SCP-████-JP 学園都市キヴォトス 作:サイト8192
※「Tale_IF」とタイトルに含まれる話は本編後に起きるかもしれないし、起きないかもしれない "可能性の世界の話" になります。基本的に短編です。
※「Tale_IF:今、話題の新作ホラーゲームだって!」と「Tale_IF:塗り替えられた世界」との間に明確な繋がりはありません。
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「はぁ……もうお姉ちゃん!やっぱりアレ、セミナーに見つかっちゃったよ!私が怒られちゃったんだからね!」
ミレニアムサイエンススクールその一角にあるゲーム開発部の部室。ミレニアムサイエンススクールの数ある部活の中でも、そこまで大きくもない規模の部活であるが故に小さな部室。
数多のゲーム機が室内を埋め尽くす、そんな部室の扉が開け放たれた。開け放ちながら、そう不満を込めた大きな声で叫ばれたその内容は、明らかに部室の中に居る人物に向けて放たれていた。
声を上げた張本人、才羽ミドリは不機嫌そうに部室の中へと入る。声の向かう先は部室の中に居る自身の双子の姉である才羽モモイへ向けてだった。
「ちょっとお姉ちゃん聞いてる?」
ミドリは自身の言葉にモモイが何か反応を返してくる事を予想していたが、しかし、そんな予想に反してモモイからの反応は無かった。
それを怪訝に思いつつ、もしかして今自分の姉は部室に居ないのではないだろうか?と一瞬思ったが、部室の中をしっかりと見ると、普通にモモイの姿はあった。
モモイは部室のソファーに座り、その前に折畳式のテーブルを置いて、その上に置かれたパソコンの画面を眺めている様だった。丁度、ミドリには背を向ける形で座っている。
見るとそこに居るのはミドリだけではなく、ゲーム開発部の部長である花岡ユズも普段よく入っているロッカーの中から出てきていてモモイの隣に座ってパソコンの画面を覗き込んでいる様だった。
ミドリは二人がゲーム機の前でなくパソコンの前に揃って屯しているのを見て珍しいと思った。PCゲームも良く遊びはするが、ユズの方はPCよりも、どちらかと言うと、ガジェット系のゲームを良くやっているイメージがあり、二人が並んで同じPC画面を覗き込んでいるのは余り見られない光景だった。
ガジェット系であれば二人並んで協力プレイや対戦プレイ等があるが、PC系のゲームはそもそも1人プレイやオンラインプレイがメインなのが多い為、同じPC画面を覗き込んでするタイプのゲームは少ないというのもある。
モモイとユズが居る一方でゲーム開発部の最も新しいメンバーである部員、天童アリスの姿は部室には見当たらなかった。
(そう言えばアリスちゃんはネル先輩と今日は遊び行くって言ってたっけ)
一瞬、アリスが何処にいるのかをミドリは探すが、アリスには今日は予定があった事を思い出し部室の中を探すのは止めた。
ミドリは部室の扉を閉めると部室の中へと入りモモイとユズの方へと近寄っていく。
「お姉ちゃん何してるの?」
ミドリは純粋に目の前の珍しい光景に二人が何をしているのか気になってそう聞いた。
新作ゲームの情報か何かが出て見ているのだろうか。
それとも珍しい同じPCで協力プレイか対戦プレイができるゲームで遊んでいるのだろうか。
ミドリの頭の中には先程までの自身の姉への不満は、いつの間にか綺麗さっぱり何処かへと消え去り、この目の前の二人の行動への興味の感情が占めていた。
「あっミドリ!おかえり!」
「おかえりミドリ」
すぐ後ろで話しかけた事でミドリの帰還に気が付いた様でモモイとユズはそこで始めてミドリの方を向いて声をかけた。
そんな二人の様子を見てミドリは二人がよっぽど熱中する様な物をやっているんだなと思った。
「二人が同じPCの画面見て何かやってるなんて珍しいね?すごく集中してたみたいだったけど、そんなに集中して何やってたの?新作ゲームの発表?」
