影武者転生異常あり!~俺は悪役令嬢の影武者なんだ…誰が何と言おうが影武者なんだ!だから脇役でいさせろや!   作:三流二式

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『兵士量産工場破壊』②

『あーあー、……どうですか、ちゃんと繋がってますか?』

「あぁ、繋がってるよ」

 

 

 バイクのヘルメットを彷彿させる黒塗りのフルフェイスヘルムから聞こえる通信に、チワワは返事を返す。

 

 

『はい。では改めて、本作戦は私達〝保健所〟の最初の仕事となっております! 気を引き締めていきましょう!』

「わかってるさ」

 

 

 そう言って、チワワは目の前の工場を見上げる。

 

 

 時刻は午前1時。眼前にある工場は沈黙し、死んだように眠っている。()()()()()()()()()()()

 

 

 ○○区郊外に、エクスプロシブ社第1工場は存在する。無辜の人々は知らぬ。この工場の地下にいかなる邪悪な者どもが蠢いているのかを。

 

 

 人々は知らぬ。その邪悪なる者どもの卑劣な行いを許さぬ集団が、『聖光教』以外にもいる事を。人々は今日という日をもって知るだろう。〝保健所〟という存在を! 

 

 

『ボスはすでに侵入を果たしています。皆さんはその間に注意を引きつけること、そして可能な限り施設や資料を破壊してもらうことになります!』

『で、あんたらどうやって入る気? アイツはダクトから入っていったけど』

「そりゃおめぇ決まってんだろ?」

 

 

 レトリバーへ、チワワは不敵に笑って見せ、横に並んだ2人に顔を向ける。

 

 

「まあ当然っすね」

「そうだね。陽動だもん」

 

 

 心得ているとばかりにポメラニアンとシバイヌは頷いた。2人ともチワワと同じように黒塗りヘルメットで頭をすっぽりと覆っていた。

 

 

『……あんたらまさか』

『え? え? チワワさん、ポメラニアンさん、シバイヌさん……一体何を』

 

 

 察しのついたレトリバーは呆れたように言い、呑み込めていないプードルは疑問の声を上げたが、その声は3人の発した轟音にかき消された。

 

 

「正面突破じゃぁああああ!!!」

 

 

 チワワは、ポメラニアンは、シバイヌは同時に蹴りを出し、硬く閉ざされた正門を吹き飛ばした! 

 

 

 ガゴンと音をたてて射出された鋼鉄製の門は冗談のように吹き飛び、工場の入口へ破城槌めいて突き刺さった! 

 

 

 凄まじい破砕音! それに続けて墓場の様に静まり返っていた工場から雄たけびのような警戒アラートが発せられた。たちまち工場内にハチの巣をつついたが如き気配に満ち始めた。

 

 

『あんたら……ッ』

『10……20……30……う、嘘でしょ!? この数を正面から相手取るつもりですか!?』

「そういうこった!」

 

 

 言うや否や、チワワは背負っていたケルベロスの柄を握ってレバーを引いた。魔獣の唸り声の様な駆動音を轟かせるケルベロスを、手始めに先陣切って突撃してきた警備の黒い者へ叩きつけた! 

 

 

「貴様何やガババババ!?」

 

 

 威勢よく誰何してきた黒い者は最後まで言い切ることなく魔獣の顎の餌食となった! 回転刃は鼻骨を、筋繊維を、骨を、その奥の脳をあっさりと削り砕き、後頭部を突き抜けて脳漿や血潮を景気よく辺りへとぶちまけた! 

 

 

「なッ!?」

 

 

 やや遅れて1ダースの一般構成員を引き連れてやって来た黒い者が、即死した同僚を見て驚愕して反射的に立ち止った。

 

 

「死ねっコラーッ!」

「ガキュッ!?」

 

 

 その隙をポメラニアンは見逃さなかった。急接近したポメラニアンは籠手から爪を展開し黒い者の喉笛に何の躊躇もなく突き刺した! 

 

 

「が、がわわ!?」

「じゃあな」

 

 

 血泡を吹いて口をパクパクさせる黒い者へあらん限りの侮蔑と怒りを込めて睨みつけると、ポメラニアンは吐き捨て、腹を蹴り飛ばした。

 

 

 蹴り飛ばされた黒い者は後方へと勢いよく飛ばされ、ボーリングのピンのように並んでいた構成員とぶち当たり、派手に転倒した。

 

 

「えい!」

 

 

 間髪入れずにシバイヌがイヌガミからグレネードを射出! しゅぽっという音をたてて射出されたグレネードは放物線を描いて一纏まりとなった黒い一団へと迫り、着弾! 

 

 

 黒い者の恥知らずな命乞いの言葉も、自我すら剥奪された哀れな兵隊たちの無言の嘆きも、イヌガミの礫は何もかもをも白く赤く消し飛ばした! 

