影武者転生異常あり!~俺は悪役令嬢の影武者なんだ…誰が何と言おうが影武者なんだ!だから脇役でいさせろや!   作:三流二式

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『chapter11 巨壁破壊作戦』

『各々位置についたな? 巨兵部隊、準備はどうだ?』

「おうおう、いつでもいいぜ!」

 

 

 通信から聞こえるトサケンの声に、チワワが威勢の良い返事を返した。

 

 

 現在チワワは戦闘機を想起させるコックピットの中にいた。薄暗い室内に、モニターが放つほのかな光が彼女の顔を照らし出す。

 

 

『聞いてたなクソ共! エンジン()入れろ! 出撃準備!』

『『了解、エンジン始動!』』

 

 

 ポメラニアンが吠えるように呼びかけ、ペットショップのペットたちや騎士たちが応じる声を聴きながら、チワワも同様に各種機器のスイッチを入れて発進準備を整えてゆく。

 

 

『スクラップC準備完了! いつでもいけるよ! そっちはどう?』

『あたしもオッケーだ。スクラップA、どうだ?』

 

 

 シバイヌからの通信に応えると、チワワはポメラニアンへと呼びかけた。

 

 

『あぁ? できてるに決まってんだろーが! オラガキ共! 準備は良いな?』

『『はい!』』

 

 

 一糸乱れぬ返事。ポメラニアンは舌打ちした。

 

 

『声が小せえぞ! 舐めてんのか、こら!』

『『はい、ごめんなさい!』』

『無駄口叩いてる暇があったら瞑想の一つでもしてやがれこの馬鹿!』

『『はい、ごめんなさい!』』

「何やってんだよ……」

 

 

 口汚く罵るポメラニアンとすっかり従順に調教された犬たちの掛け合いに、呆れたチワワは半目になってモニターに映るポメラニアンを見た。

 

 

『うるせーぞガキ!』

『このアホ共の事は放っておいて、機体は平気? 正常に作動してる?』

 

 

 と、モニターにレトリバーの顔が表示され、いつも通りの不機嫌面で聞いてきた。

 

 

『ンダトコラーッ!』

「あぁ今のとこは順調だ」

『設計したのは私だけど、作ったのは騎士団とペットショップの技術班だから、万が一っていうのがあるかもね』

『先生、そりゃないっすよ!』

『……』

 

 

 レトリバーの姿が消え、サワガニの通信の方からバシバシという何かを強烈に殴打する音がしばらく聞こえ、程なくするとレトリバーは戻ってきて、サワガニの窓は沈黙してブラックアウトした。

 

 

『もうすぐ作戦時間です! 皆さん備えてくださーい!』

 

 

 続けてプードルの顔がモニターに表示された。チワワは表示されているデジタル時計に目を向けた。作戦時間までもう間もなくだ。自然と身は引き締まり、緊張で神経がささくれ立った。

 

 

 あれだけ交わされていた会話が途絶えた。皆が時計を凝視していた。

 

 

 作戦時間が近づくにつれ、隔壁が徐々に開いて行く。光が差し込み、雄々しき機械の巨兵達を照らし出す。カタパルトが巨兵を固定した。戦士たちは待つ。

 

 

 後一分……あと三十秒……あと十秒……三……二……一……。

 

 

『時間だ! これより0800(マルハチマルマル)にてペットショップ、騎士団、保健所の混成部隊による作戦行動を開始する! 破城槌部隊、突入を開始しろ!』

『巨兵部隊、出なさい! 作戦開始よ!』

『『オォ!』』

 

 

 チワワはジェネレータを最大出力まで上げた。瞬間、カタパルトが巨兵を射出した。

 

 

「んんっ!」

 

 

 強烈なGに耐え、チワワはブースターをオンにした。強烈な噴射炎と共に、スクラップ・タイタンBは飛んだ。続いてシバイヌの駆るスクラップ・タイタンCが、その後にも続々と6トンの巨人殺しの矢が集結した。

 

 

『行くぞガキ共! すでに地上部隊共がわらわら集まってきた糞共と交戦を開始している! 遅れたらウチがてめーらを先にぶっ殺すぞ!』

『『はい!』』

 

 