「ううん!最近、ホラーゲーム界隈で話題になってるゲームだよ。ミドリもやろうよ!ん?ゲーム……ゲームって言って良いのかな?」
「……そこは議論ある」
「どういう事?」
ゲームなのか。そうじゃないのか。煮え切らない様な二人の答えにミドリは怪訝な表情をしつつ、ソファー越しに二人が見ていたPC画面を見る。
PCのディスプレイにはブラウザでウェブページが表示されていた。
黒い背景色の上に6つの映像が映し出された枠と幾つかのUI等が見える。
「普通のウェブページに見えるけど……ブラウザゲームって事?」
「ジャンル的にはブラウザゲームで合ってる……と、思う」
「ミドリも隣に座って一緒に見ようよ!」
モモイは自分が座るソファーの隣のスペースをポンポンと叩きミドリを招く。
ミドリはモモイの招きに預り、モモイの隣に座った。もっとも、モモイが招かなくてもミドリは勝手に隣に座るつもりだったが。
モモイの隣に座ったミドリはPCのディスプレイ上に映るブラウザのゲーム画面を改めて見て珍しい画面構成だと思った。
RPGでも無ければFPSでもない。ジャンルはホラーゲームとの事だが、言われてみれば、確かに何処か不安になりそうなゲームデザインをしてるしホラーゲームの雰囲気が感じられる。
ミドリは映っている画面からさらに考察する。
防犯カメラをテーマにしたホラーゲームなのだろうか?画面上には6つの映像の枠があり、その向こうにはモノクロの映像で、街の光景が映し出されている。
繁華街の通りを歩く大勢の人々、道路に行き交う車、人が行き交う交差点等が6つの枠にそれぞれ映し出されていた。
何気ない日常風景といった感じだ。ただ、その映像を見てミドリは感心した。
「なんだか凄いリアルだね。この映像。グラフィックは何使ってるの?」
「うーん分かんない。グラフィックにフィルターかけてる、とか?」
「あー、フィルターかけて雰囲気出すホラーゲームってあるもんね」
物凄くリアルに感じるのだ。まるで本物の監視カメラの映像を見ている様な錯覚を覚える。しかし、これが作り物である事は直ぐに分かった。
何故ならば、映像に登場する行き交う人々の姿は全て例外も無く、キヴォトス人ではなく、普段、普通に生活していればキヴォトスにおいては決して見る機会もない先生みたいな姿だったからだ。
先生とは普段よく会うが、先生と同じ同種の他の人はキヴォトスにおいて見る機会は全く無い。
ミドリにとって先生がその初めての出会いであり、モモイやユズなど他の皆も大方、そうだろう。
それだけ先生の同種の人達は、先生を除いてキヴォトスにおいては見る事も出会う機会もない。
それにも関わらず、映像の中に映る大勢の人達は誰一人の例外も無く、その普段見る機会も出会う機会も無い先生と同種の人達だった。明らかに作り物の映像だった。
「これどういうゲームなの?監視カメラで幽霊を見つけて自分の居る部屋に入ってこない様に扉を閉める感じのゲーム?」
ミドリは疑問を述べる。すると、それに対してモモイは何処かミドリにそう聞かれるのを待ってましたと言わんばかりの得意げな表情をした。
「そう思うでしょ?チッチッチ。ところがそうじゃないんだよね〜」
「じゃあどんなゲーム?」
「とにかく監視カメラの映像を見て何が起こってるのか考察するゲームなんだって〜」
「……どいうこと?」
「操作方法は、この更新ボタンをクリックするか、下の1から100までのナンバーをクリックするだけ。更新ボタンを押すとナンバーの中からランダムで6つ監視カメラの映像が出てきて、ナンバーの方を押すとそれぞれのナンバーに固定されてる6つの監視カメラの映像が出てくる」
ユズはミドリの前で実演する。
更新ボタンを何度か押してみて、映像が全てランダムに切り替わる様子と、ナンバーを適当にクリックしてナンバーに固定された映像に切り替わる様子を見せた。
映像はどれも違う場所の映像の様だ。映像は都会の街中の様子から、建物の中、住宅街、畑、森、田舎の村、海辺などなど様々なシチュエーションを映し出す。
