影武者転生異常あり!~俺は悪役令嬢の影武者なんだ…誰が何と言おうが影武者なんだ!だから脇役でいさせろや!   作:三流二式

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物凄い今更なんですがイミテーションくんの参考画像をAIで作ってみたらいい感じのものが生まれたので置いておきます。あくまで参考程度です。私のリスペクトする小説に倣って、基本的に読者皆様方の想像を妨げるような行為は極力控えたいと思っています。ですので特徴さえ捉えているのでしたらどのキャラをどのように想像したって読者の皆さまの自由です。長い前書き失礼いたしました。では本編をどうぞ。(あまり話は進んではいませんが)

【挿絵表示】



『chapter11 巨壁破壊作戦』⑦

 時に、付喪神と呼ばれる概念がある。長い年月や経験を経た道具などに霊魂が宿るというものだ。

 

 

 長い時の中で、道具には少しずつ力が宿ってゆく。力の種類は様々だ。使い手の経験や記憶、周囲に漂う微量の力、良い物であれ悪い物であれ、その積み重ねの果てに道具は意思を持ち、自ら動き始めるのだ。

 

 

 ()()が生まれたのは、精々が半年ほど。

 

 

 しかし、()()が見聞きし、記憶した力や経験は()()()()()

 

 

 無辜の人々が半年の間に十や二十の経験をしている傍らで、それは百の悪意を、千の屍を、夥しい血を、憤怒を、憎悪を浴びてきた。

 

 

 極短期間で高密度の遺志を、絶叫を、嘆きを吸ってきたそれは、驚くほど急速に力をつけていった。

 

 

 そして使い手の強靭なる意志の力が、それに確固たる意志を与えた。

 

 

 それがいつの段階で目覚めたのかは分からない。ただ気が付けば、それはそこにいた。

 

 

 そして魔王の策略により意図せずして得た混沌により、現実と空想の境目が曖昧となり、それはついに意識の表層に表出する事に成功した。

 

 

『──────ッ!!!』

 

 

 体を得たそれが初めに行ったことは、大地を踏みしめる感動に浸る事でも、ましてや体毛を揺らす風に身をゆだねる快感に浸る事でも無かった。

 

 

 

 絶滅(アナイアレイト)! 

 

 

「なっ!?」

 

 

 魔王は目を剥いた! あまりにも何の脈絡もなく現れた一軒家ほどの大きさの狼の頭に! 

 

 

『ゴァアアアアアアアアア!!!』

 

 

 大狼は灰色の瞳に憤怒の業火を漲らせ、我が主を掌握し、今まさに握り砕かんとした下賤で恥知らずな闇の泥へ向けて顎を開いて噛み砕かんと凄まじい勢いで突進した! 

 

 

「おのれっ!」

 

 

 瞬時に判断した魔王は忌々し気に舌打ちを零すと、イミテーションから手を離して後方に飛びのいた。その一瞬後に大狼の顎が噛み合わさり、がちんと火花を散らして噛み合わさった。

 

 

 その音を、魔王は確かに聞いた。錯覚ではない。あれは夢や幻の類ではない。確かにそこに存在していた。

 

 

『グルルルル……!』

 

 

 大狼は離れた地点で構える魔王を射殺さんばかり睨みつけるが、しかし決して踏み出そうとはしなかった。主の命令無しに、猟犬は動かないのだ。

 

 

「ぐっ……ヌゥーッ……」

 

 

 イミテーションは地面に手を付き、二呼吸ほど息を吸い込み、それから力いっぱい腕を押し、ふらつきながらも立ち上がった。

 

 

「ハァーッ……ハァーッ……犬め……!」

『……』

 

 

 息を荒げながら懐を漁り、小さな注射器を取り出して躊躇いなく首へと打ち込みながら、イミテーションは真横でさも当然とばかりに立つ半透明の大狼をぎろりと睨みつけた。

 

 

 しかし大狼は声一つ漏らさず直立していた。良く躾けられた猟犬さながらに。イミテーションを凝視し、次の命令を待つ。

 

 

「……フン」

 

 

 鼻を鳴らし、右腕を掲げる。そこには灰色の光を発する細い糸のような物が電源コードめいて伸びており、大狼の体に繋がっていた。

 

 

「道具が意思を持つなど……!」

『……』

 

 

 苛立ちも露に吐き捨てる。大狼は無言で受け止める。イミテーションは一瞬だけ眉を顰め、それから視線を動かして追いついてきたゴスペルと魔王の激しい剣戟に目を向ける

 

 

「ぬぅん!」

「ぐぬっ!?」

 

 

 丁度そのとき切り合いを制した魔王の長剣の一振りによってゴスペルがこちら側に弾き飛ばされてきた。

 

 

「んっ」

『ガウッ!』

 

 

 イミテーションは顎をしゃくった。大狼は文句ひとつ垂れずに従い、吹き飛んできたゴスペルをその身を持って受け止めた。

 

 

「くそっ!」

「まあ待ちなさい」

 

 

 肩を掴んで静止を促すイミテーションへ、兜が吹き飛び露になった顔を凄惨に歪め、血走った目で睨んだ。噛みしめた歯から血が一筋垂れた。

 

 

