人を殺せるね。
その目で睨んだら殺せんせーも殺せそう。
真の英雄は目で殺すってね。
「──あ、烏間さん!こんにちは!」
「あ、乙です」
「ああ、こんにちは」
茅野と棒を運んでいると、山を登り校舎へとやってきた烏間さん。
挨拶をすれば挨拶が返ってくる。
こんな日常的な普通なことでもイケメンがやればえになるなあ。
……ちくしょう!(嫉妬)
「明日から俺も教師としてキミ達を手伝う。よろしく頼む」
「そーなんだ!じゃあ烏間先生だ!」
「ほう教師ですか。大したものですね。ついにこのステージに登ってくるか…」
「……?」
「あ、気にしなくていいよ。左藤くんいつもこんな感じだから」
「……そうか。ところで奴はどこだ?」
「それがさ、殺せんせークラスの花壇を荒らしちゃったんだ。そのお詫びとして──」
「おい!縄と棒持ってきたぞ!」
岡嶋の声が響く。
見れば暗殺大会は白熱しているようだった。
「そこだ!刺せ!」
「くそ!こんな状態でもヌルヌル避けやがって…!」
「ほらほら、お詫びのサービスですよ?こんな身動き取れない先生、滅多にないですよ?」
「……ハンディキャップ暗殺大会を開催してるの」
「くっ…!これはもはや暗殺と呼べるのか…!?」
暗殺の定義は人それぞれさ。
これを暗殺と、皆がそう呼ぶのなら暗殺なのだろう。多分、恐らく、メイビー……。
「どう渚?」
「う、うん。完全に舐められてるね……」
クラスメイトの"潮田渚"も困ったように笑うだけ。
まあ、みんなが楽しそうでなによりさ。
さて、みんなが困ってるなら俺も手伝わねば無作法というもの。
「とりあえず、殺せんせーの下にまきびしよろしくBB弾を撒いとこ」
「抜け目ないですねぇ左藤くん。しかし、そんなの先生が落ちない限り問題ありませんよ」
BB弾こと、対先生BB弾。
対先生ナイフと同様、殺せんせーに対してダメージを与えられるもの。
撃ち抜くというより当たるだけでもダメージが入る分、こういう使い方もできるのだ。
だが落ちないと意味無い。ならば、ここでダメ押しだ。
懐からのそのそと取り出す一冊の本。
「先生よ、これを見ろ!」
「に、にゅや!?そ、それは!?」
「ああ、巨乳グラビア雑誌だ!」
「「「ええ…?」」」(困惑)
ふっ、みんな困惑しているな。だが、これは殺せんせーにとっては命と同じくらい大事なものだと俺は知っているのだよ。
「これに見覚えがあるな先生よ」
「ま、まさかそれは…!」
「ああ、職員室のあんたの席の机の引き出しにあったものだ!」
「やはり私の秘蔵のグラビア雑誌でしたか…!」
「「「「(何買ってんだこのタコ…!?)」」」」
なんだかクラスメイト達の心の声が聞こえた気がする。
「いいか先生。動くな。動くとこれをビリビリに破いちゃうぞ」
「な、なんと卑劣な…!人質ですか…!」
「ふっ、3秒間だけ待ってやる」
「な!ま、待ってください…!」
「さーん、にーい、いーち──」
「ち、ちょっと!いやああああああ!!」
暴れる巨体。
縄で縛られもがくだけのタコ。
しかし、そんな巨体を支えるのは枝1本。
当然そんな暴れると支えきれなくなるもので、やがて──
──ボキッ
「「「「え?」」」」
「あ」
「にゅや…!?」
枝が折れ、下へと落ちる巨大なタコ。
そして下にはBB弾。
バチュンッ!
弾ける触手。
「た、弾が…!動けな…!」
正しく打ち上げられた魚のようになる殺せんせー。
さて、こんな隙を見て暗殺者たちはどうするか。答えは──
「い、今だ!殺せぇ!!」
「に、にゅや!ちょ、ちょっと待ってください皆さん!!」
暴れる先生と襲う生徒たち。
ははは、元気な若人たちよ。青春を謳歌してるねぇ。
……お、このグラビア、中々いい塩梅のスタイルの方々が多いな。要チェックだな。
と、次の瞬間突風が吹き、手にあった雑誌が無くなっていた。
顔をあげれば校舎の屋根へと逃げてる殺せんせー。
抜け出したか。あと雑誌を返して……いや、寄越せ(迫真)
「ぜーぜー……こ、ここまでは来れないでしょう!基本性能が違うんですよ!ばーかばーか!!」
「くっ、あと少しだったのに…!」
「ハァ、ハァ、ハァ……フゥー──
明日出す宿題を2倍にします」
「「「「小せぇ!!」」」」
破壊された触手を再生しながら放った一言にクラスメイトたちが声を上げた。
なんと器の小さいタコか。
ただ単に殺されそうになっただけじゃないか。
まあ、宿題2倍くらいなら造作もない。この俺を誰だと──
「ちなみに左藤くんは3倍です」
「え?」
どうして…(現場猫)
か、書く時間ががが…。