そのどれもがモノクロでかつリアルな映像だった。また、やはり、全ての映像に共通してキヴォトス人は一切映っておらず、先生と同種とみられる人達が映し出されていた。
それらの映像を見てミドリは、はやり、すごく作り込まれた映像だと改めて思う。本物の映像と見間違いそうになる程の出来栄えだ。
だが、そのリアリティでキヴォトスでは決して見る事ができない光景を映し出している様は何処か薄気味悪さを感じた。モモイはホラーゲームと言っていたが、ホラーゲームの映像クオリティとしては非常に雰囲気作りが良くできているなとミドリは感心する。
しかし、ミドリは首を傾げた。
「操作はそれだけ?他には?」
「ないよ!あとは映像を見て考察するんだって!映像を見てるとたまに変な物が映ったり、あとは更新ボタンを5回押すとナンバーの映像にない謎の施設の様子とかが映るんだけど、そういうのを見て、この監視カメラの映像がなんなのか考察するみたい!映った変な動画を見るとサイトの一番下にアーカイブって項目が表示されて後で、見れる様になるんだ~」
「えー……それってゲームなの?」
「そこは議論の余地ある。ミドリ覚えてる?私が前に見せたプレミアムレトロゲームでSerial experiments REIってゲームあったよね?あれと同じ様な感じの作品だと思えば良いかも」
ミドリがこれはゲームと言って良いのか?映像作品とか芸術作品なのでは?と疑問に思っているとユズが例を出してきた。
そのユズの言葉にミドリは記憶を探る。確かに以前、ユズが珍しいプレミアムレトロゲームがあると言ってミドリに見せてくれた事があった。
確か記録とかそういうのを見てプレイヤーの考察に頼るゲームだ。確かジャンルはアタッチメントソフトウェアとかいう珍しいジャンルだった。
そう言われてみれば、これもそのジャンルと似ていると言われれば、そうなのかもしれない。
それによく考えてみればノベルゲームだって、実質小説みたいな所があるが、ゲームにカテゴライズされている。であるならば、これもゲームで良いのかも?とミドリは思った。
もちろん、ノベルゲームもゲームか否かの議論があるジャンルである為、目の前のこれも議論を呼ぶのだろうが。
「このゲーム最近、ホラーゲーム界隈で流行ってるんだって!ユズが教えてくれたんだ〜」
「ネットニュースになってた」
「へぇーこのゲームそんなに話題になってるんだ」
「SNSとかゲームサイトを中心に少し前から話題になってる。ゲーム制作会社も聞いた事もない出来たばかりの新しい会社だっていうのも話題を集めてる理由」
モモイとユズはこのゲームの情報に関して自身の知っている事をミドリに教えた。するとユズはブラウザの別のタブにマウスカーソルを動かしクリックする。
すると、ディスプレイ上にはキヴォトスで最もメジャーな大手動画投稿サイトが表示された。動画投稿サイトのプラットフォーム上では既にこのゲームの名前で検索がされているらしく、動画の一覧にはこのゲームに関連する動画のサムネイルがずらっと表示されていた。
「へーほんとに流行ってるんだね」
ミドリは感心する。ここまで盛り上がっているとは二人から話を聞いた時点では想像だにしていなかった。
表示された動画の再生回数はどれも万を越えている様だった。中には数十万再生された物もある。その動画の傾向としては、見る限り、ゲームの考察系動画であったり、ゲーム中の映像まとめ動画の様だった。これだけでも人気の度合いが良く分かる。
その中からユズはこのゲームの恐怖現象集とする、まとめ動画をクリックした。
「これ、このゲームで見る事が出来る怖い映像のまとめ動画」
「え……お化けとかでるの?」
「大丈夫!大丈夫!そういうお化け系の怖いのじゃないから!」
「じゃあ、どういう怖いのなの?」
「んーベクトルが違う?的な」
ミドリの質問にモモイが答えるが、あまり、要領を得ない回答にミドリは一瞬、目を細めたが、二人がこんなに教えてくれているという状況に最終的には流される形でそのまま見る事にする。
ディスプレイ上に映し出された動画サイトの動画が再生され内容がばばばと次々と流れる。時間にして凡そ10分程だろうか。
