影武者転生異常あり!~俺は悪役令嬢の影武者なんだ…誰が何と言おうが影武者なんだ!だから脇役でいさせろや!   作:三流二式

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『chapter11 巨壁破壊作戦』⑤

『スクラップ・N大破! 墜落します!』

『畜生! こんな程度でこの俺が!』

 

 

 邪悪なる巨人が出現する少し前、巨兵部隊と大入道との戦いは熾烈を極めていた。

 

 

「オォオオオ―ン……」

 

 

 闇弾の直撃を受け、爆発炎上して墜落する鉄塊を目で追いながら、大入道は暗い咆哮を上げた。

 

 

「くそ! これで半分落とされたぞ! おい管制室! このクソッタレ巨人野郎のバイタルはどんな具合だ! とっとと答えやがれ!」

 

 

 大入道の体の各所にある眼球から狂ったようにばら撒かれる闇弾を、ミサイルや迎撃用のバルカン砲を乱射して迎撃しながらポメラニアンが吠えるように通信に呼び掛ける。

 

 

『敵エネミー、現エネルギー量は50をようやく下回った所です!』

『畜生! 半分犠牲にして撃ち込みまくってようやく半分かよ! これじゃあいつがくたばる頃にはあたしらも全滅ってか!?』

「下らねーこと抜かしてる暇があったら一発でも撃ち込め! 奴の回復を阻害し続けろ!」

『この、この、このぉ~!』

 

 

 プードルから齎された報告に思わず泣き言を漏らすチワワへ、ポメラニアンは怒鳴りつけた。シバイヌはエンマイヌガミからバルカン砲を撃ちまくり隊をカバーすべく死に物狂いで空中を駆けずり回っていた。

 

 

『こちらスクラップ・S! マスター! 主砲の冷却が終わりました! 合図があればいつでも撃てます!』

『俺もです!』

『私も!』

 

 

 スクラップ・Sからの通信を皮切りに、残りの隊員からも続々と主砲の冷却終了の報告が挙げられた。

 

 

『おいシバイヌ! チワワ! 突っ込んで隙作りやがれ!』

『了解!』

『もう一度!』

 

 

 ポメラニアンからの命令にシバイヌを先頭にチワワは右腕のチェンソーを再び起動した。魔剣は獲物を求めてよだれを垂らす猟犬が如く火花を散らし、シバイヌの背後で再び敵の血肉を得んがために主と隙を窺う。

 

 

「オォ……」

 

 

 大入道がそれを黙って見ている訳もなく、突貫してくる2匹の猟犬目がけて闇弾を集中させた。この二匹の犬には何度も痛い目にあわされた。

 

 

「オォオオオ―ン!!!」

 

 

 大入道は怒っていた。痛みは嫌いだ。痛みを与える奴はもっと嫌いだ。特にこの2匹はとびっきり嫌いだ。

 

 

「オォオオオオオオオオ!!!」

 

 

 故にここで捻りつぶす。大入道は両腕を無茶苦茶に振り回してシバイヌとチワワの駆る巨兵を叩き落しに躍起になった。

 

 

 だがシバイヌは自身の異能で防御能力を強め、逆に周囲に弱化フィールドを張る事によって耐え切っていた。チワワはただでさえスピードに特化している機体を異能で加速させ、全てかわし切った。

 

 

「あいつらはほっとけ! テメ―らは主砲のチャージに集中しろ!」

『『ハイ!』』

 

 

 隊員たちに呼び掛ける傍ら、ポメラニアンも自機の主砲を展開し、チャージを始めていた。しかし。

 

 

「ちっ」

 

 

 チャージが遅い。彼女の機体損傷はすでに60パーセントを超えていた。間接各所から火花が散る。モニターにはほぼ常にエマージェントメッセージが表示されていた。

 

 

 それもこれも各隊員のカバーであちこちを回り、要所要所で格闘戦を仕掛けた結果である。

 

 

 しかたがない犠牲とはいえ、あまりにも歯痒かった。ガタついた機体は各所機能の動きが鈍り、ブースターのかかりも悪い。

 

 

 白兵戦がメインの機体で機動力の低下は致命的であり、彼女の行っている事といえばサブウェポンであるバルカンやミサイルをばら撒いて牽制するか、あるいは危うい隊員へのカバーに奔走していた。そしてまた損傷が増え、撃墜の危険性が増した。

 

 

(これ不味くねーか……?)

 

 

 バチバチと火花が散るコックピットの中で、不意に綾子の脳裏に撃墜の不安が鎌首をもたげた。

 

 

「──────ッ!」

 

 

 綾子は瞬時に自分の顔面を殴りつけた。

 

 

「ざけんじゃねぇ!」

 

 

 撃墜の心配? 隊の犠牲? 

 

 

(知った事か!)

 

 

 自分の損傷も、隊の損傷も、目的のためならば使い潰せ! 今ある手段の全てを用い、目的を遂げよ! 

 

 

 務めを果たせ! それがイミテーションの猟犬なれば! 

 

 

「オラア!」

 

 

 大入道より振り下ろされた右腕をかわし、闇の弾幕をかいくぐって懐に入ったチワワはチェンソーを一閃させた。金切り声を上げる魔獣の牙が大入道の固い皮膚を削り取り、引き裂き、腹を真一文字に引き裂いた! 

