仲間が強すぎてやることがないので全員追放します。え? パーティーに戻りたいと言われてもまだ早い   作:縁日 夕

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15.一夜の過ち……ってコト!?

 目を開くと、そこには最早見慣れ始めた医務室の天井がこんにちは……いやおはようございますか。最近よく会うね。クソが。

 

「ぐ、うぉ……気持ち悪……」

 

 全身を襲う倦怠感に吐き気、おまけに鈍い頭痛。最悪の目覚めだった。

 

「…………ん?」

 

 俺は何とか起き上がろうとして、布団の中の、というより腕に絡みつくような違和感に気が付いた。

 

「………………」

 

 嫌な予感がしつつ、俺は恐る恐る布団を捲る。

 

 そこには聖女がいた。

 

「嘘ぉ……」

 

 彼女は俺の腕やら足をホールドするように抱き着き、何か服がはだけて色々際どいことになっていた。しかも俺は何故か半裸だった。なんで?

 

 ぶわ、と冷や汗が噴き出る。次いで血の気が引く一方で、引いた血が下半身の変な所に集まるのを感じる。そんな場合じゃないって。鎮まれ愚息……!

 

 俺はやらかしてしまったのか? よりにもよって聖女様と……!?

 

 何とか昨晩のことを思い出そうと試みてみる……ダメだ、まるで何も覚えていない……! いや、だがここは仮にもギルド。そんな間違いはまずありえない筈。大方、酔いつぶれた俺たちを誰かがまとめてベッドに放り込んだだけだろう。

 

 落ち着け……まずはとにかくベッドから抜け出そう。何にせよ今この状況でレティーナが起きたらやばいし、誰かに見られでもしたらもっとやばい。

 

 眠るレティーナに抱えられるようにされた腕をゆっくりと引き抜く。よし、なんとか抜けた。

 

 ひとまず上体を起こし、次は絡められた足を外しにかかろうとする。

 

「アデムさん!」

 

「うおおッ!?」

 

 バァン、と勢いよく開かれる扉。何とか反射でレティーナごと掛け布団を被って再度横になる。

 

 入ってきたのはホムラだった。幸い布団の中にいるレティーナに気付いた様子はない。

 

「ほ、ホムラ……?」

 

「アデムさんがまた医務室に運ばれたって聞いて……!」

 

 誰だよ余計なことしたやつ……!

 

「またどこか怪我をしたんですか……!? 診せてください、すぐに治しますから……!」

 

「いや、してないしてない! 怪我してないから! 大丈夫だから!」

 

 近づいてくるホムラを制止すべく、自身の無事を主張する。気づかれる前に早急にご退出願いたい。

 

「本当ですか……?」

 

「本当だって。……ほ、ほら」

 

 俺はレティーナが見えないよう気を付けつつ、ちょうど何も着ていない上半身のみを布団から出して見せた。

 

「ひゃわぁっ!?」

 

 俺の上裸を目にしたホムラが顔を瞬時に紅潮させながら、両手で顔を隠した。やべ、ナチュラルにセクハラかこれ。

 

「す、すまん! 見苦しいもん見せた……」

 

「ま、待って下さい! 見苦しくないです! ちゃんと確認したいので隠さないでください!」

 

「お、おう」

 

 布団に潜りなおそうとしたら凄い勢いで止められた。恥ずかしいだろうに、俺の安否を確認するために我慢しているのだろう、その顔は真っ赤だった。本当に優しい()である。

 

「ふー、ふーっ……!」

 

「…………」

 

 じっくりと、もう穴でも空くんじゃないかというくらい凝視してくるホムラ。何か息が荒いんですけど、そんな無理してまで見なくても……。

 

「も、もういいだろ? この通り怪我はないし、ここで寝てた理由は——」

 

「下半身」

 

「え」

 

「その、下半身は……!」

 

 やたらギラついた目でそんなことを(のたま)いだしたホムラ。

 

 ……脱げと?