 

 

 閃光と共に一瞬体が浮き上がるほどの衝撃が迸った。紅蓮の炎が周囲を舐め回し、黒煙が視界一杯に広がった。

 

 

 やがて黒煙が晴れる頃には、戦争後の廃墟を思わせるほどに一変した工場入り口があった。

 

 

 着弾地点であった黒い者や兵隊たちは粉々となって四散し、肉片は完全に炭化しており元の形を推察する事すらできなくなっていた。

 

 

 衝撃で周囲は瓦礫の山と化し、赤熱した着弾点は犠牲者の魂を燃料に炎を轟々と揺らめかせていた。

 

 

「「──────」」

 

 

 怒りに支配されていた犬たちは、そのあまりにもすさまじい破壊の痕跡に一瞬だけ我に返った。呆けた顔で3匹の犬はイヌガミを凝視した。

 

 

 3匹の凝視と未だ燻る炎を受けて照っているイヌガミは、どこか誇らしげに見えた。

 

 

「グレネードの威力じゃないだろあれ」

 

 

 顔をひきつらせたチワワが、通信の奥にいる制作者に向けて一言。

 

 

「ま、景気づけには丁度いいんじゃねぇの?」

 

 

 ポメラニアンは腕を振って爪から血を飛ばすと、肩を竦めた。

 

 

「───うん、そう。そうだね。これくらいで丁度良い、かな」

『使用者がこう言ってるんだし、私は何も間違って無いわ』

 

 

 シバイヌに便乗し、レトリバーは鼻を鳴らした。

 

 

((こいつ……))

 

 

 その声音から、チワワとポメラニアンは椅子の上でふんぞり返っているダウナーギャル(レトリバー)の姿をありありと想像できた。

 

 

『───は! て、敵部隊第一波消滅を確認! ですが、まだ工場内部からこちらに向かって来る部隊が2! どちらも数は12人単位の分隊規模です!』

「おーし! ほんならこっちから向かってやろうじゃん!」

 

 

 チワワが威勢よく言うと、2人も同じように頷き返した。

 

 

『一番近いのは入ってすぐある廊下の先、銃器の組み立てエリアを通過中。早くしないと廊下で戦うことになるよ』

「だったら分かりやすく正面から出迎えてやるぜ!」

 

 

 いの一番に駆け出したチワワに続いて、シバイヌとポメラニアンが後を追う。

 

 

「オラァ!」

 

 

 侵入者を検知し自動でしまった隔壁に向かってチワワはケルベロスを叩きつけた! 燃える回転刃は分厚い隔壁を熱によって軟化させ、金切り声を上げながらバターめいてあっさりと叩き割った! 

 

 

「シャアッ!」

 

 

 蹴りを入れ、叩き割った隔壁の一部を射出! 目前まで来ていた黒い者へと不意打ちの如く叩きつけた! 

 

 

「ヌウっ!?」

 

 

 黒い者はとんでくる隔壁残骸を寸前でかわし、次いで振るわれたケルベロスに向けて両手をかざした! 

 

 

 ケルベロスは黒い者に到達する寸前でガキンと音をたてて停止。『障壁』の異能である! 魔獣は獲物を切り裂けない事へ不満の唸りのような火花をまき散らした。

 

 

「ヌウゥ貴様らぁ、何奴!」

「あたしらは!」

 

 

 誰何する黒い者へ、チワワは再度ケルベロスを振りかぶり、同じ個所へ叩きつける! 彼女たちの名を高らかに叫びながら! 

 

 

「〝保健所〟だあああああ!!!」

「馬鹿な!?」

 

 

 闇の欠片により強化された障壁が、音をたてて破られた! 待ってましたと言わんばかりに魔獣は吠え声を発しながら得物の顔部に喰らい付いた! 

 

 

「ガババババ!? ゴボボボボ!?」

 

 

 黒い者の顔面は瞬く間に肉片として辺りに散らばり、遅れてきた兵士たちの不健康そうな青白い顔に赤い彩を加えた。

 

 

「対象を確認。排除します」

 

 

 非人間的な平坦な声で兵士はそう通信に呼び掛けると、持っていたサブマシンガンをチワワに向け、一斉に発砲した! 

 

 

「ははは当たるか!」

 

 

 瞬時に異能を発動させたチワワは瞬く間に懐へと入り込み、ケルベロスを横薙ぎに振るい2人纏めて両断した! 

 

 

 絶命した仲間の姿に動揺どころか一瞥すらせず、残った9人の兵士たちは淡々とナイフを引き抜いて近接戦闘で迎え撃った。

 

 

「チワワ!」

 

 

 後方からの声! 

 

 

「あいあい」

 

 

 チワワはすぐさま後ろへと引いた。その瞬間イヌガミの3連装バルカン砲が火を噴いた! 毎分最大6000発、それが3門。狂った過剰火力は一瞬で面を埋め尽くし、その範囲にいた9人の兵士たちは瞬く間にバラバラの肉片となった! 