その動画の様子を見てミドリは最初はどんな怖いものが出てくるのか、お化け系!?それともビックリ系!?と身構えたが、次第に、ふむ、なるほどと納得していく。確かにモモイの言う通り、お化け系の怖い動画ではないなと思った。
それにビックリ系でもない。言うなれば、そう、奇妙系、モンスターパニック系、サイコホラー系の大集合と言ったところだろうか。
研究施設の実験室みたいな場所で閉じ込められてる人や怪物。厳重に保管される何処からどう見ても、ただの身の回りに普通にある様な物。巨大な倉庫に土地ごと切り取ったかのように収められている普通の一軒家。恐らく実験風景と見られる光景。人体実験の様な光景。実験室を破壊して研究員らしき白衣姿の人物達や戦闘員を襲撃する怪物。
事が起きるのは研究施設の様な場所だけではない。普通の街中でも不可思議な現象が起き、その現場に後から研究施設で見た様な集団が駆けつける様子なども見て取れる。
ミドリが映像を見て抱いた感想は怖いと言うよりも不気味という感情だった。これまでに見たホラージャンルとは何か別の不可思議なジャンルだと感じた。
そして、これだけ注目を浴びている理由は分かる気がした。余りにも不可思議な光景に映像から目が離せないのだ。そのまま動画は再生を終える。
「どうだった?」
「なんか……不思議な動画だね。怖いのもあるんだけど、全体的な感じとしては不思議っていう感情の方が強いかな?」
ミドリは動画に対する自身の率直な感想をモモイに述べる。
「こんな感じの動画を集めてアーカイブを埋めていくとかそういう事?」
「うーん、たぶんゲームの機能的にはアーカイブを集めるのは間違いないと思うんだけど……」
「思うんだけど?」
「明確に幾つ動画があるって示されてる訳じゃないんだよね。本当に見つけた順から表示されてるって感じ」
「……うん。だから、このゲームをプレイしてる人達はSNSとか、まとめサイトとか、動画サイトに自分達が見つけた動画を紹介しあって、アーカイブが幾つまであるのか調べてる人が多い。表示される動画はランダムで表示されるし、その上、表示されるのに条件のある動画もあるみたいだから収集欲が掻き立てられるらしい。考察以外のこのゲームの数少ないゲーム要素」
「へぇ……今の所、幾つ見つかってるの?」
「正確な数は分からないけど、まとめサイトにあがってるのは200以上」
「200!?そんなに沢山あるの!?」
ユズから聞いたアーカイブの数にミドリは驚愕した。普通の様子を映した監視カメラ映像だけでも、非常に高い映像グラフィックにも関わらず、それに加えて、さらに少なくとも200以上のアーカイブ。明らかに、これを作るのは非常に大変な筈だ。
ミドリもゲーム開発部としてゲームを作っている為、その苦労が容易に想像できた。
ユズが新しいゲーム会社がこれを作ったと言っていたが、一体どんな会社がこのゲームを作ったんだろうと気になった。
「このゲームって新しいゲーム会社が作ったって言ってたけど、何処が作ったの?」
「えーっと、確か……プリチャード・エニックス?って名前だった気がする」
ミドリの疑問にモモイが思う出しながら答える。
「プリチャード・エニックス?プリチャード・エニックスね……」
ミドリは社名を聞くと自分のスマートフォンをポケットから取り出すと、ブラウザを開いて検索を始める。単純にどんな会社なのか気になったからだ。
パソコンはゲームとか他にもブラウザを使っている為、使うのは悪いと思い遠慮して自分のスマートフォンを使用した。
プリチャード・エニックスで検索をかけるが、検索欄のトップに出てくるのは全く関係のないサイトばかりで、関係のありそうなものはスクロールをしても見当たらない。
仕方ないので、ミドリはプリチャード・エニックスの前にゲームの名前も入力して検索をかけてみる事にする。すると今度は関係のありそうなサイトが検索欄に表示される。
(やっぱり、今話題になってるホラーゲームなんだなぁ……)