 

 そうするといよいよ布団の違和感を隠し切れない、というかそんな事情がなくても脱ぐわけなかった。

 

「いや、さすがにそれはちょっと……」

 

「っ、あ、そ、そうですよねっ。あはは……!」

 

 俺の渋面に、やや焦ったように言うホムラ。俺はほっとした。

 

「……昨日ちょっと飲みすぎてな。それで酔いつぶれてここに寝かされてただけなんだ」

 

「そ、そうだったんですね……すみません、私、はやとちりを……」

 

「いや、いいんだ。心配してくれてありがとな」

 

「! い、いえそんな!」

 

 よし、いい感じに話が終わりそうだ。このままホムラに帰って貰って、俺も早急に脱出を——!

 

「んん……うーん……」

 

「!?」

 

「え……?」

 

 突如部屋に響いた俺でも、ホムラでもない者の声。

 

 ホムラが訝し気に周囲を見渡すが、他のベッドは全て空いており、他に人はいない。

 

 俺の額を冷汗が伝う。

 

「今誰かの声が……?」

 

「そ、そうか? 俺は何も聞こえなかったし、気のせいじゃないか?」

 

「そんな筈は……」

 

 頼む……! 気づくな! 帰ってくれー!

 

 しかし、そんな俺の祈りも虚しく、最悪の事態は起こった。

 

 俺の被っていた布団が蠢いたと思うと、そのまま盛り上がり、ばさりと落ちる。

 

「ふあぁ……あれ、ここは……?」

 

 レティーナが、目覚めた。そりゃこんだけ騒がしくしたら起きるわな……。

 

 ホムラは呆然とした表情で固まっている。

 

 俺は天を仰いだ。あ、天井さん、またお会いしましたね……。

 

 俺の現実逃避を他所に、ホムラが早くも硬直状態から復帰する。

 

「な、ななな!? なんですか、あなたー!?」

 

「うえ……? ……あれ、アデム様? きゃっ」

 

 傍らの俺に気づいたレティーナが、俺の上半身に目線をやって短く悲鳴を上げた。

 

「ど、どういうことなんですか!? だ、誰なんですか!?」

 

「え、えっ……えっと、レティーナと申します……その、一応聖女をやらせていただいていて……」

 

 ホムラの誰何(すいか)に馬鹿正直に答えだすレティーナ。

 

「せ、聖女様!?」

 

 マジで!? とでも言いたげな顔で俺を見るホムラに俺は頷きを返す。

 

「 な、なんで聖女様がアデムさんと一緒のベッドで寝てるんですか!?」

 

「あー、そのアレだ……レティーナとは昨日一緒に飲んでてな」

 

 まあ俺は無理やり飲まされただけなのだが。

 

「あ、そうでした! 昨晩は大変申し訳ありませんでした……! 私、アデム様のパーティーに入れて貰えるという話で舞い上がってしまって……!」

 

「あ、その辺りの記憶あるんだ……」

 

 あれだけ酔っても記憶は残るタイプらしかった。

 

「聖女様が……アデムさんのパーティー、に……?」

 

 震える声で呟くホムラがぎこちない動きで首を動かし、俺とレティーナを交互に見る。

 

「あ、あぁ。いやまだ確定ではないんだが」

 

「アデムさんと聖女様が飲んで……一緒に寝てて、同じパーティーで……聖女……上位、互換……私、いらない…………!? あわ、あばば……!!」

 

「お、おい、ホムラ?」

 

 ホムラは声どころか体も震え……を通り越してなんか超振動し始めていた。

 

「う」

 

「う?」

 

「うわああああああああん!!」

 

「あ、おい、ちょっと!?」

 

 そのまま反転、泣き叫びながら走り去ってしまった。

 

 残された俺たちの間に微妙な空気が満ちる。

 

 ややあってから、俺は口を開き、疲れを滲ませた声で言った。

 

「……一旦、帰るわ……」

 

「は、はい……」




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