 

 

『第3波、近づいています!』

「片付いたな、次行くぞ!」

「「おう(うん)」」

 

 

 ポメラニアンへの返事もそこそこ。チワワを先行させ、犬たちは第3波も瞬く間に殲滅した。

 

 

 怒り狂った猟犬たちの進行は留まるところを知らず、チワワが突っ込んで場をかき回し、シバイヌがポメラニアンを守りながらバルカン砲や小回りの利く小型ミサイルを発射して一網打尽にし、それでもなお生き延びた者へは忍び寄ったポメラニアンが爪の一撃で屠り去った。

 

 

 突入から30分程度で工場上層はものの見事に制圧された。

 

 

 無論、3人とも無傷とはいかなかったが、燃え広がった怒りの炎はそんな程度では勢いを留めるどころか油を注がれたが如く勢いは増した。

 

 

「ここか」

 

 

 上層の殲滅を終え、地下へと続くエレベーターを発見した一行は強制的に落とされた電源を復旧させ、あちこちにグレネードを投げて施設を破壊しながらエレベーターへと戻った。

 

 

『今開けさせるわ。ちょっと待ってて』

 

 

 レトリバーがエレベーターへハッキングを行い、程なくして強制稼働させられたエレベーターは招かれざる客たちへ不満を漏らすかのように、軋み音を上げながらその口を開いた。

 

 

「地獄への入り口だな」

「もうとっくに入ってんだろ」

 

 

 軽口を叩きながら、3匹の犬は地下へと下っていった。

 

 

『皆さん、地下のエレベータ入り口前に敵性反応を確認! ですが、この反応は……』

『人じゃないわ。十中八九例のレギオンとやらね』

「任せて!」

 

 

 シバイヌが入り口前に立ち、ポメラニアンとチワワは彼女の背後へと回り、衝撃に備えた。

 

 

 やがて降下は止まり、エレベータのドアがゆっくりと開いて行く。

 

 

 その瞬間、何か青白い大きなものが勢いよく飛び込んできた! 

 

 

「んぅ……!」

 

 

 あらかじめ備えていたシバイヌはこの突撃を軽々受け止め、逆に弾き飛ばし、乱入者を大きく吹き飛ばした。

 

 

 弾き飛ばされた者は無様に地に叩きつけられたが、驚くほどに機敏な動作で起き上がり、威嚇するような唸り声をあげて3人の前に立ち塞がった。

 

 

 それは肉の塊を無理やり人の形にこねた様な醜悪な外見をしていた。しかし事前に聞いていた情報では両腕が棍棒のように盛り上がった肉腫になっているはずだが、その個体は片腕しかなく、尚且つ唯一ある片腕は細長く、動く気配すらなくただ垂れさがっているのみであった。

 

 

「なるほど、失敗作だな……シバイヌ!」

「……うん」

 

 

 今にも飛び掛って来そうな気配の試作型レギオンにシバイヌはイヌガミをまるでブーメランのように投げ放った。

 

 

「ギッ」

 

 

 避ける間など無かった。ギロチンのように迫るイヌガミにあっさりと首を刎ね飛ばされ、首の無くなった試作型レギオンはばったりと倒れ伏し、その呪われた生を終えた。

 

 

「胸糞悪ぃ奴」

 

 

 ころころと転がってきたレギオンの首を蹴飛ばして遠ざけなが、チワワは吐き捨てた。

 

 

 それがトリガーとなったのだろうか。うす暗い廊下の先から片足しかない個体、頭が不自然にねじ曲がった個体、最早人の形すらしておらずゲル状の肉体を強引に動かす個体などなど、レギオンの失敗作たちが後から後から湧いて出た。

 

 

 悍ましい肉のヒトガタが、まるで赤子の様な無垢な呻き声を発しながらぎこちなく迫って来る。悪夢のような光景だった。

 

 

 しかし、義憤と怒りに燃える猟犬たちは止まらなかった。

 

 

「私が受け止めるから、2人は止まった個体からどんどん攻撃して!」

 

 

 シバイヌは狂ったように空薬莢を吐き出すイヌガミに負けじと声を張り上げ、後方の二人に呼び掛けた。

 

 

「わっはっは鳩撃ちじゃ鳩撃ちじゃ!」

「オラオラ死ねコラ死に晒せおら!」

 

 

 シバイヌの脇からチワワが先ほど奪ったサブマシンガンを、ポメラニアンはマシンピストルを撃ち放ち、悪夢の具現を次から次へと葬り去った。

 

 

 しかし、試作型のレギオンは次から次へと湧いてくる。とても尽きる兆しが見えない。

 

 

 5人は分っていた。これは元を断たねば永遠続くものだと。すりつぶされる前に、源泉を枯らす! 

 

 

「プードルぁ! ルートはッ!」

『そのまま直進してください!』

 

 

 怒声を張り上げるポメラニアンに、負けじと怒鳴り返すプードル! 

 

 

 3匹の猟犬は2匹からの通信を頼りに、次々と現れるレギオンを殺戮しながら生産プラントへと進行を開始した! 

 

 

 

 




実はゲーム本編だと現れた今回現れた黒い者は全員闇の者だったりします。時間が経って闇に侵食される前だったんですね。参考までにゲーム本編でのレベルで言うと本来は120~130くらいで、今回出てきたのは50~60くらいですね。ちなみにチワワ達のレベルは大体40と50の間くらいです。それに怒りで+10程度されているので、何とかなっているのです。女の人の怒りって怖いですね。
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