検索欄を軽くスクロールして見てみるが、サイトのタイトルからして、その界隈で盛り上がっている事が容易に推察できた。
ニュースの一覧の方を見ても最近の記事の幾つかでネットニュースとして取り上げられている様だった。それをちらっと見ると、ニュースの検索欄から通常の検索欄へと戻り、検索欄のトップに表示されたプリチャード・エニックスの会社のホームページをタップする。
表示された会社のホームページは非常に簡素な作りで、最低限の事しか載っていなかった。この会社が製作したゲームの一覧を見てみるが、このゲーム以外にはこの会社の作っているゲームは今の所ありそうにない。ただ、分かる事は有名な企業という訳でも無く、本当にぽっとでのゲーム開発会社であるという事だった。
ブラウザをバックして他のこの会社について書かれているサイトも見てみるが、その多くは、"今話題の新星!" "今話題のホラーゲームを作った新興メーカー!" "プリチャード・エニックスのゲーム制作の秘密に迫る!" 等々、このゲームを作ったプリチャード・エニックスに対する好奇の記事が大半を占めた。
やはり、ミドリと同じ事を思っている人は多い様で、掲示板やサイトでは、この様な高いグラフィックの映像をあそこまで沢山用意したプリチャード・エニックスとはどんな会社なのかについて気になっている様だった。
ただ、新興の会社だけあって情報は殆ど無い。某有名ゲーム開発会社のグラフィッカーやプログラマーがここ数年で何人も退社しているから、その人達が作った会社ではないか等、妙に説得力はありそうなものの、有ることない事、書いている様な考察記事ばかりだった。
「このゲーム……新興の会社が作ったみたいだけど、制作費どれくらいかかってるんだろう……」
それはアーカイブが200以上あると聞いてミドリが真っ先に抱いた疑問だった。
そんな半ば無意識に心の底から漏れたそんな疑問に、モモイとユズも頷く。
普通に考えればこのゲームのグラフィックでこれだけの量の映像を沢山作れば相当な開発費が必要だ。にも関わらず、その様なゲームを作り、なおかつ、そのゲームを開発した企業は新興の本当にぽっと出もぽっと出の新米企業。
どうやってこんな高グラフィック映像をふんだんに使ったゲームを作ったのか、この会社はどんなゲーム会社なのか、どんな人達が働いているのか(もしかしたら、有名なゲームクリエイターがこっそり集まって作られた会社なのかも……!)。
それは、ミドリの、いや、この場の3人全員が恐らくは抱いている疑問だった。と言っても、調べようもない話だ。新興過ぎて情報が無いに等しい。
その後、3人はこの目の前の今一部の界隈で話題になっているゲームの情報や今知られている簡単な考察内容を共有した。そして、しばらく、このゲームで遊んだ(遊ぶであってる……のかな?)後、最終的には、このゲームが今、話題になるのも理解できるし、このゲームの考察も面白いし、自分達も大いに気になる所の多いゲームではあるが、プレイスタイル的には自分達の好みのジャンルではないという事で落ち着いた。
ただし、その後、この3人はたまに動画サイトへとアクセスし、このゲームの考察動画を見るのが半ばの習慣になったのだった。
⸻⸻。
「サイトへのアクセス数、50万アクセスを突破」
「SNS上の二次関連投稿数、上昇傾向を維持」
「第三者による二次関連サイト及び動画数も上昇傾向を維持。各二次関連サイト及び動画へのアクセス数も上昇を維持しています」
「財団によるSNS上の一次関連投稿、一次関連サイト、一次関連動画による集客トリガーは引き続き順調に機能し続けています」
サイト8192、その最も厳重なエリア、収容エリア内の最も深部に位置する収容区画。そこに設けられた管制室内にその声は響いていた。
計器や端末の発する光のみが室内を照らす薄暗い室内。その室内には複数人の財団職員の姿があった。椅子に座り、デスク上に並べられた複数のPCディスプレイを見つめながら作業を行う数名の職員。そして、そんな者達を監督する様にその背中の後ろには1名の黒い翼を持つ黒髪の少女が腕を組んで立っていた。