「今のきり結びであなたとて理解しているでしょう。あれは最早あなたの兄ではない」

「──────ッ!!!」

 

 

 バキンッ、という音がして、ゴスペルの奥歯が砕け散った。

 

 

「心中お察しします。貴方の胸中を思えば、とても言葉では表せる事が出来ない苦痛のはずです」

「……」

 

 

 口元からぼたぼたと血を垂らし、充血で真っ赤に染まった瞳で睨みつけながら、ゴスペルは無言である。

 

 

「私には故郷の記憶はありません。家族の記憶すらも」

 

 

 悪魔は沈痛そうに目を閉じ、息を吐くように嘘をつきながら頭を振るった。ゴスペルは無言。ただ黙って聞いていた。

 

 

「そんな私の言葉など、貴方からすれば軽く、何一つとして意思を変える理由にはならないでしょう」

「……」

 

 

 ゴスペルは無言である。

 

 

「ですがそれでも、それでもです。どうか私の話を聞いて欲しい。決断に揺れる貴方だからこそ、どうか……!」

 

 

 イミテーションはゴスペルの手を取り、胸に手を当て、ゴスペルの眼を見て言った。

 

 

「……」

 

 

 光差さぬ深い青色の瞳が、ゴスペルの瞳を射抜いた。渦を巻く瞳は真剣そのものであり、何処までも真摯であった。

 

 

「生かす事が優しさとは言わない様に、時として終わらせてあげることが優しさになる時もあります」

 

 

 悪魔は嘯く。歌うように。

 

 

「残念な事に貴方の兄は闇の神の手によって制御不能の怪物へと身を落としてしまった。分りますか?」

「……」

 

 

 アベルは押し黙った。悪魔は背伸びしてアベルの耳元に唇を寄せ、そっと囁きかけた。

 

 

「解放してあげるのです。他ならぬ貴方の手によって」

「──────ッ」

 

 

 びくりと身を震わせた。悪魔は畳みかけた。

 

 

「死は終わりといいますが、同時に囚われていた魂の開放も意味するのです」

「解……放……?」

 

 

 アベルは譫言めいて復唱した。

 

 

((掛かった!))

 

 

 悪魔はほんのゼロコンマ数秒の間だけ嗤い、すぐに笑み引っ込めてゴスペルから一歩引いた。ゴスペルを見つめるイミテーションの表情は何処までも慈愛に満ちていた。()()()()()()()()()()()

 

 

「終わらせるのです。私と貴方の手によって」

 

 

 悪魔はゴスペルの手に握られる大剣を指さした。ゴスペルは顔を動かして大剣を見た。吹き飛ばされても無意識の内に握りこんで決して離さなかった自らの半身を。

 

 

「……」

 

 

 ゴスペルは大剣の柄を強く強く握りしめた。決意を固めるが如く。

 

 

『こちら超ビックリムッチャクチャ邪神討伐隊! 羅生門無くなったみたいだからこのまま突っ込むぜ! ちと早いが文句言うな? 何せ大将直々に連絡入れてきてな。早く行かねぇと大量の闇ばら撒くぞって脅しに来やがったからな!』

『そういう事だからあのデカブツは頼んだぜ皆!』

『私たちは行きます!』

『姉さん達、私、やってみせるぞ!』

『四の五の言ってる暇があるならさっさと行くぞ!』

「貴方の主もついに動き出しましたよ。貴方はどうですか?」

「……………………()()

 

 

 ゴスペルは顔を上げた。危険な光はそのままだが、瞳には確かな決意が燃えていた。ゴスペルは油の切れた機械めいてゆっくりと頷いた。悪魔は微笑んだ。

 

 

「宜しい、では我々も行きましょうか」

「……話は、終わったか?」

 

 

 声がする方向へ顔を向けると、魔王が幽鬼の如く揺らめきながら、ゆっくりと足を動かして近寄って来ていた。

 

 

「えぇ、待っていてくださってありがとうございました。もう大丈夫ですよ」

「そうか」

「……」

 

 

 イミテーションも同様に歩を進めた。ゴスペルはややぎこちない足取りでイミテーションの背に続いた。縋りつく幼子の様であった。

 

 

((へっ))

 

 

 イミテーションは胸中で嘲笑った。傍らで追従していた大狼は無感情に一瞥し、やがてその姿は薄れてゆき、手甲へと吸い込まれる様にして消えた。

 

 

「「……」」

 

 

 魔王の長剣に悍ましい光を放つ黒紫色の瘴気が纏わりついた。悪魔の両腕は黒と白の炎に包まれた。魔王を見つめる瞳は何処までも冷たい。

 

 

 ゴスペルも再び6枚の翼を展開し、大剣に膨大な光を宿した。光り輝く大剣は地上に現出した太陽めいて遍く全てを照らし、魔王より放たれる瘴気を全て相殺した。

 

 

 やがて両者は必殺の間合いへと入った。ほんの一時の静寂。遠くからは途切れることの無い鬨の声。

 

 

『オォオオオ―ン……』

『『おぉおおおおおおおお!』』

 

 

 巨人と巨兵のぶつかり合い。一際大きな衝撃が放たれた。吹き荒れる風が悪魔の髪をたなびかせた。

 

 

「「──────ッ!」」

 

 

 それを合図に、両者は動き出した。

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