 ポメラニアンが乗るスクラップ・タイタンAを先頭として陣形を組み、計26機の巨兵部隊が空を切り裂き、矢の如くまっしぐらに突き進む。

 

 

『目標、教団入り口前に陣取る〝大入道〟!』

 

 

 景色は瞬く間に流れ去り、街並みを超えて、彼らはあっという間に鬨の声が上がる戦場の上に到達した。

 

 

「「オォオオオオオオオオ!!!」」

 

 

 騎士が、白い者が、光の者が、ペットが、一般兵士が、レギオンが、黒い者が、闇の者が。

 

 

 もはや誰が流したかもわからぬほどに血で染まった大地を踏みしめて、互いの存亡をかけた死に物狂いの闘争を繰り広げる。

 

 

『オォオオオオ―ン……』

 

 

 その後方に、まるで鯨の鳴き声の様な咆哮を上げる巨大な壁の如く聳える一体の巨人あり。

 

 

 巨大な肉塊。あるいは不細工な粘土細工のような悍ましいヒトガタ。彼こそが最後の幹部の一人。巨壁部隊『最終防衛隔壁(ライン)』対聖騎士極度殲滅用改造人間大入道だ。

 

 

『始めるぞ! 鬨の声上げろォ!!! 火ぶたを切れ!!!』

『『主砲発射!』』

 

 

 ガコンと音をたてて巨兵達の背部よりせり上がってくるのは、銃身の短い砲塔だった。かつてイミテーションが駆っていた『プロトタイプ・スクラップ』の主砲『タイタンキラー』よりも威力を下げる代わりに小回りが利くようになった『タイタンブレイク』である。

 

 

()ぇ!!!』

『『主砲発射!』』

『えい!』

「おりゃあ!」

 

 

 26の閃光が空を染め上げ、莫大なエネルギーが大入道へと迫る。

 

 

『オォオオオ―ン!!!』

 

 

 大入道は巨体に反して機敏に反応し、大口を開け、口腔内から莫大な闇の奔流を発射した。

 

 

 26の光と闇の奔流が真正面からぶつかり合い、超新星爆発さながらに盛大に爆発して対消滅した。

 

 

「「うわぁあああああああああ!」」

 

 

 爆発の余波で両陣営の幾人も雑兵が蹴散らされてゆく。

 

 

『行くぞ! 試合開始だあ!』

「おっしゃあ!」

 

 

 チワワはアクセルペダルを踏み込み、先陣切って大入道へと突撃していった。

 

 

「食らいやがれ!」

 

 

 チワワはレバーを操作し、近接武装を展開した。スクラップタイタンの右腕部より折りたたまれていたチェンソーブレードが猛烈な勢いで回転し、火花を散らしながら大入道へと喰らい付いた。

 

 

『対大型異能保持者近接格闘兵装ケルベロス・ファング』

 

 

『オォ―ン!?』

 

 

 久方ぶりに肉を食い破られる感覚に、大入道は驚愕の叫びをあげる。

 

 

『チワワに続け!』

『撃て撃て撃て!』

『くそったれ!』

 

 

 各員も武装を展開しバルカン砲を、ミサイルを、レーザーを撃ち込み、大入道へと突撃していった。

 

 

『ポメラニアン!』

『あぁ! ウチも突っ込む! 援護頼んだぜ!』

 

 

 ポメラニアンは腕部に装備された小盾に仕込まれていた爪を展開した。

 

 

『対大型異能保持者近接格闘兵装アウタースコル・オーバーハティ』

『対大型異能保持者滅殺兵装エンマイヌガミ』

 

 

『えいやあ!』

 

 

 シバイヌがエンマイヌガミより放った無数のミサイルと3連装30mmバルカン砲と共に、ポメラニアンは突っ込んだ。

 

 

『オォオオオ!!!』

『オォオ―ン!!!』

 

 

 ポメラニアンと大入道の叫びが重なり合う。鮮血が舞う。憎悪は加速する。戦の熱は留まるところを知らず、延々と上がってゆく。

 

 

「「おぉおおおおおおおお!!!」」

 

 

 両陣営の時の声は途切れることなく続いている。

 

 

 生きるか死ぬか。地獄はここに顕現した。

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