そんな少女の視線の先は迷う事無く、前方へと向け続けられ厳しい視線が向けられていた。
少女の見つめる前方、そこには横に長い大きな長方形型の一枚ガラスがあった。そのガラス越しに管制室の外を望む事ができる。
管制室と壁とガラスに遮られたその先には、ほぼ暗闇に包まれた収容区画が広がっていた。
SCP-███-JP内に作られた収容エリア内の収容区画は汎用性の高い構造をしている。
通常、財団において収容施設は様々な収容対象を想定して人型実体収容室であったり、生物収容室であったりなど、用途に合わせて様々な形態の収容室が予め建設されているのが定番であるが、SCP-███-JP内に作られた収容エリアは、元々が緊急時の使用を想定して建設がされた為、予め用途に合わせた収容室を建設しておくのではなく、収容区画と呼ばれる区画を建設しておき、その中に必要に応じて収容室を設置する方式が取られている。これによって、機動的に必要な収容室を用意する事ができる様にされていた。もっとも、建設予算の問題もあったであろうが。
収容区画はその一つ一つが堅牢な作りをしており、これはSCP-███-JP内に作られた収容エリアはその特性上、世界終焉シナリオを想定して建設されたシェルターである為、万が一、収容していたオブジェクトの収容違反を起こせばそれでシェルターの壊滅を招きかねない為、収容区画を強固に作っておく事で、万が一その内部に設置した収容室からの収容違反が発生したとしても収容区画より外へは出れない様に安全面に最大限配慮した設計になっていた。
そして今、この収容区画内には収容室などの構造物は設けられておらず、ただの無機質な堅牢な収容区画のみが広がっていたのだった。
「既に下位創作次元の発生理論値を大幅に超過しています」
「次元ディテクター、測定を開始」
「エルマ聖印奇跡論の応用理論に基づく奇跡論システムを起動」
「起動を確認。パターンΣで実行します」
それは収容区画の中央部で起こる。収容区画内の床にバツ印の様な奇妙な紋様の青白い光が浮かび上がった。よく見ればその光の紋様は収容区画の部屋の四隅に置かれた4つの機械の足元から伸びている。その光は収容区画の中央部で交差する様に伸びているが、完全に交差する事は無く、中央部においては紋様は輪を形成していた。
そして、僅かな時が立つと、さらなる変化が発生する。輪となった紋様の直上、その空中に青白い光で構成される光の輪が、じわじわとまるで染み出す様に出現する。床の輪の紋様よりも大きな輪。やがてその青白い光の輪はまるで水流の如く、もしくは炎の如く、輪に沿って蠢く輪へと成長する。
そして、それまで紋様や出現した光の輪の光によって照らされ見えていた筈の収容区画の壁面、それが奇妙な事に空中に出現した光の輪の内側のみが漆黒の闇に染まる。本来は輪の内側の背後にも見えるべき収容区画の壁面は完全に姿を消した。
「全システム、異常ありません。正常に機能しています」
「奇跡論に基づくポータルの出現現象を確認」
「ポータルへ向け電波観測器を射出します」
収容区画内、光の輪の丁度、真正面に光の輪より離れた床に設置されていた歩兵携行用のロケットランチャーを6本束ねた様な多連装ロケットランチャーの様な筒状の装置からロケット弾の様な物がボンと音を立てて射出される。射出された物体は底の方から射出された筒へと繋がるケーブルを伸ばしながら真っ直ぐと光の輪へと突入していく。
「電波観測器、突入を確認」
「電波観測器からの信号継続。崩壊現象は確認されません」
「電波観測器が複数の民間放送局の物と見られる電波をキャッチしました」
「次元ディテクターが下位創作次元の観測に成功」
「ポータルの正常な接続を確認」
黒い翼を持つ黒髪の少女は目の前の現象から片時も目線を逸らさずに、それを見続ける。しかし、それまで厳しい表情を浮かべていた少女であったが、その時の口元は明らかに薄らと笑みを浮かべていたのであった。