 

 

「──────」

 

 

 チワワは直ちにブースターを吹かして離脱を開始。その際にちらりと下へと視線を向けて大入道の付け根、教団本部への入り口を覆っていた4枚の結界を見た。

 

 

 彼女が視線を向けた時、4つの結界はさながら寿命間近の電灯の様に明滅し、程なくして消えた。

 

 

『破城槌部隊より報告! 施設の破壊は完全に完了したわ! でも部隊は壊滅! リーダー共は負傷で使い物にならないわ! 援軍は期待しないで!』

「……へっ」

 

 

 チワワはにやりと笑みを浮かべた。脳裏に浮かぶのは三人のいけ好かない鳥どもと、新しくできた妹分の顔。

 

 

「オォオオオ―ン!?」

 

 

 血飛沫。悲鳴。憤怒! 大入道の視界が怒りで真っ赤に染まり、急速に後退して離れゆくスクラップ・Bに向けて口を開き、莫大な闇を解き放とうとした。

 

 

「今だぁアアアアアアアア!!!」

『『主砲発射!』』

 

 

 その瞬間を狙いすました10の閃光が大入道の胴体に炸裂した! 一拍子遅れて放たれた閃光は、大入道の大口へと吸い込まれる様に入って行き、今まさに発射されようとしていた闇とぶつかり合った! 

 

 

 目も眩むような閃光が戦場を染め上げ、そのすぐ後に甚大な衝撃は吹き荒れた! 

 

 

「衝撃に備えろぉおおおお!!!」

 

 

 衝撃波は戦場全土に届き、その場にいたすべての者は一時的に手を止め、吹き荒れる莫大な力の余波に耐え忍んだ。

 

 

『敵エネミー、エネルギー極度低下!』

『やったか!?』

 

 

 もうもうと立ち込める黒煙の中、大入道の姿は窺い知る事は出来ない。しかし、あれだけかかっていた圧力が緩んでおり、管制室からの報告によれば敵は死んだも同然の体だ。

 

 

『やったぞ!』

『僕たちが幹部をやっつけたんだ!』

『『……』』

 

 

 通信から聞こえる喜びの声の中、猟犬たちは押し黙ったまま黒煙を、その向こう側を睨みつけた。直感が囁いた。これで終わる訳がないだろう? 

 

 

「──────まだだ……」

 

 

 真っ先に気が付いたのは現場にいる、その中で最も感知能力に優れたポメラニアンであった。

 

 

「──────ッ」

 

 

 ポメラニアンは目を見開いた。黒煙の向こう側で、小さくなっていたエネルギーが急速に膨れ上がった。邪悪な力が今まさに解き放たれる寸前であった。

 

 

「ッテメ―ら離れろ!!!」

『『え?』』

『くそ!』

『うんっ』

 

 

 ポメラニアンの怒鳴り声に体をびくつかせ、その凄まじい剣幕にただならぬ予感を感じた隊員たちは慌てて黒煙から距離を取った。

 

 

 直後に莫大な闇が吹き上がり、さながら黒い柱の如く天を衝いた。

 

 

『『うわぁあああああああああ!?』』

「クソがぁ!」

『こんの……!』

『くうぅ……』

 

 

 巨兵部隊の面々は機体のブースターを最大限にまで高め、虎の子の全方位エネルギーシールドを張ってどうにか吹き荒れる闇を耐えた。

 

 

「……チィ」

 

 

 バチバチと火花が散った。嫌な軋み音が絶えず聞こえてくる。ポメラニアンの機体の損傷率がついに70%を超えた。

 

 

「――――――各員、構えろ」

 

 

 それでもポメラニアンは淡々と命令を下した。

 

 

「オォオオオ―ン!!!」

 

 

 例え100メートルを超える巨人が出現したとて、彼女たちのやる事は変わらない。

 

 

『おら何ボサッとしてやがる。とっとと動け。作戦再開だ!』

 

 

 周囲に立ち上がる先程の大入道と同サイズの巨人が立ち上がるさまを見ながら、チワワが発破をかけた。

 

 

『皆、もう一頑張りだよ!』

 

 

 シバイヌは朗らかに言い、有言実行とばかりに産声を上げる巨人たち向けて弾幕を放った。

 

 

『ま、今までの経験上あの程度で終わる訳が無いって訳ね。ふざけた連中よね』

『大入道、再起動します! 周囲には恐らく大入道の肉片を取り込んだと思わしき『巨人』がいます!』

『数は5! サイズはさっきの大入道と同じだが、強さは月とスッポンだ! 見掛け倒しのでくの坊に惑わされるな! 地上部隊、すまないが援護を頼む!』

『『了解!』』

 

 

 戦闘は再開された。より苛烈に。より凄惨に。だがしかし士気はさっきよりもずっと高い。

 

 

「聞こえたかガキ共! 下の犬どもは頑張ってるみたいだぜ? テメ―らはどうだ!?」

『『──────了解です、マスター!』』

 

 

 聞こえてくる声は疲れが見え隠れしたが、それ以上に闘志に燃えていた。

 

 

「ならとっとと行くぜ! 試合再開だあ!!!」

『『オォ!!!』』

「オォオオオ―ン!!!」

 

 

 満身創痍の猟犬たちは群れを率い、巨人に向かってまっしぐらに突撃した。喉笛を噛み千切るために。戦果を主に見せつけるために。

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